♢♦♢♦ 視点:リムル ♢♦♢♦
ドワルゴンのちょっとした裏路地に隠れるようにしてゴブタ達を待つスライムの影が一つ。ゴブタ達を密かに待っている。
「リムル様、リムル様」
「ゴブタ! 女子達に気づかれずにここまで来れただろうな?」
「もちろんっすよ」
「よし! いざ、約束の地へ‼」
「はいっす‼」
ちょっとした通りを抜けて、少し重たい扉を開けば……そこには美女のエルフ達が笑顔で迎えてくれるお店がある。
「いらっしゃ~い」
「まってたわよ、スライムさん」
「お姉ちゃんたち、元気だった?」
「もちろんよ」
「ねぇねぇ、だっこしていい?」
「どうぞどうぞ」
「スライムさんご一行、いらっしゃいました~」
「相変わらずかわいい❤」
「ずいぶんご無沙汰だったじゃない。私たちのこと忘れちゃったのかと思った」
「まさか!」
俺の歓迎っぷりにゴブタ達が羨ましそうに眺めている。
「いらっしゃいボウヤ達。君もスライムさんのお友達?」
妖艶な雰囲気漂う女性がゴブタ達をちゃんと接待してくれる。
「好きです」
「あら、ありがとう」
ゴブタって時々すごいよな……あっさりかわされてるけど。
「お席へどうぞ、スライムさん。お連れさん達はもう出来上がってるわよ」
このお店のママさんがカイジン達が居る席へ案内してくれる。
「やっぱりその姿の方がしっくりくるなぁ」
「人型はお気に召さなかったか?」
「そういうワケじゃねぇが……どうにも一致しなくてな」
少し時間が空いた時に門番のカイドウさんに挨拶をしていたのだが、その時にも目が飛び出るくらいに驚いていた。
「しかし、今夜はありがとうよ。俺まで接待してもらって」
「いーのいーの、カイドウさんには世話になったしな。今夜はゆっくり兄弟で語り合ってくれよ」
カイドウさんはカイジンの弟だし、テンペストに住むカイジンはこんな機会でもなきゃ弟に会えないだろう。
「なに言ってんだ旦那! こんな場所で野郎と話してどうする⁉」
「そうだぞリムル殿! お姉ちゃん達に失礼ってもんだ‼」
「あ、はい」
似てるな、この兄弟。
「ゴブタちゃん、すごーい」
「そっすか~、ぜんぜん余裕っすよ~」
ゴブタの方は美女たちに良いところを見せようと、椅子を使って持ち前のバランスの良さを活かし、逆立ちの曲芸を披露している。
初めにゴブタが告白していた女性が悪戯にお酒の入ったグラスをゴブタの足先に乗せる。
「あっ! ちょ……っ、これはさすがに危ないっすよ」
「そのグラス、とっても高価なものなの。だから落としちゃダメよ。もしも、割ってしまったら……そうねぇ、ゴブタちゃんの体で支払ってもらおうかな」
ゴブタには刺激が強かったようで、お姉さんの妖艶さにやられて鼻血をだしながら倒れ込んでしまう。
「きゃーッ! ゴブタちゃん⁉」
「ちょっとしっかり‼ 冗談だからね」
「誰か、布巾……‼」
長居すると、ゴブタが失血死しそうだ。
「ねぇスライムさん……ウィンちゃんは?」
「あ、あぁ……ウィンは知り合いの連れの女の子達を連れて買い物だよ」
前に来た時に一緒に飲み物を飲んでいた小さなエルフの子が、ちょっと寂しそうにしながら聞いてきた。
「そっか……」
「アイツも来たがってたんだけどな、今回は連れの子達にドワルゴンのお店を連れて回ってもらってるんだ、悪いな」
「ほんと! また来てくれるかな?」
「あぁ、また連れてくるさ……なんなら、テンペストでここみたいなお店を出してくれても良いしな! 交代制とかにすれば、何時でも会えるしな」
ちょっとした提案だったが、女の子は嬉しそうに飛び跳ねてママさんの方にも俺の話を伝えに行った。
「あら、それは良い話ね……検討させて貰うわ」
