ここだけ先生が技術力を持ったオタクの場合   作:ゑりおっと

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筆が乗ったためちょっと早めの更新。タイトルにもある通りあの子達の登場です。今回は特撮要素少なめ。


第3話 Unwelcome School

カタカタヘルメット団本部

『こちら輸送班、ただいま到着した』

 

「こちら本部、把握した。トラックはそのまま、依頼人が来るまで待機だ」

 

『了解ー』

 

「いやぁ、成功して良かったっすね」

 

「これ以上失敗したら我らの面子もボロボロだしな」

 

プルルルルル

 

「はい、こちらカタカタヘルメット団…!…はい、ええ、成功しましたよ。今頃は倉庫でぐっすりですよ。はい、では30分後に」

 

 

………

 

 

「ようやくですか……全く、弱小校相手に何を手間取っているのですか?」

 

「は、はいぃ…でもあいつらめっちゃ強いんs」

 

「言い訳など無用です。次勝手に口を開いてみなさい、地下に送りますよ?」

 

「そっそれだけはご勘弁を…!」

 

「…まあ今回はきちんと働けたみたいですからね。では、人質を見せてもらいましょうか。」

 

「へ、へい。ではこちらへ…」

 

「ほう、華奢ですが一定の需要はありそうですね。どこで使いましょうか…ん?人型にしては随分と硬い」

 

 

ピーーーーーーーー

 

 

「へ?」「はぁ?」「なんのおt」

 

 

ドカァアアアアアアン!

 

 

「…………けほっ」

「きゅう…」

「(× ×)」

 

 

某日、カタカタヘルメット団本部及びカイザー役員、再起不能。

 

 


カイザーPMC 社長室

 

 

「……何?人質が爆発???…ダミー人形だったということか。もういい、本日付で貴様らの支援を打ち切らせてもらう………(ガチャン)……全く、夜闇に紛れた誘拐とはいえそこまでポンコツだとは。主力戦車まで送ってやったというのになんたるザマ………。やはりドロップアウトした不良では足りない。目には目を、生徒にぶつけるのは生徒、か。専門家に依頼するとしよう」

 

革張りの椅子にふんぞり返る恰幅の良いロボ型の男性が机上の電話を手に取り、ダイヤルを押す。

 

『はい、どんなことでも解決します。便利屋68です』

 

「仕事を頼みたい、便利屋」

 

 

………

数時間後 カタカタヘルメット団本部

 

 

「はぁ………はぁ…うわぁっ!」

「「「いやぁあああああ!」」」

 

銃撃音、爆発音が暗闇を劈く。しかし、それに気付く者はいない。ここは市街地からも離れた立地、その上不良たちのテリトリーと噂され、陽の下で歩ける一般的な感性を持った人は近づかない場所でもあった。

 

誰も近寄りたがらない廃墟同然の建造物から今まさに聞こえている銃声も、爆発音も、誰一人興味を示さなかった。

 

「あーあー、こっちは終わったよー?」

 

「こっちも完了したよ、社長」

 

「な、なんか建物が半壊していたお陰で始末もやりやすかったですね…」

 

正しく述べるなら、爆発や銃声を気にする人物はいた。ただ、ひとり残らず気絶させられていたのだ。そんな中、建物をさらに崩し、ヘルメット団を壊滅させた張本人達は傷一つ無く、淡々と己のリーダーに業務報告を行う。

 

「う、うぅ…てめぇら、ナニモンだ一体…」

 

青ジャージのヘルメットを被った…カタカタヘルメット団のリーダーが薄れる意識の中、言葉を投げかける。ようやく依頼が達成できこれからというところで失敗をし、更に武器の支援までも打ち切られ、これからどうしようかと頭を抱えていたところに襲撃(これ)である。

 

「私達は便利屋68、金さえ貰えば何でも請け負う、なんでも屋よ」

 

倒れている、言葉を投げかけた少女を一瞥し答える。コンテナで薄暗くなった場所とは対象的な曙色の瞳が怪しく光る。

 

「……あー、アルちゃん?キメ顔しているところ悪いけど、気絶しちゃってるよ?この子。さっきの『便利屋』のところで首が倒れていたし」

 

「な、ななっ、なんですってーー!!??え、私、何も無い場所でカッコつけてただけってこと…!?」

 

「くふふ~、格好良いとこ見せつける相手が居なくて残念だったね~社長☆」

「え、ええと、格好良かったですよ、アル様!」

「…はぁ」

 

