心にデュエリスト魂を持って転スラ世界に・・・   作:風月八泉

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58話 親友と書いてマブダチ? 甘味の魅力

 

 

 

 

 

 

 

 リグルド達の呼びかけで人も集まり、舞台の上でお菓子を摘まみながら待っていた自分とリムルは、ミリムを舞台の中央へと連れて行く。

 

「さて、そろそろ集まってきたし良いだろう」

「はいリムル、これ使いなよ」

「……なんで、マイクがあるんだよ?」

「ん? 作ったから?」

 

 お祭りの時に人を集めるにも、声を遠くに飛ばせる手段が自分の風霊術しかなく、面倒だったので魔素を使って、声を響かせられるマイクをドワーフのドルドと、朱菜のスキルとフゥリの力を借りて作ったのだ。

 魔道具という事で、魔鋼を使っている贅沢品だけど……封印の洞窟で取れるので別に問題はなかったのだ。

 魔鋼を使って作り、魔素を使って声を拡散するので「魔イク」という名前を付けた。

 

「ええと、今日から新しい仲間が滞在することになった。客人という扱いなので、くれぐれも失礼のないように」

 

 町の住人達はミリムの事を知っているのか、彼女の姿を見て戸惑いの表情を浮かべている者がゴブリン達の中に少数だが居るようだ。

 

「ほうほう、面白いモノがあるのだな」

「ウィンが何時の間にか作ったんだよ。じゃ、本人から一言どうぞ」

「うむ、コホン!」

 

 魔イクの使い方を見ていたミリムは、手渡されたモノにキラキラの眼で眺めながらも、両手でしっかりと魔イクを握って、喋り出す。

 

「ミリム・ナーヴァだ。今日からここに住むことになった、よろしくな!」

 

 自分もピクっと反応してしまったが、リムルなんか目を大きく開いて驚いている。

 

「おい待て、そりゃどういう意味だ⁉」

「まったく聞いてない?」

「そのままの意味だぞ? ワタシもここに住むことにしたのだ」

「待って、ちょっと整理させて?」

「お前は今住んでいる所があるんだろ?」

「大丈夫なのだ! たまに帰れば問題ない!」

 

 それはミリムの方は問題ないだろうが、こちらとしては問題しかないんだけど。

 

【どうするのリムル!】

【どうするって、どうしようも出来ないだろう⁉】

【まだ町の人達からの反応は喜ばれてるのが救いだけど……】

【むしろ歓迎ムードだな……】

 

 魔王の中でもミリムは人気者なのか、あんまり害はないのかは分からないが……特に反感とかは出ていない様子だった。

 

「ワタシとリムルにウィンは友達だから、何かあったらワタシを頼っても良いのだぞ」

 

 町の人達に手を振りながら、歓声に答えつつ友達宣言をミリム自身から言ってくれているので、更に町の人達が盛り上がってしまっている。

 

「友達だってさ」

「友達、か……どっかの竜を思い出すな」

「えっと、そ、そうだな。友達というより……親友だな‼」

 

 なんか急にもじもじと恥ずかしそうにしながら、友達からランクが上がっていた。

 

「えっと……マブダチ?」

「それって、自分も?」

 

 そんな事を言われるとは思っていなかったので、戸惑いながらミリムに聞くと、目じりに涙を溜めながら、右手の拳に異様な魔素量が集中し始めた。

 

「ち、違うのか⁉」

 

 どす黒い拳にバチバチとイヤな音が鳴り出している。

 

「なーんてねッ‼ 冗談だよ冗談‼」

「ちょっとビックリしただけ? 自分達は親友だよ」

「あぁ、ウィンの言う通り、俺達はマブダチだ!」

 

 ガシッとミリムの肩を掴んでリムルが肩を組み、半ば強引にリムルが自分も一緒にミリム同様にガッチリつかまれて胸元へと寄せられた。

 

「だろ? お前達も人を驚かせるのが上手いな! 特にウィンは本当に人を驚かせたりするのが得意なのだな……ビックリしたのはワタシの方なのだ」

「あはは、ごめん? 驚かせたり楽しい事を考えるのはミリムにも負けない?」

「むぅ~、確かにあっと驚くような事をしてくるのだ」

 

 なんとか誤魔化せたようで、リムルと一緒に冷汗を大量に流しながら、最も危険な魔王がテンペストに滞在することになってしまった。

 

 

 基本的に、ミリムの寝泊りする場所は自分とリムルが住む家という事になった。

 リリナさんがトウキビを持ってきて、茹でてくれたりして面倒を見てくれる事もある。

 

