心にデュエリスト魂を持って転スラ世界に・・・   作:風月八泉

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71話 プレゼントとお休み

 

 

 

 

 

 

 

 町が出来てから初めての雪ということも相まって、リムルがうっかり口にしたクリスマスという言葉から、冬の宴という名のお祭りが始まってしまった。

 

 

「はぁ、ここは落ち着く……」

「ありがとうございます、ウィン様」

「トレイニーさんは誰かにプレゼントをあげたりすんの?」

「そうですね、リムル様にウィン様と……妹達に」

「妹さん?」

「達ってことは、複数か?」

「ええ、自慢の妹達です。まだ未熟ですが、森の管理者としての私をよく補佐してくれていますね」

 

 トレイニーさんがちょっと自慢げに語りながら、ヒイラギの飾りをリムルに手渡している。

 

「あの子達がいてくれるからこそ、私は安心してリムル様のご相談に――」

 

 妙な気配が入り口付近からしたので、顔を向けてみると……トレイニーさんが急に現れる時と似た感じで床から大きな蕾が花咲くように綺麗な女性達が現れた。

 

 ショートカットの女性とウェーブの掛かった長い髪の女の子。

 ちょっと背の低いウェーブ髪の子はちょっとイラついた様にトレイニーさんを睨んでいて、ショートの女性は潤んだ瞳をトレイニーさんに向けている。

 

「いつまで油を売っているんですお姉さま!」

「お姉さまだけずるいです~」

 

 現れた二人の樹妖精に焦りの表情を浮かべているトレイニーさんがちょっと珍しくって、思わず観察してしまった。

 

「あ、あらあらダメよ。盟主様の御前です、もっとドライアドらしく――」

「管理者の仕事ほったらかしでよく言えますね!」

「私達ばっかりいつも貧乏クジで~」

「落ち着いて二人共、揚げ芋食べます?」

 

 ウェーブ髪の小さい子の方がポテチを引っ手繰って隣にいるショートカットの女性に手渡すと、そのままトレイニーさんの確保へと動き出した。

 

「き~~~~ッ‼」

 

 クリスマスに参加したいトレイニーさんは逃げようとしているようだが、二人の妹達も上手く連携して、トレイニーさんの行動を阻みながらしっかりと蔦を伸ばして、トレイニーさんを拘束していく。

 

「大人しくついて来てくださいっ!」

「あ、コレ美味しいです」

「でしょう、一押し――」

「はいはいっ! 先ずは仕事を片付けてからにしてくださいねお姉さま!」

『あら? もう捕まえちゃったの……さすがね』

 

 ライナがドアを開けて入ってくると、ちょっと驚きながらもトレイニーさんの妹達に手を振って挨拶している。

 

「ライナ様。お姉さまは連れて行きますので、これにて失礼させていだたきます」

「ありがとうございました……また、来ますね~」

 

 トレイニーさんは何か言いたげだったが、半強制的に妹達二人の転移で連れていかれてしまって言葉は聞き取れなかった。

 

「ライナ、あの二人と知り合い?」

『知り合いというか、町の入り口で声を掛けられてね。トレイニーさんに用があるから連れて行っても構わないかってさ』

「つかトレイニーさん、仕事をサボってこっちに来てたのか?」

『正確には、妹さん達に押し付けて、ここに来てたんじゃないかしら?』

「意外にもお茶目さん?」

「いや、そういうのとは、ちょっと違くないか……」

 

 トレイニーさんが連れて行かれた場所を見つめながら、本来のスナック樹羅を営業しているゴブリナさん達に事後処理は任せて、クリスマスという名の宴の挨拶へと向かう。

 

 

 

  ★☆★☆   ★☆★☆

 

 

 

 夜になると大きな木の最も高い位置から広場を囲う周りの壁まで繋いだ豆電球が点々と光り、クリスマスツリーを彩りながら、星空が近くにあるみたいに点々と光りながら会場を照らしてくれる。

 

