心にデュエリスト魂を持って転スラ世界に・・・   作:風月八泉

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29話 豚頭帝と目的

 

 

 

 

 

 

「俺はリムル=テンペストです。初めましてトレイニーさん」

「自分はウィン=テンペスト。こっちはライナ=テンペスト。よろしくお願いします?」

『よろしくね~』

 

 現れたドライアドに家の外にいたホブゴブリン達が窓に張り付いている。ゴブタは他の男達に踏み台にされているようだ。

 

「は……初めて見ましたぞ」

「そりゃそうだ。ドライアド様が最後に姿を現されたのは数十年も前のこと」

「なぜ今、この町に……」

 

【なんかみんなの戸惑いがすごい?】

【それだけ偉い人なのか、このお姉ちゃん】

〈解。樹妖精は森の最上位の存在であり、「樹人族の守護者」または「ジュラの大森林の管理者」とも呼ばれます〉

【……なるほど、「社長が直々に視察に来た」みたいな感じか】

『とりあえず、リムルが進行役なんだからトレイニーさんとやらから話を聞かないとね』

【お前らが聞いてくれても良いんだぞ?】

【向いてないから、いいや】

『アタシもパスで』

 

 ジト目で見てくるリムルから顔を逸らせて、ポテチにかぶりつく。

 なんかトレイニーさんが妙にポテチを見ている気がするが、実体がここに居ない以上は食べさせてあげられないので、下手に勧める事も出来ない。

 

「ええと、トレイニーさん? 今日は一体なんのご用向きで……」

 

 諦めた様にため息交じりに自分とライナを睨みながら、すぐにトレイニーさんには笑顔で向かって行く。

 

「本日はお願いがあって罷り越しました」

 

 胸に手を当てて、ニコリと自分とリムルの方を見てくる。

 

「リムル=テンペスト……魔を統べる者。ウィン=テンペスト……異形を統べる者よ。あなた方にオークロードの討伐を依頼したいのです」

 

 居るか居ないかで少し話し合っていた所に、大森林の管理者が自ら依頼討伐の依頼を持ち掛けて来るとはね。

 

 さっきまで映像っぽかった姿がしっかりと形をなしていき、実体へと移り変わっていく。

 

「豚頭帝の討伐……?」

「ええと……俺とウィンがですか?」

『なに言ってるの? このお姉さん。というかアタシの名前も入れなさいよ』

 

 ライナが気に入らないのは後者だよね、絶対。

 

「ええ、そうです。リムル=テンペスト様。それにウィン=テンペスト様」

 

 ちらっとライナの事を見ているが、重要なのは自分とリムルだと主張するようにライナの名前は頑なに言わないでいる。

 

「いきなり現れてずいぶん身勝手な物言いじゃないか。ドライアドのトレイニーとやら」

 

 紅丸が自分とリムルの前に庇う様に立って、トレイニーさんに物申す。

 

「なぜこの町へ来た? ゴブリンより有力な種族はいるだろう」

「そうですわね。あなた方……元オーガの里が未だ健在でしたら、そちらに出向いていたかもしれません」

 

 その言葉に鬼人組の全員がトレイニーさんの方を戸惑いながら見ている。

 

「まぁ、そうであったとしても。この方々の存在を無視することは、出来ないのですけれど。こちら、頂いても良いでしょうか?」

「ど、どうぞ?」

 

 リムルを覗き込む様に見た後に、自分の方にも笑顔でやってきてポテチを摘まむ。

 

「樹人族の集落がオークロードに狙われれば、樹妖精だけでは対抗できませんの。ですからこうして強き者に助力を願いに来たのです」

「オークロードがいるってこと自体、俺達の中ではまだ仮定だったんだけど……」

「樹妖精は、この森で起きたことならばたいていは把握しておりますの。いますよ? オークロード。まぁ美味しい! 良いですねコレ」

 

 ポテチの味に喜んでくれながら、なんていう爆弾発言をかますんだ、この人は。

 

「ドライアド様がお認めに……っ⁉」

「ならば本当に誕生してしまったというのか⁉」

 

 リムルの方を見ると、同時に向こうも自分を見てきていた。

 

「トレイニーさん? とりあえず返事は保留?」

「あぁ、そうだな。こう見えてもここの主なんでな。鬼人たちの援護はするが、率先して藪をつつくつもりはないんだ。情報を整理してから、答えさせてくれ」

 

 どうやら考えは同じな様で、リムルと頷きあって改めてトレイニーさんを見る。

 

「……承知しました」

 

 混乱しているホブゴブリン達が落ち着くまでまってから、トレイニーさんを加えて、オーク達についての会議を再開する。

 

「――――えー……という訳で会議を続ける」

「オークたちの目的について、何か意見のある者はいるか?」

 

 

