魔王カリオンが笑い終えると、部下のフォビオを見下ろす。
「悪かったな、オレの部下が暴走しちまったようだ。俺の監督不行届ってことで、一つ許してやって欲しい」
「ん~、命はとらない?」
「あぁ、安心してくれ。お前らの苦労を無駄にするような真似はしねぇ」
ちょっと意外だったけど、魔王カリオンは不良の元締めとかヤの付く感じのキッチリした恩には恩で返すタイプみたいだ。
「今回の件、借り一つにしておく。何かあれば俺様を頼ってくれていい」
リムルの方も意外という感じで、少し驚いた表情でカリオンを見ている。
「……それなら、自分達との不可侵協定?」
「なるほど……そうだな、ウィンの言う通り俺達との不可侵協定を結んでくれると嬉しいんだが……」
「そんなことでいいのか? よかろう、獅子王カリオンの名にかけて誓ってやる。獣王国は魔国連邦に牙を剥かん、とな」
さすがは魔王というか、器のデカさがよく分かる。
リムルと一緒になんとか一件落着だねと視線を合わせて笑っていると、次の瞬間にはズガンッ――っと物凄い音が辺りに響き渡った。
「え?」
「わぉ……」
音のなった所はフォビオが土下座していた位置だったが……そこから少し離れた場所までカリオンに殴り飛ばされていた。
フォビオはピクピクとぶん殴られて、痙攣している。
「ったく、しょうがねぇ……」
カリオンはフォビオの襟首を掴んで肩に担ぐ。
「おら、帰んぞ」
死にはしないだろうけど、カリオンさんやフォビオの傷口が開いてますけど大丈夫なんでしょうか。
【体育会系だな……】
【リムル……そういう問題じゃないと思うよ?】
殴られて気絶したフォビオを背負いながらカリオンが振り返って自分達を見てくる。
「後日、使者を送る。なに、今度は礼を守らせるさ。また会おう、リムル、そしてウィン」
そう笑顔を向けながら言うと、消える様に去っていった。
『なんというか、大変でしたね』
「それよりも、この道……せっかくゲルド達が作ってくれたのに」
「なに、またやり直しますよ」
「これだけの出来事で死傷者はゼロなんだ。そこを喜ぶべきだな」
ペガサスナイツを指揮していた渋めのオジサンが言う。
……名前、なんだっけ?
「ドルフさん、助力感謝する。おかげでカリュブディスを倒すことができた」
リムルよく覚えて……いや、名前を覚えていたのは「大賢者」さんの方かな。
「いえ、カリュブディスを倒したのは我々ではなく――」
そういってドルフさんはミリムの方を見る。
「説明して頂けますでしょうか」
「いや、その~。実は……」
リムルも咄嗟にどう説明したら良いのかと言葉に詰まっている。
「……この少女は魔王ミリム?」
もう名前を言って紹介してあげた方が早いと思い、自分が説明してあげる。
「……魔王」
ドルフさんがミリムの事をジッと見つめる、が……。
「あははは、ウィン嬢は冗談がお好きなようだ」
と笑われてしまった。
ミリムもまさか否定されるとは思ってなかったのか、かなりショックを受けている。
「あはは、しかしリムル殿、ウィン嬢よ。あのような高出力な魔道兵器を所持しているのなら、最初にそう申して欲しかったですぞ」
「冗談ではない! ワタシは魔王なのだ! ワタシがカリュブディスをやったのだ」
ミリムが一生懸命に主張するが、可愛らしい少女が精一杯に秘密を守ろうとしているようにしか見えなかったようだ。
ドルフさんは微笑みながら頷いている。
「なるほど、魔道兵器については秘密と……分かりますぞ。奥の手は隠しておくに限りますからな」
「魔王だと言っておるだろぅ!」
「人類にとっても災禍となりえるカリュブディスを始末出来たのは僥倖でした。私も王への報告がありますれば、今回はこれにて失礼いたします」
「おいコラぁ!」
ミリムが騒いでいるので、彼女を引っ掴んでドルフさんに喧嘩を吹っ掛けない様に、後はリムルに任せていれば大丈夫だろう。
「本当に助かりました、ガゼル王にお伝えください」
リムルとドルフさんがお互いに挨拶を終えて、ペガサスナイツを連れて帰還していく。
