心にデュエリスト魂を持って転スラ世界に・・・   作:風月八泉

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4話 ゴブリン村と狼達の侵略者

 

 

 

 

 

 案内されたゴブリン達の村は確かに人が住む感じの建設物がある……三匹の子豚って話で出て来たような藁やら木の枝や蔦で作られたモノだ。ちょっとした嵐でも吹けばすぐに吹っ飛んでいきそうな作りをしている。

 狼さんが一息で吹き飛ばした藁の家の話は、確かに実際で見てみると簡単に吹き飛ばせるモノだと理解出来てしまう。

 

「ボロボロだな……ウィン、下手に風霊使いの力を使うなよ」

「使わないよ……今は地霊の姿だもん」

 

 きっとリムルも同じことを思ったのか、冗談交じりのジト目で見ながら言う。

 

『なんの話をしてるの?』

「ちょっとした昔話を思い出しただけ」

「三匹の子豚はいないけどな」

『豚? オークってことかな?』

 

 そうか、この世界だとオークってことになるのな。いや、でも昔話でも二足歩行で両手に工具をもって家を作ってたんだから、奴らはオークと言うこともありうる。

 

「あの30匹のゴブリンって戦える子達だったんだね」

「だろうな、パッと見でみると雄しか居なかったし」

『隠れてる子達は子供か、戦いが苦手な子なのね。雌もチラホラと居るね』

 

 バンダナを巻いたリーダーらしきゴブリンに連れられて、村の中央付近まで案内される。少しだけ周りの家と違い、装飾が少し施された家へと案内された。

 雌のゴブリンが藁で作った敷物の上へと座らせてくれて、水の入った木のコップを用意までしてくれている。

 

「お待たせいたしました。お客人。大したおもてなしも出来ませんで申し訳ない」

 

 バンダナを巻いていたゴブリンが杖を持った、よぼよぼお爺ちゃんのゴブリンを連れ、目の前の地べたに座って丁重に挨拶をしてくれる。

 

「私はこの村で村長をさせて頂いております」

「あぁ、いやいやお気遣いなく」

「お招きいただきありがとう御座います」

 

 うぅ、こういう感じの社交的な挨拶って何を言って良いのか全然分かんないよ。

 ライナも社交的な雰囲気が苦手なのか実体化はせずに静かに後ろで漂っている。

 リムルは慣れているのか、堂々としながら出された水をスライムボディに半分くらい取り込んでゴクゴクと飲み干している。

 前世での社会経験の差ってこういう時に出るんだな。

 

「それで? 何か用があるから自分達を招待してくれたんですよね?」

 

 リムルがそういうとバンダナのゴブリンは片膝を付いて、お爺ちゃんゴブリンは両手を地面につけて頭をさげた。

 

「貴方様の秘めたるお力、息子から聞き及んでおります。我らの願い、何とぞ聞き届けては貰えませんでしょうか」

 

 リムルがチラッとこっちを見てくる。

 こういうのはリムルに任せた方が良さそうだし、こっちとしてはどっちでも良いので少し目を合わせて小さく頷きながら瞼を閉じる。

 

「内容によるな、言ってみろ」

「ははっ。一月ほど前、この地を護る竜の神が突如として消えてしまわれました」

 

 どことなく心当たりがありそうな話だ。

 自分達もヴェルドラさんにあって洞窟から外を目指して此処へ来たくらいだな。

 

「その為、縄張りを求める近隣の魔物達がこの地に目を付けたのです」

 

「(その割には平和な感じだったけど)」

『そりゃあリムルにウィンがあれだけの魔素を垂れ流しながら歩いてたんだから、ゴブリンやら野ウサギ程度の弱い魔物達が近付く訳ないじゃない』

 

 それもそうか……なんか自分の手柄みたいにライナは言うけど、ただ面白がって黙っていただけで、自分やリムルが恥ずかしがったり戸惑う姿が見たかっただけだろうに。

 

「中でも牙狼族なる魔物は強力で、一匹に対し我ら10匹で挑んでも苦戦する有り様でして……」

「そいつらの数は?」

「群れで200匹程になります」

 