 

便利屋68社長、陸八魔アルのアウトロー道は、まだまだ続く。

 

 

 


アビドス対策委員会部室

 

 

「先生、それなんのスイッチ?」

 

「んー?悪人が爆散するスイッチ」

 

「なにそれ…。まあそれは置いておいて、会議、始めちゃいましょ!」

 

セリカの誘拐イベントを阻止した翌日、アビドスの定例会議に参加していた。セリカを介抱した後、エンジニア部製のダミー人形とすり替え、偶然パトロール中のホシノと会い、彼女の案内で無事に搬送できた。すり替えたダミー人形には、セリカの体重分を誤魔化すために詰め込んだ爆弾。トラッキング装置と盗聴器も仕込み、取引が完了したところでドカン。本当はカイザーで爆破させたがったが、聞き捨てならん台詞が聞こえたため我慢出来ずにボタンを押した。

 

「ではこれより、定例会議を始めます。今回は先生も出席されているので皆さん、普段以上に真面目な議題にしていきましょう」

 

「何よ、いつもが不真面目みたいじゃない」

 

「よろしくね~先生」

 

「うん、よろしく。普段皆がどんなことを喋っているのか興味があるからね。じゃ、始めてください」

 

「ではまず、直近で制圧したカタカタヘルメット団のことで気になることがありました」

 

白い布で包まれた何かを机に置く。机に置くとゴトン、と重厚な音が鳴る。包まったものを解くと円筒状の金属部品が顕になった。

 

「それって、前哨基地にあった戦車の部品?」

 

「はい、正確にはマズルブレーキ*1なのですが、こちらの部品の型番を確認したところ、現在は使用が禁止されている違法機種と判明しました。もう少し調べる必要はありますが…ヘルメット団は自分達で入手できない武器を保有しているみたいです。前哨基地でもこれが使われている戦車が6台。消耗パーツの予備に砲弾も潤沢にありました。一体どこからあんな数を……」

 

「この部品の流通ルートを辿れば、ヘルメット団の裏にいる存在を探し出せますね!」

 

「はい。ただのチンピラが何故ここまで執拗に私達の学校を狙っているか…」

 

「じっくり調べてみよっか~」

 

「…ですね。それでは次に、今後の委員会活動について話し合いましょう。ご意見の有る方は挙手をお願いします」

 

「はい!」

 

「では、1年の黒見セリカさん」

 

「対策委員会の会計としては、現在我が校の財政状況は破産寸前としか言いようがないわっ!今まで通り指名手配犯をひっ捕らえたり、アルバイトし続けるのも限度がある。毎月の返済額も788万円、正直完済どころか利息の返済すらままならない。何かこう…でっかく一発狙わないと!」

 

「でっかく…例えば?」

 

まあ彼女といえば…

 

「ふっふーん、ズバリ、これよ!」

 

ビシィッっとチラシを見せつける。チラシには『ゲルマニウム麦飯石ブレスレット [健康と豊かさ、更には一攫千金!]』のタイトルにブレスレットの写真がデカデカと載っていた。しかもわざわざわかりやすい場所に家系図のようなイラストを載せ、キャプションには『運気を上げてご友人3人をご紹介すれば同じ運気を分けられます!』と丁寧にかかれている。

 

「却下ー」

「ぇ?」

 

チラシの説明を始める前にホシノから待ったがかかった。……要するに上の会員が下の会員に売りつけ、その会員が更に下の……という無限連鎖講商法。俗にネズミ講やピラミッド商法と呼ばれる典型的な詐欺商法である。

 

「セリカ、それ典型的な悪質セールスだよ…」

「儲かるわけがない。」

「そもそもゲルマニウムと運気アップって関連性があるのかな…?」

 

「えぇ!?わ、私二個も買っちゃったんだけど……」

 

「セリカちゃん、騙されちゃったんですね~。可愛いです☆」

 

「はぁ……というわけで黒見さんは後で私と経済のお勉強です。では他に意見のある方は…」

 

「は~いほほほ~い」

 

「はい…三年の小鳥遊委員長。……嫌な予感しかしませんが」

 

「んしょっと…我が校の一番の問題は、借金の他にも、全校生徒がここにいる数人だけってことなんだよねー。生徒イコール学校の力、だからまずは生徒の数を増やせば毎月のお金がかなりの金額になる。それに議員選挙も出来て、連邦生徒会に人員を派遣して発言権もゲットできる!」

 

「「「「おぉ~」」」」

 

