リザードマン達が来たことで、其々に名付けをしていたらリムルが何時の間にか萎れていた。しかも、ガビルがハイテンションで喜んでいる。
「紫苑……なにがあったの?」
「それが、リムル様が名付けを終わった後にガビルに対して名付けを行ったみたいなんですよ。リムル様は名付けのという感じで行った訳ではなさそうでしたが……」
「え? ガビルって名前は元からあるよね?」
『上書きされたみたいよ』
「ひゃう! ライナ! どこから⁉」
『ちょっと面白そうな気配がしてね』
いつも唐突に現れないでほしい。揶揄う様に背後から声を掛けらえるから、体が思わずビクッと反応して、変な声まで出てしまった。
リザードマン達がかなり焦った様子だが、自分からしたらいつもの事なので紫苑にお願いして、スリープモードになったリムルを休ませるようにと運ばせる。
「ガビル達はどうしようかな……リムルには起きた時に話すとして。鍾乳洞みたいな洞窟生活だったのなら、封印の洞窟を活用しようかな」
「封印の洞窟とは……もしや暴風竜様が封印されていたという⁉」
『たしかに、あそこも管理しておかないとモンスターの巣窟になっちゃうし。良いんじゃないかしら。エリアも連れて行って水場や洞窟内に安全地帯を作れば、住めるでしょう』
ガビル達は決して弱い訳じゃないから、洞窟内の魔物が増えすぎないように駆除もしてくれるだろう。
「そのような所に住まわせていただけるのですね!」
「やりましたねガビル様!」
「ついでに、ヒポクテ草の管理や生産も任せるよ。アレは回復薬になる貴重な薬草だから、しっかりと管理してよね」
「重要な仕事まで⁉」
『しっかりと働きなさいよ?』
「はっ! リムル様やウィン様のご恩に報いるために、全力で責任ある仕事にあたりますぞ。手抜きなどもってのほかですな! やるぞお前達⁉」
「はい、ガビル様!!」
「必ずや良い成果をお届けしてみせましょう!」
そう騒ぎ出しながら、お祭り騒ぎの如くガビルコールで盛り上がり始めてしまった。
「その、すみません……ウチの兄上が……」
「ソーカは悪くないよ?」
『そうね、アレは生粋のお調子者なんでしょう』
恥ずかしそうにしながら、顔を覆っている。元親衛隊長でありガビルの妹さん。
彼女はソーカと名付けた。
「ソーカは……蒼影と一緒の方が良いよね?」
何処に配属しようかと考えた瞬間に、彼女は確か蒼影に惚れ込んで来たんだと思い、ちょっと揶揄う様にして、ソーカに聞く。
「えっ! あ、その……」
案の定、顔を真っ赤にしてモジモジとしだしてしまった。
『こらウィン。良い顔で微笑みすぎ』
「そういうライナだって新しいオモチャを見つけた時みたいにイヤらしく微笑んでる?」
まぁ親衛隊メンバーは、蒼影の「隠密」隊に組み込んだ方が良いだろう。
どの道、隠密部隊の増員は急務だったし、彼女達なら俊敏性もあるだろう。
【蒼影、少し来てもらって良いかな? 食堂に居るんだけど】
【御意】
3秒もせずに、影移動で蒼影が現れた。
「お話とは?」
「うん、彼女達を蒼影に任せようと思ってね」
『隠密の任も、アナタ一人じゃあ限界があるでしょう。影分身があるとしてもね』
「なるほど……よろしいのですか?」
「うん、リムルには起きた時に自分から説明をする。彼女達は蒼影が鍛えてあげて、しっかりと面倒を見てあげるんだよ?」
「御意」
「えっと、あの、よ、よろしくお願いします」
ソーカに続いて、親衛隊メンバーの他4人も一斉に頭を下げて挨拶をする。
「今日は名付けをしたばかりだから、力が馴染むまではゆっくり休んでね。多分、明日には変化があるだろうから、その辺は蒼影に任せていいかな?」
「はい、経験積みですからお任せを」
『力の使い方や、体の変化もあるだろうからね。その辺もしっかり確認しながら、鍛えてあげてね。特にソーカなんかはやる気十分だから。ビシバシ鍛えてあげると良いわよ』
「なんなら、個人指導での二人だけで色々と教えてあげても良い?」
「なっ‼ なにを仰ってるんですか⁉」
「そう、ですか……わかりました、明日にでも様子を見てから決めようと思います」
「そ、ソウエイ様⁉」
「がんばって?」
『んふふ、期待してるわよ』
親衛隊メンバーの4人も良い笑顔で応援している。
==リムルが目を覚ましてから、リザードマン達の事を説明してあげる。