 トレイニーさんはポテチを摘まみに、紅茶を飲んで話を聞いている。隣に座るリグルドとカイジンはどうすれば良いのかと、戸惑いながら様子を窺っているようだ。

 

 朱菜が何かを考え込みながら、おずおずと口を開く。

 

「豚頭帝の存在が確定したのなら。思い当たることが一つあります」

 

 朱菜の発言に皆が耳を傾ける。

 

「ソウエイ、わたくし達の里の跡地は調査して来ましたか?」

「……はい」

「その様子では、やはり……なかったのですね?」

「はい……同胞のものも、オーク共のものも。ただの一つも」

 

 同胞だけでなく、敵であったオークのモノとなると……死体かな? アンデットや傀儡みたいなモノも関係あるのかな。

 

「無かったって、なにがだ?」

 

 リムルが気になって聞くと、蒼影と朱菜は少し言い難そうにしている。

 

「死体です」

 

 ソウエイが小さく答える。

 

「死体⁉」

 

 トレイニーさん以外の全員が驚きの声を上げるか、息を吞んだ。

 

「なるほどな……20万以上もの大軍が食えるだけの食料をどうやって賄っているのか、疑問だったんだ」

「奴らには兵站の概念などありはしませんからな……」

 

 紅丸と白老が戸惑いの色を隠せず、呟く様に言う。

 

『おいおい、ちょっと待ってくれよ』

「それってまさか、死体を……」

 

 ヒータとリムルも嫌な想像をしたようだ。とうか誰しもが想像してしまっただろう。

 

「ユニークスキル「飢餓者」。豚頭帝が生まれる時、必ず保有しているスキルです」

 

 ウエルモノ……言葉からして、いい響きじゃあないね。

 言葉の通りなら、尚更だろう。

 

「食べた魔物の性質を自分のものとする。あなた様の「捕食者」と似ていますねわね。「捕食者」と違い、一度で確実な奪取とはなりませんが、食欲に任せ数多く食せばその確率も上がるというもの」

 

 チラリとトレイニーさんはリムルを見て言う。

 

「つまり、オークの狙いってのは……」

「オーガやリザードマンといった森の上位種を滅ぼすことじゃない?」

『その力を奪うってことね……」

 

 この場の誰もが言葉を失ってしまう。

 

「……となるとウチも安全とは言いがたいな」

「嵐牙狼族に鬼人。ひょっとしたらホブゴブリンにゴブリナも?」

『オーク達の欲しがりそうなエサだらけ』

 

 リムルも自分もポテチに手を伸ばして、食べる。

 ライナとリムルはポテチでアヒル口を作って項垂れている。

 

「一番ヤツらの食いつきそうなエサを忘れてやしませんか?」

「んー?」

「いるね。最強のスライム?」

「スライムなんて無視されるよ。それよかお前らの方が危ないぞ~」

「ただの子供を相手にしないでしょう?」

『アタシ達は食べられる心配はないね、すぐに逃げちゃえるし』

『まぁ、燃やしてやるかな?』

『肥料にした方が有益かもよ?』

 

 自分の周りの子達は頼もしいね……。

 

「……他人事ではなくなったのでは? それに……この度のオークロード誕生の切っ掛けに魔人の存在を確認しております。貴方様方は放っておけない相手かと、思いますけれど。なぜならその魔人は、いずれかの魔王の手の者ですので」

 

 トレイニーさんはやらポテチを全部完食して、紅茶を飲んで一息つく。

 カイジンさんが呆れ顔で、ポテチの入っていた器を見つめていた。視線的に「すげぇ食ったなこの人」という感じで見ている。

 

【森で起きたことはたいてい把握してる……か】

【食えない人だね】

【あぁ、そう言われて俺達が動かない訳がないと知ってたってことか】

 

「改めて、豚頭帝の討伐を依頼します。暴風竜の加護を受け、牙狼族を下し。鬼人を庇護する貴女様方なら、豚頭帝に後れをとることはないでしょう」

 

【だってさ。全部見てたみたいだよ? どうする?】

【……たく、よく聞くよなお前。……腹をくくるか】

 

 リムルと視線を合わせながら、頷き合う。

 

「当然です! リムル様とウィン様ならばオークロードなど敵ではありません!」

「まぁ! やはりそうですよね」

 

 シオンとトレイニーさんが変に意気投合している。

 リムルの秘書を名乗るなら、もう少し考えて行動をして欲しいんだけど……シオンにそれを言うのは酷かもしれない。

 

「……わかったよ」

 

 リムルが人型からスライムに戻ってシオンの抱きしめから逃れて、机の上に乗る。

 

「オークロードの件は俺達が引き受ける」

「うん、皆もそのつもりでいてね?」

「もちろんです、リムル様、ウィン様!」

 

 全員が立ち上がって、気合を入れて叫んでいる。

 

 

 

【なんて格好つけて負けたらどうしよう……】

【そういうのは考えない方向でいよう?】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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