心にデュエリスト魂を持って転スラ世界に・・・   作:風月八泉

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63話 季節の変わり目と収穫時期

 

 

 

 

 

 

 毎日、どこかしらで物が壊れる音が聞こえる日常が当たり前になってきているが……今日はゴブタの悲鳴が響く日だった。

 

「どうした! ゴブタが何かやらかしたか⁉」

「ちょっ!? 開口一番、何ㇲかソレ⁉」

「いや、ゴブタだし?」

『というより、彼女に殴られてよく無事よね。ゴブタ』

「お前、意外とタフだな」

 

 

 ミリムに殴られて、積んであった角材へと吹き飛ばされてめちゃくちゃになっているのに、ゴブタはしっかりと起き上がってリムルに抗議している。

 顔はぷっくりと膨れ上がって変形しているようだが、ミリムの攻撃を受けて立てる者はそう多くないだろうにね。

 

「皆を代表して、紳士的なアドバイスをしただけっスよ?」

 

 ゴブタは顎を撫でながら、無駄に気障っぽい雰囲気を醸し出していう。

 

「何を言ったの?」

「えっと……ちょっとお耳を……」

 

 リムルとライナも一緒に耳を近付けて話を聞く。

 

 警備隊仲間のゴブリン達がひっそりと教えてくれた内容は――「ミリム様、今日の服似合ってるっㇲ! この前のアレはもっと、豊満な女性向けっスからね!」という内容だったらしい。

 

 いつの間にやら、もう一発ゴブタが角材の方へと殴り飛ばされていた。

 無言でミリムがこちらを見てきたので、首を振って普段の姿も可愛らしいと皆して言いながら、しばらくゴブタがサンドバッグにされるのを見ていた。

 

 その場には黒兵衛やドワーフ達もいて、しっかり皆してフォローしながら服装を褒めて、機嫌を直してもらった。

 ボコボコにされたゴブタは、試作回復薬の実験台として連れて行かれようだ。まぁ、自分の仕事は終えたという感じで、爽やかな顔をして運ばれていったので、大事には至らないだろう。

 

『魔王ミリムにも認められるゴブタのタフさって……何なのかしらね?』

「俺にきかんでくれ」

「耐性は色々持ってるよね……毒耐性とかも……」

「ベニマルと俺に続いて、シオンの料理を食べれる貴重な存在だからな……」

 

 偶に紅丸がつかまら――忙しかったり、体調不良で食べられない時に、駆り出されるゴブタの姿を何度か見たことがある。

 

「こちらの木材……加工場に運びますね」

「あぁ、すまんなゲルド」

「ごめんね」

 

 廃材となってしまった木材を、薪や別の用途に使う為にささっと警備隊メンバーが片付けて、纏めたモノをゲルドが担いで持って行ってくれる。

 

「お前は……オークロードに近しい者だな」

 

 ミリムがゲルドをジッと見つめながら語り掛ける。

 

「それだけの力があるのに、何をチマチマとやっているのだ? 武をもって威を示したいと思わないのか?」

 

 ゲルドは少しの間、何も言わずにミリムを見つめてゆっくりと喋り出した。

 

「それは……面白いことなのか? 毎日を楽しめることなのか?」

 

 ここへきて自分やリムルにも言われた事を……今度はゲルドにも言われている。

 ミリムはすぐに返答できないでいた。

 

「これは、ワタシに与えられた仕事ですから。ただ、言えるとすれば……何かを作り出し、残すのは、甲斐がある」

 

 ゲルドはミリムの事をしっかりと見据えながら、臆することなく語る。

 

「ふーん……よく、わからないのだ。もうちょっと見てていいか?」

 

 ミリムは少し難しい顔をしながら首を傾げて、興味深そうにゲルドを見る。

 

「どうぞ」

 

 ゲルドは短く答え、すぐにミリムに背を向けて仕事を黙々とこなしていく。

 

「なんか良く分からんが、興味がゲルドの方に移ったな」

「しばらくは大人しくゲルドを観察してる……のかな?」

『まぁ、様子を見るしかないでしょうね』

 

 それからずっとミリムは仕事をするゲルドの背中をずっと見ていた。

 

