心にデュエリスト魂を持って転スラ世界に・・・   作:風月八泉

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78話 手加減と救済

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【全員よく聞いてくれ! 詳しいことは後で話すが、予定変更だ】

 

 急にリムルから思念伝達で戦場にいる全員に退避するよう呼び掛けている。

 

【速やかに、この場から離れろ。繰り返す、速やかにこの場から離れろ】

 

「どういうこと?」

『はい、どうやらカリュブディスの中にいるであろうフォビオは、ミリムさんを目指していたそうです』

「ん? フォビオの意思が残ってる?」

『みたいですよ』

 

 ということは、テンペストを目指していた訳ではなく。

 あのカリュブディスはミリムを目指して来ていたって事になるのかな……それなら、まっすぐに此処へ向かって来たというのも納得できるね。

 

 ミリムの妖気を辿ってまっすぐ目指していたのなら、カリュブディスとなったフォビオの目的はミリムに勝つことなんだろう。

 

 ――あんな力を頼った時点で、ダメ駄目だ。

 

「ということは、ミリムのお客さん?」

『そういう事になりますね。だからリムルさんもミリムさんに任せるという感じで、話が付いたという感じです』

 

 なんかリムルとペガサスナイツの人が話し合っているが、戦うと言っている相手に「巻き込まれたくなければ」とリムルがちょっと焦りながら、ペガサスナイツの指令官に説明している。

 

【ミリム、こっちの退避は終わったぞ】

【うむ】

【あ……っと。出来ればでいいんだけど】

【なんだ?】

【フォビオを残して、カリュブディスだけ吹っ飛ばせるか?】

【わはは、容易いことなのだ】

【リムルも優しいね……まぁ、魔王カリオンとの面倒を避けたいから?】

【むっ! 盗み聞きかウィン……まぁ、魔王カリオンの配下を始末してしまったら、後々面倒かもしれないからな】

【リムルは変なことを気にするのだ。だが、マブダチの頼みは聞かねばならぬ。ワタシも最近、手加減を覚えたし……丁度いいのだ】

 

 あぁ、あのドッジボールのことだね……手加減をしないとボールも投げられない状態だったから、遊ぶために必死になって手加減の仕方を模索していたもんね。

 力の加減が下手な紫苑と一緒に競い合いながら……それを見ていたゴブタにおちょくられて、何度もゴブタが吹き飛ばされていた記憶も新しいなぁ。

 

「見せてやろう、これが――――手加減というものだ竜星拡散爆(ドラゴ・バスター)

 

 眩しいほどにミリムの手元が光って、無数の追尾型レーザーがカリュブディスに向かって星の様な輝きをしながら、爆発していく。

 

「さすがミリム? ちゃんと手加減が出来て凄い」

 

 カリュブディスが爆発四散し、煙で何も見えない中にも風を頼りにフォビオという獣人の気配を風を使って捉える。

 

「よっとと……むぅ、ちょっと重い?」

 

 自分がいち早く動いてフォビオをキャッチすると、リムルが少し遅れて飛んで来た。

 

「おっと! サンキューな、ウィン」

 

 とりあえず、カリュブディスが壊した道の比較的に安全な場所へと降り立つ。

 

「さすがミリム。見事な手加減だったよ」

「意外にも役に立ったでしょう、ドッジボール」

 

 ちょっと胸を張って「どうだ?」という感じで言ってみるも――。

 

「お前の遊びは本当に変な所で役にたってるよな……さてと、どうだ? 大賢者」

 

 まったく褒められた気がしない。

 

 ミリムの方を見て手を振ると、彼女もVサインを手で作って笑って答えてくれる。

 

 

〈解。個体名フォビオと個体名カリュブディスの融合率は九割以上。再び、カリュブディスとして復活するまでの時間は一時間もありません〉

 

「ふ~ん……やっぱりただ倒したってだけじゃあ、ダメそうだね」

 

 リムルは少しフォビオを見つめながら、上着を脱ぎ棄てる。

 

「……なにをするのだ?」

 

 ミリムも気になって近くに降りてきた。

 長い髪を纏めながら、寝かせたフォビオに近付き容態を確認していく。

 

