心にデュエリスト魂を持って転スラ世界に・・・   作:風月八泉

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34話 豚頭帝の様子と儀水鏡

 

 

 

 

 

 

 

 

「くっ……ああそうだよ。それがどぉした⁉ 上位魔人をなめるなぁっ⁉」

 

 ゲルミュッドは怯みながらも声を張り上げ、先ほどガビルに放った魔法を紅丸達に向けて何発も繰り出した。

 ただ闇雲に放つ魔法で紅丸達が居た場所が煙で見えなくなってしまった。

 

「ふっ……」

「お前の方こそ、鬼人(俺達)をなめすぎだ」

 

 紅丸の動きが見えていなかったようで、ゲルミュッドの後ろから紅丸が刀を振り下ろし、彼の耳を切り裂いた。

 

「み……みみっ、耳がぁぁ‼」

「そんなもんじゃないぞ。親父は俺と妹を逃がすために死んだ、親父だけじゃない多くの仲間が……生きたまま食われた」

 

 怒りを込めた眼で地面に転がるゲルミュッドを見下ろして、一気に紅丸の体からどす黒い妖気があふれ出てくる。

 

「そんな程度の痛みじゃなかったはずだ」

 

 紅丸の気にゲルミュッドは全身がビクつき後ろへとズリズリ下がっていく。

 

「くっ、クソが!」

 

 下がった先には紫苑の脚があり、彼女にぶつかってしまう。

 ジッと無表情に紫苑と白老が見つめ、ニコっと笑みを浮かべる。

 

「こんな……こんなバカな! こ、この俺が、追い詰められて……⁉」

「ゲ……ゲルミュッド様……」

「もうよせ」

 

 ガビルがその様子に思わず立ち上がるが、ランガが静止する。

 

「あの男は貴様を殺そうとしたのだ。貴様の命を救ったのはリムル様と、そこのまとわり付いている貴様の仲間達だ」

「お、お前達……」

 

 ランガに言われて初めて自分の周りを見回して気付いたようだ、彼の周りに守る様に体を張り付かせているリザードマン達に。

 

 

「主よ、来たかランガ。あれに手は出すなよ」

「はッ」

 

 紅丸達に追い詰められて必死に逃げながら、何とか生きているゲルミュッド。胸ポケットから小さな手鏡みたいなものが落ちて地面に転がる。

 

【豚頭帝は佇んでいるだけなんだね】

【あぁ、見るからに鈍そうだしな。ゲルミュッドのピンチに無反応だぜ】

【むしろ傍に控えてるオークの方が怖い?】

【あの鋭い目つきのオークだろう、あっちの方が強そうだよな】

 

〈解。数多の種族の力を得た結果、豚頭帝の意識はその力に浸食され混濁しています〉

 

【ゲルミュッドに操られているのなら気の毒だが、これ以上森を食い荒らされるわけにはいかないし、トレイニーさんとの約束もある】

【紅丸達の決着は待たない感じ?】

【あぁ、あいつは俺がやる】

【りょうか――ん? ……あれ?】

【どうした?】

 

 リムルが決着を付けようと豚頭帝の方へと歩んでいた足を止めて、自分を見てくる。

 

「あの鏡……なんで見覚えがあるんだろう?」

 

 ゲルミュッドが落とした鏡が、いつの間にか大きくなっている。

 その形が、妙に覚えがある気がするモノなのだが……どこで見たかが思い出せない。右に六個、左に六個の丸い球が着いていて装飾全体が金色。丸の鏡に雨の水滴みたい……前世で見たことがあるものだとすると……遊戯王カードの絵ってことになる。

 

「うおぉおぉっ! デスマーチダンスぅぅ‼」

 

 魔法を一気に打ち込んで視界をくらませた内に逃げようとしたゲルミュッドの動きが急に止まり、空へと逃げようにも地面に張り付けられるように飛び上がれないようだ。

 

「なんだ……か、体が……っ」

「逃がすわけがないだろう。貴様には我らが失った同胞と同じ数だけ報いをうけてもらう……楽に、死ねると思うな」

 

