『次の信号を左方向だよー!』
「……うぉ、でっか…」
校舎がね。
ユウカの言付け通り、私は今現在ミレニアムの校舎に訪れていた。学園都市の名の通り、移動手段は公共交通機関が主流だが、タクシー運輸をしている学生や普通に自動車を運転している子達もいる。何より戦車を扱っている学校が殆どのため、車手のポジションにいる子も必然的に車の運転免許が必要なのだろう。
今回はオートバジンに跨って、キヴォトス最大の科学技術の都に来ていた。ファイズフォンにもカスタムが入っていたようにバイクにも同じような施しがされており、なんと自動制御AIが入っていなかった。呼びかけてもうんともすんとも言わない上にエンジンもかからなかった為、みんな大好きバジンきゅんに代わってAIちゃんが制御していた。というより始めからAIちゃんを入れることを前提としたものになってたみたいだが…。
そしてAIちゃんがバジンの頭脳部分に入り込んだ瞬間、バイクのヘッド部分にヘイローが浮かんだ。形は電源ボタンの形を3つの円が取り囲んだ黄緑色のもの。…外から来た少女、或いは少女型のものは例外なくヘイローが浮かぶのだろうか…?でもシッテムの箱に居る時はヘイローが無かったし…興味深いな。
『いやー、バーチャル体にバイクまで。ここに来てからというものの段々と進化している実感が湧くね~』
「クラフトチェンバーも割と勝手が利くのが分かったから他にも色々作れるのが楽しみだよ」
原作でも玩具や紙製品、生花や菓子まで製造可能なのだからかなり幅広い。まあ今持ってる設計図の一部はオーパーツでも神名結晶でもない、追加のデータを必要としたが問題無いミレニアムで用意できることが確定しているのだから。
『そんなこんなで目的地とうちゃーく!お疲れ!』
「案内ありがとね、AIちゃん、アロナ」
『はい!なんたって私はキヴォトスのスーパーOSですので!GPSを使ったナビゲートもお茶の子さいさいです!』
『いやー、シッテムの箱に入ってからというもののどういうわけかアロナちゃんとのデータ同期が楽々になってこっちとしてもありがたいよー。よしよし…って今はバイクの中だった』
「はいはい、じゃあ駐輪場に停めるからAIちゃんも戻っ
「ふむ、ヘイローが浮かんだバイクか。興味深い」
うゎあどっから出てきた?!」
ヘルメットを外し、駐輪場を探そうとした矢先、後ろから声をかけられた。先程まではモブっ子達に視線を送られる程度に留まっていたがそれまでだった。いや、誰か話しかけてくるかなーなんて考えてたけど背後からの不意打ちとは恐れ入った。しかもこの声……
「ああ、驚かせてしまって悪かったね。私は白石ウタハ。ミレニアムのエンジニア部部長で、マイスターさ」
「…う、うん。ウタハだね。私はシャーレの先生、よろしくね」
「なるほど、あの噂のシャーレか…。因みにセミナーの仕事は何時からの予定だい?」
「ええと…ミレニアムに着き次第、だけど」
「じゃあセミナーはまだ先生の到着を知らないわけだ。よし、早速私に着いてきてくれ」
「え、ちょ待…力強っ!」
落ち着いた話し方とは裏腹に目をキラキラと輝かせた菫色の髪を持つ少女は、バイクごと俺の腕を引っ張ってどこか…まあ十中八九エンジニア部のガレージに連れて行かれるのであった。
エンジニア部部室 ガレージ
「戻ってきたぞ、みんな」
「おかえりなさい部長!おや、その大人の方は…もしや!」
「シャーレの先生?」
「ああ、その通りだ。他の部活に先を越されると思ってね、正門を張り込んでいた甲斐があったよ。先生、この二人がエンジニア部の仲間、ヒビキとコトリだ」
「待ち伏せしてたんだ…。って他の部活も私のことを?」
「おや、あんな大層なものを初任務で見せておいて知らん顔をするのかい?」
「え…?でもクロノスみたいなカメラ構えた人とか見当たらなかったような…?」
「街頭の監視カメラさ。ミレニアムにはヴェリタスというハッカー…情報部でのエキスパートがいるが監視カメラの覗き見くらいは彼女らでなくてもミレニアムには出来る人がいるのさ。まあうちはヴェリタス経由で見せてもらったのだが」
なんてこったい。あの時は非常時だったから警戒心も別の方向…奪還作戦に必死だったため拡散されることを考えていなかった。後アロナタッチする前だからブルアカに関する記憶も無かったからな。おのれ明星ぇ…。*1
「はぁ…良いよ。どれから見てみたい?ケータイ?それともバイク?」
「どれでもない。さっき話しかけていたアイちゃん?とやらに会わせてくれ」
