心にデュエリスト魂を持って転スラ世界に・・・   作:風月八泉

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95話 グランドマスターと日本人

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日、自由組合本部の建物を見上げて、リムルと一緒になって凄いという一言しか出てこない。

 

 入り口なんてガラス貼りで、自動ドアだしね。

 

「うぉ!」

『自動で動くね』

「……凄く広いね」

 

 ちょっと入り口で驚きながらも、建物の中に入って色々な所を見回してしまう。

 なんか入る瞬間に違和感はあったけど……特に問題はない。

 多分、結界の類だろうけど……魔物除けってところだろうか。

 

「ようこそ、本日はどのようなご用向きですか?」

「あ、ああ。グランドマスターに会いたい。これが紹介状」

「確認して参ります。こちらにて少々お待ちください」

「あ、はい」

 

 前世のホテル従業員みたいな感じを思い出すやり取りだ。

 

 壁端にあるソファーにちょこんと座り。少し硬くなりながらリムルと待つ。

 やはり本部というだけあって、装備や立ち居振る舞いでもそれなりの実力者が多い。冒険者の質も高いことが良く分かる。

 

『なんというか、綺麗すぎてちょっと落ち着かないわね』

「ああ、何かわかるなそれ」

「ん? 来たかも?」

 

 なんか異質な気配で近付いてくるエルフ? のような女性がやってきた。

 

「大変、お待たせいたしました。リムル様とウィン様のみ、お通しするようにと言いつかりました。ここからは専属の秘書である私がご案内します」

 

 プロポーションは紫苑の方が勝っているが……秘書としては彼女の方が遥かに優秀だろうなって思ってしまう。

 

「えっ、グラマスがお会いになる!?」

「なかなか会ってはもらえないのに……」

「だからリムルの旦那は特別なんだって」

『二人だけねぇ……それじゃ、アタシは少し外でも見てくるから』

 

 ライナは多分、人気のない場所でカードの精霊状態になって自分のデッキに潜む気だ。

 

「ん、それじゃ後でね?」

『えぇ、なにかあれば呼んでちょうだいね』

「俺達もついていきましょうか?」

『一人でブラっとしてくるだけだから、すぐ戻るわよ』

 

 ライナはそう言ってヒラヒラと手を振りながら外へと歩き出す。

 

 秘書の女性についてあるくと、円形の行き止まり部屋に辿り着いた。

 中心で少し止まっていると、転移する形で違う場所へと飛ばされた。

 少し長い廊下を歩いていると……デッキホルスターが少しだけ光り、ライナがカード状態になってデッキの中に入り込んだのが分る。

 

「あの……」

「グランドマスターはすぐに参ります。こちらの部屋でお待ちください」

 

 通された部屋は……なんというか、前世で言うちょっとした会長室というか、談話室? に似た雰囲気で、椅子やソファーの配置は会長のデスクっぽくもある。

 

「では」

「あ、どうも」

「……素っ気無い人だね」

「あはは」

 

 棚に飾られているモノを見ると、なんか前世で見たことあるようなモノばかりある。

 妖怪の目玉だけのキャラとか、四つ星のオレンジ色のガラス玉とか。

 

「ねぇリムル……どうする?」

「ん~、下手な駆け引きをするよりも、真実を話して信頼を得たいところだな」

「スライムボディで会うの?」

「ああ、それに……シズさんのこともちゃんと伝えたい」

「そっか……なら、自分はとりあえず何もしないからね」

「悪いな」

 

 グランドマスターが来る前に、どういう感じで会うかの確認をしつつ、ユウキ・カグラザカが来るまで待つ。

 

「お待たせしました。僕が自由組合総帥のユウキ・カグラザカです。僕のことは気軽にユウキと――、うわ、スライム!?」

「驚くよね……」

 

 ソファーの上にスライムと自分が居るんだから、ビックリするのは無理ないだろう。

 