ガビルとその周りのメンバーは、あんまり姿は変わらなかったが、蜥蜴人から龍人族というドラゴニュートへと進化を遂げている。翼も生えてきたらしく、空も飛べるようになっている。ちなみに翼の収納は可能だという。
「なるほど……確かに、洞窟の管理とヒポクテ草は必要だな」
「ガビル達なら鍾乳洞に暮らしていた経験もあるし、下手に家を用意するよりも良いでしょう。一石二鳥?」
『それに、何かある度に騒がれると近所が寝不足になっちゃうからね』
「……それも、あるな。徳の方が多いから、このまま封印の洞窟で良いだろうな。必要なモノはカイジン達に作って貰うとして……そういや、親衛隊メンバーの方は?」
聞かれると思って用意しておいた資料を渡す。
「ソウエイの所に行ったのか」
『ソーカはソウエイに助けられてから、惚れ込んでいるみたいだからね。それなら、好きになった者の近くに居た方が良いでしょう』
「ソウエイに任せたのですが……」
「アイツに、ですか~」
なんか朱菜と紫苑が不安げな声をあげながら、空を見上げている。
「ソーカさん、ソウエイに好かれないと良いですね」
「あの鬼畜に惚れるとは……」
【なに、あの爽やかクールなイケメンには何かあるの⁉】
【知らない? でも付き合いの長い朱菜と紫苑があの反応は気になる】
『気になるなら、見に行ってみれば良いんじゃない?』
==確かにと、リムルと同時に手を叩いて、二人でどうなったかを見に行く事にした。
「預けた新人くん達はどんな具合だ?」
「リムル様」
森の少し奥地で修行していたソーカ達の方を見ながら聞く。
「悪くはないです。特にソーカは隠密に向いている」
朱菜達の反応を見て気になっていたけれど、いたって普通っぽい。
「ウィン様とライナ様に言われた通り、かなり筋は良いですね」
いや、薦めた理由はそういう事ではないんだけれど……まぁ、ソーカが隠密に向いているのなら、それは良い事だろう。
蒼影に預けた元親衛隊メンバーは、ガビル達とは異なって姿が人間の様になっている。角や翼はガビル同様に収納が可能なようで、隠す事もできる。
少しスレンダーな体付きだが、小柄で引き締まった体の黒髪ショートな美少女になっている。足や腰はクノイチらしく色っぽい忍び衣装を着ている。
衣装を作っているとあるドワーフ兄弟に、ちょっと忍び装束のクノイチ版について口を滑らせてしまい……何を思ったか、全力で作り出したのだ。
ちなみに、口を滑らせた原因はライナのせいだったりする。
まぁ動きやすい服装で、角や翼の収納も考えれば、たしかにクノイチ衣装はベストな選択だったのだが、何故かソーカやライナが自分にも着させようとして来た時は、全力で逃げ出した記憶が今も蘇ってくる。
★☆★☆ ★☆★☆
仕事から逃げ出したり、一休みしている時に偶然見つけたスナックがある。
というか、此処は本来なら別の子がお店を開く予定だった記憶があるのだが、どういうことだろう。
なんとそのお店を切り盛りしているのが……。
「トレイニーさん、リムルいる?」
「えぇ、そこに」
バーカウンターに項垂れながら、リムルが脱力している。
「なにしてるの?」
「いやなぁ~、オレは皆にもっと自由に生きてほしいって話をしてたんだよ。お前もそうだし、オレもそうだしさ。なのに二言目には「リムル様の為に、ウィン様の為に」」
「まぁ、確かにそうだね」
「あらあら、贅沢な悩みですねぇ」
トレイニーさんは冷たいジュースを静かに差し出してくれる。
「うふふ。皆さんきっとご恩返しがしたいんですよ。リムル様やウィン様に……道を示して照らしてくれるから、居場所を創ってくれたから――それは、無邪気に不器用に」
「……居場所、ねぇ……」
「好き勝手にやってたら、いつの間にか集まって来た感じもあるけどね」
【俺はアイツらに居場所で居続けられるだろか……】
【俺達、ね】
【そう、だな】
「……で? トレイニーさんはここで何を?」
「森の管理は良いんですか?」
自分とリムルが聞くと、軽く笑って返すだけで返答はなかった。
「はい、ウィン様はミルクお代わりですね。リムル様はぶどうジュースお代わりですね。ポテチもありますよ」
これは絶対に答えてくれそうにないなと、リムルと視線を合わせながらトレイニーさんの作り出すペースに巻き込まれていく。
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