龍牙。漫画版遊戯王GXにおいてデュエルアカデミア高等部の教育実習生で、相手の魔法カードの使用を封じるイカサマによって生徒達に勝利しデュエルアカデミアの教員になろうと画策していた男。
 そんな彼がアニメのような漫画のような不思議な世界線において十代に負けた後、処分の一環としてある中等部からの飛び級編入生の編入実技試験の相手としてデュエルを命じられた。これはそんなお話。

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デッキ破壊系メスガキがいるデュエルアカデミアの話

「お願いいたします鮫島校長! どうか! どうかお慈悲を!」

 

 デュエルアカデミアの校長室。そこで黒い髪をオールバックにした長身痩躯で眼鏡の男性が、恰幅のいい禿げ頭の男性――このデュエルアカデミアの校長である鮫島に土下座を行っていた。

 それに対し鮫島はふぅと呆れたように溜息をつき、オールバックの男性の横に立って、土下座している彼を睨んでいる金髪痩躯の男性が口を開く。

 

「そーんなコト許されるワケないノーネ! 龍牙君、まさかアナターがイカサマをしていたなンーテ!」

 

「そ、それはその……」

 

 金髪痩躯の男性――クロノスの怒りの声に龍牙は言葉を失う。

 この男性龍牙はデュエルアカデミアの教育実習生なのだが、教員として正式に採用されるための試験の一環である生徒50人とのデュエルにおいて、相手のデュエルディスクのシステムに干渉して魔法カードの発動が出来なくなるイカサマをしながら生徒49人抜きを達成していた。

 しかし50人目の相手である十代を相手にそのイカサマをしながら敗北、さらにそのイカサマも露見した結果教員試験は即刻不合格とデュエルアカデミアからの追放を命じられ、今は龍牙は土下座を敢行して少しでもとりなしてもらおうとしていたわけである。

 

「わ、私はどうしてもデュエルアカデミアの教員になりたかっただけなのです!!」

 

「……それが、デュエルに負けた相手からのカード強奪の言い訳になるとでも?」

 

「うっ……」

 

 龍牙の言葉を鮫島は一蹴。実は鮫島はこのイカサマのみならず負けた相手からカードを無理矢理奪うカツアゲも行っており、当然それも露見した事が今回の処分の一部を担っていると言っても過言ではない。

 しかし龍牙は許してくれるまで、というか鮫島が根負けするまで土下座をし続けるという妙な執念を向けており、クロノスも呆れ顔をして鮫島に視線を向け、鮫島もやがて諦めたように溜息を漏らした。

 

「分かりました」

 

「で、では! 許していただけるのですか!?」

 

「そうですね……実は今度、デュエルアカデミア中等部からこの高等部に飛び級での編入試験を受ける事が決まった生徒がおりましてね……龍牙君、君にはその生徒とのデュエルをしてもらいます。その結果如何では処分を考え直しましょう……言うまでもありませんが、イカサマは禁止です」

 

「は、はいっ!」

 

 首の皮一枚繋がった!といわんばかりに龍牙は破顔、すぐさま立ち上がると悠々と校長室を出ていく。それを見送ったクロノスが渋い顔をして鮫島に顔を向けた。

 

「鮫島校長? 本当にいいんデスーノ?」

 

「ええ、まあ……丁度()()の編入実技試験の相手の選定にも困っていたところですから……」

 

 渋い顔のクロノスに鮫島は疲れたような息を吐いた後、何か含みのある笑みをクロノスに向ける。

 

「龍牙くんのイカサマ及びカツアゲの被害者には、丸藤翔君がいる。間違いありませんね?」

 

「え、ええ。マーア、それにあのドロップア……シニョール十代が怒って龍牙君に突っかかってたのも、シニョール十代が最後の試験相手になったきっかけデスーシ」

 

「それが分かれば充分です。ちょっと失礼、丸藤亮君に連絡を取りますので」

 

「シニョール丸藤亮に?」

 

 含みのある笑みでの言葉にクロノスが首肯したのを確認した鮫島はクロノスに断りを入れて携帯を取り出すと何やら連絡を入れ、クロノスが不思議そうに首を傾げるのを横に鮫島は携帯をしまうとまた含みのある笑みを見せた。

 

()()になった彼女を相手にしてまだデッキを握れるだけの根性があるのなら、私も認めなくもありませんよ」

 

 

 

 

 

 それから数日後、式典やイベントなどの大事なデュエルで行われる特設デュエルアリーナに全校生徒が勢揃い。その中央のデュエルフィールドでは龍牙が余裕綽綽の様子で立っていた。とはいえイカサマをして勝っていたりカードをカツアゲしていた事は既に生徒達にも広まっているのかとんでもないブーイングがデュエルアリーナ内に響いている。

 

「ったく、校長先生も何考えてんだよ。翔や色んな奴らからカードを奪ってた奴を許そうとしてるなんて」

 

「中等部からの飛び級編入生の実技試験の相手をさせるって話だけど……大丈夫なのかな?」

 

 十代もブーイングこそ出していないものの今回のデュエルの事情は知っているのか校長の出した処遇に納得いかないように毒づき、翔もその編入生が変なイカサマの被害にあわないかと心配する。それに明日香が微笑みかけた。

 

「大丈夫よ翔君、さっきクロノス教諭や他の先生が龍牙せん……さんの身体検査をしていたの見たでしょ? イカサマに使うような怪しい道具は何も持っていない事が確認されているわ」

 

「それに今回の試験は先生方も目を光らせている。いくらなんでも滅多な真似は出来やしないさ」

 

 明日香に続いて三沢もフォローし、デュエルフィールド横で龍牙の一挙手一投足を見逃さんとばかりに見張っている男性教員を指す。それに翔はうんと頷くと少しは気が落ち着いたか緩んだ顔を見せる。

 

「おっと、どうやら編入生が来たようだぞ」

 

 そして万丈目が言うと、デュエルアリーナに一人の女の子が入ってくる。銀髪をショートヘアにしており、服はシンプルだがその上から黒猫を模したようなネコミミパーカーを羽織っている。その口元には相手を小バカにしたような小さな微笑が浮かべられている……

 

「うぎゃー!!!」

 

 その顔を見た瞬間翔の口から悲鳴が飛び出した。ブーイングによってほとんどかき消されているが近くの席の十代達の耳には充分届いたらしく、その全員が驚いた様子で翔を見る。

 

「ど、どうしたんだ翔!? そんな大声出して!?」

 

「あ、あわわわわわわ……」

 

 心配そうに声をかける十代だが翔は顔を真っ青にして声にならない声を上げながら身体を震わせている。明らかに尋常ではない様子に十代達は顔を見合わせるのがやっとだった。

 

「ふ、へへへ、悪く思うなよ……お前を倒せば俺はデュエルアカデミアの教員になる道が繋がるんだ……いくら飛び級だろうが所詮中等部なんてイカサマ無しでも充分に倒せるんだよ……」

 

「べっつにー。そんなのどーでもいいよ……亮おにーさんに教えられた、鮫島おじーちゃんが言ってたのが本当なら……本気で叩き潰してあげるけどさ」

 

 もう崖っぷちという自覚があるのか龍牙は怪しい笑みを浮かべながら少女を睨んでおり、それに対して少女は冷めたジト目をしつつもその目に何か熱いものを宿しながらそう答える。

 

「それデーハ! これよりデュエルアカデミア中等部から飛び級編入するシニョーラ彩葉……柳里(やなり)彩葉(あやは)の編入実技試験を開始するノーネ!」

 

「「デュエル!!!」」

 

 今回のデュエルの審判を仰せつかったらしいクロノスの宣言に合わせて二人の声が重なり合う。

 