 ゲルミュッドが慌てて豚頭帝の方を見て叫ぶ。

 

「お、俺を助けろ豚頭帝! いや……ゲルド‼」

 

 名を呼ばれて豚頭帝が動き出す。

 豚頭帝の足元にころがっていた鏡が蹴られてゲルミュッドの方へと飛ばされる。

 

「そうだ、恩を返せ‼ 行き倒れのお前に飯をやったのは、この俺だ‼」

「オレは、ゲルミュッド様の願いを、叶えル」

「こいつを助けるつもりなら相手になるぞ、聞いた限りじゃ黒幕はこいつらしいが、俺たちの里を直接滅ぼしたのは貴様らオーク共だ。やるとなれば、手心を加えるつもりはない」

 

 なんであの鏡……嫌な感じがするんだろう。あんな鏡のイラストあったかな~。でも印象に残ってないんだよね。

 ああいう感じのイラストだとすると……魔法カードだからか? それだと霊使いや憑依装着を使ってた自分との相性は悪い……。

 ――ん? 鏡? 鏡のイラストが良く描かれているのは大体が台座だったり、儀式系のカードも多く―― 儀式か⁉ 

 

「まずい⁉ ダメ、その鏡の近くで――」

「あ⁉ どうしたウィン!」

 

 豚頭帝がゲルミュッドの頭を刎ね飛ばす。

 倒れた彼をゲルドと呼ばれた豚頭帝が食べ始めた。

 

「……おいおい」

 

 ゲルミュッドが食われた事に皆が引いているが自分はそれどころじゃない。

 思い出さなければならない、あの鏡が儀式系のカードだとしたら何が出てくるのか。

 

【うわぁ、食ってる……】

『おいおい、どうなってんだよ⁉』

『アレは見ていいモノじゃ…………ウィンどうしたの?』

 

《確認しました。個体名ゲルドが魔王種への進化を開始します》

 

【魔王種? 大賢者、今の声はお前じゃないよな?】

〈解。「世界の言葉」です。豚頭帝がゲルミュッドの要望に応えるべく進化を望んだと思われます。――――警告。〉

 

 足元に煙が蔓延しだした。

 それにリムルが気付いて、慌てた様子で声を上げる。

 

「離れろ! ヤツから溢れる妖気に触るな! おい、ウィンなにしてんだ⁉」

 

《確認しました。生け贄の数値が目標額に到達――》

 

 煙の妖気にオーク達の死体が触れて「腐食」させていく。

 

「と、溶けたっす! オークの死体が溶けたっすよ‼」

 

【触れたモノを「腐食」させる妖気……これがヤツの能力か】

【リムル、それもだけど……かなり不味いかも】

【さっきからどうしたんだお前】

【ゲルミュッドの足元に鏡があったでしょう……アレが、マズイ代物だったっぽい】

【はぁ? ただの鏡――】

【あれ、見たことあったんだよ。前世ではカードのイラストだったけど……】

【おいおい、まさか……】

 

 豚頭帝が纏う妖気が晴れていくと同時に、世界の言葉が聞こえる。

 

《……成功しました。個体名ゲルドは、豚頭魔王(オーク・ディザスター)へと、進化完了しました》

 

《続いて、儀水鏡に満たされた生け贄の目標値により、グリム・リチュアを召喚いたします。……召喚に成功しました。続いてグリム・リチュアから要請、同種族を召喚いたします》

 

「俺の名はゲルド。オーク・ディザスターゲルドと呼ぶがいい‼」

「……! 我らが父王よ」

「王よ」

「魔王ゲルド様」

 

 オーク達が膝を付いてゲルドを崇め、首を垂れる。

 そんなゲルドの隣に、リザードマンに似た魔物が立っている。

 

「あれは、リザードマンか?」

 

 リムルがリチュアの方を指差してガビルに聞く。

 

