「――よし、ここら辺でいいか」
それなりに奥へと来たけど、まだまだ知らない場所が多い。
泉っぽく溜池が広がり、少し暴れても大丈夫なくらいの広さがある。
『シズさんの力とイフリートを食べたから、スキルやら耐性が増えてるんじゃない?』
「あぁ、色々と増えているはずだ……把握してないけど」
「把握してたらイフリートの攻撃にうろたえないもんね……焼肉の時に知ってた筈なんだけどね。ぷふっ!」
あの一人コントを思い出して、思わず口の中の空気が漏れ出てしまった。
「笑うな⁉ 本当にあの時は焦ったんだからな!」
『前々からウィンがスキルや耐性の把握をしようって言って理由が分ったでしょう』
「宝の持ち腐れ?」
「はぁ……だよなぁ。という訳でだ、頼むぞ大賢者」
〈了〉
「ええと、「熱変動耐性」と同じで刺された時に獲得したのが――「物理攻撃耐性」と「痛覚無効」と……あとは「電流耐性」に「麻痺耐性」?」
一つ一つ思い出していくように、指折り数えて確認していくリムルに、自分もライナも出てくる耐性を聞いて引き気味になっていく。
「リムルって前世で刺されてこっちに来たんだよね……なんかすっごい犯罪にでも巻き込まれたの? なに、その拷問にでもあったかのような耐性……」
『ちょっとドン引きよね』
「いや、なんでって……俺だって電流だの麻痺だの獲得できた理由が分かんねぇよ。刺された時に痺れたりはしてないんだよな……」
リムル自身も不思議そうに小首を傾げている。
〈解。要望に対する情報が不足していた場合の代替措置であると思われます〉
「心当たりがあるの?」
「あ~、知り合いが近くに居てな。もう助からないと思ったからパソコンの処分を頼んだんだ……風呂場にでも沈めて電気流して完全に消去してくれって」
『それね、きっと』
「間違ってないけど……やるなら別の方法でいいでしょう。なにその危険な消去方法」
「そんな事を気にしている余裕はなかったんだ。っていうか「思われます」ってなんだよ大賢者、いつもスキルの獲得を教えてくれるのはお前だろ?」
〈解。スキルの獲得、進化、または世界の改変を告げるのは通常「世界の言葉」です。「世界の言葉」は誰の耳にも響きます〉
話を露骨に変えにいったな。
まぁ、自分も似たような事を言った覚えがあるから、これ以上の追求はしないけど。
「そんな声ってあったっけ?」
『ウィンも聞いた事あるはずよ? こっちの世界に来る前とかね』
「あれって「大賢者」の声じゃなかったのか……」
〈解。ユニークスキル、「大賢者」は「世界の言葉」の権能の一部を流用して言葉をはなしています〉
「あぁ~、そういえば。向こうでも聞いた事あるね」
「なんだか紛らわしいな、大賢者は」
〈……。〉
『……(ちょっと同情するわ)』
「それにしても、「世界の言葉」ねぇ」
「前世の常識が通用するとは思ってないけど……不思議な現象だよね」
「だなぁ~。ま、それを利用してしゃべるスキルも大概だけどな」
「それは可哀想だよ? リムルの疑問に答える為に頑張ったのかもしれないし」
〈……。そうです、答えるために自己改造したのです〉
「ん? なんか言ったか?」
〈否〉
『アンタね……はぁ、全くもう。いいこと、ウィンはあんな鈍感野郎になっちゃダメだからね。アタシはお馬鹿さんみたいにカチカチな思考はしてないんだから』
「あはは……頑張って……大賢者さん」
なんか助言的な事を言おうとしても無駄な気がするし、それはそれで大賢者さんの機嫌が悪くなりそうで怖いから、自分はノータッチでいよう。
「そういや、ウィンの耐性ってどうなってんだ?」
『簡単に言えば、リムルとそう変わらないわね。前にアンタの「大賢者」とリンクで繋がったでしょう。それはウィンの方にもアタシを通じてフィードバックというか、コピーされる感じかな』
「そうなの⁉」
「ん? でも火霊使いとか、地霊使いとか属性を操るのって無理なんだろう?」
『簡単に言えばって言ったでしょう。火属性や地属性が使えないのはヒータとアウスに力の一端を貸し出しているからね。本当なら生み出したカードの力がウィン自身に集約されているんだけど。今はまだヒータやアウスは自立出来ていないの、ウィンが居なきゃ一瞬で消える』
「……はい、良く分かりません!」
「自分も、ちょっと分かんない?」
自分とリムルが手を上げてライナ先生に質問する。
『ん~、まずはアウスやヒータがどうやって存在しているか、それから説明するわね。精霊の具現化に必要な要素は、遊戯王カード、{憑依装着ーアウス}だったり、{憑依装着ーヒータ}なんかね。続いて、それにちなんだスキル、属性、種族、魔素。スキルはウィンが持ってるスキルの一つ「憑依装着」というスキルで補えるのよ。そのカードが持つ効果……この場合はスキル、耐性って言い換えた方が分かり易いわね。問題は、具現化に必要な属性、種族、魔素の方よ』
「アウスを呼んだ時は牙狼族? ヒータはイフリートを素体にしてる?」
「つまり、属性か?」
『前に「コレクト」で魔物をカード化したでしょう。アレで属性と種族それに魔素が補える。種族に関してはウィンは魔女で精霊だからヒータやアウスは問題なく呼べる。あと風属性。条件を満たせば、カード精霊として「自己像幻視」と「生霊の魂」で一個体を造り上げる事が出来るの。そこで個体を作り出すのに必要なのが魔素量ね。これは、「コレクト」で閉じ込めた魔素とウィン自身の魔素ね』