 周りに指示をだし、積極的にモノを運んで、建物の柱を支えたり、細かな場所に釘打ちしたり、休憩時には子供のゴブリン達に群がられて遊んだりとしているゲルドの姿を、ミリムは何も言わず、少し遠目から観察していた。

 

 

 

「ああっ、ミリムの奴また寝ちまったのか。魔王のくせに」

「興奮して疲れたんですよ。目新しい物や多くの住人に囲まれましたから」

「子供?」

「子供でいいんですよ。永いながい時間を生きるには心を老いさせない事です。自由に生き感情を高ぶらせ、退屈を嫌う事です。リムル様、ウィン様のお好きな生き方ですよね?」

 

 トレイニーさんがにこにこと笑い、リムルが足場に使っている木箱を支えて言う。

 

「前にそんな話したっけ?」

「でも今の俺達、魔王じゃなくても国の盟主だから、自由の前に責任ってやつがあるんですよ」

「……立派になられましたね、リムル様」

「あの、自分は帰っても……」

「うふふ、責任を持って看板を直してくださいね」

「壊したのは俺達じゃ……」

「犯人はいま後ろで寝てるよ?」

「盟主兼「ミリム様係」ですよね?」

「それはリムルだけ……」

「お前も同罪じゃい。くそぅ! ライナはどうした!」

「……仕事があるって途中で逃げた?」

「捕まえとけよ!」

 

 ゴブタをぶちのめした被害に、樹羅の店看板を破壊してしまったのだ。ゴブリナ達に応援されながら、破壊してしまった看板を一生懸命に修理している最中だったりする。

 

 

 

 

  ★☆★☆  ★☆★☆

 

 

 

 

「え~、昔から――衣食足りて礼節を知る、と、ある。腹が満たされていれば心に余裕が生まれ余計な諍いもなくより良い国となれる。テンペストもぜひそうありたい」

「秋は実りの季節だが同時に冬へ備える大事な時期?」

「あぁ、今日は皆で力を合わせて収穫に臨もう!」

「えっと、続いてゲストに――」

「春からずっと待っていました! 芋です! 今日は芋を沢山、掘りましょう!」

 

 トレイニーさん、ポテチ大好きだからね。

 会うたびにパクついてる気がするくらい、いつもポテチを持っているきがする。

 サツマイモも安定した量の蓄えがあることだし、栗の方も蒼影達が持ってきてくれるだろうから、新しいスイーツでもプレゼントしようかな。

 

「え~次に――」

「ワタシに美味―なものを食べさせるのだ!」

「自由だな! ゲスト陣! 手伝えよ⁉」

 

 あ、ついにリムルがツッコミを入れた。

 挨拶も済んだので、各自が決められた畑の作物を収穫しに動き出した。

 

 エリアとライナは収穫した作物を腐らせないように保存と防腐の魔法をかける為に、木箱や袋に魔法陣を描く準備をしている。

 

 レイとヒータは紅丸や白老と共に周辺の警備。

 御巫達と朱菜は作業をしてくれている者達の為に、料理を担当してもらっている。ついでに何かあった場合に備えて、救護班的な立ち位置だ。

 

 生産管理担当のリリナは木簡を手に持ちながら、各場所の割り当てを説明しながら指示を出して、ゴブリン達を各所に移動させている。

 アウスもリリナの手伝いとして、隣に立ちながらリリナの補佐をしてくれている。

 

【機転が利いて働き者。なにより美人だ】

 

 確かにリリナは長いストレートヘアーのサラサラした髪で、女性らしい抜群のプロポーションをしている。

 

「あ……」

 

 ちらっと見た先にゴブタと数名がサボっているのが見えた。

 

「ほんらほらほらほら、そっごぼんつく共! のさぐさしでっどあーっちゅ間ぁに日ぃ暮れっちまうど! リムル様とウィン様ん前でこっぱずかしいーナリ見したーしゃーで? 畳んで刻んで畑ん肥やしぃなっが⁉ あ? ちゃーんど働ぇで美味ぇまんまぁ喰いてぇべ!? そうだべ!?」

「ふぁっ! ふぁいっ!」

 

