心にデュエリスト魂を持って転スラ世界に・・・   作:風月八泉

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30話 交渉と別動隊

 

 

 

 

 

 

「――さてと、20万の軍勢を相手取るとなると、リザードマンとの同盟を前向きに検討したいところだが……」

「使者がアレだったよ?」

 

 もうアレと言って通じるガビルが皆の頭に過る。

 他の皆も頭が痛そうに苦笑いを浮かべている。

 

『リザードマンの現首領は大丈夫だと思いたいわね』

「確かにそうだな。リザードマン側に話が通じる奴と交渉したいところだが……」

 

 そうリムルと一緒に悩んでいると、蒼影が立ちあがり胸に手を当ててこちらを見る。

 

「リムル様、ウィン様。自分が交渉に向かいます。リザードマンの首領に直接話をつけてもよろしいですか?」

「できるのか?」

「はい」

 

【やだイケメン、なにこの自信】

【まぁ、能力的にも蒼影は適任?】

 

「よし、ではリザードマンと合流しオークを叩く。決戦はリザードマンの支配領域である湿地帯になるだろう。これはリザードマンとの共同戦線が前提条件だ。頼ん――」

「あ、ごめんね。別動隊は自分とライナ達で叩くよ。向かってる場所がリザードマン達の湿地帯なら合流までに罠で数を減らしておくし、蒼影との交渉には一緒に行く」

『アタシだけなら距離は関係なしに、空から飛ばしていけるしね』

『時間も短縮できるな』

『ボクは残った方が良さそうだね。流石に町が手薄になるのは避けたいし』

 

 自分達の提案に、リムルがしばらく考えている様子だ。

 

【いけるのか?】

【こういう所で活躍したくなるのは元男のさがだよ】

【今は女の子だろうが……まぁ、逃げるにしてもお前らなら大丈夫か……】

 

 朱菜が少しオロオロしながら、「危ないですよ」とか「一緒に町にいましょう」と引き留めにくる。ほかのリグルド達も心配そうに自分を見てくる。

 

「ん~、危なかったりしたらすぐに逃げるのが最優先だからな。それか守れないならダメだぞ。連絡は定期的に取るが条件だ」

「リムルが親戚のおじちゃん化してる」

『心配なんでしょう。アタシだって本陣で大人しく居て欲しいくらいよ。まぁ、無理でしょうけどね』

「しっかりお守りいたします」

「はぁ、頼んだぞソウエイ。お前ら、くれぐれも舐められるなよ。とくにウィンな」

「お任せを」

「えっ⁉ なんで自分なの⁉」

『リムルに次いで、見た目で舐められそうだからじゃない』

 

 ムスッと膨れていると、全員からの生暖かい視線が刺さる。

 朱菜や自分の実力を知らないゴブリナ達は凄く心配そうな視線を送ってくる。

 というか朱菜に関しては対峙した事があるんだから、実力は認めてくれても良いと思うんだけどな。

 

『才能や能力が高くても、可愛い妹分が最前線に立つのが心配なんでしょう』

 

 ボソッとライナの呟く声が聞こえた。

 

「え? 妹分ってなに?」

「……朱菜より立場が上か同じくらいで小さい女の子って居なかったですからね」

 

 紅丸が戸惑っている自分を面白そうにニヤニヤと見てくる。

 

「本当に気をつけてくださいねウィン様」

「大丈夫だよ、それにトレイニーさんにも少し手伝ってもらうつもりだしね」

「私ですか?」

『敵の位置把握は大事だからね~』

『オレはある程度広さや、燃え移らないもんが何も無い場所じゃねぇと、全力で魔法を放てねぇしよ』

 

 ポムポムと頭を撫でられながら、心配だと朱菜が終始引っ付いてくる。

 助けてほしいとヒータやアウスを見るけど、朱菜を恨めしそうに見るだけで、全然助けてくれる気配はない。

 

 

 

 ==なんとか朱菜やゴブリナ達を宥めて、蒼影とトレイニーさんを連れて外に出る。

 

 

 

「それじゃあ、トレイニーさん……リザードマンの首領が居る場所ってどこ?」

「そうですね、あちらの方に真っすぐ進んで湿地帯の洞窟が見えてくるので、そこに入れば会えるかと思いますよ」

『ソウエイはどうする? 影に入って一緒に行く?』

「いえ、自分は地上から影移動で行きます。地形を把握しながら行きたいので」

『それじゃあ、オレはウィンの護衛だな』

『しょうがないわね……空からの索敵と別動隊の様子はアタシが探ってくるわよ』

「それでは、何かあればコレを地や木に植えて頂ければ向かいますので」

 

  そう言ってトレイニーさんは葉っぱに包まれたタネを渡してくれる。

 

「それじゃあ飛ばして行くよ」

『ソウエイ、遅れずについて来いよ』

「御意」

 

 杖を取り出して皆が其々に杖に乗って一気に空へと飛び上がる。

 まだ夜だから、蒼影も影移動での行動がし易いらしく。かなり飛ばして飛んでいてもしっかりと付いて来ている。まぁ、多少は遅れているけれど、それは仕方ないだろう。

 

『ちょっと、ガビルってヤツの使者達を見つけたんだけどさ、変な仮面をつけた道化師と一緒にいるわよ? 誰よアイツ?』

 

 少し飛んでいると、ライナから「思念伝達」で連絡が来た。

 

【自分達があった時には居なかったよ?】

『流石に話し声は聞こえないけど、あんまり良い感じはしないわね。これ以上近付いちゃうと、あの変な道化師に気付かれちゃいそう』

【とりあえず、こっちはリザードマンの首領に合うのを急ぐよ】

『あいよ、了解だ』

 

