心にデュエリスト魂を持って転スラ世界に・・・   作:風月八泉

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56話 お膳立ての勝負事

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「少し驚いたが、惜しかったな」

 

 手加減した攻撃だからか、地面までは届かなかった。

 ただ、{魔法の筒(マジックシリンダー)}というトラップカードは相手の攻撃をそのまま返すだけのはず……なのに、魔王ミリムに対してある程度の有効打としても使えている。

 ということは、本来なら付くはずがない効果が、魔法の筒というトラップカードの反射攻撃に載った可能性がある。

 あるいは、魔王ミリムの耐性、反射系統のスキルでは反射ダメージの無効化が出来なかったという可能性……。

 前者だった場合は、いま装備している白のヴェール効果が付与され、扱う魔法カードやトラップカードにも影響が出る可能性があるということだが……それはそれで、扱い辛すぎるね。下手をすると効果同士が干渉して打ち消しが発生しそうだ。

 

 魔王ミリムのおかげで心置きなく使えているけど、威力調整も出来ないのでは試すにも試せないんだよね。

 

「次はこっちもこんなヘマは……」

「もう勝負はついていますよ?」

「何を言って――ッ⁉」

「上ばかり見ているから、ダメ?」

 

 クレーターの外から伸びた大地が、魔王ミリムの足元まで伸びている。

 

『これって、いいんでしょうか?』

『ウィンがやれって言うんだ、やるしかねぇだろう』

 

 レイとヒータが魔王ミリムの脚を掴んで、下へと引っ張る。

 

「いつの間に⁉」

「ん? 最初からここに居る全員で遊んでいたのは魔王ミリム様? いつから自分一人とだけ遊んでいると思ったの?」

『やってることは卑怯者だよね……ボクもドン引きだよ』

「アウスってば酷い? 日々遊んでいる技術の賜物だと言っていいのに……」

『卑怯者には変わりないと思うの』

 

 地面はアウスが操り、エリアは魔王ミリムを少しでも拘束出来れば問題ない。

 

 魔法陣を足元に描くよりも、アウスたちの足元に文字を書く方が遥かに難しかった。

 内容は「注意を引くから、足元まで大地を伸ばして」というものだ。

 

「こんなもの!」

「ごめんね{攻撃の無力化}発動?」

「なっ!」

 

 二枚目のトラップカードを使って、ヒータやレイを吹き飛ばそうとした力を、一瞬だけ抑え込む事に成功した。

 その隙に、地面をミリムの足先にくっつける。

 

「どうりで、魔法陣のサークルを展開しなかった訳だよ」

 

 リムルもなんか微妙な顔をしながら自分の方を見てくる。

 

「なんというか、器用ですねウィン様って」

 

 空笑いをしながら紫苑が言う。

 

「良いのか、こんな勝ち方って?」

「……勝てば良いだろう?」

 

 紅丸は首を傾げながらちょっとだけ不満そうで、蒼影は勝て良いと言ってくれている……表情は微妙な感じだったけど。

 

「待つのだ! こんなものは無効なのだ!」

「最初のルールには記載されてないですよ? 一対一なんて?」

「普通は一対一での勝負だと思うではないか⁉」

 

 鬼人達も霊使いメンバーもポカンと呆れた様子で自分の事を見てくる。

 

『まぁ、オレも魔王さんに一票入れたくはあるが……最初に全員と遊んでいたとウィンが言うのも、間違いじゃねぇんだよなぁ』

『というか、最初にライナちゃんに手を出すなって言ってたのって、ワザとなの?』

『あら、約束通り「邪魔は」してないわよ? 手伝うなとか、手出しはするななんて言われた覚えはないわね~。それに先手を譲っただけじゃない」

 

「なんて言葉遊びだよ……性格悪いな、お前ら」

 

 もう言葉も出ないという感じで、リムルが蔑んだ目で見てくる。

 

