心にデュエリスト魂を持って転スラ世界に・・・   作:風月八泉

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75話 避難と継いだ意志

 

 

 

 

 

 

 

 町の人達を集め、リムルは朱菜が抱きながら舞台に上がり全員の顔を見回す。

 自分もリムルと朱菜の横に立って町に住む皆の顔を窺い見る。皆が不安そうなという訳でもないようだった。

 特にオークロードの時を経験しているゴブリン達は落ち着きながらも、真剣な表情で自分とリムルの事を見てくれている。逆にオーク達など、まだ避難など経験したことのない者達は不安そうな顔をしている。

 

「えー……、すでにその気配を感じ取っている者もいると思うが、敵が急速接近中だ」

 

 リムルは何となしに語り始めた。

 声を張り上げる訳でもなく、いつもの様に普通に喋る感じで。

 けれど、その声はしっかりと遠くの者達までしっかりと届いている様子だった。

 

「だから、倒すことにした?」

「ウィンと俺と、仲間達でちょっと討伐してくるだけだ。心配するな」

 

 リムルと自分の言葉で少しは落ち着いた者が多くいたようで、心配と不安で一杯だった空気が少し和らぎ、中には「ご武運を!」と叫ぶ者達も出てきている。

 

「怯える必要はない、ベニマルが迎撃態勢を整えている。非戦闘員はリグルの指示に従い、森の中へ避難するように……時々やっていたウィンとの避難訓練を思い出せよ、こういう時の為にやっていた訓練だぞ。以上! 慌てず騒がず、行動開始!」

 

 最終的には町の皆はしっかりと前を向き、自分達を応援して送り出してくれるような雰囲気の中で終わった。

 

「ベスター、ガゼル王への連絡を頼む」

「はっ! お任せを」

 

 リムルからの指示に短く答えてお辞儀し、駆け足で走って行く。

 そんなベスターとすれ違いにフューズがこちらに歩いて来た。

 

「悪いな、せっかく休暇を楽しんでいたってのに……」

「まったりし過ぎな気もするけど? 良ければフューズも彼らと一緒に避難?」

 

 そんな何時もと変わらない自分達を見ながら、フューズは笑わず真剣な眼で自分達を見てくる。

 

「……なぜ」

 

 拳を握りしめながら、フューズの呟くような声が聞こえた。

 

「……なぜ、逃げないのですか? カリュブディスは厄災級魔物ですが、その脅威は災禍級以上と考えられています。魔王に認定されない理由は「知恵ある行動を取らない」……その一点のみです。あなた達……魔王を相手にしようというのですか?」

 

 自分も朱菜も何も言わず、フューズの言葉を聞きながら目を瞑る。

 言いたい事を言ったフューズを見つめ、朱菜と一緒にゆっくりと歩き出す。

 

「……俺達が負けたら、みんなには逃げるように言ってるけどな」

「でも、一回ぶつかって負けても、諦めるつもりはないよ?」

「まぁ、万が一の場合は、ブルムンドでの住民の受け入れについて、検討してみてくれよ」

 

 フューズから少し遠ざかってから、彼が聞きたかった答えを口にする。

 

「万が一って……!」

 

 振り返ったフューズは、自分達を見た瞬間に口を噤む。

 

「……いえ、そうか……あなた達はここの、魔物達の主……でしたね」

「そういうこと?」

「あぁ、それに……魔王に匹敵すると聞いたら、なおさら退くわけにはいかないな」

 

 リムルは朱菜に下ろしてもらう様に合図すると、地面にゆっくり置かれてからすぐに人型へと変化していく。

 そういえば……フューズの前では人型になってなかったね。

 

「それは、どういう……」

 

 リムルが人に変わって、改めてフューズの事をまっすぐに見つめる。

 彼はすぐにシズさんの面影に気付いて、言葉を失った。

 

「俺はシズさんとは同郷でね、ちなみにウィンも同郷だ。彼女の遺志を継いだんだ」

「魔王レオンをぶん殴るって、ね?」

「そういう訳だがらさ、俺たちはカリュブディスなんぞにビビってるわけにはいかんのだよ。この姿に懸けて、な」

 

「その姿……あいつらから話には聞いていたが……。本当にあの人の……」

 

 リムルの姿を震える手で驚き、開いた口がふさがらない様子だった。

 

「……ひとつ、頼みがある」

「……聞きましょうか」

 

 もう何か迷っているフューズではなかった。

 真剣な顔に、覚悟は決まったという顔付に変わっていた。

 

