奪還作戦後、シャーレ部室や自分の居住スペースの整理をしていた数日間、部室以外のスペースの把握のためアロナ、そしてAIちゃんと共にシャーレオフィスビルの散策を行っていた。
ゲームの画面では規模感が分からなかったが、こうして実物を見るとかなり巨大だ。ビル一棟の中にテニスコート4面と大規模な体育館があり、それで一施設ではなくビル階の一つであるというのだから圧巻だ。
連邦生徒会の名前の通り、悪魔っぽい角を生やした子や翼の生えた子…おそらくトリニティとゲヘナから移ってきた子達が並んで歩いていたため、ここでは学校間のしがらみというのは薄そうだ。
そんなシャーレオフィスビルにて起きた出来事を諸君らにいくつか紹介したい。
Tutorial:クラフトチェンバー
「お仕事は順調ですか、先生?」
地下を見ているとリンが入ってきた。
「リンちゃん?」
「はい、また私です。…それは会えて嬉しいという表情、ですよね?」
まあ詳しい説明も無くさっさとあの場から離れ、山のような書類を残したリンに対しては説明の続きをしてくれるという安堵と、あの場でもう少し教えてほしかったなという不満の感情が混ざっている。それが顔に出ているのだろう。
「…そんな話はさておき、シャーレの地下にあるとある物について、説明しに参りました。ここには、連邦生徒会長が先生に残したある物が存在します」
「これ以外に?」
リンにシッテムの箱を見せる
「いえ…物、と言いましょうか…正確には施設と呼んだほうが良いかもしれません」
そう言うと、リンは部屋の中でも一際異質なオブジェの前へと移動した
「クラフトチェンバー…ざっくり言いますと、シッテムの箱の管理者だけが接続・操作できる、ありとあらゆる物質を生成する機械です。大型の3Dプリンターのようなもの、とでも言いましょうか?私も、原理や仕組みはよくわかっていないのですが。今は先生だけが作動させられるオーパーツ、ということですね。素材に関しても会長自らが残されたものが確か…はい、この棚にありますのでご自由に」
「私たちはこういう、いつもの連邦生徒会長のおもちゃには興味ありませんので…。まあ、今は居ない人の話はともかく。その説明をしに来ただけですので、私はこれで。それでは、また後ほど」
「なるほど、そうそうそれはそうとリンちゃん」
「…先程は指摘しませんでしたが、ちゃん付けはちょっと…」
「嫌だった?」
「いえ…はぁ、もう好きにしてください。何でしょうか?」
「タワーの中にこういうのを作りたいんだけど…」
そう言い、先ほど急いでパソコンからプリントアウトした設計図を渡す。
「…何ですか、これ」
「何って…通勤用のホバーバイク停留所?」
「……カタパルト付きの、耐荷重200トンのコンテナを使うほどのホバーバイクですか?」
「ほら、地下に停めていたバイク2台のうちの巨大なやつ」
「ああ…あれですか…」
自分だって片方だけなら驚いたが、もう片方があるせいで驚きを通り越し呆れた。ワカモから制圧した時には一切目が行かなかったが、シャーレの地下には、厳重なロックが施されたチェンバーのある部屋にそれと隣接されている仮眠室。他には配電盤や配管等々の制御室に、地下駐車場も付いていた。
連邦生徒会のマークが入った白いバンや生徒の私物であろう僅かの車とオートバイに、多くのスクーターと自転車。それに混じって目を引く2台のマシンが鎮座していた。そう、今現在手元にあるデバイスと出典元が同じ2つ…
オートバジンとジェットスライガーである
「いやぁ…あれジェットエンジン使っているから使う度に駐車場のコンクリートとか他の車輌を吹き飛ばしかねないと思って…駄目?」
「お言葉ですが、一階の格納庫で良いのでは?」
「いやあ…整備中の車両があった場合撒き散らすのは駄目でしょ…」
「……屋上は却下しますが、一階の格納庫に専用ガレージを建てるのはいかがでしょう?毎回地下を壊されるよりはマシです」
