心にデュエリスト魂を持って転スラ世界に・・・   作:風月八泉

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54話 魔王の少女と挨拶

 

 

 

 

 

 

 木刀がぶつかりあっている音が響いている……はずなのだが、衝撃波という突風がさっきから周りに吹き荒れていて、木特有の軽い音など一切聞こえずに、鈍く破裂音に近い音しか聞こえてこない。

 

『紅丸、流石ですね』

「そういうアンタもな!」

 

 物凄く楽しそうに打ち合いをしているのは、レイと紅丸である。

 

「ほっほっほ。やはり知らない流派との打ち合いは良い刺激になりますのう」

『ねぇ! なんで巻き込まれてるのかな! 主様ぁ助けてよぉ⁉ ひゃ! こっちに来ないでよもう!』

『なにを言っているんですか! 貴女も相当に剣を扱えるのでしょう!』

「現に俺らと打ち合えているではないですか!」

『朝からこんなの聞いてない~』

 

 朝稽古に巻き込まれているのは、剣の御巫ハレちゃんです……一緒に遊ぼうと思って誘ったら、良く分からないけれど白老と紅丸、そしてレイによる誘導で稽古をする流れになってしまいました。

 

「……自分は悪くない?」

『いやいや、主様が遊びに釣られたからこうなってるんですってば⁉』

「ん~、蒼影のせいだよ、たぶん?」

『主様! 責任転嫁はよくないよっ! だから危ないってばぁっ⁉』

「ぬっ⁉ さすがはハレ殿ですね!」

『今のは危なかった……カウンター攻撃とは、ああいう動きもあるのですか、勉強になりますね! 次はこちらからいきますよっ!』

 

 ハレも色々とおかしいよね……自分と会話をしながら紅丸とレイの打ち合いについていっているんだから、しかも所々でしっかりとカウンターを入れて、紅丸とレイを何度も驚かせている。

 実際に蒼影が遊びによる訓練方法を教えてくれたと、ソーカ達に教え、それが廻り回ってガビルに知られてしまい……色々な所から遊びみたいな訓練方法を教えてくれという、変な風習ができたのだ。

 尻尾鬼なんかも、良い訓練になると白老からお墨付きを得たせいで、更に訓練に参加するメンバーが増えていたりする。

 

 だから、ある意味蒼影のせいというのは正しい答えだと自分は思っている。

 蒼影からしたら善意で喋っただけだろうから、責められないけどね。

 

「……二人にしっかり反応してカウンターなんか入れるから興味を持たれるんだよ」

『ウィンは参加しないの?』

「ん、しないよ? 疲れるから」

「リムル様からは、ウィン様も積極的に参加させるよう仰せつかっておりますが……」

「それはきっと嫌がらせだから気にしなくて良いと思うな!」

『ウィンが訓練を時々サボるからでしょう』

 

 ライナに睨まれる事がわかっているので、初めから顔を背けていたが声だけでもチクチクと自分を刺すような一言を言ってくる。

 

「まぁ今日はここに居るんだから良いと思う?」

『参加しなきゃ意味が無いでしょう』

「初めは参加してたよ?」

「ほっほ、ヤル気になればウィン様もしっかりとお出来になるのに」

 

 白老は笑いながらも、視線では勿体無いという視線をこれでもかと向けてきているのが解るので、白老からも視線を逸らす。

 

「まったくみんなし――――なにっ⁉」

 

 背筋がゾッと冷たくなるほどの巨大すぎる気配が訳の分からないスピードで、この町の方へと向かってきてる。

 

『行くわよ⁉』

「リムルも向かってるっぽいね」

 

 紫苑と一緒に町を見回っていたリムルも巨大な気配の方へと動き出している。

 自分とライナはすぐさま杖を出現させ、飛び乗って気配の方へと全速力で向かう。

 

「リムル⁉」

「ウィンも来たのか、それにライナも」

『そりゃね、あんな気配を感じ取っちゃあ来ない訳にはいかないでしょう』

 

 自分とリムルは殆ど同時くらいに気配の方に近付き、町から少し離れた森近くの開けた場所で待ち構える。

 巨大な気配は町を飛び越える事無く、自分達の目の前に降りてきた。

 隕石でも落ちたんじゃないかって程の衝撃と爆風に、思わず風の力を使っていなすようにして防御する。

 

