心にデュエリスト魂を持って転スラ世界に・・・   作:風月八泉

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49話 夏の虫と甘未の夢

 

 

 

 

 

 朝の空気に何となくリムルに連れ出されて、子供の頃にやらされた体操で身体をほぐす。音楽が無いから、周りから見るとシュールな動きに見える。

 

「なんで……朝から」

「なに、お前って子供の頃にやらなかったのか?」

「好き好んで朝から体操なんてしたくない……お小遣いやら、お菓子やら飲み物が貰えるから頑張って行ってただけ?」

「現金なヤツだな」

 

 伸びをしたり、手を大きく広げて動かしたりしていると、いつの間にかガビル達が混ざっていて、踊り出している。

 

「朝の踊りは清々しいですな!」

「いや、おどりではないんだが……お前、いつ来たの?」

『さっきね。これって何かの儀式?』

「儀式じゃないよ。……体を動かしてるだけ?」

「健康に良いんだぞ」

 

 ライナも混ざって、見よう見まねで動いているが、踊っている感じになっている。

 

「このガビル、お呼びとあらば即参上! これは何という舞いですかな?」

「よんでねぇよ、暑苦しい。だから踊りじゃないって」

『主様、舞いをするならお呼びください! 一緒にやりましょうよ』

『こら抜け駆けは許さないですわよハレ!』

『……そういうニニも抜け駆け?』

「いや、好き好んで朝から動きたくはない? これはリムルが無理やりね――」

 

 ガビルは扇子を開いて踊り、フゥリも両手に扇子を広げて、そよ風を周りに送りながら舞う。ハレとニニはお互いにじゃれつきながら、ゆっくりとした動きの演舞だ。

 

「何故か何やら一曲浮かびました!」

 

 ガビルの側近が歌い出して、パンパン手を叩きながら踊る。

 

「というか、いつの間にか全員が参加してない?」

『楽しそうな事をするなら混ぜてほしいな~』

『エリアの言う通りだぜ、朝っぱらから何やってんだ?』

『朝は弱いんだけど……ボクだけ仲間外れっていうのは、なんかヤダ』

 

 紫苑やリグルドに蒼影までも居る。

 

 ゴブタは鍬を持ち上げて踊り、紅丸は祭りで踊ったような感じの動きだ。

 

「なに歌ってんだ? 何で集まるんだ、皆、バラバラだし」

「先ずは動きから教えた方がいいかも?」

「そうだな、おいちょっと止めろ! 教えるから! まず、腕を伸ばして――――」

 

「後に語り継がれる「リムル様音頭」の完成である?」

「やめろウィン! 変な事を――」

「なるほど! リムル様が考えた音頭なのですね!」

 

 リグルドが即座に反応をして大声で言う。

 ちょっとふざけて言っただけなのに、リムルが始めたという自分から言葉があった事から、全員納得した様子で「リムル様音頭」という言葉で統一されていく。

 

「……覚えておけよ、ウィンさんよぉ」

「……ちょっと無理かも? 自分の記憶から抹消されていると思う?」

 

 リムルがジッと睨んでくるので、目を逸らしながら答える。

 

「ほぉ、安心してくれ。俺がしっかりと覚えておくから」

「あぅ……」

 

 

 

    ★☆★☆  ★☆★☆

 

 

 

 そんな夏の朝から引っ張り出された事で、休日だというのに早朝から目が覚めてしまったので、リムルとダラダラしながら過ごしている。

 

 休みで家に居ても暇なので、リムルと見回りがてら食堂に顔を出す。

 

「あ、リムル様、ウィン様じゃないっすか~」

 

 ゴブタが夏の暑さで机に突っ伏してダウンしていたが、自分達が来たので体を起こして融けた様に顔を向けてくる。

 

「差し入れ?」

「まぁ麦湯だけどな」

「こんなに暑いのにっすか?」

「冷やしてあるよ」

「おぉ! 流石はウィン様っすね」

 

 ビールを飲むオジサンの様に「生き返る~」と言いながら一気飲みしていく。

 

「リムルは子供の頃って夏はなにしてたの?」

「夏ね~、夏といえば子供の頃はよく虫取りしたなぁ」

「子供のスライムが虫取りするんスか? どんな虫っス?」

 

