ラブコメ展開に恵まれるけど告白されたら死に戻る呪いをかけられた 作:管章 眞曽
「あ”あ”ぁ”~!!だめかぁ。わりとうまくいってると思ったんだけなぁ~」
三年生に進級してからというもの俺はまた幾たびと死に戻りループを繰り返すようになった。
今、自分が何十周目かわからないくらいに。
ちなみに死に戻るタイミングの多くは最後の大会の後か最後の難門にして俺史上最悪の行事、卒業式のどっちかである。
大学受験に専念すると宣言した効果もあり、一年生の時と違って死に戻りタイミングはこの二つにほぼ集約され、クリスマスやバレンタインデーの生存率は高いが…
「くっそぉ、また二年生からかぁ…」
そうなのだ。
三年生に進級したがリスタート地点は二年生の秋、瀬那と語りあったあの日の翌日からだ。
カースップさぁ…
まあ精神的ショックがないわけではない。
しかし俺には今、使命が確かにあるからわりと元気にリスタートできてる。
思えば遠くまでやってきた。
初周の俺がどうだったか、おぼろげなほどである。
人間の記憶領域は長くて120年だが150年だがが限界らしいが…うん、まあ考えないでおこう。
そもそも死に戻りっていっても俺は本当に俺なのかとか、なぜ死に対応しきれてるのかだとかそもそもあれは死なのか…だとか考えたらキリがない。
俺は俺。
まだ俺は自分が今まで何をしてきたか、これからのすべきことがわかってる。ならそれでいい。
あとは頑張ればいいのだ。
「よし!ネガキャン終わり!張り切っていこー!!」
手始めに学校の
一年生の頃は生徒会役員、ましてや生徒会長なんて過労になるから絶対にお断りだったがさすがに甘えたことを言ってる状況ではなくなってきた。
まあ、生徒会長になったからって劇的な変化があるってわけじゃないんですけど。
通常では秋葉が生徒会長になり俺が生徒会副会長になるわけだが秋葉から告白される周はほぼない。(同じく瀬那もないというか瀬那に関しては皆無だ。)
生徒会長になってクズムーブをして里奈や雫、特に詩穂の好感度を下げられてる…かなあ?くらいの成果である。
しかも生徒会長になるのも大変だし。
日本の最高学府志望してるのに生徒会長就任しますってのはふざけてんのか!(意訳)と止めてくる先生の説得(4敗)に成功し、あの秋葉を相手にして勝たなくちゃならない。
あの子、こっちが死に戻りによる圧倒的経験と疑似的未来予知をもってしても選挙に勝つのどうにかしてくれあ~
かたや学校の人気者、かたや最近頭角を(頭おかしいっていう評判で)表してきただけの日陰者だからしょうがないのかもしれないけどさ。
でもやれる策は全部やらないといける気がしない。
絶望的だぁ…
「説得力は中身じゃなくて誰が言ったか、っす。つーわけで先輩、応援演説おなしゃす。」
選挙に勝つためまたまた登場、潤彰先輩を放課後、空き教室に呼び出して協力を頼みこむ。
「…まだ結果がわからないから仮にも俺は受験生なんだが?」
「大丈夫っす。先輩なら絶対受かってるっす。それに用意した原稿をよむだけなんで…どうか!!」
今のところ先輩が落ちた周がない。
それどころか大抵において余裕の合格だとかなんとか。
「根拠もなしに言うな…咲良に頼め。そっちのほうが効果的だろ。」
「岩崎先輩、あの大学志望の受験生っすよ!?頼めるわけないでしょ!」
「俺もっ、受験生っ、なんだがっ!!」
潤彰先輩にヘッドロックをキメられる。
これが俺たちのコミュニケーション。
健全男子の友情には時として暴力がつきものなのだ。そうなのかな?