 ちょっと小さなクレーターと、その中央には人影が見える。

 

「初めまして」

 

 少女の声で可愛らしいのだが、それでも威圧感は拭えない。

 砂埃が一気に中央へと集められてから、飛散した。

 そこに立っていたのは、水着の様な服をきた、小さな女の子だった。

 長いツインテールに桜金色の髪の美少女……幼女? で、胸は自分の方が上だと思う。

 

「ワタシは魔王ミリム・ナ―ヴァだぞ! お前達がこの町で一番強そうだったから、挨拶に来てやったのだ!」

 

【ねぇリムル……こういう時ってさ、どう反応すれば良いと思う?】

【俺に聞くなよ⁉ いま頭の中真っ白になってんだから!】

 

 いやだって、登場のしかたからいきなり魔王ですって。しかも見た目は可愛い美少女だしさ、自己紹介もあちらさんからしてくれている。

 

【普通は四天王(最弱)とかが挨拶にくるってパターンなら想像できるんだけど?】

【それもそれで、普通じゃねぇよ】

 

 何も反応を示さない自分達に小首を傾げながら、リムルのスライムボディをツンツンと突いて、魔王のミリムさんが遊んでいる。

 

「初めまして、リムルとお申します」

「えっと、ウィンです」

『アタシはライナよ』

「なぜ私達が一番強いと思ったのですか?」

 

 リムルがオドオドとしながらも、魔王ミリムに聞く。

 

「ふふん、それで妖気を隠したつもりか? この「竜眼」にかかれば、相手の隠している魔素量など、まる見えなのだ。ワタシの前で弱者のフリなど出来ぬと思うがいい!」

 

 わはははと笑いながら、リムルのスライムボディを両手で持ち上げて、人形みたいに高く掲げて楽しんでいる。

 

「ここはリムルに――」

「お前だけ逃げるなよ!」

『ウィンだけじゃないわよ』

「こらこら、お前にも用があるのだぞ」

 

 どうやら、魔王からは逃げられないらしい。

 逃げようとしても、足元で絡みついているリムルが出した糸によって逃げられる状態でもないんだけどね。

 

「ところでこの姿が本性なのか? ゲルミュッドの残した水晶では銀髪の人型だったが」

 

 ゲルミュッドを知ってるって事は、この子が……ん~、アレの上に立つ人物としては想像が出来ないような性格をしているんだけどな。

 

「この姿のことですかね」

 

 リムルは人形に高い高いされた体勢で、人型になると魔王ミリムが地面にそっと下ろして、リムルの姿を観察するようにクルクルと全身を見て回る。

 

【蒼影やライナがいってた監視している者の一人って事かな?】

【どうだろうな、魔王って複数人いると聞いているし、もしかしたら何人かで見ていた内の一人って事じゃないか?】

『ゲルミュッドを好いて使っていたとは思えない子だものね……コレが演技でなければ、だけどね……まぁ性格からして、演技の可能性は低そうなんだけど』

 

 遠くから解るほどの気配を出して、ド派手に登場して自分から名乗るという行為は、どう考えてもゲルミュッドを使っていた魔王にしては、突飛している気がしてならない。

 もうちょっと秘密裏に裏で何かやってそうなイメージの方が合う気がする。

 

「……ん? 水晶ではもう少しちまかった気がするのだ」

 

 リムルの身長を手で表現しつつ、ジッとリムルの顔を眺める。

 

「さてはお前……豚頭帝を喰ったか?」

「……えぇ、まぁ」

「お前の方もだ、もう少し子供だったはずなのだ」

「まぁ、似たようなものかも?」

 

 なにが目的なのかが、さっぱりわからない。

 ゲルミュッドを知っているなら、豚頭帝を殺された復讐とかも考えられる。

 

「それで今日はどんな御用でのお越しでしょうか?」

「む? 最初にいったではないか。挨拶だぞ?」

 

 しばらく静寂が続く。

 次に自分とライナが顔を合わせて小首を傾げて、リムルの方を同時に見る。

 