感心したようにこの場にいる約一名を除いた全員が声を出す。セリカは…昼食代を抜いて貯めて手に入れた物が悪徳商法の商材であったというショックから立ち直れていない。

 

「鋭いご指摘ですが…具体的にはどういった方法で?」

 

「簡単だよー。他校のスクールバスを拉致すればオッケー!」

 

「はい!?」

「ヒュッ…」

 

思わず悲鳴が出かけた。やはりこの世界は美少女版GTAだったか……ああ、ユメ先輩。君が可愛がっていた後輩は物凄く軽いノリでバスジャック宣言をする子になったよ…。ユメ先輩に会ったことないけど。

 

「うちへの転入学書類に判子を押さないとバスから降りられないようにするのー。これでうちの生徒数は爆上がり間違いなし!」

 

「あ…あ…」

 

アヤネも驚きのあまり開いた口が塞がっていない。流石に犯罪にはみんな乗り気にはならn

「それ、興味深いね」

 

「シロコ先輩?!」

 

「決行日はいつ?ターゲットは?ゲヘナ?トリニティ?それともミレニアム?」

 

「おぉ!シロコちゃんもノリノリだねー。じゃあ手始めに…」

「却下ぁー!!」

 

乗り気になっている二人を、議長が断ち切った。

 

「冷静に考えて下さい!そんな強引な方法で素直に拉致した生徒がハンコを押すと思いますか?それに拉致してきた元の風紀委員が黙っていませんよ」

 

「うへえぇ~やっぱりそうだよねー」

 

「はぁ…皆さんもっと真面目に考えて下さい…」

 

「アヤネ、ホシノ先輩とはまた別のいい考えがある」

 

「………はい、2年の砂狼シロコさん」

 

「銀行を襲うの。」

 

「はいっ!!?」

 

「お、おお…」

 

有名な台詞を聞けて嬉しさ半分、拉致が却下されたあとに別の犯罪がサラッと代替案として可決されるという自信を持っていることに気がついたことに怖さ半分といったところだ。…でもカイザーなら…いや、やっぱ受け入れられん。「ん、銀行を襲う」は二次元だけで結構だ…今まさにその2次元が飛び出した世界にいるということに目を背ける。

 

「確実かつ簡単な方法。ターゲットは市街地の第一中央銀行。金庫の位置、警備員の動線、現金輸送車の走行ルートは全て把握済み。私の方法を使えば5分で一億は稼げる。で、あとこれ」

 

シロコがスクールバッグから5枚の、それぞれに合った色の覆面を取り出し机に広げる。

 

「あれま、これシロコちゃんの手作り?」

 

「レスラーみたいです!」

 

「じゅ…準備万端だね、シロコ…」

「ん。」

 

サムズアップをこちらに向ける。そこで誇らしくはしないで貰えるのがいいんだけどなぁ…。

 

「いやぁいいねぇ~。人生一発でキメないと、ね、セリカちゃん?」

 

「そんなわけあるかぁ!却下!!」

「そうです!犯罪はいけません!」

 

今まで机に突っ伏していた彼女だが、度重なる突飛な提案で後悔の念が吹き飛んだようだ。

 

「んー…」

「そんな膨れっ面しても駄目なものは駄目です!却下!……はぁ、皆さんもっとまともな提案をですね…。」

 

こりゃあ大変だ…。詐欺に引っかかる同級生に、犯罪を教唆する先輩。気苦労は想像に難くない。

こっちに来てから私もエンジニア部という常にアクセルベタ踏み集団と邂逅を果たしたため共感できる。監視が無ければオートバジンを美少女ガイノイドにしかねないからなあの子達…。でも一切の不備なくこなすだろうという妙な信頼もある。しかしクライアントの注文以外の機能を勝手にくっつけるのはやばいぞ。ネルのタバスコ銃なんかが良い(悪い)例だ。

 

「はい!次は私が!」

 

「はい……2年の十六夜ノノミさん。犯罪と詐欺は抜きでお願いします……」

 

「勿論です!犯罪でも、悪質商法でもない、とってもクリーンかつ確実な方法です!」

 

「ノノミ先輩……!」

 

目に涙を浮かべ、期待の眼差しをノノミに向けるアヤネ。確かにノノミの方法はクリーンだし、実際どこぞの虹が咲く学園ではそれで廃校を免れた実績がある。問題があるとすれば、やる気があるかどうかである。

 

「それはですねー」

 

「うん、うん!」

 