「初めまして。テンペストの盟主、リムル=テンペストという。俺のこともリムルと呼んでくれ」

 

 スライムボディでぴょこっと手を伸ばすように小さな腕をユウキに伸ばす。

 

「は、はぁ」

「ごめんね? 下手に隠すよりは真実の姿の方がいいと思った? あ、自分も魔国連邦の盟主、ウィン・テンペスト。ウィンって呼んで?」

「よ、よろしくお願いします?」

 

 ユウキは首を傾げながら、何処かで見たことがあるようなという顔をしている。

 とにかく、まずは軽く雑談からだろう。

 

「いや驚きましたよ。フューズに聞いてはいましたが、噂の魔物の国を興したのがまさか……その……」

「スライムと少女だとは思わなかったって? でも俺の方も驚いた」

「ん、その若さで、ここの総帥? 素直に凄いとおもう?」

「ああ、いえ。実際には二十代後半です。僕は異世界からの転移者なのですが、この世界に来た時、スキルを獲得できなかったんです」

 

 シズさんの話だと確か、スキルだったり耐性を獲得しているはず。

 

「その代わりなのか、身体能力は異常に発達しまして。肉体の成長もそこで止まってしまったようなんです」

 

 ……なんか、上手く躱されてる気がするけど……自分達が知らないだけで、そういうケースもあるのかもしれない。

 

「そのせいにするのもなんですが、なかなか大人の男としてはみてもらえず……未だに女性と付き合ったこともなくて」

 

 その言葉を聞いて、リムルがなんかキラキラと光り出している。

 

「いやー、そうかね? 残念だったね、それは。なーにその内、いいことあるさ!」

「なんでそんなに嬉しそうなんです?」

「……同じ童貞が居て喜んでる?」

「違うからね! ただのスライムスマイルさ!」

 

 ジト目で自分とユウキからの視線を浴びても、キラキラした感じは変わらなかった。

 

「そういえばリムルさん。一体どうやってここに入ったんです? この建物の入り口には結界があるので、魔物は入れないはずなんですが……」

「ああ、自動ドアの前のあのセンサーか」

「やっぱり結界だった?」

 

 リムルは胃袋から仮面を取り出し。

 

「ひとつは、この仮面。これで妖気を抑えることができる」

 

 リムルが仮面を取り出した瞬間にユウキの顔付が変わる。

 

「その仮面はシズ先生の……っ」

「それから……その仮面の持ち主の意思と姿を継いだ。俺は喰った相手に擬態できるんだよ」

「喰った、相手……」

 

 良い速さの動きでリムルに蹴りを入れようとユウキが動き出したので、最小限の動きで自分は躱し、リムルはそれを足で受け止めていた。

 

「……落ち着けよ、グランドマスター。事情も聞かず、殺そうとするなんて、立場的にもマズイんじゃねえの?」

「あ、秘書さん、お茶ですか?」

「はい、お飲み物を用意しました」

 

 やっぱり、この秘書さん……ただ者じゃないね。

 この状況下で、特に驚いた様子がない。

 その上、ユウキが飛ばした机はかなりの速さで入り口付近に飛んで行ったにも関わらず、それをしっかりと目で追っていた。

 

「ふ~ん、ありがとうございます?」

「いえ、これも仕事ですから」

 

 自分と秘書さんはお互いに見合いながら、リムル達の方を見る。

 

「……やはり只者ではありませんね。信じ難いが……たかがスライムがシズ先生を殺したという事実を認めざるを得ない」

「それは事実だが、彼女の最後の願いに応えた結果だ」

「屁理屈を……」

 

 怒りの形相でリムルに怒鳴るが、リムルは冷静にユウキを見つめて仮面を彼の前に突き出して言う。

 

「それから、先生を敬愛するなら形見は大切にしろ。今の蹴りでこわれるとこだったぞ」

 

