運動場で子供達の信頼を得てからは、大人しく……という事はないけれど、しっかりと自分やリムル達の言ったことを聞いてくれるようになった。
「ん~、寝たくなる気持ちは解るけど……ダメ?」
「くかー」
「確かに、興味ない授業は眠くなるよなぁ」
「主、起こしましょうか?」
ランガも悪戯っぽくケンヤの近くに擦り寄っていく。
その様子をアリスやゲイルは笑いながら見て、リョウタやクロエは少し呆れながらもクスクスと楽しそうにしている。
「とりあえず、ゲイルが解いた問題は正解だね?」
「よし、ほらおきろ~ケンヤ君」
「ぬわぁ⁉」
リムルは手に持った本でケンヤの頭を軽く叩いて起こす。
「おはよう?」
「わっ⁉ バカ近いって‼」
ちょっと間近でケンヤの寝顔を見ていた自分に驚いた様子で、椅子から転げ落ちている。
「まったく、気持ちよさそうに寝やがって」
「でも、そろそろ授業ばっかりの窮屈な感じは飽きたよ?」
「お前は遊びたいだけだよな!」
自分も教える立場ではあるが……勉強ばっかりというのは、どうも体が拒否反応を起こすように遊びたくなってしまう。
「目を逸らすなよ」
哀れんだ目で見られようと、こればかりは性格上しかたないと思うな。
「はいはい! ウィン先生に賛成!」
ここぞとばかりにケンヤも自分の提案に便乗してきた。
「最近は確かにずっと勉強? なら息抜きってことで、ピクニックとかどうかな?」
今までの遅れを取り戻すように授業をしてきたのは確かなのだから、適度な息抜きは必要だと畳み掛けてリムルに提案する。
「はぁ、しょうがないな。とりあえず今日の授業はここまでのようだ」
溜息を付きながらリムルが言うと、授業が終わりを告げるチャイムが鳴り響く。
「ウィンの提案もあることだし、俺もそろそろ息抜きは必要だと思ってたところだ……それじゃあ明日はピクニックな」
そういうと子供達の皆が喜びの笑顔を自分に向けてくる。
「やったぜ! ありがとうウィン先生!」
ケンヤは飛び跳ねて喜び。
「ピクニックって何処に行くの!?」
アリスは自分に抱き付き、目を輝かせながら聞いてくる。
「うれしい」
何気にクロエもそっとリムルに抱き付いている。
「やっぱり外の空気を吸わないと、人間ダメになっちゃいますからね」
「うんうん、楽しみだね」
ゲイルの言葉にリョウタが頷き、ピクニックの話に夢中なようだ。
「さてっと……ウィン、この後――」
「ねぇ、ウィン先生、この後が暇なら魔法を教えて!」
「あ、私も教わりたい」
「それなら自分も教えて欲しいです」
「俺も、もっと魔法を上手くなりてぇ」
「ボクも教えて欲しいことが……」
リムルが言い終わる前にアリスが割って入ってきて、クロエも何故かリムルとの会話を遮るように自分も教わりたいと、リムルと自分の間に入って手を上げている。
「あ~、そんじゃ後はウィンに任せていいか? 俺はちょっと情報収集に行ってくる」
「ん、わかった?」
【テンペストに帰るの?】
【あぁ、そろそろ顔を見せとかないとシュナやシオンに怒られそうだし、子供達の事情や情報もあるかもしれないしな】
【なら、トレイニーさんに聞いてみたら?】
【あぁ一番はそれだな。じゃあ後は頼んだぞ】
そうやってリムルと思念伝達で会話をしていると、なんかアリスやクロエがむくれて自分とリムルを睨んで来た。
「もう、先生たちはそうやって分かり合った感じで視線で会話する」
「ちょっとズルいと思います」
「あはは、悪いな。ちょっと今日は遠出してくるが、明日には戻ってくるから安心してくれって言ってたんだよ」
リムルが誤魔化すように言う。
それを聞いていた子供達が少し寂しそうな顔になる。
「え~、リムル先生は教えてくれないのかよ?」
「今回はな、次は俺も加わるから。じゃ、後はよろしく~」
そう言ってリムルは手を振りながら教室を後にする。
「ちぇ~、リムル先生にも教えてもらいたかったのにな」
「ふふ、大丈夫だよ。それにリムルは君達の為に行くんだからさ」
ケンヤの頭を撫でながら言うと、他の子達もちょっと嬉しそうにしながら頷く。
「わかってる」
「えぇ、お二人が自分達の為に動いてくれてるのは知ってますから」
「はいはい、それじゃあリムル先生が帰ってきたら、あっと驚かせやるんだから。早く魔法の訓練場に行きましょう」