「あのちっせぇライトにこんな使い方があっとは……夜空の下で見るのはまた違った感動がありやがるぜ」

「洞窟の中だけで終わらせるのは勿体ないでしょう?」

「ちげぇねえ」

 

 カイジンは自分の作った豆電球の使い方にちょっと感動しながら、噛み締めるようにクリスマスツリーを眺めながら酒を煽っている。

 

「楽しんでるかヨウム?」

「あ、どーも」

「ロンメルも楽しんでる?」

「はい、もちろんですよ!」

「あぁ、ここ本当に魔物の町なのか? こんな祭、王都でもなきゃやらないぜ……」

「化かされてるかと思うくらいですね。ははは――」

「悪い魔物じゃないってのに――」

 

 ヨウムは白老にかなり扱かれていたのか、顔のあちこちまでボロボロの傷だらけになっている様子だった。

 

「ほっほっほ……宴の席ではただ楽しめばよい。浮世の全ては盃の酒と同じく、飲んで笑いに変わるものじゃ……ただでさえ明日の修行中にあっさり逝くかもしれんのだからの」

 

 一拍置いて、白老が揶揄う様に言う。

 

「ば、化かされたままでいたいな~」

「もう一回、乾杯しようか?」

 

 リムルがヨウムを気遣ってコップを掲げる。

 

「お待たせしました、クリスマスケーキです!」

 

 朱菜とゴブイチ達料理班が各テーブルにケーキを運んでいく。

 会場全体から歓声と驚きの声があっちこっちから上がっている。

 

「すごいぞシュナ! 材料も満足に揃わないだろうに、良く作れたな! ……真ん中になにかあるが……」

『スライムゼリーよ……口の中で程よく噛み応えがあって、ちょうど良いのよね』

「発案者はウィン様です。まぁこのケーキ自体、ウィン様のお力があって完成出来たのですけれど」

「お前、いつの間にそんな事をしてたんだ?」

「ん~、ゴブイチと朱菜にちょっと簡単なクレープを伝授した時、かな?」

 

 実際にクリスマスケーキをどうしようかと悩んでいたゴブイチと朱菜に、始めはクレープでも良いんじゃないかと教えたのだが……そこでふと喫茶店のお店で何度か見かけた、ミルクレープなるモノを思い出したのだ。

 

 ミルク自体はあるのだから、後は甘味の強い果物なんかを挟みながらデコレーションすれば、しっかりとクリスマスケーキとしてメインを飾れるだろうと、教えたのだ。

 

『クレープも美味しかったから、また食べたいわね』

「アレなら屋台とかでも出せそうですからね!」

「今はまだ、試作中ですから、完成したらお出しします」

 

 ゴブイチもヤル気に満ち溢れているので、完成するのが楽しみだ。

 

「美味――――っ‼」

 

 切り分けられたケーキをミリムが絶賛しながら頬張っている。

 

「こ、これは! 上手いでやす!」

「お店とか出したりしないんですか?」

「私はリムル様とウィン様にお仕えしている身ですので……」

「「「え~~~」」」

「それじゃあウィン様は! こんな美味いモノを作れるんですから!」

「え? 面倒そうだからやらない?」

「勿体無い……」

 

 カバル達の言葉に、ヨウム達一行も頷いていた。

 

 フューズの方も目を見開きながら、黙々とケーキを食べている。

 あのコワモテ顔だから、甘いモノは好きじゃないのかと思っていたけれど、どうやら違ったらしい。

 

「リムルさん羨ましい! これは通いつめちゃう美味しさですよぅ。イングラシアの名人の腕にも匹敵するかも」

 

 ピクっと朱菜が反応していた気がするが、気のせいだろうか。

 

「そう……そのような人がいるのですね……世界には」

 

 まぁ紅丸や紫苑を見ていて思うが、彼女も案外と負けず嫌いな所があるよね。

 

『……聞きたいこと、ある』

 

 いつの間にか傍に寄って来ていたフゥリが自分の袖を引っ張ってきた。

 