 トレイニーさんに教えてもらった、場所を目指していたらすぐに大きな洞窟を発見できたので、そこで蒼影が来るのを待つ。

 

「きさま! 何者だ⁉」

『ありゃ、先に向こうさんから来たみたいだね』

「キミ達の首領に会わせてほしくってね」

『よろしく頼むよ』

「すこし、遅れました」

「いや、かなり早かったよ?」

 

 スッと影から蒼影が現れて、警備隊のリザードマンが口を開けながら驚いている。

 

「さっさと行け。ウィン様がお待ちだ」

 

 見張りをしていた別のリザードマンが慌てて洞窟の中へと駆け込んでいく。

 

「さ、行きましょうか」

『そうだな。待っててもしょうがねぇし』

「え? でも勝手に入っても良いのかな?」

「問題ないでしょう」

 

 静止させようとしてきたリザードマンを、ソウエイが魔素量を表に出して威嚇する。それを面白そうに見たヒータも続いて同じような感じで魔素を操り纏う。

 

『ちょっと、除け者にしないでよね』

「してない、勝手に皆が入って行っちゃっただけだから」

『もう……じゃあアタシ達も行くわよ』

 

 そう言ってライナが灯りを出して、前を歩く二人を追う。

 

「もう、みんな勝手に入っちゃうんだ?」

 

 トコトコとしょうがなく、見張り番をしていたリザードマンにお辞儀をして皆に続く。

 

 

   ★☆★☆   ★☆★☆

 

 

 

「首領……首領!」

「何事だ?」

「侵入者です! 鍾乳洞の入り口にて、首領に会わせろと……」

「……会おう、連れて参れ」

「えっ⁉」

「首領、危険では……」

「そなたも感じるか、この妖気……ただ者ではない」

 

 普段は足音なんて鳴らさない蒼影が、ワザとらしく足音を鳴らして首領が居るだろう人場へと向かって行く。

 

『しっかり訓練はされてるみてぇだな』

「そうですね。まぁこの程度で戦闘不能になられてはリムル様、ウィン様と同盟など意味をなさないでしょう」

「まぁまぁ、数は力でもあるから」

『ウィンの聞いた感じだと、首領は会ってくれるようね』

「警戒は増してるけどね。あ、そうだ蒼影」

「はい、なんでしょうか?」

「使者として、話し合いは蒼影が進めて。自分はリムルと「思念伝達」で大まかな話の内容を伝えていくから」

「……宜しいのですか?」

「うん、頑張ってね。それに小さい女の子じゃあ相手にも舐められちゃうでしょう」

『ウィンもヒータみたいにやれば良いじゃない』

『いや、止めた方が良いだろう。オレ達なら牽制で済むけどよ。ウィンが下手に妖気で威圧なんてしてみろよ。混乱しか起きねぇって』

「……そう、ですね」

 

 蒼影も自分が周りを威圧しようとしたらどうなるかを想像したらしく、冷や汗をかきながら頷いて、話し合いを進めてくれそうだ。

 

 ――けど、ガビルみたいなお調子者でもなく、しっかりと考えて動ける感じの首領さんで良かったよ。しっかり思慮深い感じだし話し合いは出来そうだ。

 

「失礼、今取り込んでおりましてな。おもてなしも出来ませぬ」

「気遣いは無用だ。俺は単なる使者……我が主達の言葉を伝えに来ただけなのでな」

 

 平静を保っているみたいだけど、首領さんは蒼影とヒータの妖気に押されて思わず立ち上がってしまっている。

 

「使者、とな」

「――用件を言おう。我が主達がお前達リザードマンとの同盟を望んでいる」

「同盟?」

「はて、そちらの勢力がいかようなものか、儂は知らんのだがね」

「我が主、リムル様、ウィン様はドライアドより直に要請を受け、オーク軍の討伐を確約されている」

「森の管理者が直接……っ⁉」

『嘘だってんなら、直に聞いてみるかよ?』

「ちなみに、樹妖精の話では、オーク軍を率いているのは豚頭帝です。この意味を踏まえて良く検討?」

 

 ヒータが話し始めてそれに、自分も乗る感じで話す。

 

「オークロード」

「ふんっ、リムルだと? ウィンだ? 聞いたこともない! どうせそいつもオークロードを恐れて我らに泣きついて来たのだろう? 素直に助けてくれと言えばいいもの――」

「やめろ」

「え?」

「今すぐ、口を塞ぐのだ」

「首領、そのような態度では舐められ――」

 

 文句を言ってきたリザードマンの首に糸が巻き付き、少し血が出ている。

 

「蒼影。ストップ」

「はっ」

 

「なっ……い、糸⁉」

「同族の非礼を詫びよう。離してやってもらえないかな、これは対等な申し出なのだろう?」

「蒼影、離してあげて」

「……ウィン様が言うのでしたら。……失礼、脅すつもりはなかったが、主を愚弄されるのは好まぬ」

 

 スッと指を動かすと、首の糸が解ける。

 

「ごめんなさい? でも、どうか受けて欲しいな、同盟の話」

 

 蒼影達よりもちょっと強めに魔素を纏えば良いかと、軽く考えて抑えている魔素を少しだけ緩める。

 

『あ、それダメだって!』

『あちゃ~、やっちゃったね』

「え?」

 

 気付いた時には、リザードマン達が腰を抜かして倒れている。

 首領は、一歩下がって膝をついている始末だ……。

 

 

 

 ――あれ~?? なにを間違ったんだろう……。

 

 

 

 

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