「うーん…駄目かぁ。でも安く済むし…」
格納庫…一階の奥の部屋だったかな?でも憧れるよなぁ、アイアン○ンの屋上発着*1とかガッツイーグル*2の発進みたいなのって。でもここまでのわがままが通るだけの働きを私がしているとは言えない。仕方がない、今回は諦めよう。
「うん、そうするよ。あ、増築はこれで最初で最後だから安心して」
「……その言葉、信じますからね?」
「あとこれ…無尽蔵に作れるものなの?」
「少なくとも、連邦生徒会の予算からそういった費用が引かれていなかったため、生徒会長の自腹であったと思われます。言ったでしょう?『おもちゃ』だと」
「そっか、ありがと」
「では私はこれで。」
『……行ったかな?』
『……行ったみたいですね』
「よし、じゃあ早速起動してみよっか。アロナ?お願いできる?」
『任せてください!家から持ってきた先生の設計図を~?インプット!』
フォオン、とぼんやりとした音が目の前の石板から鳴る。そうしてシッテムの箱には皆さんおなじみの贈り物ガチャ…もといクラフトチェンバーの素材投入画面が表示される。
「よし…よし!成功した!」
作れる物の一覧を見る限り、最初に起こるであろう問題…アビドスの事件についてはこれで大丈夫だろう。勿論設計図の半分以上は現在の生徒会長のお溢れでは作れない。必要な素材に示されているもの…オーパーツなどは売っているものをぼちぼち買うか廃墟を探索するのがいいだろう。探索ロボ…作るか?
『では素材を投入しましょう!これなら在庫分で足ります!』
素材を投入し、製造開始のボタンをタップする。『全て製造完了まであと6:00:00』の表示がなされ、頭に響く重低音を唸らせながら機械は起動した。
「一番早くても2時間…待っていても良いけど、その間にいろいろ見てみよっか」
『オカルトチックな3Dプリンター…今回成功すれば私の体のゲットだぜ!』
「一先ずはこっちを優先させてくれよー。銃弾一発でも受けたらアウトなんだから…」
『あの…先生、本当に初運転で作るものがこれでよろしいのですか…?昨日見せてもらった設計図にはもっと凄いものとかあったと思うのですが…』
「まあまあ、武装関連に関しては試し運転とか必要だし、まずは軽いものからね?」
『しかし…これを作る理由には繋がらないと思います…』
『…何をぶちこんだのさ、ヨスガ?』
「ん~?それは出来てからのお楽しみ…ってところかな?よし、出来上がるまでに他の場所に行こう!」
検証:持ち込み銃器試射会
『こちらが射撃場。銃の試し打ちが可能なお部屋です!』
「『おぉ…』」
日本で実物を見る機会が無かった、複数レーンに人型が描かれた的、さらに壁際に置かれた多種多様な銃器。私達は射撃場に訪れていた。
「もっと暗いイメージとかあったけど、ここは明るいんだね」
『他校の方ではコストを抑えるためにコンクリート打ちっぱなしの射撃場もありますが…ここはミレニアムの次に最先端な団体の施設なので!』
『首都が華やかじゃないと権威にも関わるって感じかな?』
「おっとオーストラリアの悪口はそこまでだ」
キャンベラも農村部や田舎に比べたら十分都会だけどね?政令指定都市なんだし。
『では早速ですし試し打ちを始めましょう!後ろに置かれているイヤーマフとゴーグルを掛けましょうか』
「あ、結構ふかふかなんだね」
ゴーグルとイヤーマフを装着する。安全メガネで眼鏡越しにかける眼鏡型のものは慣れているがイヤーマフは何気に初めて触る。製鉄とか加工系の工場仕事だと使うのだが、基本職場では細かい作業が主だったため、あまり縁が無かった。
「よし…じゃあ番号順に行こうかな?」
脇のキャリーラックから銃を取り上げる。
「まずはこれ、GM-01 スコーピオン。武器種は…自動小銃だね」
『では僭越ながら、銃の撃ち方をレクチャーしますね!』
イヤーマフをしているというのにアロナの声がはっきりと聞こえる。いや、アロナの声って私にだけしか聞こえないんだっけ?なら良いのか
