「――――なるほど。カバル殿にエレン殿、それにギド殿ですか」
「イングラシア王国に行くにはブルムンドを経由するし、彼らなら俺がスライムなのも知ってるしな」
「確かに……人間の国へ入るのに、我ら魔物が付き添っては却って火種になりかねませんね……。その点で言えばウィン様とライナ様なら、気付かれる事も……」
朱菜は何とか蒼影以外の手練れを連れて行ってほしいと考えているが、良い案は思いつかないようだ。
「だろ? ……ウィンなんて気付かれずに周りを探ることなんて朝飯前だしな」
「それは、誤解を招きそうな発言?」
『でもまぁ、事実よねぇ』
「ライナに関しちゃ、幽霊みたいな感じで護衛が出来るだろう」
なんかリムルが恨みがましくライナの方をジト目で睨んでいる。
『ふふ、あら怖い。人を幽霊扱いなんて酷いわね』
ライナはまったく傷ついていない表情で笑っている。
「魔力探知にも引っ掛かり難く、視覚的には特定の条件を達成している者しか見えない状態の精霊化ってなんだよ……反則だぞ!」
『ふふ、使える能力をちょっと考えて使っただけよ? 気付けなかったリムルが駄目なのよ。そもそもリムルには見えるはずでしょう……ちょっと光源に化けていただけだしね』
あぁ、ドワルゴンでのぞき見されていた時の話だね。
ライナは魔力妨害も駆使して、自分からも気配で探られないように工夫していたから、部屋の中にライナの使い魔が居る事に気付けなかったんだよね。
探そうと意識すれば、気配には気付けただろうけど……気が緩んでいたと言われてしまえばそれまでだ……ドワルゴンでの演説なんてしなければ、気付けたのに……。
「リムル様!」
「戻ったか、どうだった?」
ゴブタが影移動で机の影から現れた。
「「大船に乗ったつもりで、任せてくれ‼」だそうっす!」
「引き受けてくれたか」
「大船……ボロ船じゃないよね?」
『カバル達だからねぇ……まぁ、リムルやウィンにアタシも居るんだし、大丈夫じゃないかしら……多分、だけど』
「やめろ、不吉な事をいうのは……大丈夫だって……たぶん」
なんでだろう、シズさんでも手を焼いていそうだったからか、フューズという苦労人を見ていたせいか……一緒に冒険するというのは楽しそうなのだけど、トラブルに見舞われそうだと勝手に思ってしまう自分がいる。
「……わかりました。ですが、くれぐれもご注意くださいね」
朱菜達が物凄く心配そうな顔をしながらも、送り出してくれるようだ。
「ああ、わかってる」
「ん、ちゃんと帰ってくる」
朱菜の手を握っていうと、かなり強めに握り返された。
「リムル様とウィン様にもしものことがあれば、我らは……ッ!」
リグルドがリムルの眼前まで顔を近付けて泣きながら無事を祈っている。
「十分、気をつけるよ」
「頼んだぞソウエイ」
「無論だ」
「なんなら私がお供を……」
「お前は話を聞いていなかったのか⁉ シオンは留守番だ!」
しょんぼりと落ち込んでいる紫苑には悪いが、彼女を連れて行ってはトラブルを招き兼ねないので、人間の国へ連れ行くなんて怖くて出来ない。
『ライナ、ウィンのお世話は任せたよ』
「あ、アウス?」
『ウィンはちゃんとしてるように見えて、ポンコツだからなぁ。マジで心配だぜ』
「ひ、ヒータ!?」
『うんうん、面白そうなモノがあったら変な人についていっちゃいそうだもんね~』
「エリアまで⁉ さすがにそこまで子供じゃないよ!」
『しかし、面白いモノには目がないですし……心配です』
『なんだかんだで、アグレッシブに動くもんね~、主様ってさ~』
『ごめんなさい、皆さんの言葉を私は否定できそうにもありませんの……言われると否定できる要素が無いと言った方が……あぁ‼ いえ、誤解なさらないで下さいね』
『……日頃の行い?』
なんで違う意味で自分の仲間達は一致団結しているんだ。
『ふふふ、なにかあったら呼ぶから大丈夫よ』
なんかライナの一言で全員が納得した様子で、後は快く送り出してくれるようだ……自分の心には靄が掛ったけどね。
カバル達が此方に到着次第、出発することが決まった。