 ありゃま、村を見た感じ殆どは戦えないゴブリン、まともに戦えるのは自分達の所に来た30匹だろうな。半数は村に残っていたと考えると60匹程度が戦力として使える感じか。

 

「比べて我らの内で戦える者は雌を含めて60匹程度です……」

 

 大体ドンピシャだけど、臨時的に戦える戦力が15って所だろうね。

 武器を持てても戦力として数えるとは思えないし……、多くて40匹だろうな。

 

【絶望的な戦力差だな】

【牙狼族の数って正しいのかな?】

『さぁ、この村にネームドでも居れば正確な数だと言えるけどね』

 

 密かにリムルとやり取りしながら、ゴブリン達の話を聞く。

 

「牙狼族が200匹程っていうのは確かなのか? どうやって調べた?」

「それは確実です」

 

 バンダナのゴブリンが真っすぐにリムルを見ながら発言する。

 

「……リグルが牙狼族との死闘を経て、手に入れた情報ですから」

「リグル?」

「……誰?」

「リグルは私の兄です。さる魔人より名を授かった村一番の戦士でした」

『名付け……ねぇ』

 

 言い方が過去形? ということはもしかして。

 バンダナのゴブリンも思いつめた感じで、視線を下げて声のトーンも下がっている。

 

「兄がいたから、我らはまだ生きているのです」

「……もういないか? リグルは」

「…………自慢の息子でした。弱き者が散るのが宿命だとしても……息子の誇りにかけて我らは生き残らねばなりません」

『この世界は弱肉強食、だからね』

「皆に次を託したって事だもんね」

 

 リムルはジッと何かを考えながら、ゴブリン達を見つめる。

 

「村長、一つ確認したい。俺がこの村を助けるなら、その見返りはなんだ?」

 

 まだ月日はそんなに一緒に過ごした訳じゃあないけれど、リムルが私利私欲でそんな発言をしたとは思わない。

 

「お前達は俺達に何を差し出せる?」

 

 本当は気まぐれで助けても良いのかもしれないけど、ゴブリンも牙狼族も自分達の生存や繁栄を掛けにして戦いをしている。

 ぽっと出の自分達には立場が無い。体裁を整える必要があるし、命のやり取りに参加するって覚悟も必要だろう。

 

「はぁ、自分は楽しく遊んでいられる方が良いのに」

『しょうがないでしょう。此処はそういう世界よ』

 

 まぁかのカードゲームの世界線でも命の掛けた勝負事を良くしていたけど。

 

【……懐かしいな、何のかんの言って俺は頼まれごとに弱かったんだよ】

「流石ですね。頼りにしてます先輩」

【やめて、なんか背筋が反応しちゃうだろ!】

『スライムだから背筋はないじゃない』

 

 ウオォォ――――ン

 

 急に狼の遠吠えが聞こえて、ゴブリン達が次々に怯えだした。

 

「牙狼族の遠吠えだ!」

「ち、近いぞ!」

「いよいよ攻めにくるのか⁉」

「これやばいって!」

「おしまいだー。オレたちみんな食われちゃうんだっ」

「逃げようよ!」

「どこへ⁉ いくところなんてないよ」

「ケガ人や女子供だっているんだぞ!」

 

 ありゃりゃ、すっかり混乱状態だ。

 雌のゴブリン達は子供達を必死になってあやしている。

 

「お前たち、落ち着きなさ――」

 

「怯える必要はない」

「これから倒す相手だからね」

『ここで知り合った相手を見殺しっていうのは目覚めが悪いもんね』

 

 ゴブリン達がこちらを見て落ち着きを取り戻していく。

 

「で、では……」

「ああ、お前たちのその願い。暴風竜ヴェルドラに代わり、このリムル=テンペスト」

「ウィン=テンペストと並びにライナ=テンペストが聞き届ける」

 

 ゴブリン達が大きく目を見開きながら、しばらく沈黙していた。

 そして全員が一斉に両膝を付いて頭を下げた。

 

「我らに守護をお与えください。さすれば今日より我らは貴方様方の忠実なるシモベでございます!」

 

 

 

 

 

   ――――――――☆★☆★――――――――

 

