リアルがクソ忙しかったため遅れました。
翌日、アビドスに着いて朝のミーティングがてら彼女達と雑談をしていると柴関で出会ったゲヘナ生徒のことについて話してくれた。十中八九、というか確実に便利屋のことだろう。雑談が花開こうとした矢先
ビーッビーッビーッ!!
充電台に置かれているアヤネのタブレットから鳴り響くサイレン。先日連邦生徒会でアビドス向けに補給した警戒システムが作動した。
「侵入者!?」
「確認します!…校舎より南15km地点で大規模な兵力を監視カメラが感知!」
「まさか…ヘルメット団?」
「違います!ヘルメット団ではありません!これは……民間の傭兵です!先生、出動命令を!」
「OK、みんな出るよ!」
「「「「「了解!」」」」」
アビドス自治区 校門8km前方地点
「敵影確認!前方に傭兵を率いている集団、来ます!」
「あれ…ラーメン屋さんの……?」
「ぐ、ぐぐっ…」
監視カメラで写っていた作業ヘルメットにつなぎを着た傭兵軍団の他に、実物を初めて見る件の4人組が旗頭の位置に居た。特にピンク色の髪の少女…陸八魔アルは眉間に皺を寄せ、物凄く悩んでいる表情のまま顔を固めていた。……根っこがいい子なんだよなぁ、この子。
「アンタ達!!ラーメンも無料で特盛にしてあげたのに、この恩知らず!!」
「あはっ、その件はありがと。それはそれ、これはこれ。こっちも仕事でさ」
「残念だけど、公私はハッキリ区別しないと。受けた仕事はきっちりこなす」
「…そう、それが私達、便利屋68!」
「……なるほど、その仕事っていうのが、便利屋だったんだ」
「もう!学生なら、他にもっと健全なアルバイトがあるでしょう?それなのに便利屋だなんて!」
「ちょ、アルバイトじゃないわ!れっきとしたビジネスなの!肩書だってあるんだから!」
「私は社長!」
「あっちが室長で―――」
「やっほ~☆」
「こっちが課長。」
「……社長、ここでそういう風に言っちゃうと余計薄っぺらさが際立つ…」
「誰の差し金?」
シロコが銃の安全装置を外す。
「それは企業秘密。クライアントの個人情報はきちんと守らなきゃね」
「なら、力尽くで口を割らせるしか」
「総員!攻撃!」
片手で撃ったアルのライフルが開戦の合図となった。一斉に傭兵団のマズルが輝き、咄嗟に廃車の後ろに隠れて私は身を隠す。戦況は流れ弾が当たらないように目視で。ホッパーはおろかシッテムの箱を出そうにも安全に出せる隙が無い…!
「あはは!諦めて学校渡しちゃいなよー」
「そんな訳には行きません…!」
ムツキがノノミを挑発している。まんまと乗ってしまった彼女が掃射を始めるが…
「今!カヨコちゃん!」
「え…きゃっ!」
ガッと金属を蹴り上げたかのような音が聞こえた。音の方を見るとノノミが持つガトリングの銃身をカヨコが蹴り上げ、回し蹴りで彼女を後退させていた。
「ノノミ!…くっ!」
隙かさず援護に入ろうと雑兵を蹴散らすシロコ。しかし…
「C4」
「なっ…!」
オレンジ色の煙が上がり、仰け反る。倒れ込み熱から逃げようとするも
「クレイモア*1」
「っっ!!!」
「…やっっば!」
ハルカの発した言葉を聞き咄嗟に目視を止め、背後に隠れる。C4の爆発よりも更に激しく、遮蔽物にしている背後の物体から強烈な衝撃が伝わる。有効射程250メートル、700個の鉄球の一部が車の反対側に着弾…一部は突き抜け、こちらに貫通しなかったことに安堵した。
「シロコ!平気!?」
『私は大丈夫。先生こそ、無事?』
『うへー…間に合った』
「良かった…。こっちもなんとか」
『どうしよっっ…!』
『シロコちゃんこっち!』
爆発が止み、煙が晴れた場所には盾を構え、シロコを庇っているホシノの姿があった。
「次は、当てるわよ」
アルの声だ。どうやらシロコに対して射撃したところを、ホシノが守ったようだ。相手の連携と猛攻でこちらは防戦にしか徹せない。
「…皆、態勢を整えるためにも後退だ。校舎まで下がれば何とかなる!」
「「「「了解(です)!」」」」
「アヤネ!この前説明したアレの準備を!」
『了解です!こちらで戦況確認はしますので背中を向けず、迅速にお願いします!特に先生は一発でも貰えばアウトです。どなたか必ず護衛にまわって下さい』
「任せて下さい!」
後衛ポジションのノノミが私を守るように前に立った。
「ん……。」
「シロコちゃん?どうしたの。」
「……なんでもない。」
「そういうところも可愛いです☆」
