心にデュエリスト魂を持って転スラ世界に・・・   作:風月八泉

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94話 イングラシア王国

 

 

 

 

 

 

 

 

「イングラシア王国に行くにあたって注意点がありやす」

 

 ブルムンド王国で色々とやらかしてしまった事もあるけれど、まぁ概ねは良い方向ということでリムルと頷き合い。話は終わった…………ライナからは批判と呆れが籠ったジト目で終始見つめられていたけれど、リムルと自分が押し切ってしまえば勝ちだ。

 

 いまはランガに狼車を引いてもらいながら、車内でギドがちょっとした注意点を説明してくれている。

 

 議題は「カウンシル・オブ・ウェスト」漢字にすれば「西方諸国評議会」。

 ジュラの大森林周辺に点在する人間の国家で形成された評議会である。

 

 当初、対魔物の互助組織として立ち上げられた評議会の役目は、今やそれだけに留まらず。国家間の調定をも担う絶大な権力を有する組織となっていた。

 

「要するに、西側諸国を仕切ってるお偉いさん方のあつまりですよ」

「へぇ……」

 

 カバルが簡単に纏めて言う。

 

「評議会の裁定には、ギルドも従わなきゃならないんで、あっしらにとっても無関係な存在じゃないんでやす」

 

 前世で言えば、国際連合みたいな感じだろうか。

 

「で、そのなんちゃら評議会の中心になってる国がイングラシアなのか?」

「そうです、あそこは都会ですからね。さすがの旦那やお嬢もビックリすると思いますよ」

 

 二人の説明に飽きていたエレンは窓の外を見ながら風景を楽しんでいる様子で、窓を開けながら遠くを見ていた。

 

「ねぇねぇ、みえてきたわよぅ」

 

 エレンが楽しそうに言うと、リムルはスライムボディから人型へと変わる。

 リムルも窓を開け、少し身を乗り出すようにしてイングラシア王国を見る。

 

「おー。あれがイングラシア王国か」

『は~い、お客様~。身を乗り出して覗くのは危ないからおやめくださ~い』

「ランガ、疲れてない?」

「大丈夫です。まだまだ曳けますよウィン様」

 

 ランガの方はむしろ狼車を曳くのが楽しいという感じで、ずんずんと楽しそうに曳いてくれている。

 

【来たね、リムル】

【あぁ……シズさん、もうすぐだ】

 

 ちょっとスピードを上げてイングラシアの門に近付く前に、リムルの胃袋に狼車を入れてもらって、ランガにはリムルの影に入ってもらう。

 

「さっ、行くか!」

『ちょっと、テンション上がって変な事はしないでよ?』

「でも、楽しみなのは良く分かる?」

「門はこっちでやすよ」

「こうしてみると、年相応って感じなんだがなぁ」

「でもでも、楽しみだよねぇ」

 

 荷物を纏めて、入国審査をしている入り口の方へと向かって行く。

 

「Bランク冒険者!? こんな小さなお嬢さん達が!?」

 

 なんというか、どこに行っても同じような反応をされるね。

 

「お嬢さんじゃねーよ。いいからさっさと確認してくれ」

「リムル……そのうち慣れるからさ、そんなカリカリしない?」

「慣れたくねぇって!」

『ふふ、ごめんなさいね」

 

 終始こちらのペースに乱されている様子の門番さんには悪いが、早く確認してもらおう。

 

「はい、これ?」

『私達のよ』

「んっ!」

 

 リムルは見せつけるようにライセンスを持って門番さんに突き出している。

 

「あ、し、失礼しました!」

 

「可愛い声なのに、オッサン口調とは……」

「バカ、聞こえるぞ!」

 

 聞こえているので、小声で喋ろうと無駄ですよ。

 

『いくら顔を隠していても、声が可愛いんじゃあ少女扱い変わらないわね』

「……声か、それが理由とは考えなかったな」

「うわぁ……これは凄いね」

 

 都会と言われるだけはある。

 いたるところの建築物は高く、メイン通りにはショーウインドーみたいに、鎧やら盾やらと豪華そうなモノが並んでいる。

 

 そして中央に聳え立つ城は、指輪の物語に出て来そうなお城だ。

 

【帰ったら摩天楼の建設を本気で検討してみるか……】

【リムルも好きモノだよね】

【心は常に少年だからな】

【少女でも良いと思う?】

【……絶対に少年だ】

 

 久しぶりに感じる都会という独特な空気に、自分とリムルははしゃぎながら色々なモノを見ていく。

 

