「なぜ早起きせねばならんのだ!」
「今起きないと、ご飯は抜きになる?」
「ほら、ぐずってないで顔洗え」
リムルに叩き起こされて、自分とミリムは朱菜達にお世話されながら顔を洗い、髪を整えてもらってから、食卓の席につく。
朝食はパンモドキと果物のジャム(砂糖未使用)に野菜スープと牛乳だ。
あいかわらず、牛なのか鹿なのか分からない魔物、牛鹿だが……牛乳の味や見た目もそのままで、栄養価もしっかりと高いと大賢者さんのお墨付き。
パンモドキと言っているモノだが……やはり前世で食べた食パンには、まだまだかなわない、柔らかさも、味に関しても改善していかないとダメだろうね。
朱菜やカイジンと、この世界の住人からしたら、美味しいと感動してくれているのだけれど、自分やリムルでは前世の味が忘れられない感じになっている。
「野菜のスープなのに……美味しいのだ」
「牛鹿の燻製肉が入ってるからな」
「ん~、発酵は良いと思う? けど、やっぱりまだ小麦やライ麦の改良が必要かも?」
「ウィン……食べる時ぐらいは、その辺のことは考えるなって」
『変な所で凝り性なんだから、ほら口の周りに牛乳が付いてるわよ』
「うにゃ! わかったよ」
なんか朱菜の方から変な気配を感じたが、笑顔でニコニコしているだけだった。
『ふふ、美味しいわね』
「あまりくっ付き過ぎてはウィン様の邪魔になりますよ。ライナ」
『それもそうね……これくらいで勘弁してあげるわ』
妙に朱菜とライナが互いに見つめる視線の先で火花が散っている気がするが、気のせいという事にしておこう。
【今日はどうするの? さすがにミリムを伴ってベスターの研究所は行けないと思うよ】
【だよなぁ~。さすがにまずいよな】
【ここは、朱菜に預けて、服なんかを作ってあげるって言えば離れられるんじゃない?】
【ふむ……良いなそれ。ミリムも朱菜に懐いているっぽいから、問題なさそうだ】
リムルと数秒だけ視線を合わせて頷く。
「ミリム、ご飯が終わったら制作工房に行く?」
「はむ?」
ちょうどミリムはジャムをパンに塗ってかぶり付いている最中だった。
「可愛い服もいっぱいあるぞ、好きなものを見繕ってもらうといい」
リムルがニッと笑いながら朱菜の方に視線を送る。
「えぇ色々な服を用意してありますよ。リムル様やウィン様に是非とも着て欲しいんですけどね……いっつも逃げられちゃうんですけれど」
ワザとらしく溜息を吐きながら、チラチラと自分とリムルの方を見てくる。
思わず体がビクッと反応した自分とリムルは、慌てて視線を逸らして朝食を食べる。
==ミリムを連れて朱菜がいつも服を作っている工房へと……。
「朱菜ってさ、いつも大人しめの服っていうか、着物を着てるよね?」
「そうですねぇウィン様」
「サイズが……小さ目だな」
「えぇ、合わせて作っておりますからね、リムル様」
誰にとは明確に言わないでいる辺り、さすがは朱菜だなって思う。
ニコニコと何時も以上に笑顔を向けれるので、自分もリムルも少しばかり戸惑いがにじみ出てしまう。
というよりも、早くこの場所から脱出しなくてはならない気がしてくる。
『サイズ的には、彼女にも着れそうなモノが多いわね』
「すごいのだ、可愛い服が色々あるのだ!」
妙にヒラヒラした服から、清楚系で揃えられたモノまで……肩だし和服っぽいモノまで、オシャレに取り揃えられている。
ミリムは目を輝かせながら、服を一つ一つ見ている。
「なんでこんな色々な種類の服があるんだ?」
「ウィン様に教えて頂きました」
「おい、ウィン?」
「違う……ちょっと朱菜の前で口を滑らせただけ? リムルも体験すれば分かる! 朱菜ってば聞き出すのがうま――」
「ウィン様は本当に色々な知識があるんですよね。こんな服は今まで知りませんでした」
笑顔のままで朱菜は自分の発言を途中で遮り、リムルに服を持って近付いていく。
「じゃあしばらくミリムの事は任せたぞシュナ!」
「承知しました」
『ほら、早く行かないとウィンも着せ替え人形の如く色々と試着させられるわよ』
「くっ! 分かったよ」
『アタシとしては、別にこのままでも――』
「ほら、早く行くよライナ! じゃあ楽しんでねミリム」
「うむ色々あって迷ってしまうのだ……これっ、これ着てみたいのだ!」
「はい」
指を指された服を取りながら、朱菜は自分とリムルの事を名残惜しそうに見ている。
その瞳の奥には「次は絶対に逃がさない」と息巻いている様にも感じて、背筋に冷たい何かが走った気がした。
「間一髪だったな」
「リムルは生贄を差し出そうとしてたみたいだけどね」
「いやいや、そんな事はないぞ!」
『次はもうちょっと上手くやる事を勧めるわね。そうすれば今頃、朱菜と二人でウィンと魔王ミリムの試着会を設けられたのに』
