心にデュエリスト魂を持って転スラ世界に・・・   作:風月八泉

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53話 意外なお土産と来訪者達

 

 

 

 

 

 

 

 勢いで付けた中央都市リムルという名前に、リムルが恥ずかしいから別の名前にしたいという会議が始まったが、皆の答えはリムルで一致という結果に終わっている。

 

「おいウィン……マジで覚えてろよ。次はお前の名前を広める様な場所に名前を付けてやるからなっ! くそぉ~~、なんで俺はあの時にウィンに話を振ったんだ」

 

 スライムボディで畳をコロコロと転がりながら、自分の周りで騒ぎまくっている。

 

「もう決まった事? なかった事には出来ない」

 

 今日も麦茶が美味しいなぁ。

 ガゼル王が帰って数日、忙しい日常が続き一休みという感じでリムルの愚痴を聞きながら、縁側で楽しんでいる。

 

「来てやったぞ。リムル、ウィンよ」

「……来るの早い?」

「こんどはどうしたんだ?」

 

 ガゼル王が来たという事で、カイジンが町の案内をかって出たようで隣に立っている。

 

 

「お前達に土産を持ってきた」

 

 ガゼル王が後ろに控えていた側近二人の男に合図を出すと、人が入っていそうな袋を目の前に下ろし、すぐに頭の部分の布をとる。

 

「えぇ!」

「ベスターじゃねぇか」

「……土産?」

 

 ガゼル王からお土産というから期待していたのに、出されたのは人だったし。

 自分達を陥れようとしたベスターとかいう学者さんだ。

 どうやって運ばれてきたのか、ベスターはすっかり目を回しながら泡を口から出している。ペガサスナイツの面々が居る事から、簀巻きにされてモノの様に運ばれてきたんだろうけどね。

 

 驚いているリムルとカイジンの二人に、お土産がベスターでちょっとショックを受けている自分の温度差が凄い。ガゼル王はまったく気にする素振りもなく、話を続ける。

 

「有能なコイツを遊ばせておくのは勿体ないのでな。とはいえ、俺に仕えるのを許す訳にもいかん。好きにつかえ」

「王よ! それではベスター殿の知識が我らに流出する事になりますぞ」

「流出していった本人がいまさら何を言う」

 

 そう考えると、自分達がスカウトした人材って結構な重要ポジションだったね。

 色々とやらかしている覚えもあるので、ガゼル王から思わず視線を逸らしてしまう。カイジンもガゼル王に言われれてしまって、ただ怯むしかない。

 

「その為の盟約よ。お前達のいるこの地を、まだ見ぬ技術の最先端にしてみせよ!」

 

 少し覇気を含んだ声に、周りの者達が少しだけ身を固くし、ガゼル王に言われた事をしっかりと噛みしめているようだった。

 

 その声で起きたのか、ベスターが目を覚ました。

 

「ベスターよ、ここで思う存分研究に励むがよい」

「ははぁ! 王よ、今度こそ……今度こそ期待に応えて御覧に入れます」

 

 前に会った時とは違い、何があったのか……自分には良く分からないが、カイジンが前に言っていたように、昔の真面目で一生懸命なベスターという感じに戻ったのかな。

 高慢ちきだったベスターしか知らない自分とリムルは、今のベスターを見ているとちょっとだけ混乱してしまう。

 

「リムル殿、ウィン殿、カイジン殿……申し訳なかった」

 

 自分達の方へと正座しながら、ゆっくりと腰を曲げて額を地面にくっつけて謝罪の意を心から伝えてきている。

 というか、あの時には自分は被害を被ってはいないのだが……主にリムルだしね、水を掛けられたり、罵られたのは。

 どうしたもんかと、自分では判断が付かないので、こういう時はリムルに丸投げだ。

 

「許されるなら、ここで働かせてもらえないだろうか――」

 

 自分とリムルは終始驚いてばかりで、口が少しだけ開いてポカンとしていた。

 

「優秀な研究者が増えて助かるってもんです。リムルの旦那、ウィンの姐さん。何かあったら俺が責任をとります。ここは俺を信じて、コイツを許してやってください」

「……カイジン殿」

 

 ベスターは目の端に涙の大粒を溜めながら、カイジンの方を見ていた。

 

「カイジンがそれで良いなら、俺に文句はないよ」

「自分も特に……被害があったのはリムルとカイジンだしね」

「なら、よろしくなベスター」

「ん、頑張って?」

 

 そういうと、ベスターは再び頭を此方に下げる。

 

「ははっ、精一杯に勤めさせていただきます」

 

 その様子を終わりまで眺めていたガゼル王が静かに頷く。

 

「では、さらばだ!」

 

 ガゼル王は来た道を返っていく。

 側近たちもそれに続いて、ペガサスに跨ってドワルゴンへと帰還していった。

 

