心にデュエリスト魂を持って転スラ世界に・・・   作:風月八泉

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66話 英雄と契約

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっといいかフューズさんとやら」

「はっはい⁉」

「オークロードが倒されたという情報は既に知れ渡っているのか?」

「あ、いや……使者殿が来た時、その場に居合わせたのは私と、この三人だけです。知らせたのはブルムンドの国王と一部の大臣のみ、一般に発表はされていません」

「確かな情報を得る前の発表は混乱を招く?」

「そうです、余計なトラブルが起こりかねないので……」

 

 フューズは話しながらカバル達を見る、呆れと怒りの視線を向けるも……三人はポテチに夢中で気付いていない。というか、山盛りにしていたポテチが無くなっている。

 

「なるほどな、それなら好都合だ」

 

 エレンが余っている場所のポテチを求めてヨウムの近くに寄っていく。ヨウムもいくつかポテチを取り分けて、残ったポテチを器ごとエレンに渡していた。

 

「それじゃあ、決定でいいかも?」

「という事でヨウム君」

「あ? なんだよ」

 

 ポテチを食べながら此方に耳を傾けているヨウムをジッと見ながらリムルが笑う。

 

「君、英雄になる気はないかね?」

 

 ヨウムとロンメル達の動きがピタッと固まった。

 

「英雄になれだって? この俺に……? なに言ってんだアンタ……」

「別に強制じゃない? これはお願い?」

「いや、つったってよ……」

「そこのフューズさんが言ってたろ? オークロードを倒したのが魔物じゃ、脅威が去ったとは言えないって」

「なら人間が倒した事にすれば解決? ヨウムとその仲間たちが豚頭帝を倒したってことにしてもらった方が色々と都合がいい?」

「はぁ……⁉」

 

 フューズの方もリムルや自分が何を言いたいのか、まだ良く分かっていない様子だ。

 

「オークロードに挑もうとする勇敢な若者たちを支援し、武器、防具、食料を提供した魔物たちの国。人間とも仲良くしたいウチとしては、そんなポジションが望ましいんだよね」

「ドワルゴンの後ろ盾があって、カイジンとベスターが居る魔物の国からの協力支援、お偉いさん方に説明するにも、信頼性を証明できると思うよ? ……それに、伯爵を困った顔と追い詰める事にも利用できる?」

 

 ロンメルが眼鏡のレンズを光らせ「なるほど」っと、悪い顔をしていた。

 フューズの方も少し考えてから、何かを決心した様な顔付になる。

 

「……その計画、ブルムンド王国も協力できるかもしれません」

「え? ホントか?」

「知り合いの大臣に掛け合えば、周辺諸国へ噂を流すことくらいは出来るでしょう」

 

 ヨウムがフューズの言葉を聞いて、息を呑んだ。

 

「……っ! おいおい、アンタまでなにその気になってんだ⁉ こいつら、魔物だぞ⁉」

「君の困惑も理解できる、だが……彼らとの友誼を得ることは人心の混乱を避ける以上の意味がある」

「どういうことだよ」

「ひとつ、教えよう。我々が知り得た情報では、この国の国民一万余は一人残らず全てネームドモンスターだ」

 

 フューズはたぶん、カバル達から話を聞いた事をそのままに伝えているだろう。

 ヨウムやロンメル達が驚きで目を見開いている。

 

「彼らがその気になれば、この場にいる我々はおろか……国が一つ滅びてもおかしくはない」

 

 脅すつもりはないのだけれど、フューズが言っていることは事実なだけに自分達からは何も言えない。

 リムルも少し不満という感じでフューズの話を聞いている。

 きっと、心の中では「こんなに愛らしいのに」とか思ってるね。さっきからスライムボディを主張する様にプルプルと震えているからね。

 ヨウムの方も、それ以上の言葉を飲んで静かに椅子に座る。

 

「先ほどの計画、私としては前向きに検討したい。もちろん貴方が本当に人間の敵ではないことが大前提ですがね」

「それは当然だな。なんならしばらくここに滞在するといい。この国のことをもっと知ってもらいたいし」

「ああ、それは助かります」

「君もだよ? ヨウム?」

 

 考えごとで頭がいっぱいというヨウムには悪いが、この計画の要はヨウム次第で決まるのだから、勝手に話を進めながらも、彼にはしっかりと聞いてもらわないといけない。

 

「この計画の要は君だ。良い返事をもらえたら嬉しいが、無理強いするつもりはない」

「……ガラじゃねぇよ。俺に勇者の真似事でもしろってのかよ」

「“勇者”は駄目だぞ。あれは魔王と同じで特別な存在なのだ。勇者を自称すれば因果が巡る。長生きしたければせいぜい“英雄”を名乗ることだ」

 

 ミリムが勇者という言葉に反応して、説明してくれる。

 ――というか、ミリムさんや……貴女は自分とリムルに魔王を名乗らせようとしてなかったかな? その説明は初めて聞いたよ。

 

「なんだガキ? 大人の会話に口を――」

 

 ヨウムの「ガキ」という言葉に反射的に手がのび、拳の先から軽い波動と打ち出した。

 

「「「「あっ……」」」」

 

