心にデュエリスト魂を持って転スラ世界に・・・   作:風月八泉

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67話 英雄となる決意

 

 

 

 

 

 

 

   ♦♦♢♢ 視点:ヨウム ♦♦♢♢

 

 

 

「お兄さん、これどーぞ」

 

 毛皮の帽子をかぶった小柄なゴブリナが串焼きを手渡して来た。

 

「リムル様とウィン様のお客様でしょう。食べて食べて♪」

「良いのかよ?」

「うん、それにどうせ今日は鍋パーティーになるっぽいからさ、串焼き肉があまりそうなんだよね~。私も後で行こうと思ってるんだけどさ」

 

 ――いきなり英雄になれだの、ふざけた事をぬかすスライムと、良く分からねぇ美少女の魔法使いを主と崇めるゴブリン達。

 勢いにおされて思わず受け取っちまったが……毒じゃないだろうな。

 

 じっと見つめていた串焼きの肉からは、いい匂いが漂ってくる

 

 ゴブリナの嬢ちゃんは期待した眼差しを向けてくるし、無下には出来ない。

 

 ――変な味がしたらすぐに吐……っ⁉

 

「うっっっめぇ!!」

「でしょ? リムル様もウィン様も絶賛した串焼き肉なんだから」

「味付けのヒントはウィン様から貰ったものだけどな」

 

 屋台で串焼き肉を焼いているホブゴブリンがボソッと呟く。

 会議室で食べた軽食も上手かったが……こいつもかなり美味しい。ウィンっていうのはあの美少女魔法使いのことだよな。

 

 串焼き肉をジッと見つめながら、ナイトスパイダーから助けてもらった時の事と、会議室にいた彼女の事を少しだけ思い出す。

 

「……なぁ、リムル……さんと、ウィンのお嬢……さんって。どんな、人なんだ?」

 

 串焼きを渡してくれたゴブリナに、それとなく聞いてみる。

 

「そうねー。リムル様は、なんていうのかなー……あ、とっても大きなお方、かな? 見た目は小さくて可愛らしいんだけどね」

 

 ――……うん、まぁ。可愛らしくは、ある……か。無害で喋るスライムだしな。

 

「ウィン様はねー、面白いお方だよ。遊ぶことが大好きで、色々な遊びでこの町の皆を笑顔にしてくれるの! 訓練だって遊びみたいなモノもあってね、やってて全然苦にならないんだから」

 

 ――あの嬢ちゃんの実力は……はっきり言って化け物レベルだろう。ナイトスパイダーを無詠唱の風魔法一つで殲滅していたからな。

 それが、遊び大好きな年相応の嬢ちゃん……ねぇ。

 つうか、訓練が遊び感覚っていうのはどういうことだ……いまいち分からねぇ。

 

 物思いにふけっていると、背中からドンっ! っと、急に衝撃が与えられて、串焼きを地面に落っことしてしまった。

 

「いってーな、なんっ……っ!」

「すまない」

 

 物凄くデカいオークが居た。

 黒のマントに、筋肉質な体だ……いや、それよりも――。

 

「肉を落としてしまったな。申し訳ないことをした」

 

 ――オークってこんなに理性的な魔物だったっけ⁉

 

「詫びだ」

 

 そういってオークから串焼き屋台で貰った串肉を倍々の数が手渡される。

 

「いやいや、多すぎだろ‼」

「客人を空腹にさせるわけにはいかない」

「なんのポリシーだよ‼」

 

 少し返そうと思ったが、黒マントのオークは受け取らなかった。

 

「ゲルドさん、町にいるの珍しいね」

「リムル様とウィン様に休めといわれてな。工事の進捗が気になって落ち着かないのだが」

「あはは、リムル様とウィン様に気持ちも休めろっていわれてたじゃん」

「うむ……分かってはいるのだが」

 

 あのスライムと魔法使いの嬢ちゃん……遊ぶだけじゃないのか。

 家を作っているオーク達にも声掛けなんかしてるってことだよな。

 

