心にデュエリスト魂を持って転スラ世界に・・・   作:風月八泉

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76話 個々の成長と意地

 

 

 

 

 

 

 リグルとライナが指揮しながら、森の方へと避難させている中で、エレン達が心配そうに何度も町の方を振り返っていた。

 

 

「……ねぇ、やっぱりぃ私達も手伝った方が良くなぁい?」

 

 カバルもギドも心配そうな表情でフューズに声を掛けるが、彼は振り返る事無く歩き続け、振り向く事無くエレンに答える。

 

「……半端な攻撃は通用しない。足手纏いだろう」

「でもぉ……」

『大丈夫よ。それにフューズ達にはリムルやウィンから頼まれている事があるんだから、そっちを優先させなさい』

「頼まれている、こと? 聞いてないぞ?」

 

 

 ==⦅ひとつ、頼みがある。もしも俺達が負けたら人間の国に対応を取ってもらう必要がある。あんた達は結末を見届けて⦆

 

 そうリムル達から託されている。

 

 フューズ自身も彼らが負けるとは思っていない。

 

「不思議な方達だな……およそ魔物らしくない考え方をする」

『そういう子達なのよ。心配しないで安全第一で避難してなさい』

『無駄話してっと後ろがつっかえるぞ~、ほらほらしっかり進めよ~』

 

 ライナが空を見上げているのをフューズ達が見て、つられて視線を上へと移す。

 黒い炎の球が音をたてて爆発音が聞こえてきた。

 

「なんだ……⁉」

 

 

『始まったみたいね』

『は~い、不安なのは分かるけどね~。ここでもたもたしてたらウィンちゃん達が本気で戦えないでしょう! キリキリあるきましょうね~』

『こういう時ってエリアの間延びした感じって役にたつよね。ボクらだと威圧的になっちゃうから助かるよ』

『文句言ってくる奴らはオレとアウスが相手してやるし、適材適所ってヤツだろう?』

『それは、ちょっと違くないかしら?』

 

 

「……始まっちまったか。開戦の狼煙だ」

 

 

 

 

  ★☆★☆   ★☆★☆

 

 

 

 

 先ずは紅丸の黒炎獄で結界内の敵を焼き尽くそうと試してみたが、結果は――。

 巨大な鮫が一頭落っこちてきただけで終わってしまった。

 

 本来の威力が発揮されていれば、結界が消えた後には炭すら残らないはずなのに、丸焦げになった鮫一頭だけの被害だった。

 

「……お供が一頭、焦げただけか。聞きしに勝る厄介さだな。魔力妨害ってのは」

「ええ、それに……範囲内に捕らえたはずの本命は、もはや痛痒を感じてはいないようです」

 

 朱菜がカリュブディスを見上げながら言う。

 

 お供がやられてこちらの存在に気付いたのか、カリュブディスが急に吠え始めた。

 

「……だからさ、魚が空を飛ぶなって思うんだけど? あと、五月蠅い」

 

 耳障りに吠える音を遮断して、お供の鮫達に真上から衝撃波を打ち付ける。

 滝の様に無理やり下に流れる気流を風霊術で作り出して、衝撃波にして何度も敵の頭上から打ち付けてやれば、流石に高度を保てずに落ちていくらしい。

 ただ……カリュブディスの方にはあまり効果がないらしい。

 

『ナイスです主! これで切り刻めます!』

 

 下の方に回り込んでいたレイが飛び出して、サメを切り刻んでいく。

 

『むっ⁉ ちょっと硬いですね。ごめんなさい! 仕留めきれないのが何匹がいます⁉』

 

 意外にも皮膚が固く、二匹ほど撃ちもらして、ゴブタ達がいるゴブリンライダーズの方へと向かう一頭と、もう一頭はゲルド達の方へと飛んで行く。

 

「ちょっ……でか! 近くで見るとマジでかいっすよ。魚なら一年分のご馳走っス‼」

 

 なんだかんだとゴブタが近くで様子を見ながら、鮫の目を見ていると、地面に噛みついた鮫の目がギョロっと動いてゴブタの方を見つめる。

 

「むしろこっちが食糧っすか⁉」

 

 急に体を捻らせて大口を開けながら地面ごと食い散らかしてく。

 リムルとミリムは空に飛び上がって、周りの様子を見ながら、カリュブディスの方をメインで警戒している。

 

