心にデュエリスト魂を持って転スラ世界に・・・   作:風月八泉

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61話 魔人と他の魔王

 

 

 

 

 

 

 

 

「……えぇ」

『何やってるのかしらね』

「知らないヤツが三人?」

 

 火柱が上がった場所へと急いで向かうと、そこには色々な人達が集まっていた。

 

「ソウエイ」

「ヒータ、大丈夫?」

「っ! リムル様、ウィン様。それにライナ様も」

『あぁ、大事はねぇよ……オレはな』

「この騒ぎは?」

「は、連絡が遅れ申し訳ありません。実は警戒網を抜けた反応がありまして――来てみると、複数人の魔人が広場におりました」

 

 そこで魔人たちがこの町を支配すると言ったらしい。

 

「リーダーらしき男の言葉にリグルド殿が答えた途端……」

「攻撃された?」

 

 血の匂いが風に混じっている。

 自分の言葉にリムルが反応して、すぐにリグルドの方へと駆け寄っていく。

 

「リグルド! 大丈夫か⁉」

「リムル様……っ、いやなに、この程度、どうということもございません」

『いやアンタねぇ。大怪我だから。ちょっとじっとしてなさい』

 

 ライナがすぐに手当てを始める。

 

「殴ったヤツは――」

「あそこで伸びてるよ?」

 

 自分達が来る前にミリムが鎮めていたらしい……たぶん、ワンパンで鳩尾に入ったかな。

 蒼影が言っていたリーダーらしき男が、泡を吹いて倒れている。

 

「リムル様! ウィン様。申し訳ありません。侵入者に気付いたミリム様が飛び出してしまい、止める間もなく……」

 

 人込みから朱菜が顔をだして、ようやくといった感じで走ってきた。

 

「まぁ、本気で動いたミリムを止められる者はいないしな」

「しょうがない?」

 

 ミリムも自分達に気付いたようで、笑顔で駆け寄ってくる。

 

「おおリムルにウィンよ。あやつが舐めた真似をしおったからワタシがお仕置きしておいたのだ」

 

 良い事をしたから褒めてと言わんばかりの笑顔である。

 

「私を庇ってくださったのです。あまり叱らないであげてください……

『はいはい、気持ちは解るけどじっとしててよね』

「……しかし奴らは魔王カリオンの部下だと言っておりました。先に手を出したのは向こうですが、奴らの報告次第では、カリオンのこちらに対する心証は悪くなるかもしれません」

 

 リグルドを守ってくれたんだし、下手に責める事もないんだけどね、問題は別にある。手を出したのは向こうだけど、魔王カリオンとやらを自分達は良く知らない。

 蒼影の言う通りで、相手方が嘘の報告を魔王カリオンにしないという保証もないし、こっちが自己防衛で攻撃したという証拠も提供できない。

 

「……俺の許可なく暴れないと約束していなかったか?」

「うぇ⁉ これは……これは違うのだ! この町の者ではないからセーフ、そうセーフなのだ!」

「残念ながらアウト?」

「だな、まぁ今回は昼飯ヌキで許してやるか」

「ヒドイ! ヒドイのだ‼」

 

 泣きわめきながら、カリオンの部下というリーダーの胸倉をつかんで拳に力を溜めて、八つ当たりをしようとしている。

 

「くそう、これも全てコイツが悪いのだ。一発では飽き足らぬ……っ!」

「待て待て待て⁉」

「昼飯はダメだけど、守ってくれたご褒美でデザートあげるよ?」

「なぬっ! ほんとうかウィン!」

「う、うん……リグルドを助けてくれたんでしょう?」

「そうなのだ! ウィンは話がわかるなぁ」

 

 なんとか落ち着いてくれてよかった……ちょっとリムルに睨まれたが、暴れられるよりは遥かにマシだと思うな。

 

【あんまり甘やかすなよ】

【今回は守ってくれたお礼はすべきでしょう?】

 

 ちょっと呆れた溜息をつかれたが、概ねリムルも同意という感じだろう。

 

「はぁ、今回は仕方がない。けど、次は勝手に暴れるなよ」

「わかってるのだ!」

「ともかく、場所を移すべき?」

「一応、あちらの言い分も気になるしな」

 

 ちなみに、自分とリムルが見た火柱、あれはミリムに気付き、慌てた男が繰り出した「豹牙爆炎掌」という技らしい。

 ミリムの覇気とヒータの魔法操作で、上空に巻き上げられて飛散したものらしい。

 

 簡単にミリムにのされた姿を見ていたから、大したことはなさそうに見えていたけれど、リーダーの男、名はフォビオ。

 

〈警告。個体名、フォビオの魔素量は個体名、ベニマルを上回ります〉

 

 という大賢者さんからのお告げがあった。

 

 

 

   ★☆★☆  ★☆★☆

 

 

 

 

 フォビオが起きて、話し合いの席に着くまで待ってから話を聞く感じになっているが……空気が悪い。

 

「おぉ、これも美味しい!」

「そう? ありがとう」

 

 ソファーの上でミリムのご機嫌取りをしながら、新作スイーツをミリムに渡す。

 新作と言っても、サツマイモを使ったスイートポテトなんだけどね。

 

「……で、君達は何をしに来たんだ?」

「スライム風情に答える義理はないね」

 

 あいかわらずリムルは皆に侮られるね。

 妖気をほぼ絶っているから、仕方ないと言えばそうかもしれないけど……リムルの事を見破れないなら、自分とリムル以下って事になるんだよね。

 あぁ、リムルを馬鹿にした態度に鬼人達が怒っている。

 

「いいから下がってろ」

「はっ……」

 

 リムルの一言で紅丸達が妖気を抑える。

 