「行ってる場合か!早く下がるわよ!」
自然と防御陣形になり、徐々に下がり始めた。
「下がり始めたね…」
「行け行けー!」
私達が下がるのに合わせ、便利屋と傭兵の合同隊が進軍する。ムツキにアル、ハルカは得意げな表情をしているが、怪訝な目を向けているのがカヨコだった。ただ圧されているだけではないことに感づいているのは、流石便利屋の参謀担当といったところだ。
下がりに下がってとうとう校舎前のバリケードが見えてきた。
「ノノミ、ここまでありがとう」
「いえいえ~」
翻って校舎の方に向かい、アヤネと合流した。
「アヤネ、セット出来た?」
「はい!皆さんが持ちこたえている間にバッチリと!」
「よし…じゃあ皆、反撃開始だ!」
室内に入ったことでシッテムの箱がようやく起動出来た。次々に現れる校舎周りとデフォルメ化された前線部隊と便利屋、傭兵の子達が映し出される。
「伊達に胡座をかいて傍観なんてしていられるか…!」
指揮画面を別窓にし、あるアプリを開く。こちらの要請、更には原作開始前には交流していないはずの彼女達の出会いがもたらした支援である
「タレット、起動完了。援護射撃、開始します!」
「皆、校門くぐって!」
屋上に、木陰に、壁面に。複数配置された柱のようなものが変形し、黒い銃口が現れる。
「発射!」
ダダダダダダダダ!と、相手と同じか、それ以上の物量である弾幕が侵入者を容赦なく狙い撃つ。
「いっったい!」
「ひええ…」
「おっと」
「…あんなものがあるなんて」
単純計算で手数が倍に増えたことで、御しやすくなった。今からでもこちらが優勢に傾――
バキっっ
「なっ…!1号ダウン!」
……
「ひゅ~さっすがアルちゃん!」
「ふ、ふん!拠点に戻って一網打尽だなんて、簡単にさせるわけ無いじゃない!」
「……禄にスコープも見てなかったよね?」
「ギクッ…ま、まぐれだったけどピンチから脱したんだしいいじゃない!」
「まあ、いいけど」
『狙撃か…!』
『急いで直してきます!その間、皆さんお願いします!』
「任せてー」
……これは長くなりそうだ。
ドンパチやること数時間…
いつの間にか空が赤くなり始めた。ゲームでは青空だったはずだが…その後も、優勢になったかと思えば劣勢に、危ないところでタレットが直り、再び攻勢に。ということが延々と続いた。まさかここまで長引くとは……夜戦にまで持ち込まれると厄介だ。
……やむを得ない。あまり使いたくなかったけど…
『…AIちゃん、いk
キーンコーンカーンコーン
「あ、定時だ。今日の日当だとここまでね」
「あとは自分達でなんとかして。みんな、帰るわよー」
「は、はぁ!?ちょっと待ってよ!」
今まで戦闘を行っていた緊張感は、時報のチャイムを期に解けてしまった。
「終わったってさー」
「帰りに蕎麦屋でも寄ってく?」
「私たぬきそばー」
「あんた昨日もそれ食べてなかった?」
「こらー!!ちょっ、どういうことよ!?ちょっと!帰っちゃ駄目!!」
「………」
「こりゃヤバいね、まさかこの時間まで決着がつかないなんて…。アルちゃんどうする?逃げる?」
「あ……う、うう………こ、これで終わったと思わないことね!アビドス!!」
「あっはは!アルちゃん、完全に三流悪役のセリフじゃんそれ」
「うるさい!逃げ…じゃなくて退却するわよ!」
「待って!……あ、行っちゃったかぁ」
そういえば、こうなるんだったな。便利屋の勢いと、なかなか決着のつかない戦いによりすっかり頭から抜けていた。
「うへ~逃げ足速いね、あの子達」
『……敵兵力の退勤、いえ退却を確認。困りましたね…先が思いやられます。…一体何が起きているのでしょうか?』
「まあ、少しずつ調べるとしよ。まずは社長のアルって子の身元から洗ってみたら?何か出てくるよ、きっと」
『そうですね…。ともかく、みなさんお疲れ様でした。一旦帰還して下さい』
事なきことを得た私達。一先ず集合し、その後解散。私はそのまま校舎に残ってタレットの修理を行ったのだった。見事に動力ケーブルだけを撃ち抜いたアルの腕前に舌を巻きながらも、夜通し工具をいじった一日であった。
サンクトゥムタワー 連邦生徒会統括室
「――というわけで、今後のためにもこの計画は確実に通したいから、連邦生徒会の役員会議の議題として挙げたいんだけど、出来る?」
「………」
時間は少し前まで戻る。柴関ラーメンでアビドスのみんなと別れ、セリカを誘拐の魔の手から救う前、時間に猶予のあった私はとある提案をしにD.U.まで戻り、連邦生徒会へ直接足を運んでいた。