 ゴブタに聞かれて、リムルは木簡を取り出してカブトムシの絵を描いてみせる。

 

「これこれ、こういう奴が好きだったんだ」

「は、はぁ。コイツならこの近くにもいるッスけど……」

「おっマジ⁉」

「ちょうどいいから虫取り、行く?」

「え……あ、ウィン様もっすか」

 

 ゴブタの眉を真ん中に寄せてリムルの方を見て、自分の方をあり得ないというような感じで、交互に見てくる。

 ゴブタの反応が良く分からないので、自分とリムルはお互いに目を合わせて小首を傾げながらも、ゴブタの案内と、一緒に虫取りに行く仲間を募集して回る。

 

 

 

 ==集まったのはゴブタと仲の良い警備隊メンバーとライナくらいだった。

 

 

 

 仕事で行けない者が殆どで、虫はちょっと嫌だという子達もいた。

 

 ちなみに、殆ど警備隊メンバーなのは白老が進めたからだ。なんでも「良い訓練になる」と言って送り出してくれたらしい。

 

 ゴブリン達は網や棒を握りしめて、緊張感のある表情でリムルと自分の後ろをついて来ている。ガサッと茂みなると、全身をビクつかせて警戒を強める怖がりようだ。

 

『カブトムシねぇ~、捕まえられるかしら?』

「いいねぇ、この雰囲気、夏だねぇ」

「……そう、かな?」

 

 なんかリムルは解るのだが、後ろのゴブリン達は幽霊屋敷に出向いて、幽霊さんでも捕まえるミッションでも背負ったかの様に怖がっているんだけれどね。

 

「自分、あんまり気乗りしないっㇲ」

「なにお前、クワガタ派?」

「そう言うことじゃ、ないっㇲよ。ほんとう――」

「ん? なにかくる?」

 

 変な風の動きを感じで振り向くと、後ろから何か巨大な塊が突っ込んできた。

 ぶぅん――と羽音と鳴らしながら、黒い塊が猛スピードで動いている。

 

「あら、いたじゃない」

「アレがカブト?」

「デッカイな⁉」

「追うの?」

「あぁ、もちろん!」

 

 ゴブタは風圧で飛ばされて木に頭から激突して、他の警備隊メンバーは転がる様にして、茂みへと隠れた。

 

 自分とリムルは巨大カブトを追いかけて、ライナにはゴブタ達の護衛を頼む。

 

 少し開けた場所に出ると、切り株の上に向かって巨大カブトが攻撃を仕掛けている。

 角の先を切り株にぶつけている様に見えるが、何かガキンッという金属音にも似た音が鳴り響く。

 

「誰かと争ってるのか?」

「切り株の上に、何か居るかも」

 

 巨大カブトのせいで風が乱れてよく分からないが、魔力感知で見れば、小さな反応が二つほどある。

 

「大きい方には悪いが――」

「さっきから羽音が五月蠅い――」

 

 リムルが粘糸鋼糸で少し胴と羽を巻き取ったところに合わせて、風の塊をぶつけて遠くへと吹き飛ばしてやる。

 

 切り株の上にはハチの魔物が弱って倒れていて、それを守る様にボロボロの甲殻ではあるが、カブトムシとクワガタを足して二で割った感じの魔物が居た。

 小さいとは思うが、子供くらいのサイズ感なので、前世の記憶からしたら十分に大きいレベルだ……まぁ、大人の熊ぐらいあった巨大カブトムシに比べると小さいけど。

 

「あの子を守ってたみたいだね」

「あ~、お前ら大丈夫か?」

 

 未だに警戒を解かずに、三本の角を此方に向けながら、ゆっくり頷いて答える。

 

「とりあえず、こいつを使えよ」

 

 リムルがフルポーションの詰まったスライムゼリーを渡す。

 

 二匹の魔物は、よく分からない様子でチラチラとこっちを見てくる。

 使い方が分からないのだと思い、風で少し浮かせ、頭上で割る様にしてかけてあげる。フルポーションが体に掛かって驚いていたが、すぐに傷が治っていくことに気がついて、大人しくその場に留まっている。

 

【ねぇ、どうしたの?】

【襲われてたみたいだな】

 