「先攻は受験生、シニョーラ彩葉ナノーネ!」

 

「私の先攻、ドローだよ」

 

 仮にも編入試験のためか先攻は受験生に渡され、彩葉は静かにカードをドローして手札を確認。

 

「カードを三枚セットしてターンエンド」

 

 そしてカードを三枚伏せてターンエンドを宣言した。

 

 

「モンスターを出さない!?」

 

「手札事故かしら……それとも伏せカードが多いしそういう戦法……?」

 

 そのプレイングに三沢と明日香が驚愕と心配や疑問の声を出す。翔は後ろで「あ、あ……」と声を漏らしている。

 

「手札事故か、都合がいい! 俺のターン!」

 

 対する龍牙は相手がモンスターを出さないなら都合がいいと笑いながらカードをドロー。

 

「俺は[ハイパーハンマーヘッド]を攻撃表示で召喚し、バトルだ! ハイパーハンマーヘッドでダイレクトアタック!」

 ハイパーハンマーヘッド 攻撃力:1500

 

「トラップカード[くず鉄のかかし]を発動します。その攻撃を無効にし、さらにこのカードは発動後墓地に送られず再びセットされます」

 

 そして頭がハンマーのようになっている姿の恐竜を召喚した龍牙はそのまま攻撃命令を下し、それに従った恐竜が彩葉の場に突進するも、その攻撃は彩葉の場で翻ったカードから出現したかかしによって阻まれる。そしてカードに戻ってぱたりと彩葉の場に再び伏せられたかかしを見届けた龍牙は「俺はカードを一枚セットしてターンエンド!」と宣言した。

 

「私のターン、ドロー」

 

 対する彩葉はまたも静かにカードをドローして手札を確認。

 

「カードを二枚セットしてターンエンド」

 

 またモンスターを出さずにセットカードだけ増やし、セットカード五枚の状態でターンエンドを宣言した。そのどこか不気味なプレイングに、龍牙へのブーイングを出していた生徒達も静まり返っていた。

 

「モンスターすら出せない手札事故なんてな! 飛び級編入も何かの間違いか? だが容赦はしない! 俺のターン!」

 

 龍牙はモンスターも出さない彩葉のプレイングを嘲笑いながらターン開始を宣言してドローし、ドローカードをそのまま差し込んだ。

 

「俺は速攻魔法[手札断殺]を発動! 互いのプレイヤーは手札を二枚墓地に送り、それぞれ二枚ドローする!」

 

「は~い。ま、私の手札は二枚だから選びようないけど」

 

 龍牙はいきなり手札交換系のカードを発動して手札を交換、彩葉もそれに従って手札を交換。そして交換後の手札を見た龍牙はニヤリと笑った。

 

「魔法カード[撲滅の使徒]を発動! フィールド上にセットされた魔法・罠カード一枚を選択して破壊し、ゲームから除外する! さらにそれが罠カードだった場合、お互いのデッキを確認して同名カードを全てゲームから除外する! そのセットカード、くず鉄のかかしを破壊して除外する!」

 

 

「まずい! 残りの伏せカードに防御カードがなければこれで彼女は無防備だ!」

 

 龍牙の発動した魔法の効果によってスコープが出現し、彼女がさっきのターン防御に使ったくず鉄のかかしが狙われる。その様子に三沢が声を上げるが、彩葉は想定通りという様子で動き出した。

 

「撲滅の使徒の発動にチェーンして、トラップカードオープン[ゴブリンのやりくり上手]。自分の墓地に存在する「ゴブリンのやりくり上手」の枚数+一枚を自分のデッキからドローし、自分の手札を一枚選択してデッキの一番下に戻す」

 

「手札交換カード? それがこの状況で何に――」

 

「チェーンしてトラップカードオープン[ゴブリンのやりくり上手]。自分の墓地に存在する「ゴブリンのやりくり上手」の枚数+一枚を自分のデッキからドローし、自分の手札を一枚選択してデッキの一番下に戻す」

 

「え?」

 

「さらにチェーンしてトラップカードオープン[ゴブリンのやりくり上手]。自分の墓地に存在する「ゴブリンのやりくり上手」の枚数+一枚を自分のデッキからドローし、自分の手札を一枚選択してデッキの一番下に戻す」

 

「え?」

 

「さらにさらにチェーンして速攻魔法発動[非常食]。このカード以外の自分フィールドの魔法・罠カードを任意の数だけ墓地へ送り、このカードを発動するために墓地へ送ったカードの数×1000LP回復する。私は[ゴブリンのやりくり上手]三枚と伏せているくず鉄のかかしを墓地に送ってライフを4000ポイント回復するね」LP4000→8000

 

 

「あ、あのコンボは……」

 

 彩葉は一気にくず鉄のかかし以外の全ての伏せカードを発動、そのコンボを見た三沢が目を見開くと共に彩葉は「チェーン4のゴブリンのやりくり上手の効果」とチェーン処理に入る。

 

「この効果処理開始時、私の墓地には[ゴブリンのやりくり上手]が三枚存在する。よって私は四枚デッキからドローし、一枚デッキの一番下に戻す。チェーン3、チェーン2でも同じ処理が入るよ」

 

 ゴブリンのやりくり上手一枚につき四枚ドローして一枚デッキに戻す。つまり合計十二枚のカードを一気にドローして三枚のカードをデッキに戻した事になる。ついでにくず鉄のかかしが墓地に送られた事で撲滅の使徒の効果は不発に終わった。

 初期ライフ分に等しいライフ回復と共にたやすく行われたドローコンボ――俗にやりくりターボと呼ばれるそれに龍牙が唖然とするも、すぐに気を取り直すように首を横に振って彼女を睨んだ。

 

「だ、だが! これでお前の場はがら空きだ! 俺は[魂喰いオヴィラプター]を召喚し、効果発動! このカードが召喚・反転召喚に成功した場合に発動でき、デッキから恐竜族モンスター一体を選び、手札に加えるか墓地へ送る。俺は[オーバーテクス・ゴアトルス]を墓地に送り、ゴアトルスの効果発動! このカードが効果で墓地へ送られた場合に発動でき、デッキから進化薬魔法カード一枚を手札に加える。俺は[究極進化薬]を手札に加え、そのまま発動! このカードは自分の手札・墓地から、恐竜族モンスターと恐竜族以外のモンスターを一体ずつ除外し、手札・デッキからレベル7以上の恐竜族モンスター一体を召喚条件を無視して特殊召喚する! 俺は墓地の恐竜族オーバーテクス・ゴアトルスと爬虫類族首領亀をゲームから除外し、デッキから[超古代恐獣(エンシェント・ダイノ)を特殊召喚!!

