心にデュエリスト魂を持って転スラ世界に・・・   作:風月八泉

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32話 暗躍の影と首領の救出と水霊使いエリア

 

 

 

 

 

 

 とりあえず、相手の力量と自分の力加減を知りたいから黒い鎧のオークを残しつつ、他の奴等をヒータやライナが殲滅していく。

 最初の方はヒータと協力して水蒸気爆発させていたのだが、地形が様変わりしそうだからとライナに怒られた。

 

「ん~……、ちょっと、役不足過ぎる?」

「きさま! 我らを愚弄するか⁉」

「いやね……もうちょっと強いかと思ってた?」

「なにを! このっ……⁉ ちょこまかと鬱陶しい魔法だ!」

 

 足場の水を操りながら適度に攻撃しているだけで、黒い鎧のオークは近寄る事も自分に攻撃してくることも出来ないでいる。

 

「このっ⁉ くそぉおぉぉ!」

 

 黒い鎧のオークが強引に魔法攻撃を抜けて来ようとしているけど、それは悪手だ。

 

「はぁ……、水牢」

 

 高水圧の柱が地面から飛び出して牢獄を作り出していく。

 見た目はただの水柱だけど、下手に手を出せば怪我では済まない。

 

「こんなモノ――っ⁉」

 

 オーク達が水柱に武器をぶつけた瞬間に、武器が変な音をたてて削れていく。

 恐怖心はなくとも戸惑いはあるらしい……あるいは、恐怖心が薄れているだけで、そこまで完璧には消せていないのか……。豚頭帝には恐怖心が無いとして、それを奪う能力は中途半端な状態な可能性もある。

 

「ん~? 知性があるから近付かないだけかな?」

 

 武器の状態を見れば、水牢の水に触れればどうなるかは想像できるだろう。

 

「卑怯者め! 堂々と戦えないのか!」

 

「え~、数にモノを言わせて、同胞を捨て駒にしながら相手を倒してるくせに、そう言う事をキミ達が言うの? それに、オーガの里を滅ぼしたっていうけど……本当に自分達だけでやったのかな? ……傀儡やアンデットをキミ達が操れたとは思えないよ」

 

 紅丸達から聞いていた話では、確かにオーク達が同胞を食ったりしていたというけれど、それは別の個体が陰から手を貸していた可能性もある。

 鬼人化する前の紅丸や白老より強いかと聞かれると、かなりの差があると思う……、豚頭帝が異常に強いのかな? ユニーク個体って言ってたし。

 

 自分の言葉に思うことがあるのか、言葉に詰まっているオーク達が数多くいる。

 

「肯定?」

「黙れ、ここから出せっ‼」

 

 怒りで水牢の柱に思わず触れたオークの手が傷だらけになる。

 

『コイツらから情報は抜けそうにないわね。誰かに情報共有の秘術が掛けられてる』

『ならよ、その魔力ごと頂いちゃおうぜ。エリアの召喚には十分な魔素がありそうだしよ。手応えがなさ過ぎて飽きてきたぜ』

「なんだかんだ言いながら、エリアには会いたいんだ?」

『なっ! ちげぇって。仲間外れにされた後のエリアが面倒なだけだ⁉ 最後に召喚されたってだけで、グタグタと言ってきそうなのによ』

 

 ヒータが耳を真っ赤にしながら顔を背けて言う。

 

「なんだ、何をする気だキサマら⁉」

 

 足元の水面が荒れる様に蠢いていき、地面を削る様にして魔法陣が描かれていく。

 

 カードホルスターから{憑依装着ーエリア}のカードを取り出し、胸元に祈る様に掲げてる。水晶の様に作り出された珠にカードを捧げると、足元の魔法陣が青く光り出した。

 

 足元の魔法陣がオーク達から魔素を吸い出していく。

 

「慈悲にはいつくしみ深き愛で、無慈悲には冷酷なまでの制裁で返す強き心根の下に、あらゆる困難を貫き通す意志を胸に刻んで、共に進んで行こうよエリア‼」

 