「攻撃は手下に任せて、文字通り高みの見物か? 獲物をいたぶる習性でもあるのかな」

 

 そういえば、リムルの言う通りだ……吠えた一回だけで、後はあんまり動く事無く空に漂っている。

 

「まぁ、丁度いいかな? レイ! 先に鮫をお片付けしよう」

『了解です! では上の敵を下に落とすのはお願いします!』

 

【ベニマル】

 

 リムルの方も自分達の動きに合わせる様に紅丸に指示を飛ばしている。

 

「先にメガロドンを殲滅する! 各隊引きつけて一体ずつ相手取れ!」

 

 ゲルドの方に突っ込んだ鮫をギリギリで躱し、すれ違い様にゲルドが斧を振るって切ろうとするが、バチンっと弾かれたような音が響いて押し戻されていた。

 

「ぐぅ……っ! なんと硬い鱗よ……!」

 

 オーク達は俊敏性では劣る為か、何人かのオークは鮫の突撃で発生した余波をもろに食らってしまい、動けない者達が数名いた。

 

「……許さんぞ、オレの仲間を‼」

 

 これ以上の被害を出さない為に、ゲルドが斧を投げ捨て、大きく口を開けて突進してくる鮫の鼻先に体全体で押さえつける様にして、鮫の突進を止めて見せた。

 しっかりと掴み、押さえつけられた鮫が暴れようとするが……ゲルドが無理やりに押さえつけて動かなくしている。

 

 ただ、それだとゲルド自身も攻撃することが出来ない。

 

「助太刀致しますぞ‼」

 

 ゲルドが押さえつけている鮫にガビルが飛び上がって、鮫の脳天に狙いを定め。

 

「喰らえい‼ 渦槍水流撃(ボルテクスクラッシュ)‼」

 

 一点集中の突きでしっかりとメガロドンを倒したようだ。

 

「……礼を言う、ガビル殿」

 

 ゲルドの前にガビルが着地すると、槍を担ぎ笑顔を向ける。

 

「いやなに、仲間を助けるのは当然である」

 

 ガビルの配下達がオーク達に回復薬を処方しながら、傷を癒してあげているのを見ると自然と口元が緩んでしまう。

 豚頭帝戦の時に敵同士だったはずなのに……ガビル達はしっかりオーク達を助けているのだから、嬉しくなってしまうのは自分だけじゃあないはずだ。

 

『ちょっと主~、まだ敵は多いんですから手伝ってくださいってば!』

「ほっほっほ。今は少し見守ってあげましょう。気持ちは解らなくもないですからのう……それよりレイよ、もうちょっと敵の動きと切り易い場所の見極めが甘いですぞ」

『うぅ、なんでハクロウさんはそんな簡単に細切れにしてるんですかっ! 鱗の隙間って何ですか! 人間業じゃないですよ⁉』

「ほっほ、私は鬼人ですからのう」

『むぅ~、主! もう一頭こっちに寄こしてください! ハクロウさんに負けていられませんっ!』

「まだまだ若い者に負けはせんよ」

 

 なんか白老もレイも楽しそうに修練しながらメガロドンなる鮫を切り刻んでいる。

 

「レイにハクロウ。ウィンは空の敵を落とす感じで支援か。ゲルドとガビルの隊がこのまま共闘するみたいだな……ふは、前の時には敵同士だったのを思うと熱いな」

 

 周りの戦う様子を見て、ミリムがうずうずしているのを感じた。

 

「なぁなぁ、ワタシも……」

「ダメ」

「勝手に暴れない?」

「うぅ~~」

 

 ソーカがメガロドンの頭上を飛んで影を作ると、そこに蒼影が影移動でメガロドンの頭へと移っていた。

 

「……操妖傀儡糸」

 

 クイっと手を動かしながら、蒼影が得意としている糸を使ってメガロドンに何か細工をしている様子だった。

 急に蒼影が乗るメガロドンが他のメガロドンへと口を開けて喰いつかせていた。

 

「おおっ神経網を操って共食いさせたのか!」

 

 どこぞのパニック映画さながら何ですが……間近で見ると、えげつない。

 