 スキルの思念伝達で話しかけると、物凄く驚いた様子で此方を見てくる。

 

【何度も驚かせてごめんね?】

【状況から見るに、お前がその子を守ってたんだろう】

 

 リムルがそう言うと、三本角がコクと首を縦に振って答える。

 ハチが一匹で居るはずもないし、仲間は全滅したのか、逸れたのかは分からないが、このままにしておくことも出来ない。

 

【良かったら自分達の町にくる?】

【あぁ、それが良いかもな。帰る場所も行くところもないならウチに来いよ。お前らの住処ぐらいなら用意してやれるぜ】

【キミ達を守ってあげるかわりにさ、ハチさんには少しだけ蜂蜜を分けてほしいなぁ。あぁ無理のない範囲で良いからさ】

【お前なぁ……だけどまぁ、見返りは少しの蜂蜜ってのはアリだな】

 

 三本角のカブトムシさんが、ハチさんの方を見ると、ハチさんは頷いて答える。

 

【あ~、お前らに名付けをしても良いかな?】

【なんて呼べば良いか分からないしね】

 

 二匹の魔物が物凄く驚いたのか、焦った様子で「良いのですか⁉」的な反応をしている。何度もこっちを見て「え、本当に⁉」「良いの⁉ 自分達に名前を与えても⁉」という感じで動いている。

 

 数分くらいたってから、落ち着いて自分達の前で止まり、お願いしますという感じで羽を軽くパタパタさせて、名付けを待っている。

 なんか瞳がキラキラして見つめてくる様子なので、適当な名前はダメだろうと思い、しっかり考える事にした。

 

 ハチさんは多分、女王蜂っぽいので女の子の名前が良いだろう。

 

「それじゃあ、自分がハチさんの方を付けるね」

「あぁ、女王蜂っぽいしな。俺はこっちだな。お前達もそれで良いか?」

 

 コクコクと頷いて、身をゆだねるように自分達を見てくる。

 

「それじゃあ、キミは“アピト”ね」

「お前は今日から“ゼギオン”だ。よろしく頼むぜ」

 

 名付けをすると、少し魔素が体から抜けた感覚がある。

 

「それじゃあ、町まで案内するね」

「ゼギオン、ゲットだぜ」

「間違ってないけど……良いのかなぁ」

「帰ったらカイジンに頼んで二人の住処を作ってもらおうな~」

「アピトは花が沢山咲くような場所が良いよね?」

 

 自分達は帰路につきながら、途中でライナとゴブタ達にアピトとゼギオンを紹介しつつ、警備隊のメンバーなら良さそうな場所はないかと聞く。

 

「花が多く咲く場所っㇲか?」

「あるにはありますけど……ちょっと手入れが必要ですね」

「その辺は大丈夫。俺達も手伝うから」

「アピトには今後、蜂蜜をしっかり作ってもらいたいからね! 手抜きはしない」

「なんか、いつになくウィン様がやる気っスね」

「蜂蜜は甘くて美味しいからなぁ」

『甘くて美味しい……へぇ、良い仲間が増えたわね。これから宜しくねアピトちゃん。なにか不満があれば言って頂戴ね』

 

 ライナが一瞬だけ人が変わったように見えたが、気のせいだろう。

 アピトの警戒を解く為か、少女の微笑みで優しい光で包みながらアピトに近付く。

 

「女の子は、甘味の事になると人が変わるな」

 

 リムルが引き攣った笑みを浮かべながら、ライナを見ている。

 

 

 町に帰ってからは速攻でライナと朱菜や御巫メンバーが全力で花壇を作り、アピト達を迎え入れてくれた。

 

 アウスやエリアもアピトが加わってから、積極的に花畑の様子を見に行っている気がするが…………きっと、気のせいだろう。

 

 

 

 主にゴブリナ達も毎日手入れをしてくれている……念入りに。

 

 

 

 

「リムル……蜂蜜の管理は、しっかりしようね」

 

「あぁ、そうだな……下手をすると暴動が起きかねん」

 

 

 アピトにも無理をせず、生産体制がしっかりと整うまでは、ゆっくりで良いから町に慣れてくれと、言っておいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の解放テーマ、ワルプルギス終わりまで

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