 さらに永続罠発動[リビングデッドの呼び声]! 墓地のモンスター一体を攻撃表示で特殊召喚する! 来い、[セイバーザウルス]!」

 魂喰いオヴィラプター 攻撃力:1800

 超古代恐獣 攻撃力:2700

 セイバーザウルス 攻撃力:1900

 

 がら空きになって何も出来ないと判断した龍牙は一気にモンスターを展開し、前のターンから場にいたハイパーハンマーヘッドと合わせて一気に四体の恐竜が彼の場に並ぶ。とその時超古代恐獣が突然咆哮した。

 

「セイバーザウルスを墓地から特殊召喚した瞬間、超古代恐獣の効果発動! このカードがモンスターゾーンに存在し、自分の墓地から恐竜族モンスターが特殊召喚された時に発動でき、自分はデッキから一枚ドローする!」

 

 

「墓地の恐竜族を蘇生しただけで一枚ドローだと!?」

 

「それだけではない。龍牙の場には魂喰いオヴィラプターがいる。奴は自身以外のフィールドのレベル4以下の恐竜族モンスター一体を破壊する事でプレイヤーの墓地から恐竜族モンスター一体を選んで守備表示で特殊召喚する特殊能力の持ち主……」

 

「あの二体を放置していれば、毎ターン通常のドローと合わせて二枚のドローを許すも同義という事ね……」

 

 恐竜族限定とはいえ禁止カードとさえなった生還の宝札を彷彿とさせる効果に万丈目が驚きの声を上げると三沢が龍牙の場を分析、その結果もたらされる推測を明日香が述べた。

 

「バトルだ! 全ての恐竜でダイレクトアタック!」

 

 しかし状況はそれを除いても最悪と言ってよく、龍牙の指示を受けた恐竜達ががら空きの彩葉の場を踏み荒らし、

 

「きゃあああぁぁぁぁっ!!」LP8000→6500→4700→2800→100

 

 その爪や牙で蹂躙された彩葉のライフはあっという間に残り100まで削られてしまうのだった。

 そして龍牙は「ターンエンド!」と破顔しながら宣言する。ライフは圧倒的に差があり、フィールドのアドバンテージも比べるまでもなし、手札は相手の方が圧倒的に多いがこれだけの差を覆すなど出来るはずがない。龍牙は己の勝利を確信していた。

 

「私のターン、ドロー」

 

 彩葉は静かにドローし、合計十二枚になった手札を見るとニヤと僅かに微笑する。それを見た翔がまた「ひぃっ」とか細い悲鳴を上げた。

 

「お、終わりだ……」

 

 そして震える声でそう呟いた。

 

「終わりって翔! たしかにあの女の子のライフは残り100、圧倒的に不利だけどまだ勝負は決まってない! 諦めずに応援してやろうぜ! 頑張れー編入生ー!」

 

「ち、違うよアニキ……」

 

 その翔の呟きに対して十代は熱く語りかけた後、拳を振り上げて彩葉にエールを送る。だが翔は震える声のまま十代の言葉を否定。

 

「終わったのは彩葉ちゃんじゃない……龍牙の方だよ……」

 

 そう己の発言の真意を語る。

 

「……きゃは♡」

 

 それと彩葉が妖しく嗤うのは同時だった。

 

 

 

 

 

「え?」

 

 龍牙が呆けた声を漏らす。突如光が走ったと思うと彼の場の超古代恐獣が熱線に貫かれ爆散したのだ。

 

「速攻魔法[輝く炎の神碑(ルーン)]。特殊召喚された相手フィールドのモンスター一体を対象として発動し、そのモンスターを破壊する。超古代恐獣さんを破壊するね♡」

 

「く……」

 

「さらにその後、相手のデッキの上からカードを二枚除外するよ♡」

 

「なに!?」デッキ枚数:27→25

 

 ドロー加速コンボの基盤となるモンスターがやられた上にデッキまで破壊された龍牙が驚き唸る。

 

「フィールド魔法[神碑(ルーン)の泉]を発動して、手札からカードを四枚セットしてターンエンド」

 

 そして彩葉はフィールド魔法を発動した後、またもモンスターを出さずにカードセットのみでターンを追える。

 いきなり合計六枚のカードを手札から使用するもまだ手札枚数は制限ギリギリの六枚残っている。しかしそれでもまだモンスターは出しておらず、龍牙も流石に不信感が芽生えたのかその表情は引きつっていた。

 

「あのカード……やっぱり彩葉ちゃん、あのデッキを使ってるんだ……終わりだ、もう終わりだ……」

 

「ど、どうしたんだよ翔!?」

「もしかして翔君、彼女のこと知ってるの?」

 

 頭を抱えて唸る翔に十代と明日香が首を傾げて問いかける。

 

「柳里彩葉、彼女は俺と翔の……そうだな。幼馴染、とでも言おうか」

 

「カイザー!」

 

 それに翔の代わりに答えるのはデュエルアカデミアの帝王(カイザー)にして翔の実兄――丸藤亮だった。

 

「幼馴染……それで翔君は彼女のことを知っているわけね。でも亮、この怯え方は尋常じゃないわよ……?」

 

「翔が怯える気持ちも分からんではない……去年、翔がデュエルアカデミアに入学する直前の長期休暇に俺も実家に帰っていた時に、彩葉と一度デュエルしたのだがな――」

 

 そう語る亮の頬も若干ひきつる。

 

「――俺も、危うく負けかけた……」

 

『…………』

 

 デュエルアカデミアの帝王、即ちこのデュエルアカデミア最強の一角。その名を冠する亮が敗北しかけた。その事実に話を聞いたメンバーは黙るしかなかったのだった。

 

「俺のターン、ドロー!」デッキ枚数:25→24

 

 そんな十代達の会話など露知らず、龍牙は自分のターン開始を宣言してカードをドロー。彼女の場の四枚の伏せカードを見る。

 

「(伏せカード四枚、あれだけあればトラップの一枚くらいあっても不思議じゃない。そして今俺の手札に魔法・罠を破壊するカードはない……だが!)俺は魂喰いオヴィラプターの効果発動! 場にレベル4以下の恐竜族、レベル4のセイバーザウルスを破壊して墓地の恐竜族、[超古代恐獣]を守備表示で特殊召喚! さらに魔法カード[デビルズ・サンクチュアリ]を発動! メタルデビルトークンを特殊召喚し、メタルデビルトークンとハイパーハンマーヘッドを生贄に捧げ、[創世神(ザ・クリエイター)]を守備表示で召喚!

 そして創世神の効果発動! 墓地の[ハイパーハンマーヘッド]を選択して手札を一枚墓地に送る事で、選択したハイパーハンマーヘッドを特殊召喚! さらにハイパーハンマーヘッドを蘇生した事で超古代恐獣の効果でデッキからカードを一枚ドロー!」デッキ枚数:24→23

 超古代恐獣 守備力:1400

 創世神 守備力:3000

 ハイパーハンマーヘッド 攻撃力:1500

 

 

「まずい。創世神は手札一枚を墓地に送る事で自分の墓地限定とはいえ死者蘇生を行える。オヴィラプターと組み合わせれば超古代恐獣によるドローをさらに加速させられるぞ……」

 

「あのデッキ、相当蘇生による超古代恐獣のドロー加速ギミックを積んでいるようだな。その上創世神の守備力は3000。戦闘による突破も容易ではない……」

 

 

「二体モンスターを守備表示にしておけばたとえミラーフォースが来ても立て直しは容易! 残りライフ100なんてさっさと削り切る! バトルだ! ハイパーハンマーヘッドでダイレクトアタック!」

 

 万丈目と三沢が龍牙の場から感じられる彼の戦術を推測する中、龍牙はゴリ押しで彩葉に攻撃を仕掛ける事を決意して攻撃を命じ、それを受けたハイパーハンマーヘッドが彩葉に突進。それに対し彼女は何も慌てることなく手札を一枚取った。

 

「私は手札から速攻魔法[まどろみの神碑]を発動」

 

「なにぃ!? 相手ターンに手札から速攻魔法の発動だとぉ!?」

 

 彩葉の行動はデュエルモンスターズのルール上不可能なこと、それに龍牙が声を上げると共に会場もざわめき出す。

 

「きゃは♡」

 

「「始まった……」」

 

 そんな中彩葉が満面の、しかしどこか相手を嘲るような笑みを浮かべ、それを見た丸藤兄弟はその行動の真意を理解しているかのようにぼやいた。その目はどこか遠い。

 

「おじさん知らないんだ~? 私の発動したフィールド魔法[神碑の泉]が存在する限り、私は神碑速攻魔法カードに限り、相手ターンに手札から発動できるんだよ♡ つまり、この発動は有効ってわけ♡」