「放っておいたら復活しちまうからな。フォビオからカリュブディスを完全に分離する」

「しょうがない、手伝う?」

『大丈夫なのですか、主……』

「ん、問題なし。それに、自分が居た方が良いでしょう?」

「はは、頼むぜ相棒」

 

 フォビオの体に融合しているカリュブディスを引き剥がす。それは言う程簡単じゃないだろう。

 それに素体から分離させると、精神生命体であるカリュブディスが逃げ出す可能性があるし、そうなったら何処かで別の者が依り代となってしまい、カリュブディスは復活する。

 

 それだけは、絶対に避けなければならない事だ。

 

「リムルならカリュブディスを捕らえられるだろうけど、分離は苦手でしょう」

「あぁ、ウィンならその辺は得意だろうから、カリュブディスの摘出を頼む。「変質者」と「暴食者」を並列起動。大賢者は能力の制御に回れ。主な手術はウィンと俺でやる」

「それじゃあ、「コレクト」それと、フォビオ……君の生命力を信じてるよ。トラップカードを発動!「魂のリレー」対象はフォビオ!」

 

 フォビオの体だけが淡く光り輝いた。

 

 コレクトでカリュブディスの魔素を吸い出しながら、リムルがそれをグラトニーで捕食していき、細かな部分でフォビオの心臓に張り付いているカリュブディスを切り剥がしていく。

 

 

 

 ==30……いや、40分くらい繰り返し細かな作業でフォビオとカリュブディスを分離していき、全て摘出し終えてリムルがフォビオの胸に張り付いていたカリュブディスを吸収し終える。

 

「ふぅ~」

「疲れた~」

『ど、どうなったのです?』

「……どうなのだ?」

 

 ミリムとレイが心配そうに自分とリムルの顔を覗き込んで来た。

 

「成功、ぶぃ」

「あぁ……成功したよ」

 

 

 後は自然にフォビオが起きるのを待つだけだ。

 

 

 

  

  ★☆★☆   ★☆★☆

 

 

 

 

 フォビオが目覚め、すぐに自分達の方に頭を下げて土下座してくる。

 

「スマン! ……いや、スミマセンでした!」

 

 事の重大さは、本人が一番理解出来ているようだ。

 

「今回の件は俺の一存でしたこと。魔王カリオン様は関係ないんだ。なんとか俺の命一つで許して欲しい……!」

 

 真剣に謝ってくれているのは解るのだが……命一つで許せってどうなのだろう。

 

「え? お馬鹿なの?」

 

 自分と同様にリムルも溜息をもらしている。

 

「まったくだよ。ウィンの言う通り、ここでお前を殺したら何のために俺達が助けたかわからんだろ。それより、質問に答えてくれ」

 

 そうだね、彼には聞かなければならない事が山ほどある。

 

「トレイニーさん」

「はい」

 

 リムルがトレイニーさんを呼んで、隣に立たせる。

 

「貴方はなぜ、カリュブディスの封印場所を知っていたのですか? あれは勇者から託された我ら樹妖精しか知らぬ場所。偶然見つけたとは言わせません」

 

 フォビオは土下座をしながら、静かにトレイニーさんの問いに答える。

 

「仮面を被った二人組の道化に……」

「仮面の道化?」

 

 トレイニーさんが少し屈み、地面に絵を描いていく。

 

「それはもしや……こんな仮面でしたか?」

 

 前にライナとトレイニーさんは、確か仮面を付けた道化師にあっている。

 片目をウィンクしている絵を描くが、フォビオは横に首を振る。

 

「……いや、俺の前に現れたのは涙目の仮面の少女と、怒った仮面の太った男だった」

 

 フォビオの説明を聞いて、紅丸が反応する。

 

「……怒りの仮面の太った男だと?」

 

 そういえば、紅丸達の集落を襲ったオーク……それを率いていたのが、仮面の魔人だったって言ってた。

 

 次にゲルドも思い当たる節があるのか、呟く様に語り始めた。

 

「怒り面の太った男……、確かゲルミュッドの使者を名乗る上位魔人がそんな仮面をつけていました。名はフットマン。中庸なんとかという組織の者だとか……」

「中庸道化連だ。奴らは、なんでも屋だと言っていた」

「あぁ、それだ」

 

 ガビルはトレイニーさんの描いた絵に覚えがあるのか、ジッと仮面の絵を見つめながら口に手をあてて考え込んでいる。

 