「認めない、認めないのだ‼ こんなこと……」

「まぁ、もう一回やる? こんどはちゃんと一対一で、卑怯な事もしない?」

「この勝負は無しなのだぞ!」

「なんか皆が不本意っぽいし……お詫びとして、これ食べる?」

 

 後でレイと一緒に食べようかと思って持っていたクッキーを取り出す。

 

「なんなのだ?」

「え? クッキー」

「食べ物だけど、知らない?」

「これが、食べられるのか?」

 

 半分に割って、片方を自分で食べて見せる。

 物凄く疑われているが、自分が食べたのを見て恐る恐るという感じで口に運んでいく。

 

「はぐっ! ……う、美味いのだ⁉」

「……魔王ミリム様はいったい、普段はどんな料理を食べてるの?」

 

 このクッキーの出来は、まだ完成とは言えないレベルなのだけど……この反応はちょっと予想外だった。

 

「なんなのだこれは!」

「いや、だから、クッキー?」

 

 両肩を掴まれて、ガクガクと揺らされる。

 

「もっと寄越すのだ!」

「それよりも勝負ですね……次はリムルが相手をしてくれますよ」

「そっちも楽しみだが……ぐぐっ!」

「俺もやんの⁉」

 

 何を驚いているのかな? やるに決まっているでしょう。

 

【頑張って?】

【もうお前が纏めれば良くないか⁉】

【今の内に手を打っておかないと、勝負しろとかずっと絡まれそうだよ?】

【…………やるか】

【なにか思い付いた?】

【あぁ、お前らのやりとりを見てたからな】

 

 なんか自信満々にリムルがクレーターへと降りていく。

 

「あとでクッキーとやらを寄越すのだぞ!」

 

 念押しをしてくる魔王ミリム様に対して、ニッコリと微笑んで返す。

 

「早くリムルの場所に行かなければ、ふせんしょ――」

「行ってくるのだ!」

 

 もうクレーターが試合場所として定着しちゃっているのだが、良いのだろうか? まぁ分かり易い場所だからいいのか。

 

「それで、お前の方はワタシにダメージを負わせられるのか?」

「一つだけな」

「わははは! いいだろう、受けてやるのだ。ただし! 卑怯な事とかは無しだからな! あっちのヤツみたいな事をしないと約束だぞ!」

 

 自分の方を何度も指さしながら、念押ししながら言う。

 

「安心してくれ、ウィンみたいな鬼畜じゃないからさ」

「……酷くない?」

『自分の行動を鑑みなさい』

『ライナが言う事じゃあねぇな』

 

 ヒータの言葉に周りの皆も頷いている。

 

「お前が負けたら、アイツと一緒にワタシの部下になると約束するのだぞ?」

「あぁ、その代わり、俺の一撃を一回受けてもらうぞ」

 

 魔王ミリムは何時でも来いと、右手の人差し指でチョイョチと仕掛けて来いとジェスチャーでリムルの攻撃を待つ。

 

「では、喰らえ」

 

〈告。対象の魔素量が膨大すぎるため、捕食は不可能です〉

【だろうな、分かってるよ】

〈告。通用する攻撃手段は皆無――〉

【大丈夫だよ】

〈警告。全ての攻撃は反射される可能性が高いです。自動防御を発動――――〉

【こういう子供っぽい相手には――】

 

 リムルが右手を握りしめて、魔王ミリムの口元へと何かを押し込んだ。

 

【それ相応の対処法ってもんがある】

【まともに戦って魔王に勝てるとは思ってないもんね】

【あぁ、俺たちの運命は、こいつを喰らった魔王ミリムの反応次第だ】

 

 じっくりと味わう様にもごもごと口を動かし、口の周りに着いたモノもなめとる。

 

「な、なんなのだこれは⁉ さっきの、くっきー? とやらもそうだが、こんな美味しいもの今まで食べた事がないのだ‼」

 

 掴みはバッチリのようだ。

 