 これ以上、ここに居てもなんだから串焼きを貰って礼だけ言って、さっさと他の場所を見て回ろうと、足を進める。

 

「あら、リムル様のお客様ですよね?」

 

 なんか物凄く美人のゴブリナに話しかけられた。

 

「リンゴ、お一つ如何ですか?」

「あ、あぁ。もらって良いのか?」

「はい、どうぞ。こちらのリンゴは甘くて美味しいですよ」

「こっちの? じゃあこっちのリンゴは?」

 

 籠の中には二種類のリンゴが入っていて、真っ赤に実っているのに、少しだけ形と色味が違う種類のリンゴが入っている。

 

「こちらはウィン様の試作品ですね。なんでも加熱して甘味を出すリンゴだそうですよ。お菓子作り専用で、これでリンゴのパイなるものを作ると、美味しいらしいですよ。初めから甘味が強すぎるとダメって仰ってました」

「加熱すると?」

「このまま食べても、酸味が強いんです。ですから生で食べるのではなく加熱処理をするそうです」

「へぇ……」

 

 あの嬢ちゃんも色々とやってるんだな。

 つうことは、あのポテチとかいう軽食もウィンの嬢ちゃんが作ったのか。

 

『リリナさ~ん。リンゴの方はどうでした?』

「はい、このとおりしっかりと実ってましたよ」

『よしっ! これでウィンちゃんにリンゴのパイを焼いてもらえる♪』

「ふふふ、エリアさんったら」

『ちょっとエリアさん! 一人で抜け駆けは駄目ですと申しましたわよね!』

『えへへ~、ごめんってニニちゃん』

『まったくもう、気をつけてください』

「はいはい、お二人とも、お客様の前ですから控えて下さいね。すみませんね、それでは私達はこれで失礼させていただきます」

 

 美人でナイスバディなゴブリナが綺麗なお辞儀をして去っていった。

 

『邪魔しちゃってごめんね、それじゃあ町を楽しんでいってね~』

『申し訳ありませんでした、うちのエリアさんが……引き続きこのリムル中央都市をお楽しみくださいましね』

 

 ……まったく、なんなんだ……つうか、異常に美人やら美少女が多くねぇかこの町。

 

 警備隊っぽい奴らも居るが、楽しそうにしながらもしっかりと町の為にと見回りをしてやがる……、屋台や町の店なんかにも声を掛けているが、明るく活気の良い町だってことはこの俺にだって分かるくらいだ。

 

「どうだこの盾! 刻んでみたんだ!」

「お守りかぁ。良いなっ⁉」

 

 肉の脂分を吸い取るように、サッパリと美味しいリンゴの甘味が口の中に広がる。

 

「ただの果物が、このレベルかよ……なんなんだ、マジで」

 

 少し歩けば――、

 

「あ、さっき議事堂の方に行った人だよね?」

「ほんとだ、リムル様とウィン様のお客様だな!」

「どうです、リムル様饅頭、お一つ食べてってくださいよ」

 

「あ、あぁ。貰って良いのかよ……」

「リムル様とウィン様が連れてきたお客様でしょう。もちろんです」

 

 この町のやつらときたら……だれもかれも、リムル様ウィン様と二人の名前を聞かない時間がないほどだ。

 

「あ~! お兄さんってウィン様が連れてきたひと~?」

「リムル様のお友達?」

「ウィン様が連れてきたって事は、ウィン様のお友達なんじゃない?」

「それじゃあ一緒に遊ぼ~」

 

「いや俺は……」

 

 いつの間にやらゴブリンの子供やオークの子供達が大量に集まって来ていた。

 

「悪いがちょっと用事があるんでな」

 

 串焼きを銜えて走り出すと、子供達は追いかけっこと思ったのか、はしゃぎながら付いてくる。

 

 ある程度は早く走っているつもりなのに、魔物の子供達は楽しくはしゃぎながらしっかりと付いて来ている。

 そういえば、会議室での会話でこの町の魔物達はネームドだと言っていたが、まさかこんな子供達も含め、全ての魔物に名前が付いているのか。

 