 魔法陣から澄んだ青色の魔素が水晶に込められてカードと共にエリアの体を創り出していく。水が渦巻く球体が弾けて飛ぶと、その中からエリアが現れた。

 

 神秘的な登場をして、ゆっくりと地面に立った瞬間に――。

 

「ウィン、呼ぶのがおそ――うにゃ⁉」

 

 びちゃっと躓きこちらに向かって、派手に倒れた。

 

『……騒がしいのがまた増えたわね』

『あ~、このおっちょこちょいに絡まれる日々が始まるのか……フォローはアウスに任せっかな、ライナでも良いぞ』

 

 二人は呆れた表情でエリアの後頭部を見つめる。

 

「……大丈夫?」

『うぅ~、ウィンのあほ~、おバカ~』

 

 泣きつきながらも、エリアは縋りつく様に抱き込めてくる。

 

 よしよしとエリアの頭を撫でていると、すぐに機嫌が良くなっていく。

 自分の力も渡したから髪色が緑色へと戻って行く。

 

『それより、まだ戦闘は続いてるんだろ? こっちは片付いたんだ、手の少ない場所に加勢に行こうぜ。まだ暴れたりねぇよ』

『湿地帯まで戻ってきちゃったし、リムルが来るのを待つのもアリね』

「ん~、リムルに聞いてみようかな」

『リムルって……ダレ?』

「スライムさんだよ。つるつるぷにぷにして触り心地の良い」

『ふ~ん…………ウィン。変なのに絆されちゃダメだよ』

「ん? うん?」

 

 なんか一瞬だけ声のトーンが変わった気がしたが、ずっとエリアはニコニコ顔だし気のせいだろう。変に思ったらライナもヒータも言ってくれるしね。

 

 

【リムル~、こっちは終わったよ】

【そっちも早いな⁉ 紅丸達も強すぎるし……】

【そっちも?】

【あぁ、ちょっとな。どうやらガビルがやらかしたらしい、それにリザードマン達の本拠地にオーク達が来てるらしくってな。逃げてきた首領の娘さんを助けたんだ】

【なるほどね。じゃあ首領の所には?】

【ソウエイが向かってる。お前ら今どこに要るんだ?】

【数が数だったから。罠で数を減らしつつ、今は湿地帯に入った辺りで殲滅したよ】

【じゃあ、ウィン達は首領の救出をお願い出来るか、ソウエイ一人でも大丈夫だろうけど、念のためにな】

【了解、それが終わったら合流だね】

【あぁ、待ってるぜ】

 

 思念伝達の内容を掻い摘んでライナが話しながら、自分達も鍾乳洞へと向かうために飛び上がる。

 

『ちょっと悪いけど、アタシは森の方を見てくるわね。残党が居たら厄介だからね』

「気を付けてね」

『ヒータもライナについて行けば? ウィンの護衛は私だけでも十分だよ』

『おっちょこちょいのトラブルメーカーが何言ってやがる。お前だけじゃあ心配ごとが増すだけだからな、オレも行くぜ』

「一人で大丈夫?」

『見て回るだけだから大丈夫よ』

 

 そう言ってライナは森の方へと飛んでいった。

 

 

 

 

   ★☆★☆     ★☆★☆

 

 

 

 

「計画の方は、順調に運んどるようやなぁゲルミュッド様」

「うむ。オークロードの出現は予想外だが幸運だった。我が子が森の覇権を手に入れる日も近いだろう……! そうすれば、俺の野望も……」

 

 ウサギの様な頭巾にピエロの様な道化服、それにシルクハットの眼鏡をかけた男が玉の映像を見ながら物思いにふけっている。

 

「なかなか楽しそうな話をしていますね。わたくしの名はトレイニー、この森での悪巧みは見逃せません」

「こりゃヤバイでゲルミュッド様。ドライアドや」

「なんだと⁉」

「御名答。それで、何を企んでいるのか話して下さいませんか?」

「いやー、その辺は守秘義務ゆうか……」

 

 道化師らしく、笑って軽く受け答えをしている。

 

「そうですか。では、もう用はありません。森を乱してた罪であなた方を排除します。精霊召喚「風の乙女」大気圧縮断裂」

 

