心にデュエリスト魂を持って転スラ世界に・・・   作:風月八泉

72 / 175
72話 暗躍する者の影

 

 

 

 

 

     ♦♦♢♢ 視点:フォビオ ♢♢♦♦

 

 

 

 

「くそっ‼」

 

 木々に八つ当たりしながらゆっくりと帰っているが……時間が経てば経つほどに、あの町で一撃で敗北した瞬間が脳内にチラつく。

 

「フォビオ様、落ち着いてください」

「あの敗北は仕方ありません。魔王ミリム相手では、たとえカリオン様でも――」

 

 コイツらは何を言ってやがる。

 たとえカリオン様でもだと! ふざけるなよ。

 

「馬鹿やろう‼」

 

 思わず大声で仲間たちに怒鳴り散らしていた。

 

「カリオン様があんな無様な姿を晒すか‼ くそっ……」

 

 三獣士ともあろう者が、一撃で伸されちまうとは。

 

「……心中、お察しします。ですが我らの任務はあのスライムと、その部下の勧誘……どうかカリオン様の命令を忘れないでください」

 

 なんとか自分を宥めようと言葉を尽くす仲間を見て、大きく息を吸い、少しだけ落ち着こうと自分自身の心を落ち着かせる。

 

「……そうだな」

 

 くすぶっているモノは、まだ胸の中にある……だが、カリオン様の命令が最優先だ。

 そう自分に言い聞かせている最中だった。

 

「いやいや、わかりますとも。抑えきれない、そのお気持ち」

 

 暗くなった木々の影から、急に変な男の声が聞こえてくる。

 

「ほーっほっほっほ」

「だ……、誰だ⁉」

 

 クルクルと回転しながら、目の前に現れた変な仮面を付け、太った男が一人。

 

「ご機嫌よう、獣王国の皆さま。お初にお目にかかります。私は中庸道化連(ちゅうようどうけれん)が一人」

 

 段々と回転が遅くなり、片足立ちで踊るようなポーズのまま、こちらを向いてピタリと時が止まった様に止まる。

 

怒った道化(アングリーピエロ)のフットマンと申します。どうぞお見知りおきを」

 

 中庸……道化連? 知らない名前だ。

 

「……知らんな。その道化どもが何の用だ」

「そんなに警戒しないでよ」

 

 今まで気配も感じなかったのに、太った男の後ろから変な仮面を被った少女が顔を出して来た。

 

「アタイは涙目の道化(ティアドロップ)のティア。中庸道化連は「なんでも屋」ってやつなんだ。とりあえず話だけでも聞いて損はないと思うよ!」

 

 あまりにも怪しさの塊でしかない連中だ。

 

「……失せろ、得体の知れないピエロ共の話を聞く義理はない」

 

 話など聞かずに去ろうと背を向けて歩き出す。

 

「魔王ミリム……に、仕返し、したいんだよね」

 

 せっかく落ち着いてきたっていうのに、思い出させやがって。

 

「……てめぇ……」

「力が欲しいのでしょう?」

「ございますよ、とびっきりのやつがね」

「当然ですが、危険も大きい。しかしそれに打ち勝った時……貴方は魔王となるのです」

 

 まるで耳元に張り付くように、自分の心に沁み込んでいくような感覚でピエロ共の声が大きく、何よりも魅力的に聞こえる。

 仲間達が何かを叫んでいるような気がするが、それよりも力を手に入れられるという話の方が、何よりも面白そうで、あの魔王ミリムにも一泡吹かせてやれると思う心の方が、今は何よりも勝ってしまっている。

 

 

 

 

 

    ★☆★☆    ★☆★☆

 

 

 

 

  ♦♦♢♢視点:ウィン ♢♢♦♦

 

 

 

 

『突貫というか……よくまぁこの短期間でモノになったわね』

「元々のセンスは悪くなかった?」

『それでも、彼らにはハクロウさんの扱きは地獄の修行みたいなものだったと思いますよ? 初めの頃なんか打ち合い数分で屍のようでしたからね』

 