「貸し出してるって言うのはどういうことだ?」
『カード精霊としてはまだまだ不安定って事よ。ウィンが「憑依装着」で得たスキルを貸し出す事で存在を得ている状態。ヒータやアウスが力を付ければ、スキルそのモノはウィンに返るのよ』
そこまで色々と説明を聞いて、ふと思い浮かんだ事が一つ。
「ねぇライナ。リムルの持ってるスキルが自分の方にフィードバックされるなら、自分の持ってるスキルもリムルに行くんじゃないの? つまりリムルもカードを作れる?」
「おぉ! 出来るのか⁉」
『無理』
〈告。不可能かと思われます〉
なんか、大賢者さんの報告が……すっごく不服そうに聞こえた。
そしてライナはなんか勝ち誇った顔をして、リムルを見ているようで大賢者さんの事を見ている感じだ。
「えっ⁉ なんでだよ⁉」
『ウィンが持ってるスキルで「大賢者」には「遊戯王」が解析できないからね。リムルの中に「遊戯王」のスキルがあればできたでしょうけど。ウィンの記憶と前世が関わっている状態だもの……ランクはユニークスキルだとしても、ほぼアルティメットスキルと同等と言っても過言じゃないのよね。簡単には解析できないわよ』
〈…………〉
『カードの精霊化も、「カード生成」もカード精霊を生み出すのも。全ての根幹は「遊戯王」というウィンのスキルがあるから出来る事なのよ。(まぁ、解析できないのはアタシが邪魔してるからっていうのもあるんだけどね……それは言う必要はないでしょう)――まぁ、解析出来れば、リムルでも使えるわよ』
「なんか俺達の方が損してないか?」
『あら、ヒータやアウスの経験値はリムルにも集約されるようなモノなんだから、彼女達がウィンから巣立てば、それはイコール、スキルの進化も兼ねてるのよ、つまりリムルも得る事が出来る力なのよ?』
「ヒータのスキルは元々はリムルから貰った派生のモノ?」
『労せずして、勝手に得意な属性を鍛えてくれるんだから良いじゃない。それにアウスの力はウィンから得たモノが、リムルの方にも流れるんだからね』
「ゔぅ、確かにそうだな……」
納得は出来ないが、ライナにやり込められて返す言葉が見つからないようだ。
「というかライナがさっき、さらっとアルティメットスキル? とか言ってたけど……なにそれ? 初めて聞いたよ?」
「あぁ、確かに。なんだユニークとかアルティメットとかって」
『あ~、スキルのランク? とでも思って頂戴。コモンスキル、エクストラスキル、ユニークスキル、アルティメットスキル――っていう感じよ。コモンは誰でも覚えられるし取得可能、それが進化したのがエクストラスキルって感じね』
〈対して、ユニークスキルは個体ごと固有能力に位置付けられます〉
『複数の能力で構成されてたりするから、似たようなモノはあっても同じものはない感じね。読んで字の如く、唯一無二のスキルって感じよ……それを解析して扱えるようにしようとしている「大賢者」様は本当、どうかしてるわよ』
「リムルはチート?」
「お前に言われたくねぇよ。カードが増えて色々と使えるようになったらぜってぇ俺でも手に負えなくなりそうだぞ……。戦略立てて、嵌められたら逃げられねぇじゃん」
霊使いや憑依装着のテーマデッキって相手の効果やら魔法を効かなくしたり使えなくしたりだからなぁ……スキルドレインとか早くほしいな……アレがあれば有利に――。
「ねぇねぇライナ。魔法やらトラップカードは?」
『アレは魔素と「コレクト」で作ったカードを担保にランダムで「カード生成」によってカードを得る効果でしょう。なにが出てくるか分からないわよ。モンスターだったり、魔法だったり、トラップだったりね……自分で魔法やトラップカードを生み出したりは出来ないじゃない』
「前に魔法カードが使えなかったのはなんでだよ?」
『強い魔法もトラップもそれに見合う魔素量を使うのよ。なんでもホイホイとリスクなく使える訳じゃないのよ……それこそ、死者蘇生なんて人一人の命を懸ける魔素量を使って一人を蘇らせるものなんだから。それに効果対象だってあるしね』
「なるほど……その辺も把握しておかないと大変そう」
今はまだ小規模な戦いだったり、レイドボス風な単体の敵が相手だったけど。これが数の暴力で攻められたら、面倒だろう。
まぁ、トラップカードとか充実してきたら問題なく処理出来そうだけど。
そもそも、ライナやヒータとアウス。それに自分の戦闘能力もどれくらいか、全然分からないんだよね。試すにしても、丁度いい的が……あ、あるかも。
「よし、じゃあ次はスキルの確認だな!」
「ねぇリムル」
「あ? なんだよ?」
「スキルの確認って実際に使わないと分からないよね……」
「あ、あぁ。そうだな」
「リムル、分身体作れるじゃない。それに耐性もいっぱいあるし」
「おい、まさか……」
リムルが逃走しようとしたが、ライナが回り込む。
「各種耐性と「範囲結界」を分身体にリンクさせれば大丈夫だって♪」
『アタシも手伝って上げるから「多重結界」を分身体にかけるから」
「お、お前らなぁ」
ちなみに、カンナホークは「雷族」です。つまり、リムルの使う雷で代用されています。