「ねぇねぇリムル……どうせ外に出るならさ、テンペストが良い国だって広める手立てってないかな?」
「あ~、確かにウィンの言う通りだな……、そうだ! カイジン、ちょっとついて来てくれよ。ベスターの所に行くぞ」
カイジンを連れて、転移陣で封印の洞窟へと移動する。
移動している道中にリムルが言うには、テンペストの特産品として売り出す回復薬を広め、販路を確保するチャンスだと言う。
リムルのおかげでフルポーションも開発できたし、確かにテンペストの特産品として申し分ない品だとは思う。
ガゼル王もドワルゴンでは回復薬が品薄だと聞いた。
「おーい、ベスター」
「おや、リムル様にウィン様! それにカイジン殿まで」
出迎えてくれたのはガビルだった。
「ヒポクテ草の栽培はどう?」
「順調ですぞ、我輩が丹精込めて育てておりますれば!」
比喩とかじゃなく、ガビルは本当に丹精込めてヒポクテ草を育ててくれているのは確かだ。前に少し覗いた時なんか、栽培しているヒポクテ草に歌を歌ってあげていたくらいだ。
ガゼル王との交渉で、テンペストから下位回復薬を納入することになった。
ただし、ドワルゴンの薬師を研究員として受け入れるのが条件だ。
ついでに、研究員達の名簿をベスターに渡して確認してもらう。
「ふむ……これなら全員雇用しても、問題なさそうです」
「役に立ちそうな人材?」
「ええ、昔、同じ学舎にいた者の名もいくつかあります。彼らなら信用できる」
「その後、回復薬の開発状況はどんな感じだ?」
「安定していますよ。今まで、一日に一つのフルポーションの作成に成功しています。彼らが開発チームに加わるのなら……そうですね、少なくとも一日に三本は固いとお約束します」
「おお……!」
「すごい」
リムルと一緒に喜びながら拍手をする。
ここで少し復習しておくと、完全回復薬、フルポーションはリムルの体内で作られる回復薬と同等の効力を持つ。
大賢者さん曰く、欠損した部位すらも再生可能な万能薬である。
これを、特定の状況で20分の1に薄めたものが上位回復薬、ハイポーション。
どんな大怪我も治癒することが可能だけど、欠損した部位の再生は出来ない。
そしてフルポーションを100分の1に薄めたものが下位回復薬。ローポーション。
怪我をある程度、治癒する効果があり。冒険者の持つ回復薬といえば、通常はこちらのローポーションの事を指す。
カイジンにポーションを売りたいと相談したら、少し難しい顔をして悩んでいる。
「フルポーションを売るのは難しいぜ。旦那にお嬢」
完全回復薬を持ちながら、丁寧に説明を始めてくれる。
「この薬は性能が良過ぎるんだよ。気軽に使用できるもんじゃねぇし、妥当な値段をつけたら冒険者には手の出ねぇ金額だ。ローポーションは冒険者にとって最も馴染みのある回復薬だ。今更どこぞの特産品だと周知させるのは難しいだろう……、となると、特産品として一番有力なのがハイポーション。こいつは駆け出しが買うような代物じゃねぇ」
「ベテランの冒険者?」
「そうだお嬢、ベテランの冒険者が万一に備えて持つような薬だ」
「なるほど、ターゲット層は、そこそこ金を持っていると」
「その通りだ旦那」
「わかった、任せろ。高値で交渉して利益を上げてみせるさ」
「そういうのはリムルの得意分野だもんね」
「行く行くは規模を十倍にも百倍にもして。国庫を潤わせるように頑張るぞ!」
「その意気だぜ、旦那!」
「わー、頑張れー」
「だから! お前も頑張るんだって何時も言ってるだろう! ウィンも出来るだろうが!」
「やっ、自分は楽しいことを考えるので精一杯なので……」
「逃げるなっ!」
「相変わらずだなぁ、旦那達は」
「はは、しかし、アレはあれでバランスのとれた形でしょうね」
「ちげぇねぇ」
洞窟内にカイジンやベスター達の笑い声が響き、リムルと自分はちょっとした鬼ごっこが開始された。
次の解放テーマ、ワルプルギス終わりまで
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