 レイは最初の方から白老と打ち合って数十分は耐えていたように思う。

 ちょっとした伝手で手に入れた一角馬をヨウム達に預ける。

 

『ちゃんとお世話してくださいね。可愛い子達なんですから』

 

 ハレがちょっと名残惜しそうに一角馬達を撫でながら、ヨウム達一行に言う。

 

「分かってやすよハレの姐さん」

「俺達だってこんな立派な馬に乗れるなんて思ってなかったんすから。それに、世話は俺達だってしてたんすよ。愛着だって湧くってもんでさぁ」

 

「それじゃあリムルの旦那。ウィンの姐さん。行ってくるぜ」

 

 リムルは紫苑に抱かれながら、ヨウム達を見ている。

 そのヨウム達は、カイジン達の作った防具を身に付け、黒兵衛の打った武器を手に“英雄”と言うに相応しい格好になっている。

 

「佇まいに隙がなくなりましたな。ほっほっほ……短期間じゃが、真面目に修行した成果といえましょう」

 

 数週間前まで、ほぼゴロツキ同然だったヨウム一行は、装備を整え、白老やレイ達にほぼ休みなく鍛え続けられた結果だといえるだろう。

 身なりは綺麗で、装備だけでなく顔付や佇まいだって真っすぐ格好いい感じになっている。

 これなら、オークロードを倒したと言われても、信じられるはずだ。

 まぁ、20万の軍勢だとか、魔王に進化したとかっていう、具体的な部分は知れ渡っていないのだから、問題はないだろう。

 

「ところで、ロンメルは?」

「あぁ、ロンメルのやつは一足先にフォルムスに戻ってる。オークロードとの死闘を盛りに盛って報告するって張り切ってたよ。……主に、そこの姐さん達に色々と入れ知恵されていたようだがな」

 

 ヨウムが自分とライナの方を見て言うと、リムルがジッとこちらを眺めてくる。

 視線からして「聞いてないぞこの野郎」という感じだろう。

 

「タイミング的に丁度良かった?」

『そうよ、生死判定の結果で死亡なんて風潮されているだろう頃に、我が国の装備を身に纏って、鍛えてあげた魔法でも見せてあげれば、伯爵だろうと無下にも出来ないでしょう。きっとロンメルも良い笑顔で伯爵を追い詰めてるんじゃないかしらね』

 

 なんだかんだ言って、ロンメルってやると決めた事はしっかりとやりきる人物だ。

 

「まぁ……やってもいない死闘を盛るってのも気恥ずかしい話なんだが」

「いいんだよwinwinなんだから」

「ウィン……?」

「こっちを見ないで? 意味合いは「自分も勝ち、相手も勝つ」って感じの商売とか、取引で双方に円満な関係を築けるって感じの事だから」

 

 ちょっとリムルを睨みつけながら、ヨウム達に説明してあげる。

 考えていなかったのか、ちょっとリムルが悪いという感じで目を逸らした。

 

 ヨウム達には今後、魔物の国を拠点として英雄活動を行ってもらう予定だ。

 彼らの名声が高まれば、それだけ協力した自分たちの評価も上がる。

 

「なんだ、もう行くのか?」

「あ……ああ、ミリムさん」

 

 ヨウムは初日にミリムのパンチ一発で気絶させられた時から、ミリムにすっかり及び腰である。

 

「しっかり、がんばるのだ!」

「お、おう……」

 

 その様子を見ていたライナの口角が、少し上がったのを見逃さない。

 

『ふふ、良かったわねヨウム。魔王様からの激励なんて、そう受けられるものじゃないのよ。その胸に刻んで頑張って来なさいね』

「え? まおう?」

 

 キョロキョロと周りを見回しながら、自分とリムルの方に視線を向けてくる。

 自分は何も言わずに視線を逸らしながら、頷いて答える。

 リムルはライナのノリに乗っかるに、悪戯心が働いたらしい。

 

「そういえば、ちゃんと紹介してなかったな。こちらは魔王ミリム・ナーヴァ」

「なのだぞ!」

 

 自己紹介されて、ライナからもあげて紹介されたミリムは嬉しそうにVサインを左手で作ってヨウムに向ける。

 