「…つまり、先生としては『連邦生徒会の提供するデータに従ったら地図データが古いもので命の危機に遭ったため、リアルタイムで地図更新の出来る新たなGPSを作る』と」
「そ」
「確かに地図データの更新延滞によって先生の生命活動を危険にさらしたことは私から謝罪します。……しかし、いきなりこのような宇宙計画を提出されましても………」
「予算案、開発チームはほぼ確定しているし、後やることは生徒会の許可と、打ち上げのための土地の確保2つだけ。どうにか出来ない?」
「…………私個人の裁量では決めかねる案件のため、質疑応答会を後日開きます。そこで私以外の連邦生徒会メンバーの意見を聞きましょう」
「ありがとう」
「しかし…本当にすごいですね。無線送電に衛星通信、宇宙望遠鏡まで。これ一つでキヴォトスの宇宙開発が大いに進むでしょう」
「前からやってみたかったっていう子供染みた夢も入っているかな。研究をやってると、どうしても思い浮かんじゃうんだよね……まあ、私だけだと思うけど。それに賛同してくれる子達が現地にもいたことで、合同研究施設として作ることになったわけだけだし、同じ夢を持ってくれた彼女達にも応えてあげなきゃね」
「それを有言実行される力があるというだけでも、大したものですよ」
「…それじゃあ、またよろしくね」
「ええ、お疲れ様です」
薄暗い部屋から出て、オートバジンのエンジンをかける。夜闇に輝くフォトンブラッド、それを自分の目で見られないのは残念だが、ようやく稼働テストが出来ると思うと、真面目に取り組まなければならない状況下でも、ワクワクの気持ちが湧いてくる。
『お疲れ~。どうだった?』
「なんとかなりそう。本格的にAIちゃんのお仕事も増えるかもだけど」
『ひぇー…。ただでさえ書類手伝いしてるのに……まあ書類と違って成長に繋がるものなら大歓迎だけどねー』
スーパーAI二人の力を借り、当番で来る
そんな書類の中でも特に多いのが「廃墟で迷った生徒の救助」や「未記入地帯の調査」であった。数千もある学園で、どこもかしこも似たような…しかも人手の必要な要請が多い。調査しようにも国土交通を司っているモモカは面倒くさがりであり、なかなかやりたがらない。許可してあげたいのは山々だが、そもそも通らないし、圧倒的に人手が足りない。だからこそ人員が足りないからこその衛星通信、リアルタイムの地図更新が可能な、
……それが本目的の副産物であったとしてもだ。
「…超法規措置を使ってSRTの子達集められないかな?正直あの量の書類をワンオペで捌くの無理」
『まあカルバノク編って変にややこしいからねー。こっちが早めに手を打てばどうにかなりそうだけど』
「最高責任者の居ない、自由軍を所持して顰蹙を買うのは理解できるけど、『はい、おしまい。』で解散させられて路頭に迷うような真似はちょっとなぁ…今度行ってみるか、子ウサギ公園」
正確にはヴァルキューレに異動という形らしいが、警察と特殊部隊とではあまりにも運用が違いすぎる。そりゃRABBIT小隊の様に反発する子が出ても不思議じゃあない。
『それはそうと、そろそろ出ないとアビドスに間に合わないんじゃない』
「…だね。行こっか」
これにより、戦力増強の布陣が完成一歩手前までに迫った。この計画が通れば恐らく、アビドスの事件が終わった後…早くてもエデン条約編でようやく実用化するだろう。
前にAIちゃんとも話し合ったが、ファイズだと無限湧き覚悟キマったハイレグシスターズことユスティナ聖徒会のミメシスに対応しきれない可能性がある。せめてファイズブラスターがあれば良いが、現時点で完成していない。何より、ブラスターフォームは衛星からのエネルギー供給が必須となる。
それに大人対大人の、ベアトリーチェとの戦いでは確実に初見殺しとなる、新たな力が必要になる。
企画書類とは別に作られた文書…人工衛星のキャッチコピーがシッテムの箱に映し出されている。それを懐に入れ、ヘルメットを手に取った。
□ヨスガ先生の開発LOG Vol.0
・設計図
キヴォトスに来る前に予め持っていた文字通り「あらゆる」メカニック系特撮アイテムの設計図や素材の組成方法に代替素材等が纏められた、ヨスガ自身のPCデータ内に存在していたデータ群。書いたのはヨスガ自身なのか、それとも誰かから渡されたデータのかは現状一切不明。
感想、評価、誤字報告、いつでもお待ちしています。