お風呂からあがってしばらくはライナにブローをかけられ、髪の毛先までしっかりと手入れされる事が日課になっている。
「もうちょっとしっかり温泉に浸かっていっても良かったと思うけど?」
『それはウィンもでしょう。もっとゆっくり湯に浸かった方が良いわよ?」
リムルとフューズは先に部屋の方へと向かってしまったらしい
女の子達のお風呂は色々と長いから、しょうがないけどね……自分一人だったら、もっと早くあがったんだけど、細かく体や髪の洗い方を説明してくる。
未だに慣れないんだよね……なんで女性のお風呂が長いのかは、良く分かったけど。
リムル達がいる部屋の方へと行くと、フューズがお風呂でもお酒を飲んでいたみたいだったのに、部屋に来てからも、軽く一杯という感じで小さいお猪口で飲んでいた。「このような保養所が出来たのは喜ばしいことです。往復路の危険さえなければ、通い詰められるのですがね……」
いまのフューズを見ていると……前世でいうと、仕事帰りに立ち寄ったスーパー銭湯にいるサラリーマンにしか見えない。
「往復路……作る?」
「え?」
フューズが驚いて様子で自分の方に振り向いてきた。
自分とライナに気付いていたリムルは、投げかけた言葉に何度か頷きながら、それも良いかもしれないという感じで返事を返してくれた。
「――――そうだな、やはり道を作るのが手っ取り早いか」
「はい?」
フューズだけが、話に置いていかれた感じで反応が出来ていない。もしかしたら、飲み過ぎて酔っているだけかもしれない。
『なに不思議そうな顔をしてるのよ? ブルムンド王国までの道を整備しようかって話でしょう?』
ライナがため息交じりに言うと、今度こそフューズの動きが止まる。
「いやいや、それは大規模な国家事業に――」
「そこだよフューズ君」
「君ッ⁉」
リムルに君呼びされて脊髄反射的にツッコミを入れている辺り、カバル達三人に毒されてしまってますね、フューズ君。
「俺達はこの町をもっと発展させたいと思ってる、そのためには色んな国の人間に来てもらいたいんだよ」
「街道の舗装や危険な魔物の排除はこちらでやる?」
『それが良いんじゃない? その代わりにフューズ君にはアタシ達が如何に危険のない魔物だってことを広める事に専念してもらえるでしょう』
色んな人達が来れば、その分のトラブルは増えるだろうけど……その辺は信頼で居る人達を増やして、自分達の存在を地道に広めていくしか、方法はないだろう。
フューズは自分とライナ、それにリムルの眼を見つめながら、遊び半分で言っている事ではないと感じ取ったようだ。
彼は少し身震いした後に、敷いている座布団から身を下げて、畳の方へとしっかりと座り直した。
「……わかりました。そこまでして頂けるのでしたら、このフューズ」
いつの間にかフューズの方も真剣な顔付で、自分とリムルの眼を見て話していた。
「持てる人脈を駆使してこの町の宣伝に尽力いたしましょう」
誓いを立てる様に両手を付いて頭を下げてきた。
その勢いにリムルと一緒に少し驚いてしまったが、なんとか体面は繕いながらフューズを見つめて返事を返す。
「お、おう。よろしくな」
実際、ドワルゴンへの道も現在工事中なので、ブルムンド王国へ伸ばす道を作る時には、もっと効率よく迂回路の道作りも問題なくこなせるだろう。
元々、森の中は自分とリムルの管理下になるのだから、街道整備は当然こちらでするつもりだったことだ。ブルムンド王国への道もトレイニーさんと相談しながらやれば、そこまでトラブルになることはないはず。
【なんか、思った以上に響いたみたいだね】
【あぁ、俺達的には思いついたことを言ってるだけなんだがな】
魔物であるリムルが先頭を切って普通のことをいったから、物凄く良い魔物に見えたのかもしれない。
リムルが進めるがままに、お酒を飲んでおつまみを食べていたフューズは、すぐに酔っぱらって寝てしまった。