 

「なんだと!?」

 

 

「一部のカードに限ってとはいえ、相手ターンにも手札から速攻魔法を発動できる……つまりあの手札も伏せカード同然ということか……!?」

 

 嘲るような笑みでの彩葉の言葉に龍牙が驚愕し、三沢もそのカードの恐ろしさに勘付く。

 

「まどろみの神碑の効果により、対象のモンスター一体はこのターン一度だけ戦闘・効果では破壊されず、攻撃できない。私はハイパーハンマーヘッドを対象とする事で攻撃を封じるよ」

 

 突如彩葉の場に現れた琴から突如美しい音色が響き始め、それを聞いたハイパーハンマーヘッドは突進しながら何やらウトウトしだすとそのままばたんと倒れて眠り始めてしまう。

 

「さらにまどろみの神碑の効果により、デッキから三枚のカードを除外するよ」

 

「くっ……だ、だが! いけ、魂喰いオヴィラプター!!」デッキ枚数:23→20

 

「ざ~んねん。速攻魔法[エネミーコントローラー]を発動するね。魂喰いオヴィラプターの表示形式を変更するよ。これで攻撃できないね~♡」

 

「く……」

 魂喰いオヴィラプター 攻撃力:1800→守備力:500

 

 ハイパーハンマーヘッドは眠らされ、魂喰いオヴィラプターは表示形式を変更させられて攻撃を封じられる。モンスターを出していないにも関わらず魔法・罠カードだけで龍牙の攻撃を完全に防ぎきっていた。

 

「俺はこれでターンエンドだ……」

 

 龍牙は唸り声をあげてターンエンドを宣言するしか出来ず、同時にルーン魔術の効果が切れたのかハイパーハンマーヘッドは目を覚ましてむくりと起き上がった。

 

「私のターン……おじさん」

 

 そのまま彩葉は自分のターン開始へと移行し、カードをドロー前に龍牙に妖しい笑みを向ける。

 

「ここからはもう、おじさんの攻撃なんて何も届かないよ? ドロー」

 

 そしてそう宣言した後にドロー。その宣言を聞いた観客席の亮が腕を組んだ。

 

「やはり彩葉のデッキはアレか……龍牙、奴は恐らく既に彩葉の術中にハマっている」

 

「どういう事?」

 

「彩葉の使っている神碑(ルーン)、あれは速攻魔法を主体として敵のデッキを除外する特殊なデッキ破壊を得意としたテーマ。しかも彩葉のアレはそれにさらにパーミッションの動きを加えて敵の妨害に特化している。あのデッキは伏せカードだけじゃない、手札までも全てが主を守る鉄壁の壁なんだ」

 

 亮の呟きに明日香が尋ねると亮は静かに説明、それを聞いた万丈目が困ったように苦笑した。

 

「大袈裟だろうカイザー? あの中にはモンスターカードだってあるはずだ。手札全てなんて流石に――」

「モンスターなんていないよ」

「――え?」

 

 万丈目の言葉を翔は力なく首を横に振って否定し、それに万丈目が固まると翔は彩葉を恐れるような目で見る。

 

「あそこまでドローしててモンスターが一体も出てこないなんておかしすぎる……アレは間違いない。デッキに投入しているのは神碑やそれのサポートカードもしくは手札補充カードや敵の行動を妨害するカードのみ。手札事故になる可能性があるモンスターなんて一枚もメインデッキに入れていない……彩葉ちゃん特性の妨害特化型ドローゴー神碑だよ……」

 

「正確に言うならば、[カードカー・D]のような使い捨てのドローソースに[速攻のかかし]のような使い捨ての防御効果の、それこそドローゴーなら然程デメリットのないモンスターの類なら数枚入っている可能性はあるだろうが……」

 

 怯えたように話す翔に続けて亮が冷静に補足する。要するに「普通のデッキのようにフィールドに維持して戦闘を担当したりアドバンテージを取るためのモンスターの類は無い」という事だ。

 

「私は[カードカー・D]を召喚、カードを一枚セットしてカードカー・Dの効果発動。このカードが召喚に成功した自分メインフェイズ1にこのカードを生贄に捧げて発動でき、私はデッキから二枚ドローする。その後、このターンのエンドフェイズになる」

 

 ようやくモンスターを召喚したがすぐ生贄にしてのドローソースに変換。しかしその代償にこのターンの強制終了を余儀なくされ、ターンが強制的に龍牙へと移る。

 

「俺のターン、ドロー!」デッキ枚数:20→19

 

 龍牙は力強くカードをドローして三枚の手札を血走った目で睨みつけるように見る。相手のライフは残りたった100、それさえ削れば自分の勝ち。あと一歩、そう考えながら手札を見た龍牙はこのターンにドローしたカードを見るとニヤリと笑った。

 

「魔法カード[ハーピィの羽根帚]を発動! 相手フィールドの魔法・罠カードを全て破壊する!!」

 

 

「まずい! 伏せカードだけでなく神碑の泉まで破壊されてしまえば彼女の戦略が根本から崩れてしまう!」

 

 カードコレクターなのは伊達ではない、といわんばかりのパワーカード。魔法・罠による戦略を主体とする彼女にデッキにとっては天敵たるそれを見た三沢が声を上げると共にハーピィの羽根帚によって出現した竜巻が彼女の場に向かう。

 

「砕け散れえええぇぇぇぇっ!!!」

 

 これが通れば相手は何も出来なくなる。勝ちは目前。龍牙は額に青筋を立てながら声を荒げる。

 

「カウンタートラップ[魔宮の賄賂]を発動。相手の魔法・罠の発動を無効にして破壊、その代わり相手は一枚ドローできる……おじさん、ハーピィの羽根帚の発動を無効にしちゃってごめんね♡ 代わりにカードを一枚ドローさせてあげるから許してね♡」

 

「ぐっ……」デッキ枚数:19→18

 

 その希望はあっけなく砕かれる。彩葉は冷静沈着にハーピィの羽根帚の竜巻をかき消した後、きゃはっと笑って龍牙に告げ、龍牙もカードの効果処理には従わねばならずカードをドロー、ぐぎぎと唸りながら創世神を見上げた。

 

「俺は創世神の効果発動! 手札を一枚捨てて墓地の[セイバーザウルス]を特殊召喚し、超古代恐獣の効果で一枚ドロー! 続けて魂喰いオヴィラプターの効果発動! セイバーザウルスを破壊し、墓地の[ヴェルズ・サラマンドラ]を守備表示で特殊召喚! 超古代恐獣の効果で再び一枚ドロー!」デッキ枚数:18→17→16

 ヴェルズ・サラマンドラ 守備力:950

 

 元々そういう戦略なのだろうがあっという間に恐竜族モンスターを蘇生する形でモンスターゾーンを全て埋めつつ二枚ドロー。そのドローカードを見ると彼は目を丸くするがすぐに気を取り直すように笑みを深め、さっきのターン守備に強制変更させられた魂喰いオヴィラプターと守備表示で特殊召喚された故に攻撃出来なかった超古代恐獣が立ち上がる。

 

「魂喰いオヴィラプターと超古代恐獣を攻撃表示に変更してバトルだ! 今度こそぶっ潰せ! ハイパーハンマーヘッド! 魂喰いオヴィラプター! 超古代恐獣!!」

 魂喰いオヴィラプター 守備力:500→攻撃力:1800

 超古代恐獣 守備力:1400→2700

 

 再び攻撃指示を受けた彼の場の恐竜が再び彼女に牙を剥く。

 

「その直接攻撃宣言時に手札から[速攻のかかし]を捨てて効果を発動するよ。その攻撃を無効にし、その後バトルフェイズを終了する♪」

 