 たぶん、リムルもだろうけど、心の中で「それだけ⁉」というツッコミをしていただろう。彼女は本当に挨拶に来ただけという感じでいる。

 

 まぁ戦わずに済むならそれに越したことはないだろう。

 

【ねぇライナ……魔王ミリムさんとやらって、どれくらいの強さかわかるかな?】

『測定が可能な範囲で良いなら、下限段階で魔素量が十倍以上よ』

 

 それは戦いになったら勝てる以前に、片手で消し炭にされるレベルだろうね。

 

 リムルとちょっと安心して、思わず緊張していた分の息を少しだけ外へと吐き出した瞬間だった。

 後ろから、人影が飛び出して行って、魔王ミリムに切り込んでいっている。

 

 当の魔王様は、面白そうに待ち構えて笑っている。

 

 最初に一撃を入れにいったのは、紫苑だった。

 

 自分達の頭上を飛び越えて、魔王ミリムへと勢いよく大太刀を振り下ろす。

 地面が破裂するような威力だから、かなり力を入れて叩きつぶす様に切り込んだようだけれど、風には微塵も血の匂いは混じっていない。

 

「ランガ! リムル様とウィン様を連れて逃げなさい! 早く‼」

「心得た!」

 

 リムルの影から急にランガが飛び出してきて、自分とリムルを乗せて後ろへと下がる。

 

「なんだ? ワタシと遊びたいのか?」

 

 紫苑の全力の一撃を、魔王ミリムは片手で受け止めている。

 

「やっぱり、傷一つ負ってない……」

『シオンの一撃を素手で軽く止めるって、どれだけよ』

 

 ランガの背中に乗せられながらも、しっかりと魔王ミリムの方を見て観察する。

 

「ま、待て! 待てってランガ!」

「待てません! お許しをリムル様!」

「待てっての!」

 

 リムルは木の枝に手を伸ばして捕まり、ランガを両足で絞めながら無理やり止める。

 

 紫苑の大太刀を片手で捻り上げて、紫苑ごと後ろへと吹き飛ばした。

 その後すぐに蒼影が粘糸鋼糸で魔王ミリムの全身を糸巻きの様に縛った。

 

「魔王といえども、この糸の束縛より逃れることは簡単にはできまい。……少なくとも、数秒はな――」

「数秒で十分だ! 黒炎獄‼」

 

 蒼影に続いて、流れるように紅丸がヘルフレアを魔王ミリムに放つ。

 

「火傷くらいしてくれると嬉しいが……」

「わはははは! すごいのだ。これ程の攻撃、他の魔王ならあるいは倒すことも出来たかも知れぬ……。だが、ワタシには、通用しないのだ」

 

 少しだけ気合を入れるように、魔王ミリムが両手を握って力を溜めると、地面が割れて魔素の妖気だけで、周りを吹き飛ばしていく。

 

『たくっ! もうちょっと加減してもらいたいわねっ⁉』

『アレって土の魔法じゃないよね! 魔素のエネルギーだけで土を吹き飛ばしてるのかな。ボクには到底出来そうにないんだけどっ!』

『たくよぉ、こういうのはオレ達は専門外だぜ。まぁ、相手が遥かに格上ってのは燃える展開だけどよ』

『なにがどうなってるの~⁉ 急にデッカイ妖気とか聞いてない~』

 

 ヒータやアウス、エリアにライナが紅丸達を庇う様に防御結界を張る。

 

「……自分の事を守ってくれてもよくない?」

『ウィンには私がいますから、大丈夫ですよ?』

「何時の間に……レイも来てたのね」

 

 なんか、白老の技術を少しだけ出来るようになったって言ってたけど、本当だったんだ。魔王ミリムのせいで魔力感知も風による索敵も爆風で役に立たなかったから、全く分からなかったよ。

 

 飛んでくる岩をレイが全て剣で叩き落としていく。

 

「ほぉ! 知らぬヤツもいるなぁ⁉」

 

 

 魔王ミリムは新しいおもちゃを見つけたみたいに、霊使い達や、レイを笑いながら見ている。一番は、自分の方を見ながらワクワクしている様子だけど……。

 

 

 

 

 

 

 

次の解放テーマ、ワルプルギス終わりまで

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