「くっくっく、どうした魔王ミリム。こいつの正体がきになるのか?」

 

 リムルがワザとらしく、自らの周りに浮かせて魔王ミリムに見せびらかせている。

 ちなみに浮いている黄色のスライムゼリーの正解は、蜂蜜だったりする。

 アピスに分けてもらった、新鮮なハチミツはさぞ美味しかろう。アピスを筆頭にハチ型の魔蟲に採取してもらったモノだ。

 

【……なんでリムルがまだ持っているのかな?】

【そりゃあ後でコッソリと食べようと思って――】

 

 ジト目でリムルの方を見つめてやると、リムルは焦ったように魔王ミリムの方へと集中して、自分からの視線を誤魔化した。

 まぁ初めにクッキーも渡して食べてもらったから、うまいこと興味を持ってもらえただろう。ここまでくれば、後はリムルのペースで話を進める事が出来るはずだ。

 

「俺の勝ちだと認めるならば、コレをくれてやってもいいんだがな」

「だが……しかし……、はっ! ワタシはさっき約束――」

「魔王ミリムが暴れたり、襲って自分が部下にされちゃったら、もうクッキーは食べられないんだろうなぁ」

「なぜっ!」

「だってウィンはジュラ・テンペスト連邦国で俺と並ぶ国の頭だからな。うーん、美味しい。この甘さがたまらないね」

「あっ‼」

 

 焦らすようにリムルがハチミツを口へと運んで、ワザとらしく黄色い球の量を減らす。

 

「おっと、早くしないとなくなりそうだぞ?」

「ま、待て! 提案がある‼」

 

 必死に両手でリムルの動きを止めている。

 

「引き分け! 今回は引き分けでどうだ? 今回の件を全て不問にするのだ!」

「ほほう?」

「も、勿論それだけではないのだ。今後ワタシがお前達に手出しをしないと誓おうではないか!」

 

【勝ったな】

【紫苑や紅丸達には、今後の課題も見えてきたね。ふぅ、いきなり攻撃なんか仕掛けるから……面倒な事にならずに済んで良かった】

『ワタシも暴れたかったなぁ。ウィンと一緒に……』

 

 リムルは勘弁してくれと、息を吐きながら文句を言う。

 

『でも、後で怒るのは決定事項ね』

【なんで!】

【お前も面倒事を引き起こそうとしてただろうが! ライナと俺とでお説教だ!】

【ちょっとしたスキルの確認と、魔王様とジャレてみただけなのに……】

 

 肩を落として項垂れていると、ヒータやアウスが何かを察したように慰めて――。

 

『ウィン、ライナやリムルだけがお説教をすると思ったら大間違いだからな』

『しっかりと反省すべきだね。ボクらのお・は・な・し、もあるからね』

『ウィンちゃん、心配したんですからね』

 

 ぷっくりと頬を膨らましながらエリアが顔を近付けてくる。

 リムルはそんな自分達のやり取りを苦笑いして見つめ、紅丸達の方へと歩み寄る。

 

「さてと、お前ら、もう大丈夫か?」

「はっ……」

「申し訳ありません、リムル様。ウィン様」

 

 紅丸達やランガが膝を付いて少しだけ頭を下げる。

 

「俺を逃がそうとしてくれたのはわかってるよ。でも今後から気を付けろよ? じゃ、町に戻るか」

「賛成? 疲れた……」

 

 自分はライナの杖に乗り、リムルはランガの背に乗って…………その後ろに、なぜか魔王ミリムも一緒にランガの背に乗って、蜂蜜を楽しんでいる。

 

 

【なんで一緒にランガにのってるんだ? こいつ……】

 

【いや、聞かないで?】

 

 鬼人達も霊使い達も、チラチラと魔王ミリムを見ている何とも言えない空気感が漂っている……。

 

 このまま、町まで来る気なんだろうなぁ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の解放テーマ、ワルプルギス終わりまで

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