心にデュエリスト魂を持って転スラ世界に・・・   作:風月八泉

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26話 犠牲者と被害者。鬼人達の方針?

 

 

 

 

 

「どういうこと⁉ なぜシオンが厨房に入ってるの⁉」

「やはりゴブイチ殿では手に負えなかったのでしょう」

「シュナはどうしたの⁉」

「今は衣服の制作の為に衣服を作る工房に居るかと……」

「抑えられる人材がいなかったのね」

「仕方ありませんな……アレを止められる者など限られております」

 

 自分も看病と称して、シオンの料理が運ばれてきた事があったが、その時はヒータが居たので事無きを得た……料理を見た時にヒータが「毒を盛って殺す気か⁉」とマジ切れして、シオンの料理を消し炭にしていた。

 

 騒ぎを聞きつけてシュナやベニマルも来てくれたので、その場はヒータとシオンの勝負だけで騒ぎが大きくなることはなかった。

 まぁ勝負がつかなかったから、シオンが苦手そうなバランス系の遊び道具をやらせてみたのだ。ヒータは性格の割に器用だったので、ヒータの勝利で決着はついた。

 

「とにかく、犠牲者が増える前に食堂に行かない様に注意喚起をお願い……あと「影分身の術」の資料はコレね」

 

 流石に絵を描けるような道具はないので、ライナに翻訳を頼みながら木簡に前世で見た忍者漫画の内容を幾つか抜粋して、分かりやすいように考えて記したモノを手渡す。

 道具があっても漫画を描ける技量は持ち合わせていないしね。

 

「これが……ありがとうございます。この様な貴重なモノを……」

 

 蒼影が感動に震えている。

 

「い、いや。影移動も使えるようになってるし、すぐに出来るようになると思うよ」

 

 蒼影が影分身の術を使えるようになれば、監視の目もシオンの暴走も止めやすいだろう。後に隠密部隊として安全に動いてもらう時にも有効だ。

 

「自分はシュナの所に行って被害者が増えた時用に解毒剤を用意して貰ってくる」

「はっ! くれぐれもお気をつけてお越しくださいませ」

「ハクロウは厨房の方を見に行ってくれる? 気配を消しながらで良いから。とにかく被害を最小限にしないといけない」

「えぇ承りました。なにかあればすぐにお知らせします」

 

 

 

 ==それぞれに分かれ、急いで自分はシュナの元へと向かう。

 

 

 

 杖に乗って空から工房へと向かう。

 

「シュナ! 居るかな?」

「ん? なんだ、蒼影との特訓は終わったのか?」

「え? リムル⁉」

 

 木盤に服の絵を描いていた。

 

「ウィン様、さっきぶりですね」

「どうかなさいましたか?」

 

 ガルムとドルドも居て、全員が自分の方を見ている。

 

「あ~、蒼影には自分が作った資料を渡してあるから問題ないかな……リムルは何をしてるのかな……食堂に行ったんじゃなかったの?」

「あぁ、シュナに普段着とか色々と作ってほしくてな」

 

 シュナは進化によって「解析者」というスキルを手に入れたらしく、リムルの「大賢者」さんに準ずる能力を持っているらしい。

 麻や絹、それに綿なんかの布製品を絹織り機を使って作れるようにったのだ。ドワーフ組に織り機の知識を説明して、シュナに綿や麻なんかから作れるモノを教えたら、いつの間にか出来ていたのだ……。

 

 大賢者さんが言うには「解析者」ってスキルは様々な試みを短期間で進める事が出来るらしい。スキル様々だね。

 

 シュナは裁縫が得意という事でガルムやドルドと分担して皆の衣服作成をリムルとお願いしたら、喜んで引き受けてくれたので今に至る。

 

「リムル様、そろそろ参りましょう。お昼ご飯が冷めてしまいます」

「シオン、秘書のお仕事はちゃんと出来ているのですか?」

「もちろんですシュナ様」

 

 シオンの見た目は秘書っぽいんだけどね……ヒータと争ってるイメージが強いのと、知的かと言われれば……見た目だけとしか言えないんだよね。

 

「うふふ、わたくしがリムル様のお世話をしても良いのですよ?」

「いいえ、それには及びません。私がキチンとお世話いたします」

 

 まぁ、美少女と美女に引っ張られる構図は男のロマンだろうけど……スライムじゃなかったら両腕からもげそうで怖いよね。

 

「ほら、そんなことしてると料理が冷めちゃうんじゃない?」

「そうだな、さっそく行くか。せっかくのシオンの手料理が冷めちゃうからな」

「えっ……」

 

 リムルの言葉を聞いてシュナの表情が強張った。

 自分は何も言わずに、リムルから顔を背けてシュナの隣に移動する。

 

「…………なぁウィン。蒼影との用事が終わったなら一緒に食べないか?」

 

 シュナに助けを求めるように袖の端を摘まんでクイクイ引っ張る。

 

「ウィン様には反物の事でお聞きしたい事があるので……それにリムル様から頼まれたお召し物に関してもウィン様の採寸をしないとですし」

 

 シュナが何とか言葉を繋いで、自分を助けようとしてくれている。

 

「そうか、ならしょうがないな」

「ではウィン様、シュナ様。失礼します」

 

 そう言ってシオンはリムルを連れて工房を出て行った。

 しばらく工房内では沈黙が続いていた。

 

 さっき見せたシュナの反応でリムルが何かを察したように怪しんでいたが、何とか誤魔化せたようだ……すぐに食堂に行くと思ったのに……かなり焦った。

 