 そんな姿を見せられたせいか、ユウキはじっとシズさんの仮面を見つめて、大きく息を吐いて落ち着きを取り窓していく。

 

「あ、手伝います?」

「いえ、これも仕事ですからお任せください」

「ん~? 気にしない?」

 

 秘書さんと飛ばされた机を直しつつ、席に戻る。

 

「……詳しく、聞かせてもらいますよ」

「もちろんだ、出会いから話そう」

 

 

 ==ユウキはまだリムルの事を信じられない様子だったけど、話を聞く姿勢にはなってくれたようで、シズさんの最後の件は、噛み締めるように聞き入っていた。

 

 

 

 

「――まぁ、そんな感じだ。スライムの言うことなんて信じられないかもしれないけどな」

「……いえ、先生らしい決断だと思いました」

「助けてあげたかったけど、ごめんね?」

「ウィンさんが謝ることでは……」

「そうだ、言い忘れてた。俺は「悪いスライムじゃないよ!」」

 

 リムルがそう言うと、ユウキが噴き出して机につっぷした。

 

「……そのネタは、必要?」

「ああ、必要だろう。俺も元ネタを知ってるし、ウィンも元ネタを知っている」

「……っ、そのネタ……‼」

「某国民的ゲームのあれ?」

「でも、戦時中にこっちにきたシズさんは違う。同郷だった子から聞いたと言っていた」

「……ええ、僕が話しました。先生はあちらの様子を知りたがっていましたから……」

 

 まぁ、ユウキが話したと思ったのは、この部屋に飾られているモノを見れば予想もつくというものだろう……オタク的なモノで溢れているからね。

 

「現代の日本か、俺も終戦後のイメージを見せたら喜んでくれたよ」

「……ということはリムルさんも?」

「そうだよ、日本人だ。ちなみにウィンもな」

「彼女も……そういえば、何処かで見た覚えが……」

「ん~、コレを見てわかるかな?」

 

 前世で少しでも遊んでいたなら、きっと知っているカード達。

 ライナのカードは省いて、光の護封剣や聖なるバリアミラーフォースなど、後は適当なカードを見せる。

 

「これは! 遊戯王カード!?」

「そう、自分はそのカードである精霊……の魔女って感じで転生してきた?」

「ウィンさんに関しては、分かりましたが……」

 

 ジッとスライムの方を見ているユウキ。

 

「まだ疑うのか? いいだろう、では君の望むものをみせてやる」

 

【頼んだぞ大賢者】

〈……了〉

 

 リムルの胃袋から布が取り出され、そこには漫画の絵が描かれていた。

 

「うわっ」

 

 ユウキは怪しみながらもリムルが出したモノを手に取ってみる。

 

「こっ、これは……」

「なにが書かれてるの?」

 

 なんかリムルがドヤ顔をしている気がする。

 

「「鋼の錬金術師」の最終巻!? 発表日前に、こっちの世界にきてしまい、どれ程に悔しかったことか……‼」

「なるほど……」

 

 棚の様子から趣味を把握して、あとは時期的に彼が読めていなさそうなものをリムルの記憶から再現させたんだね……大賢者さん、それでちょっと嫌そうだったのかな。

 

 まさに、大賢者の無駄遣いだね。

 

〈…………〉

 

 なんか物言いたげな大賢者さんだが、自分には助け舟は出せないのでごめんね。

 

「あいにく紙がないんで、布に転写するしかできないが……」

「紙!? 紙ですね‼ ありったけの紙を持ってきてくれ、すぐにだ‼」

「は、はい……」

 

 ユウキの豹変にちょっと秘書さんが驚いている。

 

 しばらく、リムルによる漫画の複写というか……リムルもかなりのオタクだよね。

 ユウキと一緒になって、何が読みたいという感じで漫画を次々に作り出していく。

 

 

 

 大賢者さん……頑張って。

 自分にはユウキとリムルの暴走は止められないから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の解放テーマ、ワルプルギス終わりまで

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