『少しは大人びたみたいだのう、使い魔も……だがその程度――』
ランリュウが相手の物言いにムカついたようで、口から空気弾を一発放つ。
ネーレイマナスが慌てた様子で避けた。
『なんだ、今の威力は!』
彼女が乗っているサメも回避した空気弾を横目に見て、驚いた様子だ。
「ここからはお互いに気が抜けない?」
『この、小娘風情が!』
サメが水弾を放てばランリュウが相殺するように空気弾を放つ。魔女が水魔法で攻撃してくれば自分も負けじと風魔法で相殺させる。
『さっきまではこんな威力はなかった、その姿で何故……魔法陣か!』
「それだけじゃないんだけどね」
ライナに渡した{憑依解放}の効果も、攻撃時に威力が上がる代物だ。
「……いくよ」
『ふん、返り討ちにしてくれる』
頭上を取っている自分の方が有利だと、見下ろしながら言う彼女の場所まで杖を使わず、ただ地面を蹴ったようにして飛び上がる。
『なっ! 速い⁉』
サメの方も反応出来ず、一発のケリを入れて相手の体制を崩す。
そのまま魔女へ真空刃を作って飛ばす。
『グァっ! これしき』
ギリギリで反応して防御壁を展開させて、杖を払う様にして真空刃を砕く。
「こっちばっかり見ていて良いの?」
『なに! あの龍か⁉』
魔女が咄嗟に後ろを振り向くが、気付くのが遅い。
ランリュウが尻尾の方に力を溜めて上から下へ振り下ろす。魔女はすぐにその場からなんとかサメと分離して飛び退くが、サメの方は避けられない。
地面に叩きつけられて、丘の上に上げられた魚の様に跳ねている。
「やっぱりサメは海に居るべき?」
『ギャゥ』
ランリュウも頷いて自分の言葉に賛同してくれる。
足場を失って魔女も転がる様に地面へと落ちていき、自分達を静かに地へと降りる。
『この、よくも……』
「諦めて帰ってくれると嬉しいんだけど」
『ここまでやられて、おめおめと帰れる訳がなかろうが!』
力任せに魔術を発動させ、津波の様に水が襲い掛かってくる。
足元が水場だから威力も増しているのだろう。
「ランリュウはサメを見ててね」
『ギャ!』
「大丈夫、あっちは自分が倒すから」
『全員、我が水に押し潰されてしまえ!』
高笑いしながら勝ったように笑う魔女に、少しだけ息を吐く。
このまま暴れられるとリムルと豚頭魔王の戦に水を差してしまう。それに紅丸達も巻き込む形になるので放置も出来そうにはない。
「……空白の一閃。眼前の壁を切り裂いて」
邪魔な障害は全部切り伏せてしまえば良いだけだ。
白老がいつも見せてくれる、無駄のない一閃の抜刀を見よう見まねで杖に圧縮した風を纏わせ、静かに溜まった臨界値の風を相手に向かって解き放つ。
『あはは……は? いったい、なにをしたというの?』
津波が横一線に切れたと同時に、風の壁にあたって更に飛散する。
サメのヤツがランリュウに抑えられながら、最後の力を振り絞って尻尾の先で魔女を空へと打ち上げて救うが……サメは自分が放った一撃から全体を真っ二つに斬られる。
それと同じくらいだろうか、ヒータの方から熱風が襲ってくる。
『デカイ体でも頑丈だろうと、貫通攻撃は耐えられなかったみたいだなぁ』
ヒータと稲荷火に火炎弾と炎の渦で丸焦げにされたジールギガスが、空へと吹き飛んでいってパリんと弾け、砕ける様に消えていった。
そしてもう一体、エリアが作ったであろう水で出来た無数のヤリ、それに貫かれたソウルオーガを雷の様な音と共にジゴバイトの強烈な拳がソウルオーガの腹に突き刺さる。その衝撃で地面が少しクレーターの様に凹んだ。
『ふぅ~、疲れた~』
『……グルゥ』
少し呆れた様子でエリアの事を見ながらジゴバイトは肩を落としている。きっとエリアのフォローをしながら、必死に戦ってたんだろう。
『こんな、こんなはずではなかったのに……』
向こうの魔女さんが自分の事を恨みがましく睨んでくる。
「元々、ここに来るべきじゃあなかったんだよ。帰りなさい自分の世界に」
魔素で自分の分身体を作り出してカードフォルスターからトラップカードを1枚引き抜く、そのカートは{風霊術ー「雅」}。
風属性を生け贄に捧げる事で、相手フィールド上に存在するカード1枚を選択し、持ち主のデッキの一番下に戻す。そんなカードだ。
このカードなら彼女を元の場所に戻せるだろう。
分身一体をカードに取り込ませて、風霊術を発動させる。
『これで、このままで――』
トラップカードが発動して彼女に風が取り付く様にして身体を黒い霧へと変えて、鏡の方へと霧が吸い込まれる様に消えていった。
『さてと……こういう危ないモノはさっさと壊すに限るね』
『跡形もなく消し炭にすんなら任せろよ』
『もう、空中でやってよ。火事が起きないように私が見ててあげるから』
「むしろ火事が起きそうで怖い?」