「クソがぁっ! 残り100のライフポイントがどうして削れない!?」

 

 しかしその牙は彩葉の場に突如出現したかかしが受け止め、充分に齧って満足したのか恐竜達が攻撃をやめたと共にかかしも静かに消えていく。モンスターの数は圧倒的にこっちが上、それにも関わらず攻めきれず残りたった100のライフが削れない龍牙が苛立ったように声を上げていた。

 

「防御硬いなぁ……」

 

「亮、あなたあんなデッキにどうやって勝ったの?」

 

 十代が彩葉の防御の硬さに驚き、明日香が亮に問いかけると、亮はひどく言いにくそうな沈黙後に口を開いた。

 

「とにかく攻撃に集中した。守勢に回って時間を稼がれたら負ける。こっちの攻撃の手が尽きるか、相手の防御の手が尽きるか。スピード勝負だ」

 

『お、おう……』

 

 要はゴリ押しで勝った。そんな言葉に十代達はコメントを返す事も出来ず、翔に至っては「それしかないよね……」と頭を抱えていた。

 そんな間に龍牙は怒っていても仕方ないと落ち着きを取り戻したか、歯をギリギリ鳴らしながらも「メインフェイズ2に入る」と宣言。

 

「ヴェルズ・サラマンドラの効果を発動。自分の墓地からモンスター一体を除外する事でこのカードの攻撃力を相手ターン終了時まで300アップする。俺は墓地の[首領亀]を除外して攻撃力をアップさせる」

 ヴェルズ・サラマンドラ(守備表示) 攻撃力:1850→2150

 

 墓地に眠るモンスターの魂を燃料にしたかのようにヴェルズ・サラマンドラが纏う闇の炎が勢いを増し、その攻撃力が上昇。しかし守備表示の今では、しかも既にバトルも終わった今では意味のない行動に見え、観客達も不自然なプレイングにざわめいている。

 

「……もしや」

 

 亮や三沢といったカード知識に秀でる少数の人間の、嫌な予感を感じ取ったような僅かな言葉を除いて。

 

「そしてカードを三枚セットしてターンエンドだ」

 

「エンドフェイズに手札から速攻魔法[破壊の神碑(ルーン)]を発動するね。相手フィールドの魔法・罠カード一枚を対象とし、そのカードを破壊する。その伏せカードの一枚を破壊するね♡ さらにぃ、相手のデッキの上からカードを四枚除外するよ♪」

 

「つっ!?」デッキ枚数:16→12

 

 そんな多数のざわめきを聞きながら、そして僅かな言葉を知ってか知らずか龍牙はカードを伏せてターンエンドを宣言しようとするがその前にというように彩葉の場に不可思議な文字――ルーン文字が浮かび、そこから光線が放たれて龍牙の場に残る伏せカード――マインドクラッシュが貫かれて破砕。さらに龍牙のデッキから四枚のカードが除外され、いよいよ彼のデッキ枚数も崖っぷちが見え始める。

 

「私のターン、ドロー」

 

 その中で彩葉はカードをドロー。その瞬間龍牙のニヤリとした笑みが深くなった。

 

「この瞬間トラップ発動[魔のデッキ破壊ウイルス]! 自分フィールドの攻撃力2000以上の闇属性モンスター一体を生贄に捧げ、相手フィールドのモンスター、相手の手札、相手ターンで数えて3ターンの間に相手がドローしたカードを全て確認してその中に存在する攻撃力1500以下のモンスターを全て破壊する! 俺は攻撃力2150となっているヴェルズ・サラマンドラをウイルスの媒体とし、お前のフィールド……にモンスターはいないため手札全てを魔のウイルスに感染させる!」

 

「!?」

 

 龍牙がさっきのターンに伏せ、破壊の神碑から生き残ったリバースカードが翻ると共に龍牙の場のヴェルズ・サラマンドラがウイルスに染められるように紫色に変色。そして爆発するかのように砕けたと同時にそのウイルスが彩葉の場と手札に広がっていき、彼女の六枚の手札がウイルスに感染する。

 

「……私の手札は[速攻のかかし]、[黄金の雫の神碑]、[クリバンデッド]、[神碑の誑かし]、[パラドックス・フュージョン]だよ」

 

「なら! 攻撃力0の速攻のかかし、攻撃力700のタスケルトン、攻撃力1000のクリバンデッドを破壊する!」

 

「うっ……」

 

 六枚あった手札の半分がウイルスに感染し、破壊される。さらに残る手札も今の状況を覆せるものではない。

 

「……私は永続魔法[神碑の誑かし]を発動! このカードは自分または相手が速攻魔法カードを発動する度に効果が発動して、相手のデッキの上からカードを一枚除外するよ。さらに速攻魔法[黄金の雫の神碑]も発動! 相手はデッキから一枚ドローする代わりにその後、相手のデッキの上からカードを四枚除外するよ。さらに神碑の誑かしの効果で一枚除外してもらう!」

 

「ハハハ! 打つ手がなくなったようだな!」デッキ枚数:12→11→10→6

 

「ううん、まだ!」

 

 まるでヤケになったように魔法カードを使う彩葉の姿を嘲笑う龍牙。しかし彩葉の闘志はまだ消えておらず、それに応えるように神碑の泉が光り出す。

 

「黄金の雫の神碑の発動をトリガーに神碑の泉の効果発動! 一ターンに一度、自分が神碑速攻魔法カードを発動した場合、自分の墓地の神碑速攻魔法カードを三枚まで対象としてデッキの下に戻し、その後、戻した数だけ自分はデッキからドローする。私は輝く炎の神碑、まどろみの神碑、破壊の神碑をデッキボトムに戻し、三枚ドロー!」

 

「なに!? っ、だが魔のデッキ破壊ウイルスの効果によりドローカードを確認させてもらう!」

 

「……う、ドローカードは[ネクロ・ガードナー]、[凍てつく呪いの神碑]、[惑星探査車(プラネット・パスファインダー)]……」

 

「凍てつく呪いの神碑を除きモンスターカードで攻撃力は1500以下! よって破壊させてもらう!」

 

 これで彼女の手札は融合モンスターがいない限り役に立たないパラドックス・フュージョンと神碑カードの一種である凍てつく呪いの神碑のみ。

 

「……ターンエンド」

 

「ククク。俺のターン、ドロー」デッキ枚数:6→5

 

 どうやら残る神碑は使わないらしく、しかもまだ生き残れるかもしれない、そうなれば次にくるカードの手札コスト等に使えるかもしれない、だから温存すべきと判断したか、そのパラドックス・フュージョンは伏せずに彩葉はターンエンドを宣言。項垂れて落ち込んだ様子を見せている彼女の姿に龍牙は得意げになりながらカードをドローした。

 

「なぁーんちゃって♪」

 

 その時、彼女は顔を上げてぺろっと舌を出す。同時に彼女の場に伏せられていたカードの一枚が翻った。

 

「トラップカード[D.D.ダイナマイト]を発動♪ 相手が除外しているカードの数×300ポイントダメージを相手ライフに与えるよ♪」

 

「私の除外しているカード……!?」

 

 除外枚数に比例してダメージが増加するバーンカード。除外する事でデッキ破壊する神碑にとって隠し玉ともいえるカードであり、龍牙は思わずデュエルディスクに怯んだようにのけ反る。

 彼の除外ゾーンにあるカードは究極進化薬によって二枚、輝く炎の神碑によって二枚、まどろみの神碑によって三枚、破壊の神碑によって四枚、黄金の雫の神碑によって四枚、そして神碑の誑かしによって一枚、計十六枚。

 それを指折り数えた翔の顔が輝いた。

 