 

 

 

 少しでも戦力を増やしたいってことで、先の戦闘で傷ついたゴブリン達が居る場所へと案内して貰い、リムルが治療を施すと言い出した。

 

「……皆、牙狼族にやられた者です。中にはもう長くない者もおります」

 

 結構な重症具合だな、磨り潰した薬草を葉っぱなどでくっつけているし、包帯なんかは多分だが古着を裂いて作った代用品といったところだろう。

 

「ふむ……」

 

 何を思ったか、リムルが急にゴブリンの一匹を捕食し始めた。

 

「リムル様⁉」

「リムル⁉ 何やってんの⁉」

『え、食べちゃうの⁉』

 

 なんか取り込んだゴブリンをもごもごと咀嚼している感じで数秒。

 

「い、一体何を……っ⁉」

「ごめん、ちょっと分かんない」

『様子見だね』

 

 何かし終えたのか、先ほど食べられたゴブリンをリムルが吐き出す。

 

「こ、これは……、傷が塞がっている⁉」

【よしよし、上手くいったな】

 

「嘘ぉ~、なにしたの?」

『ん~~、もしかして……洞窟内で育ってたヒポクテ草かも』

「洞窟内に生えてたヤツ?」

『そう、あれって確か回復薬になるんだってさ。「大賢者」が言ってる』

 

 ちょっとリムルの「大賢者」さんと仲良くなってない?

 

「流石はリムル様、蘇生の力をお持ちとは……」

 

 知らない者からすれば、そう見えちゃうんだね。

 上手く回復出来たと証明できた事で、リムルは遠慮なしに寝込んでいるゴブリン達を次々に取り込んで一気に治していく。

 

「さて、リムルが活躍してる事だし。こっちもやりますか」

 

 このゴブリン村は森の中にただ建造物を作っただけで、外部からの侵入者を拒むモノが何一つとしてないのだ。

 罠なんて作れる知識はないだろうから、仕方ないと言えばそれまでだけどね。

 

『お~い、全体を見てきたよ~』

「それじゃあ補佐をお願いして良い?」

『ふふん♪ アタシに任せなさいな』

 

 大地に魔素を流し込んで、村を囲む様に凝縮して圧着させた柵を作り出す。

 

「おぉ⁉ これは……」

 

 リムルが作ったばかりの柵に近付いて、軽く叩くとコンコンと鉄みたいな音がする。

 

「ウィン、やりすぎじゃないか?」

「え? そこまで力は込めてないよ」

『本来なら、此処から魔法陣で色々とやれるもんね』

 

 本来なら罠カードでも柵に設置して「悪夢の鉄檻」を作り出す様にしたかったのに……その案をリムルに話したら「やり過ぎは絶対にダメ」とのことで禁止されてしまった。

 

「まぁ良いか、ある程度は自衛を促しつつ自ら戦う様に指導すれば……仕上げに「粘糸」で動きを止めちゃえば万全だろう」

「リムル……それもやり過ぎでは?」

「……全然違うぞ」

『まぁまぁ、迎え撃つ準備は整ったって事でいいじゃない」

「それよりも、襲ってくる狼なんだけどさ。大丈夫そうならライナと自分が多めに倒しちゃっても良いかな」

「なんだ? カード化して貯金を溜めたいのか?」

『牙狼族なら、ちょっとはカード生成のポイントになるかもだしね」

「はぁ、作戦は俺に従ってもらうからな。それと危ないと思ったらすぐに逃げるんだぞ」

「分かってるよ、大丈夫だって。その辺は弁えてるし。いざとなったらライナが引っ張ってでも連れて帰りそうだしね」

『当たり前でしょう、女の子の柔肌に傷なんて良くないんだから』

「あのね、だから心は男――」

「頼むぞライナ。ウィンはなんか危なっかしいからな」

『しっかり躾けとくから、ライナお姉様に任せなさいな』

「なんでライナがお姉さんなの⁉」

 

 なんか子供みたいな見た目のせいなのか、リムルもライナも過保護になりつつある気がする。そもそも体が少女なだけで、心はまだまだ男なんだからな。

 

 

 

 

 

 

 

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