「ソウエイに負けてはいられません。行きますよ。ランガ!」

「承知!」

 

 紫苑がランガの背に乗ってランガは空を駆けだし、メガロドンよりも高く空へ上がる。

 ランガの背に乗りながら、紫苑が大太刀に何か気の様なものを纏わせて刀身から光を帯びたモノが大きくなっていく。

 

「見よ! 断頭鬼刃‼」

 

 メガロドンが胴体から真っ二つにぶつ切りにされている。

 

「……お見事?」

『すごいですね! 私もあんなふうに両断できるようになりたいです!」

「レイらしい戦い方を見つけた方がいいよ?」

 

 むしろ紫苑のアレは力任せに断ち切ったと言った方が良い気がする……レイだって硬いって言ってたメガロドンの鱗をモノともせずに両断してるって、どんだけなんだ。

 

「白老、最後の一匹?」

 

 風を切るような音が聞こえた瞬間には、白老の方へと飛ばしたメガロドンが駒切にされていた。

 

「これでもう高みの見物はおわりだな。カリュブディ……」

 

 リムルと一緒にカリュブディスの方を見ると、何か不快感を煽るような音が聞こえてきた。変な音の正体は、カリュブディスの鱗が逆立ち、風を裂いている音だった。

 

「紫苑! ランガ‼ その場所から離れて!」

 

 自分が叫ぶと、遅れてリムルがすぐに気付いたが……少し遅い。

 

 カリュブディスから鱗が全方位に飛び出して、意思を持っているかのように紫苑達の方へと纏まって飛び進んで行く。

 

「……躱せぬならば、突き進むまで。行きますよラン……」

「バカ言うな」

 

 リムルがすぐに紫苑達の前へと飛び出した。

 

「リムル様‼」

「まぁ潔くて嫌いじゃないけどな。こういう時くらい俺を頼ってくれよ」

「ですが……っ⁉」

 

 自分も慌ててリムルの下へと向かおうとした時だった――。

 

〈「飢餓者」を吸収統合・同系統の能力を得たことにより「捕食者」は進化します。……成功しました。その名は――〉

 

 リムルが手を翳して呟く。

 

暴食者(グラトニー)

 

 リムルの周りから黒い霧の様なモノがカリュブディスと周りに飛び出ていた鱗を覆いつくしていく。

 

『あれだけあった鱗が……一瞬で』

 

 瞬時にリムルはカリュブディスに接近して、両手を相手の額についてもう一度さっき見せたスキルを使っている。

 

 焦げたような跡が出来て、カリュブディスは痛がるように身をよじってからリムルを強引に引き剥がして距離を取り始めた。

 

「……やっぱ本体は喰えないか」

「さすがはヴェルドラの申し子?」

「みたいだな、けど「腐食」の方は多少効いたみたいだな」

 

 カリュブディスが怒ったのか、額に付いている大きな目が光り始めた。

 

「自分の攻撃って、効く?」

 

 攻撃までに時間がかかりすぎる行動なんて、聖なるバリアミラーフォースの餌食だと思うんだよね。

 デッキホルスターからトラップカードを取り出して、展開させる。

 

 カリュブディスから発射されてレーザーの様な攻撃をミラーフォースで打ち返す。

 五月蝿い叫び声をあげながら、睨むように自分とリムルの方を見てくる。

 

「はは……ウィンもやるじゃん」

「怒った?」

 

 自分とリムルに攻撃が集中するれば、紅丸達は攻撃に集中できる。

 

「全員持てる手段を尽くして、カリュブディスを攻撃しろ! 効きが悪くてもいい‼ ヤツに回復の暇を与えるな‼」

 

 紅丸の声で全員が一斉にカリュブディスへ集中攻撃が開始される。

 

「ケガ人はこちらへ! いそいで!」

 

 朱菜は安全確保ができたいま、ケガをした仲間達の治療を開始する。

 

「リムル様、ウィン様!」

 

 トレイニーさん達が合流して、続いてドワーフのペガサスナイツも応援に駆けつけてくれたようだ。

 

 

 

「さて、ここからは根競べ?」

 

 

 

「まぁ戦力は十分以上なんだ。カリュブディスの回復力にどれだけ食らいつけられるかってところだろうぜ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の解放テーマ、ワルプルギス終わりまで

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