 リムルと紅丸達が同時に声が出ていた。

 

「ミリム……」

「ミリム様……」

 

 自分と紫苑に半目で見られて、潤んだ瞳をこっちに向けてきた。

 

「お前、このタイミングで暴力とか……」

「ち、違うのだ! あいつがガキとか言ったから……っ」

 

 必死に言い訳を探しながら両手をワタワタさせている。

 

「紫苑のこと言えないね、ミリム?」

「うぐっ!」

『あはは――はぁ笑った。とりあえず、回復するわよ』

 

 ライナがヨウムの頭に出来たたんこぶを癒していく。

 

「二度も殴ったせいで、信用できないかもしれない?」

 

 ちょっと意地悪だが、二人は今後とも反省をしてほしいのであえて口に出して、ミリムと紫苑の方をチラ見しながら、ヨウムに話しかける。

 

「あ~、本当に無理強いするつもりはないんだ。ちょっと考えてみてくれ」

 

 ヨウムはまだ決めれらない様子で、机を見つめながら小さく口を開いた。

 

「……外に出てもいいか?」

「もちろんだ」

 

 ヨウムが一人、部屋を出て町の様子を見に出ていった。

 

「宜しいのですか?」

「監視は蒼影だけが見てればいいよ。自分達が近くにいたら町の様子も、ヨウム自身が見たい魔物達の事も、見えてこないでしょう?」

「君は一緒に行かなくていいのかな?」

 

 ロンメルはこの部屋に残っていた。

 

「はい……ヨウムさんの事を見初めて頂いただけでも、ぼくには貴方達を信じる価値がありますからね――オークロードの軍勢に見つかり、調査団は全員死亡……伯爵にはそう伝えろとヨウムさんに言われました」

「なるほどな、死んだことにすれば追手もかからない、か」

「はい、私は報酬をもらったうえで、彼らと合流する手筈でした……でも、団員達を前にヨウムさんはいったんです。「どうせファルムスに戻ったって元の強制労働が待ってるだけだ、それが嫌なら俺に付いてきな」って」

「あらー、男前じゃん」

「ちょっと、言えないですよねぇ。……でも、不思議と説得力を感じたんです。その時にはもう彼が仲間を大事にする男だと知っていたからでしょうか」

 

 ヨウムの事を嬉しそうに語るロンメルに、部屋の中に残った面々も微笑ましくみていた。自分を除いてだが……。

 

「ロンメル? 悪いけど、君からも説得をした方がいいよ?」

「ウィン?」

 

 リムルが急にどうした? と戸惑いの視線を向けてくる。

 

「伯爵の所に戻っても、君は消されると思う? 下手をすると、報酬を渡す現場を抑えられてヨウム共々、全員お縄で伯爵の大勝利で終わる?」

「……え?」

「どんなクズでも、伯爵の地位について今までバレずに着服をしている相手? 悪知恵なら当然、伯爵の方が遥かに上だよ? 君は伯爵の汚職について知っていた。それはきっと伯爵自身も気付いている可能性が高い? 戻った所で殺されるのがオチかな?」

 

 少なくともロンメルは優秀な部類の人間だ。

 この若さでしっかりと物事を考えられているし、魔法の腕も中位から上の方だろう。

 契約で縛る魔法もそうだが、普通なら二人ないし、三人で抑える所を一人だけなんて、まずありえない。

 

「そして多分、君たち辺境調査団の中にも伯爵から依頼を受け、逃げ帰って来いと命令を受けた者が居るかもしれないよ?」

「おいおい、マジかよ……」

『ふふ、そっちは大丈夫よ。変な動きをしている奴ならフゥリとソーカ達が捉えてるからね。情報は持ち帰られて無いわよ』

「ありがとう?」

 

 ロンメルの方も思い当たる節があるのか、顔色を悪くしていた。

 

「随分と静かだと思ったら、そんな事をしていたのか」

『まぁね。これでもウィン一番の相棒なんだから当然でしょう?」

 

 ミリムに自慢するように胸を突き出しながらドヤ顔を向ける。

 その様子にミリムが少し苛立っていた。

 

「捕らえた輩はロンメル達の方に任せる?」

「すみません、ありがとうございます」

「貸し一つ?」

「あはは、そうですね」

「お前なぁ……」

『まぁ良いじゃない。ヨウムが話を受けなかった時の切り札ってヤツよ』

「うん、でも……出来るなら、ヨウム自身で決めてほしいな」

「ウィン様。本当にありがとうございます‼」

「ウィンの姐さん、ありがとうございやす‼」

 

 ロンメルがお礼を言うと、急に扉を開いた他の調査団達が頭を下げてきたので、びっくりしてライナの後ろに隠れてしまった。

 辺境調査団の荒くれ者達も話を盗み聞きしていたようで、見た目がちょっと怖い人達の野太い声にビビったのは仕方ないと思う。

 

『はいはい、怖くないから大丈夫よ』

 

「いや、ちょっと驚いただけだから」

 

「まぁアレはビビってもしょうがないだろう。俺でもビックリするもん」

 

 

 

 

 

 

 

次の解放テーマ、ワルプルギス終わりまで

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