心にデュエリスト魂を持って転スラ世界に・・・   作:風月八泉

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52話 町の名とお土産

 

 

 

 

 

 

 

「願ってもない話だなぁ」

「本来なら、数十年……あるいはそれ以上に魔物の町が人間や亜人に受け入れられるには、時間が掛かると思ってた?」

『まぁドワルゴンの王様が特殊ってケースもあるわよ』

「お前らな、本人を前にして言う事か?」

 

 目の前で酒を飲みながら溜息をもらすガゼル王。

 

「でだ、お前達の国の名はなんというのだ?」

 

 聞き耳を立てていたカイジンやリグルド達も動きが止まる。

 紅丸達も同様に「そういえば」という感じの表情で視線が上の方を見て泳いでる。

 リムルが視線で「どうする?」と送ってくるが、自分もライナも首を横に振って答える、それに続いて紅丸やカイジン、リグルド達も同様だった。

 

「いや……まだ国という段階でもなかったからな」

「ジュラの森大同盟の盟主だけどね」

『国王ってワケじゃあないものね』

 

 町というか、皆の住む場所を一生懸命に造っている最中でもあるから、先の事と後回しだった事の一つでもあるね。

 

「リムル様、ウィン様を王と認めぬ者がいたならば、このシオンが……」

 

 大太刀を手に持って紫苑が鞘から少しだけ抜く。

 

「こらこらこら! しまいなさい⁉」

「すみません」

 

 リムルに怒られて、紫苑がしゅんとして黙る。

 

「力ある者に従うのは魔物の本能だが、少なくとも俺たちは、それだけで配下になったわけじゃないしな」

「おい、あんまり俺たちを持ち上げるんじゃない」

「あれ? 自分も⁉」

「シレっと遠くに行こうとするな! ウィンもだろうが!」

「それなら、ここには森の管理者だってい――」

「いいと思いますよ、リムル陛下、ウィン陛下」

 

 にっこりと花咲くような笑顔で、爆弾発言をしてくるトレイニーさん。

 

【あの社長……、なんとかしてリムル!】

【ここぞとばかりに、的確な一撃を入れてくれるね……社長っ⁉】

 

「じゃあがんば――」

「だから、お前は絶対に逃がさねぇし。一蓮托生だっていってんだろうが!」

 

 逃げようとしたが、リムルに廻り込まれて逃がしてもらえないようだ。

 

「ここの王は貴様達以外に、おらんようだな。あきらめろ」

 

 ぽんぽんとガゼル王に頭を撫でられて、もう逃げ場というモノも奪われてしまった。

 

「という事でだ、おいウィンは何か案とかない?」

「ん~、じゃあ……」

 

 そう言われて、自分はリムルを眺めながら考える。

 

「あ、待て! やっぱり俺が考え――」

 

 なにか悟ったようだけれど、もう遅いんだよねぇ。

 止まるつもりはないし、思いついてしまったのだから諦めてほしい。

 

「ジュラの森とリムル=テンペストから取って、ジュラ・テンペスト連邦国。ちなみに中央都市として、この町の名前は「リムル」でどうかなぁ?」

 

 ニヤっと口角が思わず上がり、リムルにしてやったりという笑みを向ける。

 

「お前っ⁉」

「ジュラ・テンペスト連邦国」

 

 ガゼル王が自分の付けた名を噛み締めるように言う。

 

「おぉ! ジュラ・テンペスト連邦国ですか⁉」

 

 紅丸が立ち上がって、感動に震えている。

 

「さすがウィン様です。この町の名まで素敵です!」

 

 紫苑もかなり気に入った様子で、目を輝かせながらリムルと自分を見てくる。

 

「それ以外にはありません! この町の名はリムルと致しましょう‼」

 

 リグルドも立ち上がり、持っている酒を高々と持ち上げて叫ぶ。

 

「えぇ⁉」

 

 戸惑い、皆が立ち上がって絶賛しているので口を出そうにも出来ないでいる。

 

「ちょっと、それは流石に恥ずかし――」

「中央都市リムル、良い響きです」

「それ以外にありませんね」

「そうだな、我等の町に相応しい名だ」

 

 おろおろとしている姿は何とも可愛らしい。

 

『ウィンって偶にえげつないわよね』

「自分は一生懸命に考えただけ?」

「くぅ、お前ぇ~。本当に覚えてろよぉ~」

 

 顔を真っ赤にしながら、自分の事をジト目で見てくるが、考えろと言ったのはリムルなので自分は悪くない。

 知らぬ顔をして、リンゴジュースをゆっくり飲みながらリムルを見ない様に顔を背けて、聞こえていないようなアピールをする。

 