「いだい、いだい!タンマ!タンマ!ちぇー、わかりました。他の人に頼みまーす。」
「なんだ、てめぇ…拗ねれば俺がお前の機嫌をうかがうとでも思ってんのか?」
「ふっ、バレましたか。」
「…はぁ。わかった。お前に最後にしてやれることだ。原稿、見せてみろ。」
なんだかんだ、どの周でも絶対に断らない男、日髙潤彰。
やっぱ、最高の先輩なんだよなー
「やったー!せんぱいのそういうところ、大好きー」
「きしょい。即刻やめろ。」
きしょい…
おかしい、詩穂から何度も喰らった究極の殺し文句(ガチ)なのに…
先輩はすらすらと原稿を読み終えるとこちらをジト目で見てきた。
「おまえ…さりげない自画自賛選手権あったら優勝だな。もう就活対策か?」
その原稿用紙に書かれているのは俺が何十周もし、推敲に推敲を重ねた珠玉の自己賛美。
ナルシストかよ。とうんざりされず、それでいて自分の良さを最大限詰め込んだ文章である。
要はよくわからんけどなんか、すごい!!と思わせるもの集だ。
今までの周では謙遜をしていたがここでは調子に乗っとこう。
頭空っぽにするメンタルケア、大事。
「ふっふっふ。俺、今まで頑張りましたから!すごいやつなんです!俺!」
どやっ!どうだ、ほめろ!と大きく胸を張ってみる。
詩穂さん直伝のあざといムーブだ。
え?あれはやってる本人がかわいいから許される?じゃあ俺はダメなの?まじか。
「こうして見るとお前はおかしいやつだな。何がお前を駆り立てるんだ?」
褒められるどころかおかしいやつ扱いですか…否定はできないけど。
「そりゃあ、徹頭徹尾、自分のためっすよ。」
そう答えると先輩はあの日、図書委員会の最初のミーティングの後にみせた、心底愉快なものを見たような笑みを浮かべた。
あの日の出来事はもう、ほとんど思い出せないのに何故かその笑顔が重なってみえた。
「自分のためならここまでしない。
いいか。自分のために動く奴は簡単に諦められる。苦しいことをやめるのも自分のためだからな。
お前は自分のためじゃなくて何か他のもののために努力してる。だろ?」
「先輩が俺を買ってくれるのはありがたいっすけどその他のものってのはたいしたものじゃないっす。
もっと言えば俺の努力は崇高なもんじゃなくて…本質は利己的で…」
「そんな苦しそうに利己を語るやつがどこにいる。
お前は変なところで自己肯定感が低すぎる。お前の努力には俺の知らん何かがあるのかもしれん。
だが、お前が自分の努力を認めなくても俺が認めよう。お前の周りは?家族、友人、部活の仲間。
お前はここまで頑張った。ならその利己がなんであれ周りは変わらずお前を認めてくれるさ。」
「でも、ほんとうに
「大事なのは誰が言ったか、だろ?俺じゃダメか?」
何かあついものがこみ上げてくる。
端的に言って泣きそうだ。
くそったれな目的のために周りを利用してるくせに、その道中築き上げたものが戻るたびに跡形もなくなるのをいっちょ前に悲嘆して。
それまでも認めてくれることがうれしくて…!
泣くところはみせまいと我慢しているのに崩壊しそう…!!
二宮君、最大のピンチ!
「そろそろ俺は帰る。しっかり教室のカギを返すんだぞ。
じゃ、お疲れ。」
「お”つ”か”れ”さ”ま”で”し”た”!!」
そんな俺を察してか先輩は足早に帰っていった。
というか俺、声震えてなかった?やだ、恥ずかしい
なあんてこんなに脳内を愉快にしようとしたって実際には大泣きなんですけど。うわっ!ばっちぃ!!
赤く染まった教室で俺の涙と鼻水のすすり声だけが響いていた。
……よしっ、決めた。このループを抜け出したら俺は必ずあの子たちにーーーー
あと二話です。
どうぞ、最後までよろしくお願いします。