「アイドルです!スクールアイドル!」

 

「アッ…アイドル……!?」

 

「学校を復興させる定番の方法です!私達全員がアイドルデビューをすれば…」

 

「却下ぁ!」

 

やはりか、といった表情ですぐに期待は癖弊に反転し、食い気味に棄却した。

 

「私も反対かなー」

 

「え?ホシノ先輩なら一定層に人気出そうなのに」

 

「こんな貧相な体が好きとか言っちゃう輩なんて人間として駄目でしょ~。ないないー」

 

「ええー、折角決めポーズまで考えたのに………水着少女団のクリスティーナで~す♧」

 

「何が『で~す♧』よ!それに『水着少女団』って!もう少し無かったの!?」

 

「徹夜で考えたのに……」

 

「皆さん真面目に考えてますか!?このままだと一向に議論が進みません!」

 

「んにゃ、アヤネちゃん。ここはいっそ先生に任せるってのはどうかな?」

 

「えー…」

 

「ほらほら『先生』、なんだしビシッと決めちゃってー。じゃあ先生、いま出た意見の中でやるとしたら、どれがいい?」

 

「銀行強盗にバスジャック、スクールアイドル、の中から…?」

 

「もう少し意見を出してからの方が…!」

 

「先生の選んだものなら大丈夫でしょ!」

 

「断言?!」

 

「アイドルで☆お願いします♧」

「アイドルなんか言わないわよね?」

「バスジャックでしょー」

「………(スッ)」

 

うーーーーーーん…。この中で一番マトモなのはアイドル、だがノノミの意見のままだと正直不安がある。「水着」少女団ということは肌の露出で狙うということだろうか。確かに輩はすぐに獲得できるが復興実績のあるあそこではなく地下アイドルっぽくなるのでは?まあ一口に水着といっても全部が全部際どいとは限らないが……あとシロコ、無言で覆面を掲げながらこっちに近づかないでくれ。かわいいけど怖い。

 

「いま出た中だったらアイ

「皆さん………」

…アヤネ?」

 

「いい加減に、してください!!!」

 

「「「「ア、アヤネ(ちゃん)が怒った…」」」」

「……こうなるよね」

 

この後烈火の如くキレてしまったアヤネから説教を受けた。機嫌を取るため、アビドスの面々は放課後に柴関ラーメンに行くこととなった。私はある別の仕事があるため、今日のアビドスでの活動はこれでおしまいである。この後といえば、対策委員会が便利屋68と初邂逅するイベントがある。まあ新しい出会いは若者の特権だ。楽しんで来なさい。

 

 


Side Others 柴関ラーメン

 

 

「いやぁ、悪かったってばアヤネちゃん。ラーメン奢ってあげるさ、怒らないで、ね?」

 

「怒ってまふぇん……」

口に麺を含みながら、不貞腐れた対策委員会書記が言葉を漏らす。

 

「あら、お汁が付いていますよ?お口を拭いてあげますからねー」

 

「私赤ちゃんじゃありませんからっ」

「チャーシュー、もっと食べる?」

「はい……」

 

各々がご機嫌を取る。引き戸が開けられ、接客のために一旦セリカが席から離れ、来客の対応をする。

 

「いらっしゃいませー!何名様ですか?」

 

セリカが扉に向かうと、半開きになったドアにおどおどした雰囲気の帽子を被った少女が申し訳無さそうに覗いていた。

 

「あっ…あのう……。こ、ここで一番安いメニューって、おいくらですか?」

 

「一番安いのは580円の柴関ラーメンです!うちの看板商品なんで、美味しいですよ!」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

「ん?」

 

隙間から一礼をし、扉を閉める少女。不可解な行動に応対したセリカや対策委員会、一部の客が不思議そうに見つめる。

 

「アル様、看板メニューのラーメンが580円だそうです」

「やっと見つかった、600円以下のメニュー!」

「ほら、何事にも解決策はあるのよ、全部想定内だわ」

「はぁ……」

 

外から数人の話す声が聞こえ、再び扉が開かれた。

 

「いらっしゃいませ!4名様ですか?お席にご案内しますね」

 

「いやいやぁ、どうせ1杯しか頼まないし、テイクアウトでいいよー」

 

「でも…どうせならごゆっくりどうぞ。席も空いていますし」

 

「親切な店員さんだね。それじゃあ、お言葉に甘えて」

 

4人の集団で一番小柄な白髪の少女が最初に動き、後の3人も付いてくる。

 