「あの、シオンが料理を作ったと聞いたのですが、まさか……」

「作ったらしいよ……厨房の防衛は突破されたんだろう。まぁ止められるのはヒータとかシュナとか限られてるから、仕方ない?」

「では、さっきウィン様が駆け込んできた理由は、もしかしてシオンの件ですか」

「うん。とりあえず解毒薬とか胃薬とかを用意しておいた方が良いでしょう……最悪、リムルのポーションで救って上げる事は出来る……はず?」

「死者は、防げるでしょうがトラウマや恐怖耐性はどうにもなりませんよ」

「ハクロウに被害者が広まらないように、監視には向かってもらってるから……たぶん、大丈夫? とにかく急いで救急搬送と医療の準備をしよ」

「はい、出来うる限りを尽くしましょう」

 

 シュナとの会話をガルム達が聞きながら顔を見合わせている。

 

「あの、そんなにいう程なんですかい?」

「お二方も、決してシオンに料理なんてモノを作らせてはいけませんよ。死にたくなかったら絶対です」

 

 いつもと違うシュナの様子にドワーフ二人は蒼い顔をしながら何度も頷いて答える。

 

 

 とにかく医療に使えそうな薬草を集めて、準備が完了したと同時にどこからか物凄い悲鳴が聞こえてきた。

 

「あら、リムル様ではないみたいですね」

「そうだね」

 

 ただ、リムルが誰かを犠牲にしたという事は確かだ。

 

『大変よ、ゴブタがシオンの料理を食べたみたいなのよ⁉ 正確には食べさせられただけど、急いで運んで来たから治療を開始するわよ』

 

 ライナとゴブリン達が担架にゴブタを乗せて運んで来た。

 

「大丈夫、もう準備はバッチリ」

「ウィン様から話を聞いていましたからね、すぐに此処へ。薬草の投与を開始します」

『アタシも手伝う、流石に可哀想だからね』

 

 ゴブタと仲の良いゴブリン達もお願いしますと、ゴブタを診察台に乗せて祈る様にみている。

 

「あ、あぁ~。とうげんきょうっす」

 

「そっちに行っちゃダメだよゴブタ」

『意識はしっかりしているようね』

「シオンの料理を食べて意識を保てる方がお兄様以外にもいたのですね」

「驚く所はそこなんだね」

 

 

 とりあえず、被害はゴブタ一人という事で事なきを得たのでシオンに対するお咎めは、ベニマルの許可が出るまで人に料理を振る舞うのは禁止という事になった。

 ちなみに、ベニマルの次にリムルが良いと言うまで、一人での厨房入りも原則禁止という法案が密かに設立されたのは言うまでもなし。

 

 

 

  ★☆★☆   ★☆★☆

 

 

 

 

「リムルも酷いことをするね……ゴブタが哀れ?」

「いや、お前らが最初に助けてくれれば被害はなかっただろうが!」

『肝心な時にヒータも居なかったのよ、しょうがないじゃない。それにリムルが被害にあえば誰も文句言えずに問答無用で罰せられるでしょう』

「ウィンも居るだろうが!」

『ふっ、ウィンにあんな劇物を食べさせるわけないでしょう‼ そっちの大賢者だって別のモノを生け贄にしてアンタだって助かってるんだからね』

「ぐっ! 確かに」

「まぁしばらくの生け贄は、ベニマルとゴブタって事で……」

「監督責任と、本当の生け贄だな」

『哀れね……ゴブタって案外しぶといし、毒耐性でも獲得するんじゃないかしら?』

「それはそれで、才能?」

「アイツ、意外となんでもできるんだよな~。影移動も最初に覚えたゴブリンだしよ」

『優秀であることは間違いないわね……誰も本人に言わないけど』

「ハクロウも何気にゴブタを気に入って一番に鍛えてるしな。口には出してないけど」

 

 何気に優秀なゴブタの評価は、他のモノ達も認めているのに誰一人として彼を褒め称えることが無いのは、人格ゆえかな。

 

「調子に乗ってヘマするか、態度に出て皆から袋叩きにあうのが想像できるもんね」

「優秀なんだけどなぁ」

『残念な子よね』

 

 まぁそれでも、皆からの好感度はかなり高いのはゴブタの人徳だろう。裏があっても分かり易く、おバカな考えばかりだから微笑ましく見ていられる。

 

「それよかウィン。蒼影やベニマルの方はどうなってんだ?」

「ベニマルはヒータとの特訓で黒炎の扱いが上手くなってるよ。大規模な魔術を一人で扱えるくらい? 蒼影は「分身の術」から「影分身の術」にスキルアップしたところ。やっぱり忍者っぽいスキルなら早めに覚えるかも?」

「なるほどね……どんどん強くなるな」

 

 元の能力値は高いし、今は里の敵討ちの為にも力を付ける時だって頑張っているんだろう。進化して力の使い方を知れる場所に居るんだから尚更かな。

 

「コツを掴めば早いタイプか……シオンはどうするかね」

『シオンに小難しい説明をしても無駄よ』

「シオンは、力を上げれば良いのでは? 術系統はむしろシュナの方が得意だと思う」

『防壁とか結界、後は軽い治療術や巫女らしく浄化系もいけるんじゃないかしら』

「ならシュナは防衛系の能力伸ばしだな……ライナに頼んで良いか?」

「自分からもお願い?」

『しょうがないわね。でも、ウィンが戦場に行くなら絶対に隣は譲らないからね』

「ん、分かってる」

 

 面倒という感じを醸し出しながらも、ライナはシュナをどう鍛えるかと楽しそうに考えている。ただ――時折「リムルの方に」とか「ウィンは――」なんて怪しい言葉がブツブツと聞こえて来ているのが、少し怖いです。

 

「……クロベエはどうしよう」

「あ~、鍛冶専門で良いんじゃないか? ドワーフ組にも人材は必要だろう。実際、刀なんかはクロベエも打てるみたいだし、カイジンも褒めてたくらいだしな」

 

 

 

 

 

 

 

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