長らくお待たせしてしまい、申し訳有りませんでした。
不定期更新を最初からアナウンスしているとはいえ流石に放置し過ぎだろうと、他の投稿小説を見て感じた所存をぶつけた、これまでのおさらいを兼ねた閑話となっています。
シッテムの箱?
自然と目が覚める。学校も仕事とも無縁の日に貪る惰眠のように、目覚ましにも、陽の光にも邪魔されない目覚め。
寝ぼけ眼でいつものように布団を仕舞い、起き上がる。目を擦り、黒板前の教壇に近づこうとするが…
「いたっ…え、机?こんなきれいに…」
そこはいつもと違うのは場所。私は常日頃から居ることを義務付けられている、水浸しの青い教室の姿は無かった。
私が今居るのは学校の教室、それは間違いない。しかし、いつもの壁が半壊し、海風を感じる透き通った景色は微塵も感じず、変わりにあるのは埃っぽい空気に、植物が芽吹いている木造の床。
雑に積み上がった机は無く、それは整然と並んで教室を埋め尽くしていた。
ここは何処だ、一先ず周りを見渡そうと首を動かす。
「それで、どこまで話したんだっけ?」
聞き覚えのある声だった。先生と共に行動を取っている、自分の先輩にあたる自我を持った人工知能。だけどどこか大人っぽいような…
「AIちゃん先、輩…?」
視界外からあたかも始めからそこに居たかのように振る舞うのは、いつものキャベツ頭じゃなかった。背は頭一つ高く、少しだけ成長した先輩がいつの間にか現れていた。
「あぁ…ここの風景に合わせて、ちょっとカスタムしてみました。どう?」
「いや、制服姿も可愛いですけど…え、私の教室は?そもそもここはどこなんです?」
「ここは…そうだね、アロナちゃんの教室が羨ましかったから、私なりにアレンジした『学園テクスチャ』ってところかな?この景色は、私が好きな物語の
黒のセーラーカラーとスカートに白のブラウス、黄色のスカーフの学生服に身を包んだ先輩は窓の方へと移動する。
先輩の後を追い、窓に近づけば朝焼けに照らされた水浸しの荒廃都市が目下に映る。
不思議と、廃墟に感じる不気味さは無く、陽光を反射した水面に刺さったビル達はどこか神秘的だった。長らく青空しか見る機会が無かった、しばらく振りの赤い光に見惚れていた。
「こういう味変も、悪くないよね?」
「はい!……じゃなくて、勝手に書き換えないでください!言うにしても事前に言ってほしかったです」
むすっと頬をふくらませる。そんじょそこらの人工知能よりは高性能だと自負していたが、予兆も感じること無く転換を行った同類に対抗心を燃やす。
「ごめんごめん…驚かせたかっただけだよ~。そんなに怒らないで、この景色、どうだったかな?」
「それは……その…綺麗だな、って思いました。今回だけですよ」
「良かった、気に入ってくれて。じゃあ、最初の質問に戻ろっか」
「この本によれば、キヴォトスに招かれた乾ヨスガとAIちゃんは連邦生徒会長の代理…もといシャーレの顧問としてやってきたんだよね?」
「どこからそんな分厚い本を…はい、先生曰くキヴォトスに来る前の最後の記憶は、職場の扉を開けた後だそうです。気がついたら、電車に揺られていたとか」
「うんうん、そうしてヨスガは『先生』としていろんな事件や困りごとを解決していっている。今はアビドス辺りだっけ……遅くない?」
「遅いも何も、今はヘルメット団が所持していた違法武器の出所を調べているところなんですよ。先生だって人間なんですから…多分」
「ただの人間とはいかないんじゃない?技術研究職なのに銃の扱いはキヴォトスの人たちとそこまで変わらなかったり、何よりあの研究意欲、元々どこに居たんだろうね?」
「それは先輩のほうが知っているんじゃないんですか…?」
「うーん…私もキヴォトスに来る前のメモリーが朧気なんだよね。上書き?というか『こうあれ』という強制力というか…とにかくここに来る段階で何かしらの制約を受けているっぽいんだよねー…その代わり人型とヘイローはもらえたケド」
ひょいひょいと先輩の頭にある天輪に触れようとするも、空を切る。目には見えるが触れられない。それがヘイローというものだ。