「えー…。」
「何をそんなに渋っている?通話に出るのも恥ずかしい人物だとか?」
「あー…まあいいか…AIちゃん、正式名称:AI・ドルーク・Zは私が作ったAIだよ」
「ほほう」
「シンギュラリティに到達してるからそうホイホイと表沙汰には出来ないんだよね…」
「ふうん」
「…なんか反応薄いね?」
「え?」
「ん?」
「だって…」
「
「あー…?…あぁ!」
そうか、ここは元の世界から隔絶されたキヴォトスだ。自己思考を行うAI…いや、造られたかどうかを彼らが判断しているかはわからないが、そういう存在があちこちに居る。現に飛鳥馬トキのメモロビではロボ教師も登場する。まあ英語版では「スタッフ」や「アドミニストレーター」としか呼ばれていないのだが。アロナが他の生徒に認知できない代わりに彼女の存在はシャーレ所属の生徒には周知しておいてもいいだろう。よし……
「ちょっとカルチャーショックを受けていたよ。ごめんね?じゃあ遠慮なく紹介するよ。AIちゃん、トランスフォーム!」
『トランスフぉお"ム"!!』
ギゴガゴ…とは鳴らなかったが、某オートボット司令官の喋り方を真似しながらオートバジンが人型に変形。オリジナルと違うのは頭上にヘイローが浮かんでいる点と、どことなく立ち姿が女の子っぽいところだ。中身とキヴォトスの法則上まあしょうがない…。
「ふぉぉおお!変形!変形しましたよ!?」
「おぉ(キラキラ」
「…バイクに興味ないと言ったな、前言撤回だ」
わらわらと誘蛾灯に吸われる…いや、ヒーローショーの着ぐるみに目にした子どものようにオートバジンin AIちゃんにウタハ、ヒビキ、コトリの3人が群がる。
「ふむ…前輪と後輪でホイールが違うのには変形が前提であったことか…前輪がガトリングで後輪がホバーファンだと…!」
「素材が軽いのに固い…?一体どのような加工がされてるんだろう…?」
「ふむふむ、どうやらこのアンテナからデータ送受信を行っているようですね…うん?このカリカリ音…まさかHDDですか!?」
『わぁ…AIちゃん一瞬にして人気者だぁ…。え、ちょっとみんなどうして工具を持ってるの?』
「「「先生、AIちゃん」」」
「何…?」
「「「分解させてくれ/ください!/くれる?」」」
「………AIちゃん、カムヒア」
『ひぃいいい…!』
すぐにシッテムの箱を起動させAIちゃんを避難させた。それと同時にバジンに浮かんでいたヘイローは消え、力なく首がカクンと垂れた。
「…変な改造はしないでね?見張っているから」
「「「やったー!」」」
私のゴーサインを聞くや否や手早く、しかし丁寧にオートバジンの分解が始まった。以下、私と彼女達のやり取りをダイジェストでお送りしよう。
「待ちなさいその四角いパワーが数万倍になりそうでならないもの*2は何?」
「自爆装置」
「止めろぉ!先生のアシを危険物にしないでくれ!」
「先生?ロボに自爆は付き物だって…それに死ぬほど痛いくらいで済むってアニメでは言ってたよ?」
「たしかにこれも機密情報満載だけど……んなことしなくてもこっちの操作で燃料炉をオーバーヒートさせて実現可能だし、わざわざ爆弾を付けなくても自爆は出来るから…」
『ヨスガ?????』
「随分と型の古いCPUですね…付替えとか
「却下。替えが効かないし今でも十分AI動かせているからね」
歳ですか。ですがHDDは流石に変えてもいいですよね?」
「うーんでも10TBのHDDって面白くない?」
「なんでそんなアホみたいに大容量なんですか!?面白いので貰っておきますね!では代わりにウチでも持て余していた…
「ゼタって何?!ペタ*4、エクサ*5飛ばしてゼタ!?そんなに何に使うの?!」
「年々の技術発展によって一昔前の記憶媒体とか使えなかったりしますよね?じゃあ限界を試してみようということで作られたものです。これこそがエンジニア部の夢である宇宙戦艦の…ちっ、SATA接続かよ
「コトリ??」
「(ツィイイイイイイイイン)」
「あるぇ…先生分解までって言ったのにどうして回転ノコを回してるのかなぁウタハ君?」
「端的に言おう。確かにあのバイク形態はかっこいいが人格は女性なのだろう?もっとフォルムを女の子寄りにしてもいいんじゃあないかい?」
「でもそうしたらバジンじゃない…というか人間形態のフォルムを重視しちゃうと変形機構に支障が出るし、バイク形態の堅牢性が安定しなくなりそうだし…」
