「お初にお目にかかります。魔物の国の主殿方」
イケメンダンディな少し年のいった人間。
ピシッと決めたタキシードを着て、笑顔を向けながら話しかけてくれているのは、このブルムンドの大臣。
「私はブルムンドの大臣の一人、ベルヤード。どうかお見知り置き願いたい」
「初めまして、リムル=テンペストです」
「ん、ウィン=テンペスト? よろしく」
『アタシは二人の付き人よ。ライナっていうの、よろしくお願いするわね』
フューズは自分達の後ろに控えてくれている。
「作法に疎いので、失礼があったらご容赦を」
「こいつは貴族ですが、私の昔馴染みでもあります。構えず普段通りに接してやってください」
フューズの知り合いということらしい。
しかし……ここに朱菜がいないのが心細くもある。
まぁ、大体のことはライナが取り次いでくれているので、問題はないのだけどね。
まず、ブルムンドの王様に会う前に、事務的な協議はこのベルヤード男爵と行い、王との会談は明後日。その内容を元にして、相互に確認する形となるらしい。
「ジーギスから聞きましたよ。なんでも、レッサーデーモンを剣で倒したとか」
「いや~……はははは」
「時間は有限です。さっそく始めましょう」
ベルヤードに連れられて少し奥の方のちょっと落ち着いた部屋ながらも、ソファーなどはしっかりと良いモノである。
テンペストとブルムンド王国の開国条件は二つ……。
一つ、両国間の相互安全保障。
一つ、両国間の相互通行許可。
さて、まずは……相互安全保障についてだが……これは……。
「我が国の魔物への対策はギルドとの協力で成り立っています。そこで……貴国での補給を認めて頂きたいのです。当然、彼らも対価は支払います。ただ……正直な話、そちらのメリットは少ないかもしれません」
テンペストが活動拠点となれば、冒険者の活動範囲は大きく広がる。
必然、ブルムンドへの脅威が減るというわけになるが……ここに書かれているのは国の安全保障についてだけ……つまり、モンスターに限定されている訳じゃない。
たしかに、「相互」である以上。こちらも助けてもらえるわけだけど……。
テンペストが助けて欲しい状況っていうと――。
オークロードの出現。
魔王ミリム来襲。
カリュブディス、急接近! みたいな時になってしまう。
そして内容は、お互いの国家に危険が迫った場合。可能な限り協力するという概要に照らしてみると、テンペスト側が受けられる恩恵は、あんまりない。
『ふ~ん……なるほどねぇ』
なんかライナが意味深に頷きながら、地図を見ている。
リムルはちょっと悩んでいるみたいだけど、多分だがもう一つの案件について考えているんだと思う。
国を抜けれる通行許可は確かに益が見込めるだろうけど……これってどうなんだろうなぁ。ブルムンドの方が遥かに益が見込めそうに思える。
「リムル……どうする?」
「ん~、わかった。簡易宿と武具を整備できる施設を用意しよう」
『あら、そうなるのね』
「いいの?」
「問題ないだろう?」
まぁ、リムルが決めたなら良いけどね。
「ああ、助かります」
リムルはニコッとベルヤードの方を見ているが、自分とライナは彼のことをジト目で見ている……当のベルヤードはこちらを見ようともせずに、リムルだけを見て微笑んでいる。
これは、してやられたかもね。
まぁリムルにも良い経験って事で、後で反省してもらおう。
信頼を買ったにしても、デメリットはテンペスト側が大きくなるけど……それは、ブルムンドがしっかりテンペストに住まう魔物を守ってくれると確約させれば良いことだ。
初めに嵌めたのはブルムンドだし、力の差を後から知っても……きっと後悔はしないだろう。むしろ出来なくしちゃえば……こっちのモノかもしれない。
「では、もう一つの件について。話しましょう」
リムルのことだから――、
「相互通行許可はテンペストにも人間が来るようになり、更に魔物が人間の町に赴けるようになる。人と友好的に付き合いたいと考えている自分達にとっては大きな一歩」
とか考えていそうだ。
まぁリムルも考えがあってか、税収の方も見込めると考え、商人がテンペストに入る時の関税で、ベルヤードとかなりやり合っていた。
自分とライナもこちらがこれ以上の損をする訳にはいかないので、それとなくベルヤードに脅しをかけて、折れさせたけどね。
「期限を定め、国が商人達の支払いを立て替えるものとしましょう」
「いいのか?」