「道が完成したら、狼車で行き来がしやすくなるだろうし、考えといてくれよ。あ、ママさんちょっといい?」
「なぁに、スライムさん」
「これ、よければお店に置いてみてくれない?」
ガゼル王にも渡したが、こっちのお店でも試験的に進めて欲しいお酒を胃袋から取り出す。
「まぁ、これは……」
「ウチで作った新商品。ガゼル王にも卸すからあんまり沢山は渡せないんだけどね。お得意様限定で出してみてよ」
「あらまぁ! でもいいの?」
「一人一杯のサービスで幾らまでならだせるか、リサーチして欲しいんだ」
「あらあら、スライムさんは強かなのね。カチカチになって演説してたのが嘘みたいだわ」
「えっ! み、見てたの⁉ あれは、まぁ、ね。演技だよ演技、初心っぽく見えただろう?」
「うふふ、そういう事にしておきましょう」
絶対にバレているが、流石はこういう話には慣れているようだ。
「でもね、私は好感を持ったわよ。やっぱり人を惹きつけるのは誠実さだと思うの。その点、スライムさんもウィンちゃん、二人とも満点だった。私も見てみたいわ、人や魔物や……エルフ。そんな垣根のない皆で笑い合える国を」
「あぁ、ウィンがメインに掲げているもんだけど、それは俺も同じだからな……ありがとさん」
ママさんがそっとおすすめのお酒を進めて出してくれた。
「スライムさん! 絶対にテンペストにお店を出すからね! ウィンちゃんにも伝えてね。もしくは、遊びに来てって言ってね」
「わかってるよ。ちゃんと伝えるさ」
「私も私も! 会いたいんだから!」
「スライムさん、お願いね」
ウィンのヤツも人気があるんだなぁ。
そんな感じで全員がエルフ嬢達と楽しくお酒を飲んでは喋って、楽しく過ごした。
★☆★☆ ★☆★☆
「おいおい、しっかりしてくれよアニキ」
フラフラと足元がおぼつかないドワーフ組やゴブタの部下達を連れて宿に帰るところなのだが……これは、こっそり帰れるのかな。
「いくらなんでも飲みしゅぎだじぇ~~~~」
「おみゃえこしょ~~~~」
この酔っ払いどもめ……。
「ほらゴブタ、お前もしゃんとしろ!」
「ちょっと……貧血でむりっす……」
スライムボディでゴブタを運びながら何とか進んでいると、不意に笑い声が聞こえた。
『ふふ、手伝ってあげましょうか?』
「ああ、すみませ……」
この感じの声は、聞き覚えが……。
「えぇ、大変そうですものね。お手伝いしますよ……リムル様」
ニッコリと微笑んだシュナが覗き込む様に近付いてきた。
「しゅ、しゅ、シュナ!? それにライナ!? なぜここに……」
「ゴブゾウが全て話してくれましたので……」
「ゴブゾウ、お前……どうして……っ」
「ただ皆がどこに行ったのか、お答えしただけダス」
ゴブゾウはキラキラの純粋な眼差しで答える。
「それに場所ですが……まさか他国に来て護衛が一人も居ないと思いましたか?」
護衛? どういうことだ? そんなヤツはいないはず……。
『ねぇリムル……霊使いって必ず使い魔がいるんだけどさ……アタシの使い魔って紹介したことなかったっけ?』
そういえば……ウィンにも風の龍と小動物っぽい可愛らしいヤツを見た覚えがある。ヒータにもいたはずだ……。
『紹介してあげるわね、別に隠してたワケじゃあないのよ……あんまり離れる事もないし、呼ぶ事もなかったから最近拗ねちゃってね。でも、やっぱりこういう時に活躍してくれる子なのよね。お礼を言うわ、リムルのおかげで、色々と利のある時間を過ごせそうなのよ。ラヴァー、おいで~』
ライナが呼ぶと、洞窟の天井付近から滑空してきた丸い物体が彼女の胸元で止まる。