【フューズ……ミリム並みにチョロかった?】
【あの三人に付き合えるレベルのお人好しな上司なんだ……人が良いんだろな】
『それもそれでどうなのよ?』
リグルドにフューズの事を任せて、三人で和んでいると。
けたたましい足音が縁側の方から聞こえてきた。
「どうしたウィン? ライナ?」
最初に気付いた自分に続いて、ライナも自分の動きを見て何かを察したようで、庭先に続く襖から離れてリムルへと道を開ける。
不思議そうに自分とライナを見るリムルに笑顔で手を振る。
「わはははは! 今帰ったのだ」
ミリムが走った勢いのまま襖を勢いよく開き、スライムボディのリムルへと突撃していく。
「ぶふっ!?」
あれはリムルだから良かったが、自分やライナが巻き込まれた日には、壁の方まで吹き飛ばされて穴でも開けていそうなレベルの突撃だった。
「ミリムちゃんは凄いんですよぅ。すぐに魔物を発見するので狩りが楽でした」
ミリムを連れてきたエレンが縁側の方に立って、室内を覗きながら話しかけてきた。
「大漁なのだぞ?」
「わかったわかった、見に行くよ」
「大漁?」
「ふふん、そうなのだ。ウィンも行くぞ!」
リムルのスライムボディつつきながら、手柄を自慢したい子供のように自分とリムルを連れ出そうとしてくる。
★☆★☆ ★☆★☆
ランガにミリムとエレンが乗り、リムルは紫苑に抱かれ、自分とライナはアペライオの背に乗ってミリムとエレン達が狩ったという獲物を見に行く。
「おーい、こっちでやすよ~」
呼んでいるカバル達に駆け寄ろうとすると、紫苑が急に立ち止まって大太刀を抜く。
「ミリム様!」
「うむ!」
抱えていたリムルをミリムに渡して、自分達の前へと紫苑が立ち塞がる。
「何者です⁉」
「えっ⁉ あの……ギド……」
「ちょっ⁉ え? カバル……」
カバルとギドが驚きながら、紫苑に忘れられたのかと自分の名前を言うが……紫苑の眼には彼らは映っていない。
「……いや、その人は敵じゃないよ紫苑?」
現れたのはトレイニーさんの妹、短めの髪をしている子だ。
「あぁ、トレイニーさんの妹さんだよ」
自分とリムルに言われて、紫苑が殺気を収めてくれる。
「だ、誰でやすか、この人⁉」
「……私は樹妖精のトライア」
姿を見せているのだが、なんだかぼやけた映像のようになっていて透けている。
力が弱まっているのかな。
「覚えてるよ?」
「あぁ、最後にあったのはスナック樹羅だったな」
「お久しぶりでございます。盟主様方」
「あぁ、それより説明してくれ」
紫苑が急に武器を手にしたのには訳がある。
それはトライアさんの凄まじい殺気に反応して、思わず武器を抜いたのだ。
「その殺気……何かと戦ってた?」
自分が聞くと、トライアさんは小さく頷く。
「……ご報告申し上げます……
きっとなんか物凄く大変なモノが復活して、この町を目指して来ているというのは理解出来たのだが……ちょっとした問題がある。
自分はそのカリュブディスなるモノを、全く知らないんですがね。
というか、リムルも知らないだろう。
この場で自分とリムルの二人だけが、ちょっと良く分からずポカンとしている。
ミリムは別に敵ではないという感じなのか、平然としているけどね。
トライアさんの雰囲気からすると、結構な大事だとは分かるんですけど……ごめんなさい、自分とリムルにはどれほどの事なのかが、イマイチ理解出来てないんですよ。
チラッとリムルの方を見ると、リムルも「え~、どうしよう」という感じで自分の方を見返してきていた。
次の解放テーマ、ワルプルギス終わりまで
-
ウィッチクラフト
-
エクソシスター
-
蟲惑魔
-
妖怪少女
-
六花
-
海晶乙女
-
アロマ
-
ティアラメンツ
-
白き森
-
イビルツイン
-
ドラゴンメイド
-
ラビュリンス