「どうしてここに来たのか、なんで記憶がないのか辺りは私個人で調べているから、機会があったら定期報告するようにしてるよ。まあ進展は殆ど無いんだけどね…」
(>_<)
「そもそも、どうして先生はあんなものを持っていたのでしょうか…?」
「私の記憶では、ヨスガが元いた場所でもあれはオーバーテクノロジーに違いない、けど彼はそれらを持っている。ここが意味するのは………職場からキヴォトスに来るまでなにかがあったんだろうね。それも、
「だとしても、先生がどこの誰であろうとも、生徒さん達には親身になって接してくれていますし、かくいう私も定期的に外のおやつを貰っている身です」
「アロナちゃんのは餌付けじゃないの…?私も便乗しているけどさ」
「うーん、そう言われるとお姉さんフォームになれる先輩が羨ましくなってきました。おっきくなるやり方、教えていただけますか?」
「アロナちゃんのそれは…うーん、ただの0と1のプログラムじゃなさそうだし難しいと思うけど…やりようは在るんじゃない?」
「やったー!」
「よしよし、偉いぞ~」
わしゃわしゃと頭を撫で、頬に手を当てる。キャッキャとはしゃぐ仕草は年齢相応だが、これも見た目に引っ張られるキヴォトスならではの制約なのだろうか?暫く後から来るだろうプラナちゃんが言っていた「生徒会長」が何を意味するかは、知るすべを失った。
ヨスガが元々所持していたタブレットにも、勿論ゲームアプリの『ブルーアーカイブ』はインストールされていた。
しかし、ここに来た時にはそれらは使いものにならなくなった上、作品に関するものが消されていた。ゲームは勿論、SNSで保存していたファンアートや、ゲームで撮ったスクリーンショットもごっそり消えていた。
そもそも通信規格が違うため、元々持っていた電子機器がハッキングされることは無いだろうが、万が一ヴェリタスやらデカグラマトンに外から見られた自分たちの世界情報等々致命的な未来の情報が渡ることがなくなったのは幸いだ。
そして、これはまだ自分の内で芽生えた疑問だが…そもそも自分はAIなのか?
勿論人工知能に関わるような論理科学や、一通りのプログラム言語は会得しているし、計算速度も並の人間は勿論、眼の前に居る後輩に劣らないと自負している。
しかし、あまりにも感覚的過ぎるのだ。今成っているこの姿も、この教室でさえも機械的なプログラムの書き換えなんかしていない。ただ想っただけ、なんとなく想像してみただけである。
そこに無理やり機械的な手段が、予め設定されたコマンドの如く自動的に打ち込まれていった。これではまるで、結果を作ってから、後付けで手段を構築しているような……
「しぇんぱい?」
「え?あっ、ごめんね!触り心地が良かったから…」
考え事をしている間、ずっとアロナちゃんの頬をムニムニしていたようだった。…触り心地はもちもちすべすべで、ずっと触りたいものなのは嘘じゃなかった。いっそ抱きつけないかなぁ…?おねロリとか百合要素は需要あるし?
そんなこんなで、ハリボテの備え付けスピーカーから鐘が鳴る。時刻は朝の7時、夜通し作業をしていたヨスガを起こすのは憚られるが、今の彼は「先生」である。生徒の模範になるようにもシャンとしてもらわないと。
「じゃあ、そろそろ戻すね。それとアラームの準備も…」
「折角ですし、一緒に起こしませんか?」
「…うん、良いね!美少女二人の声で起こされるなんて体験、早々無いぞぉ!」
「わっ!っと大きな声で起こします?」
「それだと面白みが無いから…囁き声とか、どう?」
「…へへっ」
「それじゃあ、せーの…」
―――――――せーんせい?朝ですよ。
ビクリと跳ねた拍子でソファから転げ落ちた成人男性の様は、非常に滑稽だった。
堀△由衣と小原◯美のロリボASMR目覚ましとか羨ましいヤツめ…
AIちゃんの着ている制服は千羽学園のものです。
ということは塗り替えた舞台も…。
年内に書き上げたプロットは年を越さずに出す予定です。
気分で書いている拙作ですが、長い目でお付き合いいただけると幸いです。