「は! こんな下等な魔物に従うのか、雑魚ばかりだと大変だな!」

「そう言うからには、お前の主はさぞ大物なんだろうな」

「ああ? 当たり前だろ。お前、カリオン様を知らねぇってのか?」

 

 自分が上だと勘違いしている人物は印象も最悪だね。

 

「知らないよ?」

「あ?」

「すくなくとも、他者に敬意を払えない程度の低い王って事は分かるけど?」

「何だと⁉」

「自分の言動が、自身の王を貶めてると知った方が良いよ?」

 

 キィーンと風で作り出して、圧縮した刃が異様な音を鳴らしてフォビオの周りを覆う。

 フォビオとやらも、その音が発するモノの異様さと、魔素量に気付いたのか一気に身を固くして、息を呑んでいる。

 

「ウィン、おふざけもその辺にしとけよ」

「ん? 別にふざけてないけど?」

「なお悪いわ!」

「むぅ~しょうがないな……」

 

 指をパチンと鳴らして、風の刃を消し去る。

 リグルドにだって謝ってないフォビオを懲らしめてやろうと思っただけなのに。

 

「お前も、言葉には気をつけろよ。そもそも先に手を出したのはそっちだ。お前の態度次第では今すぐ俺達は敵対関係になる。このジュラの大森林全てを敵に回す判断を、カリオンではなくお前が下すのか?」

 

 自分が初めに相手の出鼻を挫いてから、リムルは畳み掛けるように忠告する。

 

「……っち、スライム風情が吹かしやがって」

 

 フォビオはそう言いながらも、先ほど見せられた自分の力にビビったのか、チラチラとリムルではなく、自分の方へと視線を向けながら冷汗を流している。

 ただ、リムルに言われた事も少なからず、理解している様子ではある。

 カリオンの名を出されて、自身が勝手に決める事かと問われて少しは冷静になってくれている様子だった。

 

 大賢者さんの見立てでは、フォビオと戦闘になってもリムルと自分なら勝てるという。ただ倒してしまうのは簡単だけど、その後に魔王カリオンの怒りに触れる事は間違いないだろうし、それで戦争になるのは嫌だな。

 

「なんなら、樹妖精を呼んで俺の支配領域を証明しようか?」

 

 フォビオが連れていた者達も、ちょっと焦った様子で彼に語り掛けている。

 

「フォビオ様……」

「……ここへはカリオン様の命令で来た」

 

 フォビオも部下達に促されて溜息を吐き捨てながら、話し始める。

 

「おい、フォビオとやら、スライム風情といったな。ワタシの友達を見下すような発言はゆるさ――」

「ミリム、お前今度なにかしたらマジで晩飯抜くからな」

 

 リムルが遮るように言うと、大人しくソファーに座り直してくれる。

 ちょっとしゅんっと下を向きながらスイートポテトを摘まんでいたので、思わず頭を撫でて元気づけてあげる。

 

「遮って悪かったな。続けてくれ」

 

 フォビオの方も戸惑いながら、話しを続けてくれる。

 終始、リムルと自分の方を見ながらもミリムとの関係性も気になる感じで見てくる。

 

 大まかな話を省略して言うと、フォビオ達は自分やリムル、そしてその配下である紅丸達をスカウトしろと命令を受けてやってきたらしい。

 より正確に言うなら、オークロード戦いで生き残った方をって感じらしい。

 

 つまりは湿地帯での戦いを、ミリム以外にも魔王が見ていたって事だろう。

 

【これは、ミリムにも話を聞く必要がありそうだね】

【あぁ、是非とも話してもらわないとな】

 

「魔王カリオンに伝えてくれ、日を改めて連絡をくれれば交渉には応じる、と」

 

 フォビオは物言いたげにリムルを睨みつけているが、何も言わずに席を立って部屋の外へと向かって歩きて行ってしまう。

 まぁ彼では頭脳戦や交渉には向かないだろう、脳筋すぎる所もある。

 普通、スカウトに来るならその配下に手を出しちゃあダメでしょうに……関係が拗れるだけで終わるって分からないのだろうか。

 

 部屋を出ていくときに、チラッとミリムの方を見た気がした。

 

「……きっと後悔させてやる」

 

 物騒な事を言って、部屋から出ていった。

 彼らが去ったのを確認いしてから、ミリムの方にリムルがよっていく。

 

「よし、ミリム。魔王カリオンについて話が聞きたい」

「それはリムルにも教えられないぞ。お互い邪魔をしないという約束なのだ!」

 

 ミリム……それは秘密があると自白している様なモノだって気付いて欲しいな。

 

「カリオンだけとの約束か? それとも他の魔王も関係してるのかな?」

「いや、それは……」

「教えてくれないの?」

 

 ちょっと落ち込んだ感じの演技をしながら、上目遣いでミリムの方を見ると、なにやらアタフタした感じで、悩んでいる。

 リムルの方をチラッと見る。

 

「教えてくれないかー、残念。マブダチとして知っときたかったんだけどなー。ほら、俺達が知らずに邪魔しちゃうかもしれないしさ」

「約束……でも、マブダチ……」

 

 もう一押しっぽい。

 

「そうだ、今度ミリム用に武器を作ってやるよ。親友の証としてさ」

「本当か⁉」

「やはりマブダチが一番なのだ! なんでも聞くがいい!」

 

「おう、じゃあさっそく――」

 

 

 ミリムさんや、こんな簡単に騙されちゃって……嬉しい思いもあるが、ちょっとだけ心配になっちゃいますよ。

 もうちょっとだけ、人を疑う事を覚えさせた方が良いのだろうか……いや、しかしなぁ。これがミリムの良さでもあるし、ちょっと悩ましい問題だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の解放テーマ、ワルプルギス終わりまで

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