 

 

  

   ★☆★☆   ★☆★☆

 

 

 

 もう直、戦いが始まる。

 

 カリュブディスを迎え撃つ場所に選んだのは、ドワルゴンへと伸びる街道。

 整備してくれたアウスやゲルド達には申し訳ないが、町が破壊されるより修復は楽なはずだ。

 

 ここで迎え撃つ。

 

「ヴェルドラの申し子?」

「はい、カリュブディスはヴェルドラ様から漏れ出た魔素溜まりから発生した魔物です」

「そうか……」

 

【あれ? それってリムルの中にいるヴェルドラを目指してる的な話?】

【だとすれば、この町を狙う理由も頷けるな】

【……う~ん、本当かなぁ。それだったらヴェルドラから名付けてもらった自分達を狙ってきているって方が、しっくりくるよ?】

 

 そもそも、リムルの中にいるヴェルドラが感じ取れるものなのだろうか。

 ミリムを含む魔王達が、ヴェルドラが消えたこの森を狙ってくる理由ってヴェルドラが消えたと思っているからだろうし……魔王が感じ取れないのにカリュブディスには感じ取れるとは、思えないんだけどな。

 

「……ヴェルドラ様の因子を持つということで、その危険性は伝わったかと思います。はじめに申し上げておきます。カリュブディスに魔法は殆ど通用しないものと思ってください。あの者の持つエクストラスキル「魔力妨害」の影響で、魔素の動きが乱されるのです」

 

「……ってことは、物理攻撃で削ってくしかないか」

「殆どってことは、ちょっとは魔法が使える?」

「えぇ、でも蚊が刺す程度だと思います。それに、どれだけ傷を負わせても直ぐに回復してしまうのです。あの凄まじさは、間違いなく「超速再生」を保有しているものと……」

 

 聞くだけでも、面倒な相手だと解るね。

 

「その上――」

「まだあるのかよ!」

「はい、あの者は異界より召喚した魔物……空泳巨大鮫を複数従わせています」

「もしかしてさ、その鮫も……」

「ウィン様が察した通り、「魔力妨害」をもっているのです」

 

【ねぇリムル~、フューズの前でかっこつけて言ったけど、大丈夫?】

【まぁ本音だし……でも、聞けば聞くほどに厄介な相手だな】

 

「となるとヘルフレアも効き辛いか」

「おそらく、魔法ではなくとも魔素を媒体とする術は効かないかと」

 

 紅丸と朱菜が情報分析をしながら、話し合っている。

 

『ふふ、ならば私の出番という訳ですね!』

「レイ……空飛ぶ敵の対処は?」

『…………ジャンプすれば届きますよ!』

 

 レイちゃん普段は頭が良い感じなのに、考える事を放棄しないでほしい。

 

「ふっふっふ。何か忘れているのではないか? ワタシが誰だか覚えていないとは言わせぬのだ!」

「ミリム!?」

「なんでここに!?」

「デカイだけの魚など、このワタシの敵ではない」

 

 まぁミリムに手伝ってもらえば、簡単に片付きそうだけど……。

 

「そのような訳にはまいりません、ミリム様。私達の町の問題ですので」

「そうですよ、友達だからとなんでも頼ろうとするのは間違いです。リムル様がどうしても困った時、その時は是非ともお力添えをお願い申し上げます」

「そっか……」

 

 リムルは完全にミリムの手を借りる気だったのだろうが、朱菜と紫苑にインターセプトされてしまったね。

 

 しょんぼりとしたミリムがリムルの方を、チラッと見つめてくる。

 そのまま自分の方にも視線がきたので、にっこりと笑って返す。

 

「そうだぞミリム、まぁ俺を信じろ!」

 

 無理やりに笑顔を作りながら、胸を張ってリムルが答えている。

 

【……かっこつけって大変だね?】

【うるさいやい! お前も似たようなもんだろうが!】

【自分は素直に笑って返しただけ? 助けてって言えばいいのに~】

【とにかく、ミリムが居るなら町への被害はないもどうぜんだ! 全力でやるぞ!】

【話をすり替えたよ……まぁ、最初は自分達でどこまで出来るか、やろう? 魔王をぶん殴るくらいは強くならないとダメなんだから】

【……そうだな】

 

 

 

 そんな話をしている内に、視界で見えるところまでカリュブディスの団体さんが遠くの空に見えてきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の解放テーマ、ワルプルギス終わりまで

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