「そのトレイニー様の図柄に見覚えがありますぞ。ゲルミュッドからの使者でラプラスと名乗った道化が……」

「ラプラス?」

「こんな感じの面に……こんな頭巾を被っておりましたな」

 

 トレイニーさんが描いた絵に、ガビルが付け足していく。

 それを見てトレイニーさんも同じだと頷いている。

 

「……そうですか、ラプラスというのですね。あの魔人……」

「フットマン。その名、覚えておくとしよう」

 

 トレイニーさんと紅丸がそれぞれに道化共の名を覚えたようだ。

 

「んー……」

「ミリム?」

「どうしたの?」

「豚頭帝計画を仕切っていたのはゲルミュッドだが、中庸道化連などという連中、知らんのだ。そんな面白そうな奴らがいるのなら、会ってみたかったのだ。まったくゲルミュッドのヤツめ……」

 

 話を聞いていたミリムは不貞腐れた様に寝転がりながら、不満を漏らしている。

 

「あ、もしかしたらゲルミュッドじゃなくて……」

「え?」

 

 なにか思い当たることがあるようで、ガバッと起き上がりながら喋り続ける。

 

「クレイマンのヤツが何か企んでいたのかもしれぬ」

「クレイマン?」

「誰だそれ?」

 

 自分とリムルがほぼ同時にミリムに聞く。

 

「魔王の一人だぞ。ヤツはそういう企みが大好きなのだ。抜け駆けするとしたら、ヤツしかおるまい」

 

 確証はないけれど……可能性は高そうだ。まぁ、保留するしかない考えだね。

 

「今後は、謎のなんでも屋に注意するとして……。とりあえず今日はお開きだ」

「うん、みんなゆっくり体を休めて?」

「じゃあ、フォビオ。お前も気をつけて帰れよ」

「次は騙されて、変な人に付いて行っちゃダメだよ?」

 

 自分とリムルが茶化すように言う。

 

「……はっ⁉ いや俺は、許されないだろう‼」

「まぁ、無罪ではないけどな。真犯人に利用されてたみたいだし?」

「幸いにも、人的被害はないしな」

 

 リムルとお互いに見合いながら、それ以上の言葉は思い浮かばない。

 

「だが……っ」

 

 フォビオは物凄く困惑している様子だ。

 

「ミリムもそれでいいだろ?」

「ウム! 一発殴ろうと思っていたが、許してやるのだ!」

 

 殴ろうとは思ってたんだね。

 

「……そこに隠れている人は……この結果で良いのかな?」

 

 話し合いの途中から、風がよそ者の存在を知らせてくれている。

 手術中は気付けなかったけど、落ち着いた今ならしっかりと感じ取れる。

 

「ほう、やはりウィンは気付いておったな。カリオンもそれでいいだろう?」

 

 リムルがなんか驚いている。

 

「やはり気付いていたか……ミリムは分かるが、嬢ちゃんにまで気付かれてたのは意外だったな……そんな素振りを一切見せねぇのは驚きだ」

 

 ガタイの良い、ちょっと不良リーダー的な大柄の男性が歩いてくる。

 

「よう。そいつを殺さずに助けてくれたこと。礼を言うぜ」

「カリオン様……!」

 

「あんたが魔王カリオンか……わざわざ出向いてくれるとはな」

 

 リムルがちょっと慌てながら、存在感を出す為か魔素を抑えるのを止めている。

 それに合わせて、自分もちょっとだけ魔素を放出して、リムルの隣に立つ。

 

「俺はリムル=テンペスト。この森の魔物達で作った魔国連邦の盟主だ」

「同じくウィン=テンペスト。よろしく、ね?」

「フッ、たかだか一匹のスライムと魔女の小娘が国を興すとは……」

 

 ジッとリムルと自分の方を見つめてくる。

 

「……お前、豚頭帝を喰ったな? そっちの嬢ちゃんも多くの力を取り込んでやがる」

「……ああ、その通りだ」

「で? それが何か悪いの?」

 

 リムルと二人で、魔王カリオンから目を逸らさずに言い返す。

 

「ぶっ、ふはははは。面白いな! ミリムが気に入るわけだ!」

 

 なんか盛大に魔王カリオンが笑いだしてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の解放テーマ、ワルプルギス終わりまで

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