『こ~ら~、みんな止まりなさい。あの人はリムル様と主様のお客様なんですから。ご迷惑をかけては駄目ですよ!』

『……ん、皆はハレと私と遊ぶ』

 

 これまた着物を着ている美少女二人が間に入って、子供達をなだめてくれる。

 緑色の狐っぽい子が手を振って、早くこの場から逃げるように促してくれるので、それに従って少しだけ礼をしながら手を振って答える。

 

 町の中にいたんじゃあ、いつまで経ってもリムル様とウィン様のお客様ってだけで色々と声をかけられたりするんで、町全体を見回せる、ちょっとした丘上の方へと自然と足が向かって行ってしまった。

 

「なんでこんな所に一本だけ木が生えてんだ?」

 

 丘上の突き出した場所には大きな木が一本。そこからは町全体が見回せる絶景がまっていた。

 

「誰かの……墓?」

 

 木の近くにある墓の石。良く分からねぇが、ちょっと場所を借りるってことで少しだけ手を合わせる。

 良い位置に座れる岩があったので、そこに腰かけて町を見下ろす。ちょうど夕暮れ時で、綺麗な町並みに溶け込む様な景色に少し見惚れていた。

 

 この町にいた魔物達は全員が名前を持っている……人間と同じように……。

 リムルというスライムは……本当に人間である俺達と仲良くやっていこうとしていやがるって事なのか、あるいは……俺達が普通に過ごしている様なくらしに憧れて、この町を作ったのかは分からねぇ。

 あの嬢ちゃんもだ、町の奴らの笑顔は本物だった。嘘なんかじゃ、あんなガキどもが楽しそうに客ってだけで遊んでほしいと駆け寄ってくるはずがねぇ。

 

 夕日に照らされている町を見つめながら、そんな考えがずっと頭の中をめぐる。

 

 

 

 

「――――心は、決まったか?」

「……オレは、調査団の頭だ。野郎どもを守ってやらなきゃならねぇ」

 

 後ろから声をかけてきた相手に振り向く事無く、町を見つめながら俺は答える。

 

「どっか他所の国でギルドに入りゃ……喰うのにはこまらねぇだろう。30人もいりゃ大きな討伐依頼も受けられるしな……俺には、俺のビジョンがあったんだ……」

 

 赤く染まる雲を見る様に、顔を上へと向けて銜えていた串を手に持って、息を吐き出す。

 

「なのに、英雄になれだぁ? 話がデカすぎて胡散臭いことこの上ねぇよ」

「うん、ごめんね? でも、自分達には必要なことだから……」

 

 可愛らしい嬢ちゃん声が申し訳なさそうではありながらも、しっかりと意思が込められている言葉だと……いまの俺なら受け止められる。

 

 空にある空気を吸い込む様にして、一気に地面に向かってもう一度大きく吐き出す。

 足に力をいれて立ち上がる。

 

「……決めたぜ、リムルさん、ウィンさん」

 

 しっかりと振り返って、スライムであるリムルさんとウィンさんの顔を見据える。

 

「あんたは、あの伯爵とは違う。仲間に慕われるヤツの言葉には力がある」

 

 少し前にでて、リムルさんとウィンさんの前にゆっくり片膝をつく。

 

「英雄でもなんでもなってやろうじゃねぇか」

 

 急にリムルさんが溶けたかと思うと、スライムから形を変えて人の姿へと変じる。

 

「……ああ、引き受けてくれて嬉しいよ」

 

「ふふ、よろしく?」

 

「え? えっ⁉ えっ?」

 

「期待しているぞ、ヨウム君」

 

 

 

 嘘だろっ⁉ リムルさんまで美少……女? スライムだから無性か? いや、どっちにしても綺麗すぎるだろう⁉ なんて町だよ……まったく。

 

 

 

 

 

 

次の解放テーマ、ワルプルギス終わりまで

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