心にデュエリスト魂を持って転スラ世界に・・・   作:風月八泉

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3話 森と狼とゴブリン

 

 

 

 

 

 

 洞窟から出たら森の中だった。

 薄暗い所に居たからか、木々の隙間から射す光がやけに眩しく感じる。

 

「空気が美味しい」

『日差しも丁度良く遮られてるし、日向ぼっこでもして寝っ転がりたい』

【たしかに、気持ちよさそうな森だな】

 

 三人でそんなことを口にしつつも、少しだけ名残惜しそうに振り返って出て来たばかりの洞窟をしばらく眺めていた。

 

【よし、行くか】

『適当にゴーだね』

「まぁ、何処に向かうって目的なんて無いしね」

 

 能天気な言い方に少しばかり不安になるが、一人じゃないだけで心強い。

 

【アメンボアカイナ、ア・イ・ウ・エ・オ】

 

 本当に適当に森の中をズンズンと進んで行きながら、リムルは洞窟に居た蝙蝠から得たスキル「超音波」を使って発声練習を欠かさない。

 自分もスキル練習という事で、カードを使って風霊使い、水霊使い、火霊使い、地霊使いへと属性チェンジしていく。

 

【よっと!】

 

 リムルが発声練習しながらも蜘蛛の魔物から得た「粘糸」を木の枝に巻き付け、ミノムシみたいにぶら~んと垂れ下がったり、どこぞの蜘蛛ヒーローみたいに「粘糸」を枝から枝へと結び、ターザンみたいにひょいひょいと飛び移っていく。

 

「いいなぁ、アレは移動に便利そう」

『ならウィンも飛べばいいと思うよ』

「え? 飛べるの?」

『風霊使いなら杖に乗って飛べるはずよ』

「本当に‼ ならさっそく――」

 

 ライナに言われて杖に跨ろうとしたら、すぐに止められた。

 

『そんな乗り方したら色々と大変な事になるからね。杖に乗るなら柄の棒状の部分に腰かける感じで、あと足はしっかり閉じて、スカートも太腿で挟み込むようにね』

 

 半場強制的にライナが体を動かしてきて、理想の形へで杖に乗りながらそっと地面から両足を離すと、少量の魔素を杖に流し込みながらライナの助けを借りながらも、ゆっくりとしたスピードでリムルを追う様に飛んでいく。

 

【おぉ! 良いなソレ⁉】

「まだ慣れないから大変だけどね」

『慣れれば無意識化でも飛べるようになるから、頑張って』

 

 洞窟内では出口に向かって歩いてるとすぐに魔物に出くわしたのに、森に出てからは出会う事も無く、平和に過ごせている。

 

「グルル」

 

 一日くらいスキル練習、もとい遊びながら自身の出来る事を確認していると狼らしき魔物数匹と出会ってしまった。

 

 ちょっとだけ警戒しながらも、スライムと少女のペアという事で侮られているのか、こちらを囲む様にゆっくりと近付いてくる。

 姿を隠さず、威嚇すれば怯むとでも思っているのか堂々と詰め寄ってくる。

 

【あ?】

「「「「キャイ~ン‼」」」」

 

 群れの纏め役かリーダーかは分からないけれど、額に星のマークみたいな毛並みの狼がいたけど、リムルの圧に速攻で負けて逃げ帰っていった。

 

【なんだったんだ?】

「エサだと思われたんじゃない?」

『……(あれ? もしかして気付いてないっぽい?)』

 

 なんかライナが不思議そうにリムルを見つめて小首を傾げていた。

 

 夜を三回超えた辺りで、リムルの発声練習の成果が出てきた。

 

「ワレワレハ、ウチュウジンデアル」

「おぉ~、しっかり聞こえる! やったねリムル」

『なに? ウチュウ人って?』

 

 まぁライナは知らないよね。後で説明してあげよう。

 

「ヤッタゾ、ダイケンジャ」

〈はい〉

【反応が淡泊……】

〈……〉

 

「ちょっと「大賢者」さん拗ねてない?」

『どうだろう? アタシみたいな感じのスキルなのかな?』

 

 

 

 ――――――――☆★☆★――――――――

 

 

 

 あの狼達から特に襲われる事も無く、しばらく森の中を適当に散策している。

 

「ここまで何にも会わないとはな」

「というよりも、自分達を避けてる? いや、怖がってるみたい……かな?」

『……(あ~、これは完璧に気付いてないね……面白いからほっとこ♪)』

 

 なんかさっきから半透明になって自分の中で休んでいるライナの表情がちょっと怪しい感じがする。悪戯っ子みたいな笑みを浮かべて楽しそうにリムルや自分を見ている節があるのだが、何にも教えてはくれない。

 

「ライナ?」

 

 ちょっと痺れを切らして、ライナに聞こうとした時だった。

 ぞろぞろと緑色の皮膚をした魔物の群れが武装して現れた。

 

【ゴブリン、か?】

「じゃないかな?」

 

 子供みたいな人型に皮膚は緑色だしね。

 ただ気になるのは、こちらは三人……ライナは実体化していないから実質的には二人。

 相手の方が人数が遥かに多いのに、自分達よりもゴブリン達の方が追い詰められているような感じで、手に持っている武器や盾が微かに震えている。

 

【30匹くらいか、それにしてもゴブリンとかいるんだな】

「まぁ、スライムにドラゴン……魔女……なんてのも居る世界だもん」

『自分の事をなんで血反吐を吐きそうな感じで言うのよ』

「まだ心は男だから‼」

 

 不思議なんだけど数的不利だというのに、何と言うか怖いとかっていう感情が浮かんでこないんだよね。良く解らないけど……どうしてだろう。

 