『まずは片足を一歩引いて、少し前傾姿勢を取り、グリップを利き手で握ります。次に腕をスッと前に持って来ます、この時肩も一緒に上がらないように注意しましょう。左手は添えるだけ。照準を合わせます。そしてトリガーを引く!』
ドン!ドン!ドン!と腕に鈍い衝撃が走る。銃口から発射された弾は的に命中し、甲高い金属音を響かせた。
『おぉ!初めてにしてはしっかり姿勢が取れていますね!お見事です!』
『ナイスヒット…!と言ってもその銃、照準補正付いてたよね?』
「景気よく三発も撃っちゃったけど……いや、ちょっと待って。アロナ?的をこっちに持ってこれる?」
『はい…もちろん構いませんが?』
吊り下げられた金属板とそれに貼り付けられた紙が後方からこちら側に近づいてくる
『命中もど真ん中ですし何も問題は……え??』
「…やっぱりか」
『うわ~…当たってたらと思うとゾッとするねぇ…』
的の紙を剥がすと、弾丸では貫けない筈の金属板がきれいな丸い穴を開けていた。恐る恐る壁の方を見てみると、真新しく、防弾処理もされているだろう壁のコーティングがクモの巣状にひび割れていた。その中心には今もなおしゅうしゅうと煙を上げている弾丸。
『ちなみにお尋ねしますが…弾丸は何を使っていらっしゃるんです?』
「この破壊のされ方は…神経断裂弾かも?」
神経断裂弾。仮面ライダークウガ及びアギトに登場する未確認(グロンギ)やアンノウンに対抗するために生み出された兵器。通常の銃弾では再生してしまう彼らの体質に打ち勝つため、弾薬に特殊な火薬を仕込み、着弾と同時に連鎖爆発を起こし神経系統及び内部の破壊…これにより再生させる前に絶命させようというアイデアから生まれた代物だ。
『ホローポイント弾よりも凶悪じゃないですか!絶っっっ対に人に撃っちゃいけませんよ?!』
「言われなくてもそうするよ…。こりゃ他の銃もおんなじだな」
作ったのはおそらく自分だが記憶に無い。キヴォトスに来るから作ったのかはたまたそれ以前に何かがあったのか……。こうして傍から見ると頭おかしいぞ、俺。ここまで原作再現をしなくても…いや、俺だったらやるわ。とりあえず作っちゃうもん。多分向こうで駄目だったらその規格に合うものを作れば良いやーと思ったのだろう。
「えー…ただ今を持って、私が持ち込んだ銃器をキヴォトスでの使用を封印することを誓います」
『異議なし!』『異議ありません!』
この場にいる3人の秘密にしようとさっさと片付けに入ろうとするが…
「今射撃場で爆発音みたいなの聞こえたけど一体何なの?!って先生…!?」
「『『あ』』」
ビシャーン!と勢いよく射撃場の横スライドドアが開かれ、午後に合う連絡をしていた生徒が現れた。あ、そっかイヤーマフ…あれ二人には聞こえてなかった?
ちらりとシッテムの箱を覗くとご丁寧に二人もお揃いの、アロナは水色とピンクのグラデーションになったものを、AIちゃんはその髪と同じ黄緑色の、無駄にお洒落なイヤーマフとサングラスをかけていた。
「ラックに入っているのは銃器…で、手に持っているそれが原因ですか!?って壁が!うちの新素材開発部で提供した防弾コート剤が!…とにかくっ、一から説明して貰いますからね!!」
「…はーい」
施設を回る前に説教でクラフトが完成するなという現実逃避をしながら、片腕にキャリアラック、もう片方の腕は私の腕を掴んで強引にオフィスに連れ込む――――早瀬ユウカが歩を進めるのであった。
次回からは数人のメモロビやグループストーリーを元にしたエピソードを2~3話書いた後に、対策委員会編へ突入します。
感想には好きな特撮メカの発進シーンでも書いていただけると幸いです。
私はダイナ以外だとウルトラ警備隊のサンダーバードを意識した自然×メカのミニチュア撮影とMydoのいやそうはならんやろと突っ込みたくなるフルCG発進が好きです。