「あのようなリザードマンはおりませぬ! なにものであるか⁉」

「アレはリザードマンじゃなくて「リチュア」だよ」

「りちゅあ?」

「リチュアの儀水鏡だった? それじゃあまだ――」

 

 そう優しくはないようだ、召喚された二体が抱える様にして別の鏡を其々が抱えている。禍々しく盾の様に見えるしっかりした作りのモノ。蜘蛛の脚の様に細く伸びた禍々しい鏡がもう一枚。

 

《グリム・リチュアが己を生け贄に、{リチュアの写魂鏡}を使用。……成功しました。イビリチュア・ネーレイマナスを召喚します。ネーレイマナスの能力により、イビリチュア・ジールギガスを召喚します。続いて、イビリチュア・ソウルオーガを召喚します》

 

「よりにもよって、こんな時に出て来なくても良くない?」

『面倒事は纏めてくるものよ』

『あの内の一体はオレの獲物って事でいいよな』

『凄く面倒だから、一体はあやつ――』

 

 いつの間にか皆が集まってくれていたみたいだ。

 

「エリア……それは多分無理、ネーレイマナスが居る時点で、こっちの能力は無効化されると思うよ」

『うわぁ、面倒じゃない』

 

 他の二体は良いとして、ネーレイマナスが乗っているサメみたいなのは、なんで空を泳いでるのか聞きたいんだけどね。

 

「なんでサメが空飛んでんだよ! つかあいつ等はなにさ⁉ サメなら海を泳げ!」

 

 リムルのツッコミは確かにと思う。

 ネーレイマナスがちょっとショックを受けている感じだが、それ以上は無反応だ。

 

「あっちは自分達が受け持つから、そっちの豚頭魔王は頼むよリムル。絶対に、邪魔はさせないからね」

「任せて良いんだな?」

「アレ等の対処は、同じ立場の自分達が一番でしょ?」

 

「しかし、あんな化け物をウィン様達だけでとは……」

「紅丸達はしっかりオーク達と決着を付けなくちゃでしょう」

『そうそう、ああいう訳の分かんない手合いはオレ達に任せとけよ』

『しっかり向き合って戦わないと、後悔するでしょう。横槍なんか入れさせないから、安心して戦ってなさい』

『私達はそんな軟じゃないから大丈夫。それに、弱くも無いしね』

 

 紅丸達やゴブタ達が加勢しようかと言ってくるけれど、下手に周りをウロウロされると全力で戦えないのでお断りさせてもらった。

 それに鬼人達にはしっかり、自分達の事に集中してほしい。

 

「ライナ! 分断をよろしくね」

 

 そう言いながら、カードホルスターから光の護封剣を取り出してライナに投げる。

 

『アタシも戦いたいんだけど、まぁしょうがないわね』

 

 ヒータの赤い妖気が一気に増して火柱のように立ち上がる。

 それに続いて、エリアの妖気も青い水が立ち上るようにあふれ出す。

 自分も続いて、久々に抑えていた魔素を解放する。

 

 ランガの嵐みたいに風が吹き荒れ始めた。ただ、黒ではなく人々を魅了するような木漏れ日みたいに光る緑色の風だけどね。

 

 手始めに、思いっきり豚頭魔王とイビリチュア達を分断する為に一撃入れる。

 そこにすかさずライナが護封剣によって、豚頭魔王とイビリチュア達とを分ける結界の壁を張って分ける。

 

「……綺麗、ですね」

 

 紫苑が思わず呟いた。

 

「ほほ、荒れていた心が正される感じですな……」

「これ程とは……思っていなかった」

「それじゃあ、あっちはウィン達に任せようぜ……俺達は、目の前のアレが相手だ」

 

 豚頭魔王がジッとこっちを見てくる。

 

「いいな、アレが食いたい」

「そうさせると思うか? ウィンの方には行けないよ。俺達が居るからな」

「お前の相手は俺達だ、シオン!」

「承知しています!」

「おい?」

「ここは俺たちにお任せを、どうやら舐めてかかれる相手じゃなさそうです」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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