「我が国にとって、最重要なのは……安全保障に関してです。お二方は先ほど折れてくださった。今度はこちらの番です」
自分とライナは、よく言うと思いながらベルヤードを見ているが、彼は涼し顔をしながら笑顔でリムルの方に手を伸ばして握手を求めた。
「お互いに利のある関係でいたいものですね」
こうしてベルヤードとの会談は終わり。
==それから二日後に、ブルムンド王と会って、いよいよ会談の本番という事になる。
といっても、ベルヤード男爵の奏上に、ブルムンド王が頷くだけで……リムルなんか王妃様が美人だなーとか思っている間に終わってしまうくらいあっさりしたモノだった。
ちょっとだけ、関係を進めておくために王妃様の方にコッソリとだが美容品なるモノを試作品と称して勧めておいた。
メイド達に試させればすぐに分かる事だろうが、手荒れや垢切れの予防に軟膏として、肌の潤いだって保てる優れものである……御贔屓にしてくれるだろう。
ベスターと一緒になって朱菜達には内緒で開発していたものなので……帰ったら何を言われるか分からないが、今は気にしてもしょうがないだろう。
ちなみに……ライナからは――。
『聞いてないし……いつの間にそんなモノに着手していたの?』
という、物凄い圧をかけられてしまった。
いや、だってフルポーションは開発出来たんだから、その先として他の国々に売れるものを考えて思いついたのが美容品だったんだもん。
女性には売れるだろうし……女の子の冒険者にだって売れる……と言ったところで、まだ試作品という事で、とりあえずは許された。
ちなみに、王妃様の方も目の色を変えて迫ってきていたので……安易に美容を謳った商品をチラつかせてはいけないと……思い知らされた。
「今後とも宜しく頼みますぞ。リムル殿、ウィン殿」
ほっほっほ、と笑いながらフレンドリーにブルムンド王が接してくる。
「ええ、こちらこそ」
「ん、よろしく?」
「えぇ、よろしくお願いいたしますね……特に、試作品の方もしっかりとブルムンドへ持ってきてくださいましね。楽しみにお待ちしていますから」
王妃様が扇子で口元を隠しながら、最後の方は自分に耳打ちするように話しかけてきた。
「う、うん。しっかりしたのを作ってくるから……」
「ふふふ、それが聞ければ良いのです。しっかりと頼みますよウィン様」
『大丈夫、次に来る時までには完成させとくようにしっかりと言い聞かせておきます』
なんかライナと王妃様がノリノリで仲良くなっていた。
「東の帝国が攻めてきた場合にも、協力のほど、よろしくお願いいたしますぞ」
「ええ、…………え?」
王妃様も笑いながら、そそくさとその場を去っていってしまう。
「……東の帝国?」
やっと気付いたのか、リムルが振り返ってベルヤード男爵の方を向く。
「気づかれましたか」
『というか、王様が去り際に言っていったわよ』
「気づかなかったの……リムルだけ? ブルムンドを脅かす存在が魔物だけな訳がない? 実際には隣国である人間同士の方が多いと思うよ?」
危険への対処というのは、例えば、何処か別の国家が攻めてきた場合も含まれる。
ようやく騙された事に気付いたリムルが、床に両手を付いて落ち込んでいる。
関税の利益なんて防衛費からすれば、微々たるものだからね。
ブルムンド側が本当に警戒しているのは他国からの侵攻というわけだ。
「まぁ、そう気を落とさずに。条約は既に結ばれております、今後とも良い関係でいましょう」
「くそぅ……お前らも教えてくれれば良いのにぃ~」
「はぁ、相手がいる中でそんな簡単に口にできる内容じゃあない?」
『まぁ相手が悪かったわね。彼の方が交渉に関して、何枚も上手だっただけよ』
「ちょろかったろうな……」
「交渉はヤツの得意分野ですからね」
フューズも苦笑いでリムルを慰めている。
『まぁやり返せるチャンスはあるわよ……我が国の特産品とか、ね』
ライナが物凄く妖艶な笑みでリムルに語り掛ける。
「あぁ……なるほど」
リムルも、ただやられただけで終わる気はないようだ。
「布石はしといたよ……まぁ、王妃様から今頃、王様に伝えられてるだろうけど……回復薬のことは、こっちから話に行かないとね?」
フューズは何のことかわからず、戸惑っているが……彼も何も言わなかったのだから同罪という事で、少し手伝ってもらおう。
次の解放テーマ、ワルプルギス終わりまで
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