 トレイニーが道化師の腕を切り飛ばした。

 

『ふ~ん、やっぱり誰かしら見てると思ったら。先に戦ってるなんてね』

「あら、ライナ様」

 

「おい腕……」

「ちっ、増援かい。はよ逃げた方がええでゲルミュッド様。こりゃ……っ⁉」

『簡単に逃げられるとでも?』

「さぁ、断罪の時です。罪を悔いて祈りなさい」

「おお怖っ、まぁ後はもう成り行きを見守るだけやし。ここらにしときまひょか……分が悪すぎるわこんなん――」

「森を汚す者どもめ……⁉」

 

 煙で辺り一面を覆っていく道化師。

 

「ほなサイナラ」

 

 ブワッと煙が広がっていき、もう二人の姿はなくなっていた。

 

『逃げられたわね』

「……まさか逃げられるとは。状況は思わしくありませんね」

『ウィンやリムルがどこまで信じられるか……不安?』

「……正直に言ってしまうと……そうですね」

『なら、何もせずに見てると良いよ。ウィンもリムルも信頼にはキチンと答えてくるからね。それだけの強さはあるからさ』

「あなたは……」

『秘密♪』

 

 トレイニーの口元を指先で塞ぎながら、妖艶に微笑んで杖に座る。

 

『それじゃ、ウィンの所に行くから。じゃあね~♪』

 

 

 

 

   ★☆★☆

 

 

 

「綺麗な鍾乳洞だったのにな~」

『すぐに直せるでしょう。それよりもさっさと片付けよう』

『はぁ、洞窟内だとオレは魔法が使えないからな……よっと』

 

 ヒータは動きを最小限に、杖の先を敵に当てて小さな爆発だけさせて吹き飛ばす。

 エリアは周りの水を利用して、小さな水球を作り出して浮かせている。敵が現れれば水鉄砲の様に敵を貫いて倒している。

 自分は逃げてきたリザードマン達を守りながら倒されたり弱った敵を「コレクト」でカードに変化させている。

 

「ウィン様、先に着いていたのですか」

『ひぃ! なんか変なの出てきた⁉」

 

 影移動で蒼影が現れて、エリアがかなりビックリしていた。

 エリアの姿に驚き、蒼影が少し瞬きしている。

 

「うん、蒼影は先に首領の所に行ってあげて。自分達はリザードマン達を救出しながら向かうから。この子はエリア、新しい仲間だよ」

「そうですか……自分は蒼影です。リムル様とウィン様にお仕えしております。以後お見知りおきを」

『あ、お仲間さんなのね? ビックリしたよ~。私はエリアっていうの。よろしくね』

 

 ヒラヒラと手を振って、周りにいるオーク達を水鉄砲で撃ち抜いていく。

 エリアの能力に驚きながらも、蒼影はこっちを見てくる。

 

「で、では。先に首領の所に行っております」

「気を付けてね」

 

 短く返事だけ残して、影に消えていく。

 

『オラオラ、手加減してんのにその程度か!』

『ちょっと、どかどか五月蠅いよ⁉ もうちょっと華麗に倒せないの⁉』

『はん、オレより倒してる数が少ない癖に何言ってやがる』

『それは鍾乳洞で倒した数だけじゃないよね! 絶対に外で倒した数も入れてるでしょう、そういうズルはいけないと思うんだ!』

「ねぇ、自分も手伝う?」

『ウィンは手ぇだすな! 獲物を全部持ってかれちまうぜ』

『ウィンは守りと索敵を優先で良いでしょう。こんな暴れん坊に負けたくないもん』

「敵の数を減らすのは最優先だけど……リザードマン達を助ける事がメインだからね」

 

 と言っても、もう二人には聞こえていないようだ。

 

 保護しているリザードマン達が口をポカンと開けながら唖然としている。

 苦戦して、手も足も出なかったオークを軽々倒しているんだから、そりゃあそういう反応になるよね。しかもヒータに関しては全力じゃないし。

 

 

 蒼影の方も似た感じだったりして……。

 

 

 

 

 

 

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