★☆★☆ ★☆★☆
「これを入れれば完成?」
「あぁ、最後に……「減速」と「脱力」の効果を刻んだ、魔鋼をしのばせて……」
自分達はいま、カイジン達ドワーフの工房にお邪魔している。
「よし、完成だ」
丁度いいタイミングでミリムがドアを壊す勢いで開けて、工房に入って来た。
「できたのか⁉」
「ん、完成?」
「あぁ、出来たよ」
ミリムがワクワクしながら待っていたのは――。
「約束していたミリム専用の武器……ドラゴンナックルだ」
「おお~~~~~~っ」
物凄く嬉しそうに完成したドラゴンナックルを持ち上げて、飛び跳ねながら喜んでいる。
ドラゴンナックルという両手に装備する、ちょっとヌイグルミの手袋みたいに見えるナックル武器だが、性能はしっかりしたもんだ。
ちょっとだけ、細工を施しているが……気にならないだろう。
カリュブディスの一件から数日。テンペストはすっかり落ち着きを取り戻している。
ちなみに、戦いを見届けたフューズらはブルムンド王国へ帰還。
友好関係を結べるよう国王はじめ、貴族らを説得……脅迫? ……いや、その辺は気にしないでおこう。……説得してくれるらしい。
別れ際に、フューズは――、
「なに、ヤツらの弱みを握っているのでね。どうとでもしてみせますよ」
と、悪い顔をしていたのが印象的だった。
そして、ガゼル王からは正式な招待状をもらい、リムルがビビッていたのは内緒の話。
獣王国からは、カリオンの言葉を携えフォビオがやってきた。
使者に志願したらしい。
初めて来た時とは打って変わって、慇懃な物腰だった。
内容は“互いの国から使節団を派遣して、国交が有益か見極めようではないか”と記されていたらしい。ちなみに、翻訳は「大賢者」さんに頼みました。
いよいよ、「国」らしくなって、これからは政治的な駆け引きなんかも必要になるだろうと思う。
前の戦闘からミリムとリムル、そして自分を交えながら戦闘訓練の日々が続いている。
リムルがフレイムサークルで視界を遮って、ミリムに一撃を入れようとしたが……ミリムはしっかりとリムルの動きを捉えていて、簡単に対処され、反撃を入れられている。
「のわ――ッ⁉」
「なむ……」
吹き飛んで来たリムルに手を合わせながら、目を閉じる。
「死んでねぇよ!」
「にひひ、なかなか良くなって来たぞ! リムルやウィンが魔王になると言い出しても、ワタシは反対しないのだ」
「ならない?」
「……ならないって」
お互い、ミリムにやられたので休憩と手を上げて提案する。
「少し休憩?」
「そうだな、休憩しよう」
「なにぃ、まだまだ……」
「朱菜がお弁当を作ってくれたのに?」
「それにウィンのお菓子もあるぞ?」
「休憩なのだ!」
魔王レオンを殴る予定はあるけど、自分もリムルも魔王になる気はないからね。
「そういえば、ミリムはなんで魔王になったの?」
ふと不思議に思って聞く。
「ん? そうだな、なんでだろ? 何か嫌なことがあって……むしゃくしゃして?」
「俺に聞くなよ」
「自分を見られても知らないよ?」
「よく思い出せん、忘れたのだ!」
「そっか」
見た目からは想像し難いが、聞けばミリムは最古参の魔王の一柱だという。
自分達の想像なんか及ばない程に長い年月を生きてきたんじゃないかな。
「ミリムって家族とかはいないの?」
「ずっとここにいるけど、心配してる人かいるんじゃないのか?」
「ワタシの世話をする者達はいるぞ。でも、あの者共は心配などしておらぬのだ。ワタシはサイキョーなので、心配すら恐れ多いと思われているのだぞ」
それはそれで、ちょっと寂しい気がする。
「だから、ワタシの友はリムルとウィンの二人だけなのだ!」
「……そうだな、これからも宜しくな。ミリム」
「ん、色々と楽しいことをいっぱいしよう?」
「もちろんなのだ!」
次の解放テーマ、ワルプルギス終わりまで
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