「えっと、なに?」

『ウィン、これ以外にもケーキ類の作り方……もしかして知ってる?』

『そうなのですか! こんなに美味しいモノを他にも知ってるんですか主様は⁉』

『ちょっとハレ! 行儀が悪いですわよ! 確かに気になりますが、先ずは口の中のモノを呑み込んでから喋りなさい!』

 

「……え~っと」

 

 じ~~っと覗き込む様に自分の眼を見つめてくるフゥリから、目を逸らそうとすると、違う方からはニニが見つめてくるし、ハレも一緒になって自分の答えを待っている。

 というか、ハレは食べるか聞くかどっちかにして欲しいと思う。こんな間近でパクつかれると、ちょっと怖いんですけどね……ハムスターみたいに頬が膨らんでるのは可愛らしいと思うけども。

 

『こらこら、そんなに主に近付いては答えられないでしょう……しかし、気になります。どうなのでしょうか!』

『おいコラ! レイまで一緒に同じことをしてるじゃねぇか!』

『え~、でもヒータも気になるでしょう。こんなに美味しいの食べたことないよ~』

『ウィンってなんでも器用にこなすよね……ボクも気になるな』

 

 なんか皆が自分の所に寄ってきて、根掘り葉掘り聞こうとしてくるんだけど。

 さすがにそろそろ助けてほしいとライナの方を見ると、ライナは空を飛びながら顔の前に手を伸ばし四角を作る様に指先を合わせて、こちらをカメラで撮る様に楽しんで見つめている様子だった。

 

「大変そうだな~」

「り、リムル⁉ ちょっとは助けて~!」

「いや~、俺にはそのなかに入る度胸はないね……ってことで、頑張ってくれ」

 

 リムルに見捨てられ、その後もミリムや朱菜も混ざってきて、もっと美味しいケーキ類を作ってほしいとせがまれてしまった。

 なんとか口八丁手八丁でやり過ごして……まぁ、デザートを作るにはどうしたって、砂糖を手に入れないと、作れるモノは少ないとだけ答えて、なんとか助かった。

 

 そんな時間を過ごしているうちに、プレゼントをあげる時間になっていた。

 まぁプレゼントを交換するか、あげるかは個人の自由としているので、用意している者は用意しているし、していない者はしていない。

 

 そんな中、小さい女の子のゴブリンがドングリと松ぼっくりの首飾りを手に、ゲルドの下へと駆け寄っていく。

 

 両手で掲げる様に、ゲルドに手渡すとゲルドはプレゼントを渡されると思っていなかった様子で、慌てて周りをキョロキョロと何かを探し始めて、廃材置き場から、小さめの角材を取り出し、ナイフでゴブリン幼女に似た木彫り人形を作り始めた。

 人形といっても、顔だけだが……即興で作ったにしてはかなり器用でしっかりゴブリン幼女の顔と同じ感じであった。

 

 他の子供達もゲルドにあげるプレゼントを持って、列を作りながらプレゼントを渡していき、その度に廃材置き場の角材をせっせと掘って、子供達の木彫り人形を作っていく。

 

「ところでリムル?」

「ん? なんだよウィン?」

「ミリムへのプレゼント……どうする気?」

『サンタさんについて、ミリム様に説明してたわよね?』

「……そういえば……」

 

「ふふ、頑張ってね? 応援してるから」

『寝込んだ後に行かないとダメよね~。サンタさんって、寝た後で枕元にプレゼントを置いていくんでしょう?』

「なぁ、ウィン――」

「さっ、よい子は寝る時間? おやすみリムル♪」

『そうね、良い子にしてないとプレゼント、貰えないものね』

「くっ! さっき助けなかったことを根に持ってるだろう!」

 

「さぁ、なんの事だか分からない? 頑張ってね、リムル」

 

   

 その後、夜にちょっとうるさい時間があったが、自分とライナは気にしないで寝ることにした。

 

 

 

 

 

 

 

次の解放テーマ、ワルプルギス終わりまで

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