 家ではリムルのスライムボディを抱いている事が多く、何処かに出掛ける時なんかは、自分の杖に乗っていた、腕を組む様にすり寄ってきたりしている。

 

 

 

 

   ★☆★☆   ★☆★☆

 

 

 

 

 ちょっとした食卓でも感動した様子でご飯を食べている。

 今日は朱菜やリリナのおかげもあって、ハーブ類の栽培に成功したのでカレーを作ってみたのだ。料理に関してはゴブイチに手伝ってもらった。

 

「うま――っ‼ この「かれー」という食べ物はめちゃくちゃ美味いのだ‼」

 

 ぱくぱくとカレーを口に運ぶ手が一切止まらない。

 

【……ミリム・ナーヴァ。どう見ても子供?】

【本人には言うなよ、歴とした魔王の一人で、その実力は知ってるだろう】

【その魔王は何故か親友を名乗って、ここに住むとか言い出したけど?】

 

「おかわりなのだ!」

「はい」

 

 朱菜がお皿を受け取り、ゴブイチが居るキッチンの方へと持っていく。

 

「こんな美味しいものハチミツ振りなのだ」

「今朝の話?」

「そんなに経ってねぇな」

 

 ハチミツと言って紫苑が何かを思い出したように、ジッとリムルと自分の方を見てくる。そういえば、ハチミツ自体は自分とリムルが最初に持っていただけで、朱菜や紫苑に食べさせたことはないね。

 

「ミリム様が興味を持たれたあれは、蜂が集めた蜜だったのですか?」

 

 前にちょっとだけ教えた蜂蜜の事を思い出しながら、自分達に尋ねてくる。

 

「回復薬かと思ったが……そう言えば色が違ったな」

 

 リムルの回復薬は青いスライムゼリーで、蜂蜜は黄色い色をしているからね。見た目だけでも結構分かり易いモノになっている。

 

「意外に目敏い?」

「……まぁハチミツには薬効もあるから、回復薬ってのはあながち間違ってない」

「へぇ……」

 

 ジッとミリムが手に持っている蜂蜜入りの容器を見ていると、それに気付いたミリムが紅丸の視線から隠す様に胸に抱き抱えてる。

 

「やらんぞ! これはワタシのモノなのだ‼」

「とりませんって」

 

 まぁ美味しいからね、ミリムの気持ちも解らなくはないし……意外にも紅丸って甘いモノが好きだからなぁ。食べてみたいのだろう。

 

「砂糖っていう甘味料の代わりにも使えるよ」

「多くは採れないし、抽出も今のところは俺かウィンにしか出来ない」

 

 アピス達が作ってくれた巣を無理のない範囲で分けて貰い、リムルが取り込む事で蜂蜜を抽出して、ようやく出来たのが蜂蜜をなのだ。

 自分は粘糸鋼糸で作った布を重ねて、空気を圧縮する形で抽出している。

 フゥリも同じく風を操れるのだが……自分みたいに繊細な操作はまだ出来ない。

 まぁ、自分が蜂蜜をちょっとだけあげたら、なんか妙にヤル気を出してコントロールと空気圧縮の技術を猛練習しているらしい。

 

「お披露目は量産の目処が立ってからと思ってたんだよ」

「舐めてみて?」

 

 全員が指先に少し付けて、ハチミツを舐める。

 

「わ……!」

「……んっ!」

 

 女性陣は舐めた瞬間に顔が華やいでいる。

 自分の分があるはずのミリムもちゃっかり小皿に出したハチミツを指先で掬っていた。

 紅丸は驚きながら、立ち上がって自分達を凝視してくる。

 

「うん……まぁ、秘密にしてたのは悪かったよ」

「食べて分かる通りのモノだからね。厳重に管理しとかないとダメだと思ったの」

 

 一人占め……まぁ、リムルと一緒に内緒にしていたのは、先に二人で楽しもうとしていた所もあるけどね……リムルなんか抜け駆けをしようと画策していたようだけどね。

 

「お砂糖は高級品なので、食べたことがありませんでしたが……、このハチミツほど甘いものなのですか?」

「ああ、砂糖があれば料理の幅が広がって、主にコイツが甘いお菓子なんかも作ってくれるようになるんじゃないか?」

「まぁ、調理道具はカイジン達に頼めば作れるだろうから、色々なお菓子を作れるよ?」

 

 甘いお菓子という響きから、ミリムや朱菜に紫苑と女性陣がうっとりとした表情をして、何かに思いを馳せている。

 