「わがままついでに、箸も4膳でよろしく」

 

「えっ…?まさか1杯のラーメンを4人で分けるつもり?」

 

「ご、ご、ごめんなさいっ。貧乏ですみません!!お金が無くてすみません…!」

 

「あ、いや、そんなに謝らなくても…」

 

「いいえ!お金が無いのは首がないのも同じ!生きる資格なんて無いんです!虫けらにも劣る存在です!虫けら以下ですみません……!」

 

始めにラーメンの価格を聞いてきた少女が涙を浮かべながら青い顔でペコペコと謝り続ける。

 

「ハルカ、周りに迷惑、少し声のボリューム落として」

 

「そ…そんなっ!お金が無いのは罪じゃないよ!胸を張って!」

ハルカの震える手を取り、セリカは手を重ね、握った。

 

「え…?」

 

「ね?大将」

 

「おうよ!金は天下の回りモノ。しかも嬢ちゃん達、まだ学生なんだろ?小銭をかき集めてわざわざ食べに来たんだろ?嬉しいじゃねえか!ちょっと待ってな!」

 

「あ、あの…」

 

「席について待っててね!」

 

「……なんか勘違いされてるみたいだけど」

 

「いつもはそれほど貧乏じゃないんだけどねー。強いて言うなら金遣いの荒いアルちゃんのせいだし」

 

「うっ…」

 

「さっきの依頼で貰ったお金を全額次の依頼の人員確保に使い果たしたし」

 

「ふ…ふふふ、でも実際ラーメンにはありつけたでしょ?それくらい想定内よ」

 

「たった1杯分じゃん。せめて4杯分は確保しておこうよ……。それに、次の相手はそこまでしないといけない相手なの?」

 

「そ、それは……」

 

「…多分アルちゃんにもよく分かってなと思うよ?だからビビっていっぱい雇ってるんだよ」

 

ニシシといたずらな笑いを零す少女。

 

「誰がビビっているですって!失敗は許されない。あらゆるリソースを総動員して挑むわ。それが我ら便利屋68のモットーよ!」

 

「初耳だねそんなモットー…」

 

「今思いついたに決まってるよ」

 

「う、うるさい!今回の依頼を成功させたらみんなですき焼きでも…」

 

「お待たせしましたー!」

 

器が置かれた時に、ゴトン、と通常のラーメンでは鳴らない音が机に響いた。

 

「なっ何これ!?」

「わぁ、ラーメン超大盛りじゃん!」

「ざっと10人前はあるね…」

「こ、これはオーダーミスでは…?」

 

便利屋の前に現れたのは大盛り用の丼に塔のように積み重なったチャーシューやモヤシ、背脂、一人2個ずつ行き渡る煮卵のカットに、丼の縁半分を覆っている海苔といった具材増しでもここまではならないであろう代物だった。

 

「こんなの食べるお金有りませんよう…」

 

「いやいや、これで合ってますって。580円の柴関ラーメン並、ですよね大将?」

 

「ちょっと手元が狂っちまってな。折角だ、食べてってくれ」

 

「「「「わぁ…!」」」」

 

「流石にこれは想定外だったけど…ご厚意に甘えて、頂かないとね」

 

「早く食べよ!アルちゃん!」

 

「ええ、じゃあ…」

 

「「「「いただきます!」」」」

 

「「「「(!!!!!!)」」」」

 

「「「「お、おいしい!」」」」

 

「でしょう、でしょう?ここのラーメンは最高なんです。遠くからわざわざ食べに来る方も居るんですよ」

 

「あ、隣の席の…」

 

「その気持ち、わかるわ。今まで色んな場所で色んなものを食べてきたけど、このレベルに達しているラーメンはなかなかお目にかかれないもの」

 

「その制服、ゲヘナ?随分遠くから来たんだね」

 

「私達、ここの常連なんだー」

 

「そうなの?私だったらここのラーメンなら毎日食べに来たいって……」

 

談笑に入るアルと対策委員会。それを遠目に見ているアルとは反対側の席に座っている二人…カヨコとムツキは声のトーンを落として話し合う。

 

「(ねえカヨコちゃん、この子達って……)」

 

「(うん、アビドス高校の連中だね)」

 

アルと話に花を咲かせている相手が身につけているタグに視線を送る。トライアングルの中心に太陽のマーク。間違いなくこれから襲撃する相手であるアビドスの校章であった。ここまで近くにいながらアルは気がついていないらしい。

 

「(言うべき?)」

 