胴体は真丸のボールみたいで、額にはハートマークに可愛らしい宝石みたいな目が二つと、機嫌が良さそうな笑顔の口。手足の代わりに四つの翼が付いているモンスターだ。
『彼女はハッピー・ラヴァーっていうのよ。よろしくしてあげてね』
「あの、ライナさん……もしかして、俺達の行動って最初から……」
『ふふ、ラヴァーのちょっとした能力でね、この洞窟内のライトみたいになって隠れる事も可能なのよ……まぁ、攻撃力も防御力もあんまりない子だけどね』
こっちの聞きたい事をはぐらかすように、微笑んで喋るライナの横にプルプルと震えるウィンの姿があった。
「ウィンお前……」
彼女の恰好を見ると、物凄い可愛らしい服装に……生足がよく見える程のミニスカートを履かされている。
「こっち、見ないで」
『こ~ら、そんなにスカートを押さえつけちゃうと、かえっていやらしく見えちゃうわよ? 男達からの恰好の的になっちゃっても良いの?』
「うぅ……リムルのおバカァ~~」
ウィンが顔を真っ赤にしながら、ちょっと涙目で睨んでくる。
髪も何時ものポニーテールから、サイドポニーテールになっていてオシャレに飾られているのが、良く分かる。
「ウィン様ってば、どんなに聞いてもリムル様の居場所を教えようとしなかったんですよ。ひどいです、リムル様……」
「し、シオン‼」
「置いていくなんて、あんまりです!」
「いやだって、女の子が行って楽しい場所なのか、わからないし……」
「でも黙っていくなんて、ひどいです!」
「うっ‼」
「あなた達が、リムル様を夜遊びに誘ったのですか?」
シュナから禍々しいオーラが漂い始めて、カイジン達の方を見つめる。
ちょっと目元が暗く、光って見えたのは幻影だと……思いたい。
「え⁉ 誘ったっていうか、提案したっていうか……」
その後は少し圧を掛けられて、ゴブタ達一同とカイジン達一同はその場で正座を言い渡されてしまった。
「リムル様のなさりたいことを、お止めするつもりなどありません……ただ、ちょっぴりさびしかったのです」
「うう……っ!」
【リムル……言い訳なんかしないでよ! 逆効果だからね!】
【わかってる……ここは――言葉短めに! 腰を低く! スライムの可愛さで情に訴えかけて‼】
「すみませんでした! もうしません‼」
『あらまぁ……おバカねぇ』
ライナが心底面白そうに笑いながら俺のことを見てくる。
【リムルのおバカ……ガゼル王の言葉を忘れたの?】
ウィンは死んだような目と呆れ交じりの溜息と顔で見てくる。
「わかりました、一週間シオンの朝ご飯でゆるしてあげます」
『やっぱり好きな人に作ってあげるのが、上達への近道よねぇ』
――よかっ……えっ⁉ いまなんて……。
「いいのですかシュナ様! ライナ様!」
「えぇ、頑張ってね、シオン」
==短すぎる。
==謙りすぎる。
==情に訴えかけすぎる。
そのガゼル王の指摘が頭の中で流れていく。
「あの……三日に、負かりませんかね」
「一週間です」
「……はい」
「ねぇ、自分は関係なかったしさ。許してくれても……」
「ウィン様も一週間は私やライナの決めた服装を着てもらいますからね」
『ちゃ~んと仕草とかも仕込んであげるから、大丈夫よ』
「えぇ、最近は修行と称して言動からガサツになりがちでしたからね、ウィン様にはしっかりと女性らしさを指導して差し上げますから、ご安心ください」
「うぅ~、リムルのおバカぁ~~~」
「いや、マジで悪かったって、帰ったらなんかお願い聞いてやるから……」
次の解放テーマ、ワルプルギス終わりまで
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