『あの王様、ウィンにお土産の事を言われると思って逃げたわね』

「そうなの……というか、ライナも居たなら挨拶くらいしていったら良いのに」

 

 ひょこっと家の奥に隠れていたライナが顔を出して言う。

 

『用事があったのはリムルとウィンにでしょう。今日は色々と忙しかったの、帰って来たのはさっきよ、さっき』

 

 ドワーフ達の王国、ドワルゴンと繋がりを得て今のジュラ・テンペスト連邦国である、テンペストの首都、リムルは毎日千客万来だったりする。

 

 多くは友好的な魔物やドワーフ達で、自分やリムルへの挨拶や町の見学が目的だ。あるいは、庇護を求めて来訪なんて事もある。

 

 まぁ、それだけならまだ楽なのだが……。

 

 昔の盗賊だか山賊っぽい魔物達が町にちょっかいを出そうとしてくる、何て事もあったりする。そういう場合は、秘密裏に片付けるのが蒼影やソーカ達。りょっとヤンチャ系な魔物達には紫苑が出向く。

 

 にっこりと微笑みながら「ようこそ、魔都リムルへ」なんて言いながら、大太刀を抜いて半殺しにしていく様は……まさに鬼のようでした。

 

 蒼影なんかは、悪い考えを持つ魔物が森から町を襲う計画を立てていたグループにひっそりと近付いて、得意の粘糸鋼糸で敵を木の上へと釣り上げたりしている。

 もう町へとこない、もしくは手出しさせないように拷問に近い事をしてるんじゃないかってライナが笑いながら言っていた。

 

 

 ♦♦♢♢ ※実際の出来事、ライナと蒼影 ♦♦♢♢

 

「スライムとちびっこの魔女が王だと、調子に乗りやがって……」

「しかも襲ってきた相手を殺しもしないお人好しらしい」

「じゃあその座も笑顔で譲ってくれんじゃねぇ……がっ――⁉」

「なっ⁉ 誰だ⁉」

 

 一体のゴブリンが首から木の上につるされ、手をはなしたら窒息する感じに上手く首元に巻き取っている。

 

「確かにあの方々はおやさしい、お前らのような輩すら「殺すな」と命じられているくらいだ。だが、「甚振るな」とは命じられていない」

『えぇ、別に死ななければ大丈夫じゃないかしらね、「命はとるなよ」って事らしいから。息があればしっかり回復させてあげられるわよ』

 

 にっこりと威圧感を出しながら、ライナが頷いて蒼影と一緒に木の上から笑う。

 

 

  ♦♦♢♢

 

 

「いま、なんか悲鳴が聞こえなかったか?」

「今朝、ハクロウ様がゴブタの訓練レベルを上げると言っていましたから。最近はレイも加わって、ハクロウ様も自分の修行になると言っていますからね」

「……納得?」

「あれ? 蒼影はどこいったんだ?」

「仕事が出来たと、先ほどソーカに呼ばれていましたよ?」

「ふ~ん、そうか……最近は色んなヤツが増えてきてるからな。ちゃんと蒼影達にも休みを作ってやらないとな」

「とりあえずは、来るもの拒まず?」

「あぁ、ゆっくりと俺たちの存在を認知してもらおう」

 

  ♦♦♢♢

 

「半日ほど晒した後に回復薬を与えて放逐しろ」

「はっ!」

「リムル様、ウィン様を侮った者がどうなるか……宣伝に一役買ってくれるだろう」

『ありがとうね蒼影♪』

「いえ、これくらいのことなら、お安い御用です」

『私が出ていっても良かったのですが?』

『レイじゃあ手加減しても殺しちゃう可能性の方が高いでしょうに……』

『そこは白老さんに教えて貰っていますから、あとは実戦で慣れていかねば!』

「……自分にお任せ下さい。ハクロウ様もレイさんとの稽古は身が引き締まると楽しんでおられたご様子でしたから」

『そう? ならまたお爺ちゃんと剣の稽古してくるよ』

 

 

 

『……行ったわね……はぁ、ありがとう蒼影』

「いえ、あのお方が加わると……止めるのも命がけになりそうなので」

『なんでウィンの周りに集まる連中って変なヤツが多いのかしら……』

「あのハクロウ様が自身の稽古にもなると言っているのは……初めて聞きました」

『強さで言えば問題なしだけど、加減が分からないのはダメね。今後ともああいう手合いはお願いするわね』

「御意に」

「あの~、シオン様がぐちゃぐちゃにした連中は、どうしましょう?」

「奴らも同様に、回復薬を与えて晒し者にでもしておけばいいだろう。早くしないと息を引き取りそうだからな。ソーカはそっちを頼む、他の者達は引き続き警備にあたれ」

『それじゃあ、そっちはお願いね~。アタシはリムルとウィンの方を誤魔化しておくからさ。特にウィンには気を配っておくわね』

「はい、ありがとうございました」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の解放テーマ、ワルプルギス終わりまで

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