「16枚×300……4800だ!」

 

 それは龍牙のライフを削るには充分となる計算。デッキ破壊と見せかけてバーンでトドメを刺す。二段構えの戦術に観客席の学生達が一気に色めき立った。

 

「もう打つ手がないと思った? ざーんねんでしたー♡ もう既に打つ手あったんでしたー♪」

 

 ヤケになったかのような除外もD.D.ダイナマイトのダメージを増やすため。けらけらと笑う彼女の場に無数のダイナマイトがくっついたような形をした球体が出現し、その球体の中心についたタイマーが作動する。

 それが爆発すれば彼のライフは一発で削り切られる。その大逆転劇に学生達が盛り上がって彩葉への歓声が響き渡る。

 

「ふ、ヒヒ……ヒャハハハハハ!」

 

 だがそれに対し龍牙は突如おかしいように高笑いをし始めた。

 

「残念だったなぁ! 俺の恐竜族展開コンボを、魔法を使えない状態で突破するのは困難。なら後はバーンを対策すれば万全! 対策はとっくに出来てるんだよぉ!」

 

 イカサマで魔法カードの発動を封じるだけでなく、それで相手が別の動きをしてくるならそっちも封じる。そう言っているらしい龍牙の場の伏せカードが翻った。

 

「カウンタートラップ発動[ダメージ・ポラリライザー]! ダメージを与える効果が発動した時に発動する事ができ、その発動と効果を無効にし、お互いのプレイヤーはカードを一枚ドローする!」

 

「あ……」

 

 D.D.ダイナマイトが大爆発を起こすもその爆風は障壁によって阻まれ龍牙には届かない。

 

「ドロー!」デッキ枚数:5→4

 

「ド、ドロー……」

 

 そしてダメージ・ポラリライザーの効果によってドローが行われるが、龍牙の方はただ手札を増やせただけだが彩葉はそうもいかない。

 

「魔のデッキ破壊ウイルスの効果だ。確認させてもらう」

 

「……[禁じられた聖杯]、速攻魔法だよ」

 

 ウイルスの効果を受けない速攻魔法ではあったが、同時にこの状況で発動できるカードでもない。龍牙は勝利を確信しながら創世神を見上げた。

 

「創世神の効果発動! 墓地のモンスター一体を選択し、手札を一枚墓地に送る事でそのモンスターを蘇生する!」

 

「さ、させないよ! 手札から速攻魔法[凍てつく呪いの神碑]を発動! 相手フィールドの効果モンスター一体を対象とし、そのモンスターの効果をターン終了時まで無効にする。さらにその後、相手のデッキの上からカードを三枚除外するよ! さらに神碑の誑かしの効果によって一枚除外する! そして神碑の泉の効果発動! 墓地の黄金の雫の神碑と凍てつく呪いの神碑をデッキボトムに戻して二枚ドロー!」

 

「くくく……」デッキ枚数:4→3→0

 

 ルーンの呪いによって創世神がまるで凍りついたかのように動きを止める。創世神の蘇生は封じ、さらにデッキ除外によって龍牙のデッキはこれで残り0枚。

 さらに彩葉は神碑の泉の効果で二枚のカードをドローするが、そのカードは[手札断殺]と[強欲で謙虚な壺]。やはりこのターンに使えるカードではなく、これ以上出来る事は何もない、彩葉の絶望したような表情はそう物語っており、龍牙は得意げに笑いながら、五枚もの手札からさらなるカードを発動する。

 

「魔法カード[魔法石の採掘]を発動! 手札を二枚捨てて墓地の魔法カード一枚を手札に加える! 俺が加えるのは当然[ハーピィの羽根帚]だ! そのまま発動! お前の魔法・罠カードを全て破壊する!」

 

「うぅっ……」

 

 空気が渦巻いて竜巻と化し、彩葉の場の魔法・罠に襲い掛かる。今度はそれを防ぐ術はなく、彩葉の場の神碑の泉と神碑の誑かし、そして二枚の伏せカード――パワー・ウォールと痛魂の呪術が破壊される。

 これで彩葉の場はがら空き、さらに彼女の手札も全て暴かれており抵抗手段がないことは確認されていた。

 

「俺は[首領亀(ドンガメ)]を攻撃表示で召喚し、創世神を攻撃表示に変更!」

 首領亀 攻撃力:1100

 創世神 守備力:3000→攻撃力:2300

 

 

「まずい……彼女の墓地にはタスケルトンとネクロ・ガードナーがいっている。あのカード達は双方自身を墓地から除外する事で相手の攻撃を一度だけ無効にできる……」

 

「だが、龍牙の場のモンスターは五体、しかもすべて攻撃表示……これでは防ぎきれん……」

 

 三沢と万丈目の顔が険しくなる。

 魔のデッキ破壊ウイルスも彩葉の墓地のモンスターを増やすという意味では役に立っているものの、今の状況では守りの手が足りない。即ち絶対絶命という状況だった。

 

「ヒャハハハハハ! これで終わりだ! 俺とお前の実力差をわからせてやる! いけ、全員攻撃だ!!」

 

 龍牙の攻撃指示と同時に三体の恐竜が牙を剥き、創世神は両手を掲げて雷を球状に生み出し、首領亀は頭や手足を甲羅に隠したまま回転開始。この総攻撃を受ければ彼女のライフでは耐え切れず、彼女の敗北が決定する。

 そして恐竜達が牙を剥いて突進し、創世神が雷球を叩き込み、首領亀の回転の勢いをつけての突撃が彩葉へと襲い掛かる。

 

「俺の勝ちだあああぁぁぁぁっ!! これで俺のデュエルアカデミア教員への道が繋がったあああぁぁぁぁっ!!」

 

 龍牙が歓喜の声を上げる……が、少しして違和感に気づく。デュエルが終了したならばそれの合図となるブザーが響くはず。しかしそれは未だに響かない――

 

「な、なんだ……!?」

 

 ――それの意味する事に気づいた龍牙が彩葉の場に目を凝らす。

 彩葉に襲い掛かろうとしていた恐竜達の牙が、創世神の叩き込んだ雷球が、回転突進している首領亀の身体が、金色の光の剣によって阻まれていた。

 

「墓地の永続罠[光の護封霊剣]を除外して効果発動。このターン、相手モンスターは直接攻撃できない」

 

「な、なんだとおおおぉぉぉぉっ!?!?」

 

 彩葉の不敵な笑みを浮かべながらの宣言に龍牙は動揺のまま大声を上げる。

 このデュエル中、そんなカードが墓地に送られたところなど見ていない。破壊した伏せカードの中にも、ウイルスによって確認したカードの中にも、そんなカードは一枚もなかった。つまり墓地に送られるチャンスなど――

 

「……っ!?」

 

 ――そこまで考えて龍牙は気づく。一度だけあった。フィールドを介さず、ピーピングをされる事なくカードを墓地に送るチャンスが。たった一度だけ。

 

「手札……断殺……っ!」

 

 このデュエルの最序盤、究極進化薬のコストに使えるモンスターを墓地に送りつつ手札を交換するために龍牙が使用したカード。あの時に彩葉は光の護封霊剣を墓地に送っていたのだ。

 だがしかし、そう考えればおかしいことがある。

 

「な、なんでお前は! 今までそのカードを使わなかったんだ!?」

 

 龍牙が動揺のままに叫ぶ。そう、龍牙の推測が正しかったのだとすれば、彩葉は龍牙が恐竜族モンスターを展開して彩葉のライフを残り100まで削るあの猛攻を行った時点で光の護封霊剣を墓地に送っていた。あの猛攻を光の護封霊剣で防いでいれば、ライフ8000を維持したまま余裕を持ってデュエルが出来ていたはず。仮にそこで使わなくてもそれ以降のターン、何枚も伏せカードや手札を消費したりすることなく防御出来ていたはず。