「治安も良さそうだね」

「あぁ、警備がしっかりしてそうだし」

『そうね、ブルムンドでもギルドの組合員で警邏してたみたいだけど……』

「ここの警備兵は、衣装が統一されてるね」

 

 所々にいる鎧を着ている兵士達を見ると、みな同じデザインの鎧だ。

 

「ああ彼らは、西方聖教会所属の兵士ですね」

 

 ギドが説明をしてくれた。

 

「西方、聖教会?」

「唯一神ルミナスをあがめる、ルミナス教の組織なのよぅ」

 

 エレンも補足で説明をしてくれた。

 

 リムルと一緒に「へー」と呟きながら、兵士たちを見る。

 

 しかし……西方ねぇ。

 教会って言ってたし、狼車でギド達の話を聞いていた感じからすると……あんまり自分達にとっては面倒な相手になりそうだ。

 魔物ってだけで、討伐対象とか考えていそうで怖い。

 

「そうだ、旦那は教会には気をつけた方がいいぜ」

 

 カバルがこそっと耳打ちするように喋る。

 

「西方聖教会は魔物の殲滅を教義としてるから、旦那の正体が知れたら聖騎士団の討伐対象になっちまう」

「おお……それは怖いな」

「それって、自分とライナはどうなるんだろう?」

『魔物と言われれば……魔物なのかしら?』

「いや、どっちかっていうと精霊って感じでやすかね?」

「う~ん、でも魔女っ子だしぃ……教会的には、セーフ?」

「むしろ攫われて洗脳してでも対魔物兵器として扱われたりしてな」

「とにかく関わらないに越したことはないな」

「えぇ、旦那達ならそうそうやられたりはしないと思いやすが……彼らは対魔物のエキスパートなんでやす」

 

 ギド達は心配そうに見てくる。

 

「なんてったっけ、聖騎士団の団長」

「えっと確かぁ。そうそう、ヒナタ・サカグチ!」

 

 思わず「えっ」と声をだしてしまった。

 

 名前からして確実に日本人だ。

 リムルから見せてもらった子達の女性側だろうな。グランドマスターのユウキ・カグラザカは若い風貌の男と聞いたから。

 間違いなく「ヒナタ」というのは、女性の方だろう。

 まぁ、まったく関係ない人物ということもあり得るけど……。

 

 リムルの感じからすると、多分だが確信がありそうに見える。

 

 とりあえず、今日は宿に泊まって翌日にグランドマスターに会う感じだ。

 

「6名様ですね。お部屋はいくつご用意いたしましょう」

「二部屋で」

 

 男女で別れる感じになり、カバルとギドは二人で部屋を使うらしい。

 

 旅の疲れか、エレンは部屋に入るとすぐにお風呂へと行って布団の中へとダイブし、速攻で夢の世界へと旅立っていったようだ。

 

「考えていた以上にやっかいそうだな」

『対魔物のエキスパートねぇ……実力というよりも、魔物の力を阻害出来る魔道具を多く所持しているって感じじゃないかしらね』

「ありえそう」

「っていうかよ、なんで俺はエレンやお前らと同じ部屋なんだ?」

『諦めなさい』

「ん、今更だね……明日からは別に普通の服でも……」

『あら、ダメに決まってるでしょう。キッチリ可愛く仕上げてあげるから大丈夫よ』

「別に、旅の間くらいはよくない?」

『シュナ達に怒られたいなら、別に問題ないわよ』

 

 ガクッとその場で落ち込むと、リムルが優しい笑顔を向けてくる。

 

「ふっ、諦めが肝心だよウィン」

『えぇ、そうね……ちなみにシュナからリムルの分も預かってるんだけど……』

「さっ! 明日に備えて早く寝るぞ」

「一緒に、着替えようね。リムル……」

「離せウィン! 俺にそんな趣味はねぇ」

『エレンも手伝ってくれそうだし、明日が楽しみね』

 

 妖艶に微笑むライナに恐怖を覚えて、思わずリムルに抱きつく。

 

「おいバカ離せ! お前は向こうのベッドだろうが」

「一緒に寝る?」

「寝ねぇよ! あっちでしっかりとライナの相手をしてこい!」

『あら、アタシは3人で寝ても良いと思うわよ』

 

 そんな感じでもみくちゃになりながら、翌日のギルド本部に向けて寝る事になった。

 

 翌朝にエレンが、

「あ~! ズルい! 皆で楽しそうに寝ちゃってさぁ」

 なんて言いながらリムルに抱き付いて来たのは、また別のお話。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の解放テーマ、ワルプルギス終わりまで

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