「そんなことは分かっているさ、キヴォトスだって道交法はある。きちんと車検が通る範囲の加工にするさ」
『えー!じゃあ特定物質によって色を自由に変えられる塗料とかいいなー。ずっと赤なのちょっと好みじゃないし』
「なるほど…ではアレとアレを……」
数時間後、なんやかんやあり魔改造はされなかったもののなんかシュッとした銀一色のオートバジンが日光を反射し、白く輝いていた。
「完成だ」
「もともとあった記憶容量も大幅にアップ!そして目玉なのが新素材開発部と共同で制作した特殊塗料!電圧や特定元素によって色が変わる特殊ラミネートを各所に施しました!その名もサイコ・フェーズアーマー!略してP…」
「そこまでにしておこっか」
「では早速だが先生、まずはバイクの状態で動かしてみてくれ」
「ではでは…おぉ」
バイクに跨り、ハンドルを握った瞬間、銀一色の車体が、元のオートバジンの配色に変わった。
「エンジンの改造を必死に止められたから、パワーアップは非常に残念ながら成せなかったが…部品を新調したから大分走りやすくなっている筈だよ。それに加えて制御AIが無くても通常のバイクと同じように動かせるよ。キーは網膜認証にしたからセキュリティもばっちりだ」
「うん、うん…いい感じだね」
「次はAIちゃんを入れた状態で走ってみてくれ」
「OK、AIちゃん出番だよ。」
『ほいほ~い。よいしょっと…わぁ!』
初始動と同じようにヘッド部分にヘイローが浮かぶ。それと同時に赤い部分が黄緑色に変化した。
「やっぱこれフェイズシフ…ゲフンゲフンなんでもないよ」
キヴォトスにガン◯ムがあるとは限らないからな。いや、ハレが種割れ*6してたから似たロボアニメはあるのだろう。
『おお…身体が軽い!飛行の体勢ブレも少ない!なんか頭もスッとする!快適~』
「おお…」
原作のオートバジンのロボットらしい動きが少なくなり、より人間に近い動きで飛んだり跳ねたりはしゃいでいた。
「ではこちらの的にガトリングを…」
その後も耐久テストと称しコトリの改造ガトリングで滅多撃ちにされるも射手が先に音を上げたり、バジンのガトリングでダミー人形が蜂の巣になったりと様々な試行を行いながら時間が過ぎていった。そうしているとスマホに着信が入った。
「あ、ごめんみんな。長居しすぎちゃったみたい」
画面には「早瀬ユウカ」の文字が表示されている。時間ももうすぐ昼時、流石に長居しすぎたかもしれない。
「構わない。寧ろこちらこそ長時間引き止めてしまって悪かったね」
「こちらこそ楽しかったよ。ありがとう、みんな。この際シャーレに加入しない?」
「勿論」
「喜んで!」
「うん」
「折角だしグループも作ろうか、ここには定期的に顔を出すことになりそうだし…」
モモトークに3人の名前が追加される。よし、これで……あ、そういえば
「そうだ、これは個人の依頼なんだけど…これと同じ規格の弾が欲しいんだ。お金は出すから量産可能にしてほしい」
そう言い、ウタハ達に神経断裂弾、グレネード弾、ガトリング弾を渡す。勿論中身は全て抜いた鋳造用のレプリカだ。
「ふむ…かなり特殊なものだね。分かった、こっちの伝手を使って安く作ってくれる業者を当たるとしよう」
「じゃあまたね」
「うん、じゃあまたいつか」
新しくなったバイクに乗り、エンジニア部のガレージを後にした。その後、ユウカに叱られたのは言うまでもない。
| やあみんな |
| おや、早速か |
| よろしくお願いします! |
| よろしく |
| こちらこそ、改めてよろしく |
| 突然だけどみんな |
| 宇宙開発に興味ある? |
ボツ案
ウタハ「完成したぞ!これがエンジニア部の血と汗が結集した美少女変形バイクだ!!」
先生「却下。戻して」
エンジニア部一同「えー…」
先生「これに跨るのやなんだけど」
(電人ザボーガー、或いは仮面ライダーアクセルの如く両手足にタイヤを挟み込んだAIちゃん型のバイク)
AIちゃん『理想のボディに近しいけど着ぐるみ感が…。あとこのボディに成人男性馬乗りの絵面が嫌。車検も通らないでしょ』
ウタハ「総スカンとは…」
モモトーク風の画面デザインはSunGenuin(佐藤)様のこちらを参考に作成しました。→https://syosetu.org/novel/273050/2.html
初めは吹き出し部分の◀をそれぞれのパーソナルカラーにしようと考えていましたが、コトリの黄色がどうしても出力出来ず断念しました。
次回からアビドス編突入です。どうぞお楽しみに…