 言外にそんな思考を入れた龍牙の叫びに、彩葉は「きゃは♡」と笑った。

 

「だってあのダメージを受けたところで死ぬわけじゃないし? だったらギリギリまで温存した方がいいかなって♡ おじさん全然こっちの墓地情報見ないんだもん♪」

 

「し、死なない……から、温存……!?」

 

 彩葉の言葉に龍牙が絶句し、観客席の生徒達も(亮と翔以外は)絶句。

 たしかにライフは残り100とはいえ残る。しかしあまりにもギリギリ過ぎる。そんなライフは僅かな戦闘ダメージの余波でも、あのバーンカード[火の粉]を使われるだけでも削り切られて敗北する。それを敢えて受け入れてまで防御札を温存するという彼女の胆力に誰も何も言えなかった。

 

「まー別に、使ってもよかったんだけどさ。まだこれもあるし」

 

 龍牙や生徒の大部分が絶句している中、突然彩葉はそう話し出すとデュエルディスクの墓地ゾーンから一枚のカード――カードの縁から効果モンスターカード――を取り出して龍牙に見せる。

 

「――そ、それは[超電磁タートル]!?」

 

 龍牙が驚愕に叫ぶ。超電磁タートル、墓地から除外する事でそのターンのバトルフェイズを強制終了させる。デュエル中一度しか使えなかったり攻撃無効とバトルフェイズ終了という多少の処理の違いこそあれど、単純な防御力だけで言うならばタスケルトンやネクロ・ガードナーを遥かに超える強力なモンスター。そのカードも手札断殺で墓地に送られていたのだ。

 

「あ、あいつ、墓地に二枚も相手の攻撃を防御するカードを残しながらあれだけの攻撃を防ぎきってたのかよ……」

 

「まあ、彩葉ならその程度の奇策を行っても不思議ではないが……」

 

 さしもの十代でも頬を引きつかせながらぼやくのがやっとであり、亮も腕組みをしながらはぁと溜息をつくのだった。

 そんな二人の心境を知らないまま、彩葉は龍牙に不自然なくらいに優しく微笑みかける。

 

「それで~おじさん。直接攻撃は出来ないわけだけどー。これからどうするのー?」

 

「っ……ぐ……」

 

 彩葉のにやにや笑いでの言葉に龍牙は黙り込む。攻撃は出来ないままこのターンのバトルは終了するしかない。しかし自分のデッキは既になく、魔法・罠ゾーンにも何もない。手札は一枚残っているもののこれは[サイバー・ダイナソー]。この状況で使えるカードではない。

 魂喰いオヴィラプターの効果でセイバーザウルスかハイパーハンマーヘッドを破壊する事で恐竜族モンスターの守備表示での蘇生も狙えなくはないが現状それをやったところで何の意味もない……

 

「っ、タ……ターン……エンド……」

 

 龍牙はもうターン終了を宣言するしか出来なかった。

 

私のターン、ドロー(ドロー)

 

 魔のデッキ破壊ウイルスの効果によりドローカード[死者への供物]を提示。これで彩葉の手札は五枚。しかしもはや彼女は何かする必要もない。彼女がこのデュエルを終わらせるために行う事はたった一つだけ。

 

ターンエンド(ゴー)

 

 ただ龍牙にターンを渡す(ターンエンドする)だけでいい。

 

「私の……ターン……」

 

 龍牙のデッキはゼロ。このターンのドローフェイズにドローするカードはない。

 即ちデッキ切れ(ライブラリーアウト)。この瞬間龍牙の敗北が、そして彩葉の勝利が決定しデュエル終了を示すブザーが響くのであった。

 

「そ、そんな……馬鹿な……」

 

 龍牙ががくりと膝をつき項垂れる。

 あともう少し、たった100のライフさえ削れば自分の勝ちだった。にも関わらず相手はその残り100のライフを守り切ってこっちのデッキを削り切ってみせた。結果的には相手の辛勝と言っていいだろう。

 

(違う……)

 

 龍牙の頭の中に、そんな思考が入ってしまう。

 彩葉は手札断殺によって[光の護封霊剣]と[超電磁タートル]を送っていたのはほぼ間違いない。つまり彼女は二枚の防御カードを「死なないから」という理由で温存していた。仮にあの猛攻を光の護封霊剣で防いでいても、最後の攻撃は超電磁タートルで防ぐことは出来た。

 ただの結果論でしかない。だがしかし、彩葉はやろうと思えば()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。そんな思考が龍牙の中に芽生える。

 

「馬鹿な、そんな、嘘だ……俺はデュエルアカデミアの生徒に49連勝したんだ……それが、こんな飛び級とはいえ中等部のガキに……」

 

「おーじさん♡」

 

 現実を認めたくないかのようにぶつぶつと呟く龍牙に、いつの間にか彼の近くに歩み寄っていた彩葉が話しかける。思わず顔を上げた龍牙の目に映るのは、にやにやと意地の悪い笑みを浮かべる彩葉の姿だった。

 

 

「お話は鮫島おじーちゃんから聞いてるよー? おじさん、相手の魔法カードを使えなくさせるイカサマしてぇ、デュエルで勝ってたんだってー。し・か・も♡ そのイカサマやってたくせにオシリスレッドの生徒に負けちゃってぇ、イカサマばれてぇ、今こうやって私とデュエルしたんだっけぇ?」

 

 にやにや笑いでの煽り言葉が止まらない。観客席の翔が「こうなったらもう彩葉ちゃんは止まらないよ……」とぼやいた。

 

「きゃっは♡ イカサマしなきゃ学生にも勝てるって自信持って言えない上に実際は負けちゃってるしぃ、イカサマ無しだったら私みたいな飛び級認められたとはいえ現在中等部の生徒にも負けちゃうなんて。恥っずかし~♡ ざぁこざぁこ♡」

 

「ぐ……ううう……」

 

 見下し、嘲笑う彩葉に龍牙は何も言えない。何か言えばその己の醜態を認めてしまう事になりそうで。

 

「ああああぁぁぁぁあああああぁぁぁぁぁ!!!」

 

 そしてついに青筋を立てた頭を掻き毟り発狂したかのように叫ぶ龍牙の慟哭の声だけがただ虚しく響き渡るのだった。

 

 

 

 

 

 翌日、校長室。昨日はデュエルアカデミア内の来客用宿泊室に泊まった彩葉は朝一番にここに呼び出され、目の前で頭を抱えている鮫島をにこにことした笑みで見つめていた。それに対して鮫島もはぁ、とため息をついて口を開く。

 

「柳里彩葉君、編入試験実技試験は合格。君のデュエルアカデミア高等部編入を認めます」

 

「ありがとー。鮫島おじーちゃん♪」

 

 鮫島からの業務的な連絡ににこにこと上機嫌で答える彩葉。だが別に自分が聞きたいのはそこじゃねえよといわんばかりの笑顔の圧に、鮫島は再び溜息を漏らして彼女が聞きたいだろう話題を切り出した。

 

「龍牙君はデュエルアカデミアを去りました。朝一に必要書類を置いて、まるで逃げるようにね」

 

「ふ~ん。誰から逃げたんだろうね? まあ生徒から無理矢理カードを奪ってたような先生なんだし? きっと色んなとこから恨みを買ってるよねー?」

 

「白々しい……」

 

「おじーちゃんだってそれ期待して私の相手させたくせに」

 

「ノーコメントです。私はあくまでも貴女の編入実技試験の相手を兼ねて彼の処分検討を考えた手段を取っただけです」

 