『ウィン! ちょっと酷くない!』
戦闘に参加できなかった腹いせか、ライナがあたり散らかす様に鏡を粉々にしてヒータの方へと盛っていき、焼却処分の如くお炊き上げを開始した。
==光の護封剣の結界も、良い感じで切れてリムル達の方へと戻る。
戻ってみると何時の間にか、リムルと豚頭魔王の一騎討ちという形になっていた。
「あれ? どうなってるの?」
『なんだ、皆で戦ってるんじゃないのかよ』
「えぇ、リムル様が任せろと仰ったので……」
紫苑は心配そうにしながら、シズさんの仮面を胸に抱きしめてリムルの方を見ている。
「それにしても、ウィン様も成長されましたな」
「え、そうかな」
白老が嬉しそうに笑いながら、優しい微笑みを向けてくる。
「最後の一閃、アレは良いモノでした。いつか手合わせをお願いしたいくらいに」
「あはは……それは、勘弁かも?」
剣先に黒い炎を纏わせながら戦っているリムルに、なんかちょっとだけ違和感を感じると思ったら、戦ってるのは大賢者さんの方なのかな。
『へぇ、なかなかやるわね』
ライナもその事には気付いているようで、リムルというよりも大賢者さんの戦い方を見ながら楽しんでいるようだ。
「豚頭魔王の腕が再生しない……?」
紅丸が不思議そうに豚頭魔王の斬られた腕を見て呟いた。
「切り口に黒炎を燻らせ、ヤツの再生を阻んでおるのでしょう。血止めにもなってしまうため致命傷には至りませんが」
白老がすぐに情報の説明をしてくれる。
そうしている間に、豚頭魔王がゲルミュッドの使っていた術を大規模に乱射しだした。そのせいでこっちにまで流れ弾が飛んできている。
「触れるな! 腐食効果があるぞ!」
紅丸が周りの仲間に注意するよう叫ぶ。
そんな面倒な術になってるのか、あの術は。
『水壁!』
『光壁!』
エリアとライナが壁を張って防ぐ。
「反射風」
『浄化炎!』
自分とヒータで上から来る球を弾き返して空中でヒータが相手の術を浄化する。
こっちは全員無事だが、動けない状態の所を豚頭魔王が無理やり自身が放った術の中を進んでリムルを捉えた。
「ようやく捕らえたゾ」
さっきまでなかったはずの腕が再生している。
「リムル様!」
「う、腕が再生してるっす!」
紫苑が思わず叫び、ゴブタが再生した腕を見て驚いている。
「彼奴め炎ごと自らの腕を喰ろうたか」
「……悪食が」
向こうのオーク達の様子が少しおかしい。
「王よ、王よ。ハラが減った」
「早くそいつを「餓餓者」で……!」
殆どゾンビと変わらない様子で、口々に早く食べてくれとせがんでいる。
「残念だったナ、お前はここでオレに喰われるのダ。飢餓者で「腐食」させたものはそのまま我らの糧となる。お前は腐り溶けて死ヌ」
〈……否〉
リムルの体が次第に溶けていく。
〈炎化爆獄陣〉
「な……にッ⁉」
「やったっす!」
「これでリムル様の勝ちですね!」
「…………どうだろう?」
「ウィン様?」
他のモノ達は勝ったと思っているようだけど、確かさっきリムルの黒い炎を食べている豚頭魔王が、極小数の可能性で耐性を手にしたとしたら、まだ決着は付かない。
《――確認しました。豚頭魔王ゲルドは、炎熱攻撃耐性を獲得》
少なくとも魔王と付くレベルの相手が、そう簡単にやられはしないという事だな。
世界の言葉に皆が声を失った。
そんな中で白老と紅丸は自分の事を驚いた目で見ている。
『嫌な予感って当たるものね』
「そうだね……でも、リムルならなんとかするんじやないかな」
『なんだよ、結構ヤバそうに見えるぜ?』
『そう言うわりには助けに行かないの?』
『はっ! こいつは一騎討ちだぜ。外野が手を出したらシラケるだろうが』
フレアサークルが解けると、リムルがドロッとした状態で豚頭魔王に纏わりついている。周りの皆が相手の腐食でやられたのかと思っているようだけど、そうじゃない。
「リムル様!」
「お待ちくだされ。あれは腐り溶かされたのではありますまい、よくごらんなされ」
助けに入ろうとした紅丸と紫苑を白老が止める。
「グク……き、貴様……っ!」
「言ってなかったっけ? 俺スライムなんだよ。喰うのはお前の専売特許じゃないってことだ」
〈「超速再生」にて腐食部を修復。敵個体「自己再生」にて捕食部を回復。先に「捕食」できる確率は――〉
イビリチュア・ネーレイマナスですが。本当は半人半漁で融合状態な感じだそうです。
今回はパドルカヤックみたいに乗っていって、パージできる感じと想像して頂ければと思います。
ご指摘頂いて初めて気付きました。今までずっと、リチュア・エリアルが乗ってる感じを想像していたんですけどね……調べてみたら……半人半漁とΣ( ̄□ ̄|||)
ご指摘頂いた方、ありがとうございます。_(._.)_