「……なるほど、理解しました」

「え?」

「明日からは、お砂糖の発見に全力を尽くしましょう。良いですね? シオン」

「はい、シュナ様。このシオン、一命に代えましても、砂糖を発見してご覧に入れます」

「うむ、頼むのだっ!」

 

 いつ間にか、スイーツ同盟が三人によって結成されている。

 

【ねぇリムル……ここでさ、トレイニーさんにサトウキビとかテンサイ的なモノの種を貰えば、砂糖が作れるって言ったら……ヤバいかな?】

【え、なにお前、作り方とか分かるのか⁉】

【というか、リムルが居れば砂糖は簡単に作れると思うけど……トウキビからも作れるよ? 糖分を「大賢者」さんに分離して、粉末状にして貰えば良いんだし……まぁ、糖分が多くなるように、朱菜に協力してもらって品種改良はしないと、ダメだろうけど】

 

 そんな事を思念伝達で話していると、急にミリムの眼が自分を見つめてきた。

 

「なぁ、ウィン……お前もしかしてだが、砂糖とやらの作り方を知っておるのではないか? なんかそんな勘がするのだ」

 

 ビクッと反応をしてしまって、食べていたカレーが変な所に入った。

 

「けほっ! な、なにを言ってっ――」

「ウィン様。知っているのですか?」

 

 紫苑の眼が鋭く光りながら、逃がさないような動きで迫ってくる。

 

「そういえば、ハチミツとやらの件も、ウィン様が発端だった気がしますね……そして、その扱い方も知っている様子ですし、ウィン様も甘いモノはお好きですよね。なのに、私達に加わる事無く、カレーを食べ続けているなんて。知っている者の余裕ですかね」

 

 な、なんか何時もの優しい笑みで微笑む朱菜ではなく、笑顔という圧を向けて押し潰さんばかりに迫ってくる。怖い子になっている。

 

 ちょっと怖くなって席から立ち、この場から逃げようと思ったのだが……席から立つ前に、紅丸が何時の間にか自分の後ろへと回っていて、肩にトンと手を置いて腰を上げた自分を椅子に再度として座らせられる。

 

「そういえばそうですね……ウィン様は色々と物知りな様子ですし、先ほどリムル様となにやらやり取りをしていた様子。なにをお話になっていたのですか」

「え、いや別に――」

 

 リムルに助けを求めようとしたのだが、リムルはというと口角を上げてニヤリと笑いながら、秘密裏に会話をしていた内容を話し始めた。

 

「ウィンはどうやら、砂糖を作る手段を知っているらしいぞ。俺も砂糖は欲しいしな……手伝える事があれば言ってくれ」

「ちょっとリムル⁉」

「ほう、やはりウィンは色々と物知りなのだな! さすがはワタシの親友なのだ!」

 

 ミリムさんや、その眼は親友に向ける目じゃないです。欲という名のモノで濁り切った瞳をしていますので、すぐに純粋無垢に新しいモノを見ては感動していた、幼さの見える可愛らしいお姿にお戻りください。

 

「はい、砂糖はどうすれば作れるのです? 私だって協力は惜しみませんから」

「いやうん? 嬉しいんだけ……確かに朱菜のスキルがあれば糖分を増やす品種改良もできそうだけどね。落ち着いて――」

「ほう、植物と……では、トレイニー様にもお手伝い頂ければいいですね」

「すぐにでも、話を持っていきます」

 

「こういう時だけ有能な秘書っぽく動かなくて良いんだよ紫苑! 紅丸もリリナ殿に話を持っていこうとしないで⁉ ねぇ、自分の仕事がまた増えちゃう‼

 

「諦めるのだ! これは最優先事項として、進めるべきなのだ」

「……すまんな、ウィン」

 

 

「リムルのばかぁ~~~」

 

 

『え? なにこの空気?』

 

 仕事を終えて帰ってきたライナ達、霊使い組と御巫にレイが戸惑いながら部屋の中を見て、リムルの下へと行き、話しの経緯を聞いたのだろう。

 

「みんな! たすけ――」

 

『もう、そういう大事な事は秘密にすべきじゃないわよね』

『私も甘味というのは食べた事がないですね。是非ともよろしくお願いします!』

 

 誰一人として味方は居ないようだった。

 

 

「悪いな……ああなった女子を止められる程、俺は強くないんだ」

「黄昏るな元凶⁉ リムルのおばかぁ!」

 

 

 

 

 

 

 

次の解放テーマ、ワルプルギス終わりまで

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