アリスが少し強引に自分の手を取って歩き出す。
「ふふ、焦らなくても行くよ?」
「あ、ライナさんはどうしますか?」
「仲間外れにされると、不貞腐れそうだよ?」
ゲイルとリョウタが思い出したかのように言う。
確かに、ライナは保険の先生としての面もあるため、保健室に居る事が多く、今もきっと保健室で怪我をした生徒の手当をしていたりするだろう。
「あ~、呼んできてもらえる?」
「は~い。じゃあ行ってきますね」
「あ、俺も行くぞ」
なんだかんだとライナも人気者である。
==魔法の訓練場まで引っ張られるようにきたが、そこそこの人数が自主練をしていたりする。
「それじゃあ、クロエはシャボン玉を作ってみる?」
「シャボン玉?」
「そう、水魔法でね。粘度を上げる感じで、手で輪っかを作って水を張る。後は風でゆっくりと押し出すようにすればいい?」
実演しながら、ゆっくりとした動作でクロエに見せる。
「わっ! 本当にシャボン玉だ!」
「コレが維持できれば、成功?」
「やってみます」
ヤル気になったクロエがシャボン玉を作り始める。
粘度の調整と維持に少し苦戦しているようだけど、もうシャボン玉としての形は出来ているので、この辺の感覚はさすがと言うべきだろう。
「先生、次は私よ!」
「うん、そうだな、アリスは……先ず人間の動きをしっかりとマネできるようになることかな?」
「え? 人間の動き?」
「そう、せっかくのスキルだけど、今のアリスは人形を飛ばしたり浮かしたりだけでしょう? だから人間っぽく、動物っぽく。しっかりと動かすことを意識していけば、その「人形使役者」はもっと伸びると思う?」
「確かに……意識したことなかったかも」
「人形さんにだって性格があるんでしょう? ならそのお人形さんの性格にあった動きがあってこその個性。だから、先ずは人間の動きをしっかり出来るようになることが重要かな?」
「でも、どうすればいいか、よく分かんないわよ」
そう言われると思って、前からリムルに作ってもらっていた、アリスの訓練用の人形を取り出す。
「なによ、これ? 可愛くないわよ」
「それは訓練用? 歩かせたりするし、いきなりだと威力調整をミスして人形が千切れちゃったりするかも?」
「な、なるほどね。たしかに、そうかも……」
想像して、自分が大事にしているお人形さん達が無残な姿になるのを思い浮かべたのだろう。アリスは頷いて、訓練用の人形を受け取った。
「それで、歩く、走る、止まる、剣を振るとか、基礎的な動きをマスター出来れば、次はお人形さん達で人形劇をやってみる感じかな?」
「なにそれ! 面白そう!」
「でしょう。でも先ずは基礎的な動きね」
「す、すぐに出来るようになるから見てなさい!」
要約すると、離れずに自分達のことをしっかりと見ていてほしいってことらしい。
だいたい、アリスの性格はおマセな子でツンデレっぽい感じだと理解した。
なんか、自分の教え方が独特なのか……他の生徒たちからかなりの注目を集めてしまっているが、特に気にせず子供達の魔法訓練を続けていく。
後からライナを連れてきた男性陣は……なんか疲れた顔をしていた。
聞いた話によると、ライナは保健室で人気らしく連れ出すのに苦労したそうだ。
後は……自分の方を見ながら、ボソッと「やっかみもある」的な事を言っていた。
傍から見ると、ライナとリムル……子供に見えるとはいえ若い美少女が先生として教えてくれていて、その上に実力はグランドマスターが認めているというものなら、確かにやっかみも増えるだろう。
だからライナを連れてきてありがとうと言ったのだが……。
「駄目だ、わかってない、解ってないよ!」
ゲイルが涙目で皆に訴えかけている。
なにが駄目だと言うのだろうか、分からずに自分は首を傾げていると、アリスやクロエ、それにライナも哀れと呆れの混じった顔で見つめてくる。
「アレはダメよ。かなり鈍い部類なんだから」
「俺達が守らないとダメだよなぁ」
「うん、心配になる」
「ボクも頑張って守るよ!」
『……ごめんなさいね、こんな子で。気をつけて見ていてあげてね』
なんか皆から散々な言われようである。
次の解放テーマ、ワルプルギス終わりまで
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