「決まりのようだな。とりあえず、今日は宴会だ! 明日に正式な手続きといこう」

『ガゼル王……この町の料理が早く食べたいだけじゃないわよね?』

 

 ライナの言葉に、ガゼル王が少しだけ視線を逸らせる。

 

『それにしても、こんな美味しい物は初めて食べましたよ。ウィンの作った料理はないのですか? ウィンの手作り料理も食べてみたいのですが……』

 

 レイが色々な料理を大皿に取り分けて、ぱく付きながら聞いてきた。

 

「手料理はないけど、ここにある大体のモノは自分が造ってほしいって頼んだものかな」

『ふむ、ではこんど手料理を食べさせてください!』

『こらレイ! 一番最初にウィンの手料理を食べるのはアタシよ!』

「いや、なんで自分が作ることが前提で話が進もうとしてるの⁉」

 

 良く分からない事で、レイとライナのキャットファイトが勃発している。

 

 

 

 

  ==何だかんだで、ドワーフ達との宴会は朝方近くまで続いた。

 

 

 

 ――そんな翌日。

 

「え⁉ 俺たちが災禍級⁉」

「あ~、やっぱり脅威レベルは高め?」

 

 昨日の話で気になっていたので、ガゼル王の側近ぽい人達にちょっと聞いてみたのだ、そしたら案の定というか……、結構に危険視されていたらしい。

 

「魔物が町を造るなんて前代未聞だからな」

 

 黒い鎧を着ていた、大きくガタイが良い側近が答えてくれた。

 

「ドワルゴンとの同盟を蹴っていたら、討伐対象?」

「あぁ、その可能性は十分にあったよ」

 

 魔法使いのおばあちゃんも笑いながら言う。

 

「その区分、ざっくりしすぎじゃないか? 三段階しかないんじゃ同じ階級でもピンキリだろ」

『たしかにそうね』

 

 リムルの言ったことに、ライナも頷く。

 

「正確にはもう一段階、上にあるんですがね。“天災級(カタストロフィ)”と呼ばれる階級です」

「天災級?」

「文字通りの天災です。怒らせたのなら、世界の崩壊を覚悟すべきでしょう」

「うへぇぇ」

『そのカタストロフィ級の奴って実際に居たりするのかしら?』

 

 ライナの疑問に、その危険度を教えてくれた人が頷く。

 

「いますとも。例えば、暴風竜ヴェルドラ」

 

【……どうしよう、一気に怖くなくなっちゃった】

【安心しろウィン……俺も同じだから】

 

「それに一部の魔王も該当しますね」

「へぇ……」

「……一部?」

 

 彼の言い方からすると、魔王と呼ばれる人達の強さはバラバラという事だろう。

 

「まぁ、あまり現実的ではない階級だから、省略されることも多いのです。普通に生きていれば会うこともないでしょう」

「そう願いたいものだな」

「いや~、無理だと思う? 魔物が町を造ってる時点で、魔王さん達にバレたら、興味の対象になるんじゃないかな?」

 

 自分がそう言うと、周りの全員が静まり返った。

 

 

 

   ★☆★☆   ★☆★☆

 

 

 

「では、これよりドワルゴンとジュラ・テンペスト連邦国における協定の証として、両国の代表による調印を行います」

 

 ドワルゴンの方は魔女っぽかったおばあちゃんが、こちらはシュナが間に立つ様にして、魔法陣の描かれた机の紙を確認していく。

 

 自分とリムルは、正装という事でリムルはスーツを着て。自分は少しのオシャレとしてドレスを着ながらリムルの横に立つ。

 後ろには紅丸とリグルドが立っている。

 ガゼル王の方も、後ろに側近の二人が並んで立っている。

 

 魔法陣の描かれた机に羽ペンがあり、それでお互いの書類に名前を記入していく。

 

【俺とウィンの名前、これで合ってる?】

〈解。あっています〉

 

 

 この盟約は魔法により保証され、世に公開される。

 なぜ『ジュラ・テンペスト連邦国』という名前にしたかは、蜥蜴人族や樹人族など支配地域を持つ種族も加わるので「連邦」なのだ。

 

 

 リムルが記入し終えると、机に描かれた魔法陣が光って空高く浮かんでいって、各地へと光の玉が飛び散っていく。

 

 

 

 

 自分達の国の名が、初めて世に知られる瞬間だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の解放テーマ、ワルプルギス終わりまで

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