「恐ろしいことを画策しないでくれないかな! そうなったら絶対にリムルも道連れだからね。自分よりもリムルの方が似合いそうだし」
「おいやめろ!」
『まぁ次の機会は何時でもあるし、今回は止めときましょうか』
「永遠に中止だそんなもの!」
ライナは妖艶に微笑むだけで、それ以上は何も言ってこなかった。
「ベスターの所に向かう前にさ、カイジンを誘って行こうよ」
「それもそうだな、カイジンもベスターの事は気になっているだろうし、連れて行くか」
これから向かう場所は貴重な魔道具なんかもある。不用意にミリムを連れていって興味本位で魔道具を発動なんてさせられたら大変だ。
朱菜の工房からそう離れていない位置に、カイジンの工房も作られている。
他の家と違って、火なんかを扱うので頑丈で火に強い石造りの家になっている。
「カイジン、居るか?」
「旦那、お嬢、どうしやした?」
「いまから回復薬の研究所へ行く?」
「一緒にベスターの様子でも見に行かないか」
カイジンの方も気になってはいたのだろう、少しだけ考えて一緒に行く頷いて答える。
==自分の杖にリムルを乗せ、アペライオにカイジンを乗せてもらって封印の洞窟まで飛んで行くと、洞窟手前辺りで、リムル体操をしているガビルが見えた。
「リムル様! お待ちしておりました」
「よく無事だったな、お前……」
「いやなに、回復薬のおかげです。はっはっは――、いやぁ、あの時は持っていて命拾いしました」
「一応、殺す気はなかったみたい?」
封印の洞窟にベスターの研究所がある。
なんでも、魔素だまりが近くにあって、安定した気温が保たれている封印の洞窟が一番研究場所に向いているという事らしく、ガビル達も住み着いている此処に、ベスターの研究施設を作ったのだ。
護衛としても、ガビル達が居るので丁度よかったというのもある。
「よう調子はどうだ? ベスター」
「これはリムル様にウィン様、それにカイジン殿。よくぞいらっしゃいました」
【ガゼル王が連れて来た時はビックリしたよね~】
【あぁ、しかもその後、小一時間ほどベスターの謝罪が続いたな……正直、めんどうになって許したが……】
【いまはドワルゴンで見たような、険しさはないよね~】
【ガゼル王が連れてきたのなら、ひとまず信用するとしよう。カイジンの事もあるし】
【ガゼル王ってば、リムルの兄弟子になったのが嬉しかったのか。物凄く構ってくるもんね。未だに弟弟子って感じの接し方だもんねリムル】
事前に訪れる事は言っていたので、回復薬の瓶を取り出して、机の上に差し出してくれる。
「こちらが最新の回復薬です。どうでしょうか……」
リムルがジッと見つめて、鑑定を大賢者さんに依頼しているようだ。
「……俺が作ってるのと同じだ」
「大賢者が?」
ボソッと呟く自分に、ライナに頭を小突かれた。
『そういう茶々はいれないの』
カイジンやベスターには聞こえていないので問題ない。
彼らはリムルの言葉を聞いて、少しずつ噛み締めるように回復薬を見ている。
「ということは……?」
「完全回復薬だ。やったなベスター」
「完成、おめでとう」
「ありがとうございます! ありがとうございます‼」
ガビルが後ろの方で喜びの舞いを踊っている。
【元々、一本気な気質かな?】
【だろうな、過去を反省し、研究に没頭するベスターは信じられるよ】
陥れられようとしていたはずのカイジンも、笑ってベスターと話せるカイジンの器の大きさにも頭が下がる想いだ。
【今のベスターなら、カイジンとも仲良くやっていけるよね?】
【あぁ、そうだな……というか、二人の話が盛り上がって終わる感じがしないぞ】
今まで我慢していた分も含めて、男同士で色々と語りたいのかもしれない。
「このまま、帰ろう?」
「そうだな、じゃあ、あの。俺達は先に帰るね……」
『男同士って、ああいう感じなのかしらね』
ライナが意味深にリムルと自分を交互に見つめながら、ベスターとカイジンをまた見比べる感じで眺めている。
ガビル一人が敬礼して、送り出してくれる。
帰りは飛んで帰らずに、ちょっとした移動方法を試す。
元素魔法の「拠点移動」というワープポータル。
これもベスターが設置した転移系魔法陣だ。
石畳を洞窟の近く、あまり目立たない場所に設置した。
「ミリムを迎えに行かないとね」
「あぁ、後で何を言われるかわかったもんじゃないからな」
『ついでに試着したら?』
「それは遠慮?」
「あぁ、終わりそうにないからな」
ワープして町に戻ってくると、なんか町の中央から、火柱が空へ向かって放たれた。
次の解放テーマ、ワルプルギス終わりまで
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