 ヨウム一行が目が飛び出すんじゃないかって程に見開いて、しばらく沈黙した後に全員がそろって「え――――ッ⁉」と、空に響き渡る程の大声をあげながら驚いていた。

 

 ミリムショックを抱えたまま、ヨウム達は英雄となるために町を出発していった。

 

 

 

 

   ★☆★☆   ★☆★☆

 

 

 

 

「――――しかし、驚きましたよ。同じ名だとは思っておりましたが、まさか魔王ミリム本人だったとは……」

「まぁな、来た時は俺だって驚いたよ。しかもここに住むとか言い出したしな」

「ははは、気持ちはわかります。ここは実に居心地がいい」

「気に入ってもらえてなによりだ」

 

 男湯の方から、リムルとフューズの会話が聞こえてくる。

 コーンとししおどしが鳴る音を聞きながら、ライナに髪を洗われている。

 

「自分で洗えるのに……」

『そういうセリフは、キッチリ髪を洗えたことがあってから言うものよ。面倒だからって毛先の方まで洗わないことが多いし、保湿や乾かす事だって怠るんだからダメよ。せっかく綺麗な髪をしてるんだから』

『そうそう、ウィンはもう少し、そういう事に気をつけていかないとな』

『ヒータに言われるようじゃあダメだよウィン』

『どういう意味だよエリア!』

『はいはい、お風呂で騒がない。そこ! ボクの近くで泳がない!』

『広いお風呂って良いよね~』

『ハレ! 泳がないでってアウスに言われてるでしょう! おやめなさい』

『泳ぎたくなる気持ちは解りますがね』

『……じゃあ浮く?』

『それは良いですね!』

 

 こっちの声は向こうに丸聞こえだろう。

 

「……で。フューズさんはいつまでここに居るんだよ」

「いやぁ、色々とあるんですよ」

「どう見ても休暇を満喫しているよな? ヨウム英雄化計画に協力してくれるって話はどうなったんだよ」

「あ、それは問題ないですよ。既に手の者に伝えて仕込みは終わらせておりますから」

 

 時々見かけないと思ってたけど、なるほど……仕事はキッチリとこなしてたんだ。

 

「リムル殿やウィン嬢を信用出来ると判断しましたので」

 

 言い方的にドヤ顔でキリっとしながら、酒でも飲んでそうだ。

 まぁ普段の様子からフューズが信用してくれているっていうのは感じてたけどね。

 お風呂とかお酒とか、食べ物を美味しそうに食べている時なんかは特に、ね。

 

『こ~ら、相変わらず目を瞑りながらお風呂に入るんだから。それ、危ないからやめなさいって言ってるでしょう』

「そんなことを言われても……」

『つうか、ウィンは自分の体を隠し過ぎじゃねぇか? 別にそこまで恥ずかしい体付きじゃねぇだろ』

『まぁヒータなんかは、隠しても良さそうな体付きだけど……』

『よしエリア、その喧嘩を買ってやろうじゃねぇか!』

『暴れないでってば』

 

「皆してズルいのだ~。除け者はダメなのだぞ!」

「ミリム様、先ずは体をお流しくださいね」

「まだまだですね、ミリム様は――」

 

 すぐに上がるつもりが、また別の伏兵が露天風呂に入って来たので、しばらくは談笑と言う拘束時間になりそうだ。

 朱菜達はあんまり自分と入れないと文句も言っていたので、嬉しそうに自分の方へと擦り寄ってくるし。ライナは楽しそうに自分を腕を絡ませて逃げられない様にお風呂の中に引きずり込まれていく。

 

 

 うぅ、個人のお風呂が欲しいと、リムルに相談してみよう……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の解放テーマ、ワルプルギス終わりまで

  • ウィッチクラフト
  • エクソシスター
  • 蟲惑魔
  • 妖怪少女
  • 六花
  • 海晶乙女
  • アロマ
  • ティアラメンツ
  • 白き森
  • イビルツイン
  • ドラゴンメイド
  • ラビュリンス
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。