 いつもお淑やかな印象しかないリリナからは想像し辛い圧と訛りが入った喋りに、リムルが驚いている。

 ゴブタの鼻を摘まんで体を持ち上げ、他のメンバーも顔面を鷲掴みにしながら、別の者は足技でのされている。一連の動きは凄く綺麗なのに、やっている事は恐ろしい。

 

 ゴブタ達は急いで踵を正して自分達が割り振られた畑へと一目散に駆け出して行った。

 

「作業は順調です」

「あ、はい」

 

 ニッコリと何時もの清楚で可憐なリリナの姿に早変わりする。

 リムルも返事しか出来ずに、思わず答えたといった感じだった。

 

「相変わらずですなぁ……昔から」

 

 リグルドが見惚れながら呟くように言う。 

 

「……昔っからなんだ」

『ボクも初めて見た時は驚いたよ』

 

【有能だね?】

【あ、あぁ……あんな一面もあるんだな】

 

 別の方から物々しいオーラが漂ってきて、リムルと一緒に振り返る。

 

「たとえミリム様でも、今日という今日は容赦しませんよ」

「大きなクチを叩くではないか一本角の!」

「シオンです」

「そう、それ! ワタシの腕は十大魔王随一と言われているのだぞ! ……芋掘りの」

「ジュラの森に知れ渡る伝説の鬼神とは私の事です! ……芋掘りの」

 

「「いざ勝負‼ 芋掘りの‼」」

 

 サツマイモの畑で芋掘り勝負を開始した紫苑とミリムを、どうしたものかとリムルと一緒に眺める。

 

「君たち、それでいいの?」

「はかどるから、いいんじゃない?」

『そういう問題? はぁ、ボクが二人を見ておくよ……アレはデザートにも使われる芋だからね。無駄には出来ない』

 

 リムルがアウスを見る目に「君もそれでいいの?」と語っていた。

 自分はとにかく沈黙を選んだ……ここで下手な事を言うと、ミリムと紫苑あたりが勝手に「勝者にはウィンのデザート」とか言い出しかねないからね。

 

 ……一方、ジャガイモ畑では。

 

 

「ど、ドライアド様に芋掘りをさせるなんて……」

 

 リグルドが恐れ多いと説得している様子だが、トレイニーさんはニコニコと笑いながらせっせと芋を掘っている。

 

「いいんですよ♪」

 

 物凄く楽しそうなので、あっちは放っておいても問題なさそうだ。

 

『ねぇねぇ見て下さい! 大量ですよ主様!』

『何言ってるのよ! 私の方が多く採れていますわ!』

『……質は、一番』

「わぁ、大収穫ですね!」

 

 料理班は人数が余ったようで、御巫達が散策班を結成してリグル達を連れ出し、タケノコやキノコ類に山菜を沢山採って来てくれたようだ。

 朱菜は沢山採れた品々を見ながら喜んでいる。

 

「この色、この形、この香り、でかしたぞ!」

 

 リムルが松茸を掲げて喜んでいるが。

 

「いや……そんなのそこら中に生えてるっスよ、珍しくもないっス」

 

 ゴブタの一言にリムルが固まる。

 

「一応、採ってきただけですね」

「あんまり美味しいとは思えませんし」

「よろしければ、お好きなだけどうぞ」

 

 あぁ止めてあげて、リムルが徐々に小さくなっていく。

 

「おまえ、変わってるな」

 

 ミリムにも言われている。

 

「あ~、ほら、それで茶碗蒸しでも作ってあげるから」

「ウィン~、お前だけだよ。みんな時々つめたいんだ~」

 

 松茸は下処理と味の出し方のコツを知らないと、美味しくはないからね。

 昔の日本みたいな感じなんだろう。

 シイタケの栽培方法でも教えたら、きっと皆も松茸の良さに気付いてくれる。

 松茸は人工栽培が難しいモノだから、手に入りにくいって分かれば、だが……この世界にはトレイニーさんみたいな樹妖精が居るからなぁ……松茸の栽培も楽に出来そうでは、あるんだよね。

 

 ……シイタケの方が美味しいとは、自分も思ってしまうけど、それはリムルには言わないでおこうかな。

 

 

 リムルの頭をなでなでしながら、松茸の炊き込みご飯も良いなと考える。

 

 

 

 

 

 

 

 

次の解放テーマ、ワルプルギス終わりまで

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