【スライムと少女相手に30匹ってどうなのそれっ!】

『ん~でもさ、貧弱な体躯。ボロボロな装備だよ。正直、こいつ等の攻撃でダメージを受けるって気はしないのよね』

【同感だな】

 

 元から顔色が悪いから気付き難いけど、なんか青い顔をしてるっぽい。

 

「グガッ、強き者ヨ……」

 

 30匹の一番前に居たゴブリンが震える脚で一人前に出てきた。

 

【しゃべった⁉】

「同じ魔物なんだし、言葉が分かるとかじゃないの?」

『まぁ少なくとも知性は低くはないんじゃない?』

【そう言えば、なんで言葉が理解できるんだろう?】

 

〈解。意思が込められている音波は「魔力感知」の応用で理解できる言葉へと、変換されます。なお、「思念」を乗せて発声すれば会話も可能です〉

 

【なるほど】

 

 前に出て来たゴブリンを、よくよく見ると足がガクガクと震えている。

 

「コノ先ニ、ナニカ用事ガ、オアリデスカ?」

【試してみるか】

『あ! ちょっとリムルま――』

 

 何かに気付いたっぽいライナだったけど、静止する前にもうリムルは喋り出していた。

 

「初めまして、俺はスライムのリムルという」

 

 スライムボディだから表情は判らないけど、きっとニコニコと営業スマイルでも作って明るく言っているのだろう。

 

「「「「……っ‼」」」」

 

 ブワッとリムルの声に乗せて、力強い魔素の風圧をぶつけられている様だ。

 まぁ自分達は特に問題もなく、そよ風程度にしか感じないけれど……ゴブリン達からしたらたまったモノではないだろうね。

 少し離れた位置に居たはずのゴブリン達が一斉に腰を抜かして倒れてしまう。

 必死に頭を抱えて蹲る者や、跪いて首を垂れる者と様々だ。

 

【……あ、あれ?】

 

 おろおろとしてこっちを見られても困る。

 助けてと言わんばかりの視線を送られてくるけれど、そっとリムルから目を逸らす。

 

「はぁ、ライナ。気付いてたでしょう」

『なんの事かな~、アタシはな~んも知らないよ』

 

 下手な口笛を吹きながら、必死に誤魔化そうとしている。

 

「強キ者ヨ! アナタ様ノオ力ハ十分二ワカリマシタ。ドウカ声ヲ静メテ下サイ!」

 

【えっと……思念が強すぎたかな?】

「もうちょっと抑えて喋らないと」

『(それだけじゃあないんだけどね~)』

 

 少しだけばつが悪そうに咳ばらいをして、リムルが再チャレンジする。

 

「すまんな、まだ調整が上手く出来なくて」

「オ、オソレオオイ。我々ニ謝罪ナド不要デス!」

 

 さっきよりも確かに小声にはなっているが、どうも思念だけが原因ではなさそうだ。

 

「で、俺達になんか用? 俺達はこの先に用事なんかないよ?」

「左様デシタカ、コノ先ニ我々ノ村ガアルノデス」

 

 なるほどね、それで大勢で……ん? あれ? なんで大勢でこちらに来たんだろう。

 強き者とかさっきから言ってるし、人違いって訳ではなさそうだし――まさか――。

 

 慌てて「魔力感知」のスキルを発動し、自身を客観的に見えるように使ってみる。

 

『ありゃ、気付いちゃったか』

 

「強力ナ魔物ノ気配ガシタノデ警戒ニ来タ次第デス」

【強い魔物の気配? 俺の「魔力感知」ではそんなの感じないけど……】

「グガッグガガッ、ゴ冗談ヲ」

〈告。周囲100メートル以内に個体名リムル=テンペスト及びウィン=テンペストを上まわる魔素を持つ魔物は存在しません〉

【だよな】

「我々ハダマサレマセンゾ、タダノ、スライムニ、ソコマデノ妖気ハ出セマセヌ」

 

「リムル、もう気付いたと思うけどさ。すぐに「魔力感知」で自身を見た方が良いよ」

【だ、大賢者‼ すぐに「魔力感知」の視点を切り替えてくれ。自分を見たい」

〈了〉

 

 ようやくライナが気付いて黙っていた事が分かった。

 第三者の視点から魔素を見てみると、自身から駄々漏れているのが良く解る。

 

【あらやだ、駄々漏れ!】

 

 自分も気付いた瞬間に思わず顔から火が出そうな程に恥ずかしくなってしまい、顔を両手で覆いながら、すぐさま魔素の漏れを抑え込んでいく。

 

【あ! ズルいぞウィン‼ どうやって魔素を引っ込めた‼】

「薄いフィルターで押し込める感じかな」

 

 ゴブリン達に聞こえないように会話をする。

 

「ふ、ふふふ。わかるか?」

 

 リムルさんや、その言い分は厳しいものがあるよ。

 

「勿論デス! 漂ウ風格マデハ隠セマセヌ!」

 

 教えたヒントを基にして、リムルもすぐさま魔素を内へと押し込める。

 

「オオッ! 助カリマス、ソノ妖気二怯エル者モ多カッタノデ」

「ははは……いやなに、妖気を出していないと、いろんな魔物に絡まれるからな」

「あんだけ駄々漏れだったなら、弱い子達はすぐに逃げるよね」

『そのおかげで楽に移動出来たでしょう』

 

 よく言うよ。いつ気付くのかを楽しんでいた癖に。

 

 その後もしばらくゴブリンとの会話を楽しんでいると、話の流れで村へお邪魔する事になり、泊めてももらえるようだ。

 

 道すがら話していると次第に彼等の言葉もクリアに聞こえるようになってきた。「魔力感知」での聞き取りに慣れてきたという事だろう。

 スキルの練習が重要だと改めて思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

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