「(…面白いから放って置こ♪)」

 

「………良いわ。こんなところで気の合う人達と出会うだなんて、こういう出来事こそ、人生の醍醐味なんじゃないかしら!」

 

会話を続けていたアルがシロコに手を差し出す。

 

「ん、そうかもね」

 

同じく手を伸ばし、差し出された手を握る。友愛の握手を交わすのであった。

 

………

 

「「「「ごちそうさまでした~」」」」

 

「いやぁ…お腹パンパンだよー」

 

「社長、時間」

 

「あら…それじゃあ、そろそろ行くわよ」

 

「そういえば、ゲヘナの人がどうしてここに?部活?」

 

「いいえ、ここにはビジネスで来たのよ。ちょっとした大物からの依頼でね」

 

「わぁ、凄いです!学生のうちに起業しちゃうだなんて!」

 

「ん、お仕事頑張って」

 

「そういうあなた達も地元の学生でしょ?こんな砂だらけの場所で大変じゃない?」

 

「いやぁ、実際大変だよー。砂で埋もれた場所の復興とか資金繰りに毎日追われてるからねぇ」

 

「そうだったの…あなた達も頑張ってね!私も応援してるから!」

 

「「(…………)」」

 

笑顔で手を振り、別れを告げる。今の流れでも相手の素性に全く気がつかなかった社長に対してカヨコは溜息を吐き、ムツキは呆然とした。そして、もう良いだろうと二人は目配せをする。

 

「ねえ社長?」

 

「何かしら、カヨコ課長?」

 

「さっきの連中の制服、見た?」

 

「制服?どうして?」

 

「……(ニヤッ)アビドス高校の生徒だよ、あいつら」

 

ようやく種明かしが出来て満足げな笑みを浮かべながら、本来は店の中で伝えるべきだった情報を今更伝える室長。

 

「な、なな、なななっ」

 

なななななななんですってーーーーー!!!???

 

夕焼けの差す赤い空の下、一人の少女の大声が響き渡った。

 

「あははははは!ウケるー!」

 

「あ、それって次のターゲット、ってことですか?」

 

「そーだよ、ハルカちゃん♪」

 

「い、今からでも始末しましょうか?」

 

「遅い遅い☆どうせ明日に攻撃を仕掛けるしその時に暴れよっ!」

 

「は…はいっ!」

 

「う、嘘でしょ…!あんな優しいくて気前のいい子たちが、ターゲットだなんて…!」

 

「情け無用、お金さえ貰えればなんでもやる。それがうちのモットーでしょ?今更何悩んでるの?」

 

「そ…それはそうだけど…!」

 

「心優しい社長にはキツいかもね…」

 

「…!(このままじゃ駄目よ、アル。便利屋として、一企業の社長としてちゃん依頼はこなさなきゃ…!)」

 

「…行くわよっ!みんな!」

 

悩みに悩みながらも、踵を返し、夕日に向かって歩き出すのであった。

 

*1
※砲塔及び銃器の先端に付いている部品。反動、後座距離の減少をする役割がある




□ヨスガ先生の開発LOG 番外編
・起爆装置
形状はアストロスイッチNo.01の無着色バージョン。戦極凌馬のキルプロセススイッチでも良かったが爆破といえば吉良吉影(ジョジョ4部ラスボス。生物無生物限らず触れたものを爆弾にする幽波紋持ち)。あれとおんなじ指の形が出来るアイテムは…という感じ。フォーゼのタイトルロゴも握りこぶしにスイッチ握ってるデザインなのでピッタリ。

□後書き
・前回の透明文字部分とホシノのくだりは閑話としてどこかに挟みたいと思います。

・キヴォトスにも風○はあるらしいので役員が人形のどこを触って「硬い」と言っているかはご想像にお任せします。

・アルちゃんの「なっ、何ですってー!?」は驚き度によって「な」と感嘆符疑問符の数が増えるもんだと考察。

・先生が便利屋邂逅をキャンセルするほどの仕事とは…?ヨスガ先生とエンジニア部と開発研究室第二話にて掲載予定。

・前回の感想欄より、活動報告にて小説の更に踏み込んだ裏話をするCパート的なものの公開や小説内容に関連した(特撮、小説内で使用されたネタの元ネタ等々)オタクトーク出来る場を開設します。よければ覗いていってください。果たして需要があるのか…?好評であれば続けます。

2024/5/10 16時追記
活動報告をアップしました。気になる方は是非お越しください。
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