 表向きは穏やかな笑顔で、しかし実態はお互いに腹の中を探り合うように二人は話し合う。その後鮫島はふぅと一息ついてから話し出した。

 

「それにしても……まさか本当にアレを使って叩き潰すとは思いませんでした……裏サイバー流を使う事を想像していたんですがね」

 

「そりゃー編入試験の話が持ち上がった時点ではそっち使う気だったけどさ。亮おにーさんからおじさんのお話し聞いたらこっちかなって」

 

 かつてサイバー流でリスペクトデュエルを学んだ彩葉が独自に見出した「相手をリスペクトしているからこそ勝つために全力を尽くす」「勝利のために最大限活躍させる事こそがカードに対する最大のリスペクト」という、サイバー流とは異なるリスペクトの形。しかしそれがサイバー流に、そしてリスペクトデュエルに新たな道を作り出すかもしれないと期待して免許皆伝の証として授けた裏サイバー流デッキ。

 てっきり編入試験にもそれを使って彼女なりのリスペクトデュエルで龍牙を叩き潰すだろうと思っていた彩葉がまさか本当に相手の心をへし折るデッキを使ってきた事に驚いた鮫島に対し、彩葉は亮から編入試験の相手――龍牙の話を聞いたと語る。「相手は対戦相手の魔法カードの発動を阻害するイカサマを使って49連勝を行った相手である」「カードコレクターを名乗り、負けた相手からカードを無理矢理奪っている」そして「自分のあずかり知らぬところだったとはいえ、弟である翔もその被害にあっていた」と。

 

「翔おにーさんもカードを奪われたって聞いてね」

 

 丸藤翔が持っていて、カードコレクターを名乗る龍牙が興味を持つカード。そんなもの()()()()()()()()()()()()()()おおよそ予想がつく。

 そして龍牙がそれを知る手段、普通に人づてに話を聞いただけというのもありえる。しかしデュエルの際の彼の使用カードからでもやり口の想像はついた。

 

()()()()()()()を奪うような奴に容赦する理由ある?」

 

 剣呑な気配を醸し出す彩葉の言葉に鮫島も苦笑いを漏らす。彩葉を焚きつけるために翔の名前を被害者として漏らさせたはいいが、どうやらそれが想定以上に彼女の怒りを買っていたようだった。というか話を聞いただけと言っているにも関わらず、翔が奪われたというカードを特定している辺り相変わらずの冷静さと推理力だと鮫島は心の中で感嘆した。

 

「まあ、お話はよく分かりました。さておき、これから君はデュエルアカデミア高等部一年生です。女子寮担当の鮎川先生に話は通していますし、亮に女子寮までの道案内をお願いしておきました。もうそろそろ来る頃だと思うので校長室を出て部屋の前で待っているように」

 

「はーい♪」

 

 鮫島からの話も終わり、彩葉はルンルン気分で校長室を出ていく。それを見送りドアが閉まったのを見届けると鮫島は彩葉が来てから放置していた書類仕事に戻る。

 それから数分程経った頃、校長室の扉が開き鮫島は顔を上げる。

 

「失礼します。鮫島校長」

 

 そう一言挨拶して校長室に入ってきたのは亮と、その隣には彼の友人である明日香が立っていた。

 

「おや、亮。それに明日香さんも。どうしたかな?」

 

「鮫島校長に言われた通り彩葉の女子寮への道案内と、女子寮内部となると俺にはどうしようもないので明日香に女子寮内の彩葉の案内をお願いしたのですが……彩葉への小言はまだ終わっていないのかと思って」

 

 どうやら亮は気遣いで明日香を連れてきたらしい。あと彩葉への()()と言っている辺りに亮の中での彼女の扱いが伺えるが、彼の言葉を聞いた鮫島は首を傾げる。

 

「いえ、お話はとうに終わって、校長室の前で亮を待っているようにと言ったはずですが?」

 

「え?」

 

「え?」

 

 鮫島と亮の間に変な沈黙が流れる。双方の頭の中に「嫌な予感」の文字がよぎった。

 その時亮のPDAに着信が入り、亮は鮫島にアイコンタクトで「失礼します」と伝えてすぐに電話に出る。

 

[お、お兄さん! 助けて! 彩葉ちゃんが! 彩葉ちゃんがレッド寮にぃ!]

 

 血相を変えた翔の悲鳴が響き渡った後、ブツッと通話が途切れる。

 全てを理解した鮫島と亮が頭を抱える中、事態の理解が追いついていない明日香はどういう事かと目をぱちくりとさせるのだった。




《後書き》
 今回のお話はなんかこう漫画とアニメがいい具合に混ざってる感じで時間軸はあんま気にしないでください。(のっけから逃げ道作り)

 さて今回の話はコロコロオンラインで「デュエル・マスターズ」の漫画読んでてふと「ドローゴーデッキのデュエル遊戯王で書きたいなー」と思ったので【神碑(ルーン)】で書いてみました。
 んでもうデュエリストの設定とか諸々考えるの面倒だったので彩葉に押しつけて適当にデュエルアカデミアに放り込みました。一応生まれはサイバー流メスガキなのに地下デュエルやらアカデミアやらでもメスガキやってるからどこでもデッキ持たせて放り込んでメスガキやらせときゃ形にしてくれるからこいつホント便利。
 ……っていうかマジで「もしかしてメスガキってコントロールデッキの方が扱わせやすいのでは?」とすら思えてくる。少なくともうちのメスガキの元祖であるサイバー流彩葉は「メスガキは心理フェイズの一環で根は冷静沈着な戦略家」って設定なので「相手を煽って冷静さを失くさせてプレイングに粗が出たところをいなして返して制圧する」ってのがめっちゃ様になる……俺なんでサイバー流(大抵ビートダウン&リスペクトデュエル)でメスガキやらせたんだろう?(答え:裏サイバー流を使ってちょいと書きたいと思った+その時メスガキにハマってた=ただの考えなし)

 んで今回の被害者は龍牙。といっても漫画でやってた魔法封じのイカサマなんてやられたら神碑機能停止どころの騒ぎじゃないので、「漫画版のように十代に負けて、イカサマがバレたIF」という設定でイカサマ無しでやらせました。
 作中では基本的には超古代恐獣のドロー加速をメインに置いてそのために創世神を採用という蘇生ドロー加速系のデッキになりました。ぶっちゃけ彩葉のコントロールデッキに転がされるならある程度ドロー加速しないと手札が足りん、(汗)
 あとは漫画で使ってた首領亀とかサイバー・ダイナソーとかも投入しているという体になっています。

 ちなみに本来は神碑融合モンスターも使いたかったんですが、出す暇がありませんでした&デュエル構成的になんか直接攻撃封じのカードが多く出たからこれいっその事使わない方がマシじゃね?になってしまったというか……
 なお神碑速攻魔法の(2)の効果の「EXモンスターゾーンに特殊召喚する」の文言は遊戯王GX世界観のこれだと流石に再現しようがないのでオミットする予定でした。その代わり神碑速攻魔法の効果で特殊召喚された神碑融合モンスターは一度フィールドを移動するとかのOCG上でのEXモンスターゾーンから離れるようなプレイを行わない限り一体ずつしか出さない等、プレイング上の自重という形でですが対応しようかなと考えてました。いや「この効果で特殊召喚された神碑融合モンスターはフィールド上に一体しか存在できない」とかオリジナルでつけ加えとくのも手ではあるけど、下手に処理加えてルール上変に矛盾が出たらややこしくなるし自重させた方が楽なので。結局出す暇なかったけど。

 それでは今回はこの辺で。ご指摘ご意見ご感想はお気軽にどうぞ。それでは。

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