ラブコメ展開に恵まれるけど告白されたら死に戻る呪いをかけられた 作:管章 眞曽
勝った。選挙に。
ほぼでまかせな公約をこいつならやってくれるかも!と無理やり思わせての当選である。
秋葉、悔しがってるところ悪いがお前の前にいるのは数十回生徒会選挙をやった男だ。
まっ、十数票差だったんですけど!!あっぶねぇぇぇぇ!!
さ!お前ら俺を崇めろ!未経験からサッカー部でのし上がり、一年生から図書委員として精力的に活動しテレビからの取材を受け、生徒会長にまで就任した、俺を!今のうちにな!
もう間もなく俺の名声は地に落ちるからな。
はやく!生徒会長に就任するための努力が報われるのはこの時だけなんだからなあ!!
選挙結果発表から数日後。
「ねえ、聞いた!?新生徒会長の噂!」
お昼休みの教室では交友関係が広く噂好きで有名なクラスメートが仕入れた面白いネタをさっそく彼女の級友に提供していた。
蓮斗先輩の話?少し興味があるのでお茶を飲みながら聞き耳をたててみる。
にしても先輩はどうしていきなり生徒会長になるとかいいだしたんだろう?もうすぐ大会も近いのにな…
私は冗談だと思ってたのに演説を聞いてみれば思ったより本気で、たかが学校の生徒会選挙なのに堅実で詳細な説得力ある計画が話されて、なにより本人の熱を感じるものだった。
生徒会選挙なんてほぼ人気投票だしライバルがあの人だから当選は絶望視していたがまさかの当選。
ほんとに先輩はよくわからない頑張り屋さんである。
「え?なになに?なんかあるの?」
待望のヒットを引き当てた釣り人みたいに彼女、菊ちゃんは一気にその噂の中身を口にした。
「それがね、新生徒会長がねハーレムを作ってるんだって!!」
「ええー!?なにそれぇ?どういうことぉww!?」「ゴホッ!!?カハッ!!ヤベッ」
ハー…レム?なにを言ってるんだこいつは?
というかむせてしまったじゃないか。許せませんよ、先輩。
急いでハンカチで口元を拭く。
「ちょ!大丈夫?詩穂?」
「ごめんねーお見苦しいところをみせちゃって♪ねねね、私にもその話聞かせてー?」
こうなったら全部聞いてあとで問い詰めてやる。
私も彼女たちの輪に加わることにした。
「詩穂も興味あるのー?そういえば新生徒会長と同じ部活だっけ?」
「うん、そうだよー。先輩はハーレムなんてがらじゃないと思うんだけどなー?」
「だよねーあの人、演説だとまじめそうだったじゃん!ハーレムって菊ちゃん、結局どういうことなのー?」
話を聞いてるもう一人の子も賛同した。
そうだ、先輩はクソチキンなのにそんなことできるだろうか。いや!できまい!(反語)
ところが菊ちゃんは得意げな顔をして立てた人差し指を左右に振りながら話を続けた。
「ちっ、ちっ、ちっ。お二人さん、確かに彼は演説の時は真面目そうでした。ですが!外面なんていくらでも取り繕えるもの!印象がなんであれ彼がやったことは変わりません!!!
私が聞くところによればなんでも、生徒会副会長とか書記とか会計に人気者の女子を指名してるんだって!!!」
なんだとー!!職権乱用じゃないかー!!
「えー!!なにそれ、信じられなーい!!」
「ふっふっふ、だけど事実なんです!!実際、私当事者に聞いてきましたから!
あっ、そういえば詩穂は誘われたの?」
「そんなのっ!!聞いて、ないっ!!私、先輩に誘われてないっ!!」
「ありゃー、ざんねーんwwふられちゃたねw」
二人はケラケラと奇抜な事実を面白おかしく笑っているが私はそれどころじゃない。
先輩、そんな人だったの!!!私、ショックです!!
「ね、ねえ。どんな人たちが勧誘されたの?てか了承してるの?」
「んー?ええと確かねー、同じく会長候補だった美人さんな秋葉先輩と、二年のマスコット的な里奈先輩に、英国美少女のカノン先輩、バスケ部に現れた新星の瀬那先輩に、件の先輩の妹で隣のクラスの雫ちゃんだったかなー
うわっ!こうしてあげるとやばいね!!」
節操なしじゃないですかー!?
どんだけ男子のヘイトを集めるんですかー!!!
「うわーまじぃー?皆、名前きいたことあるわー。てか、秋葉先輩って彼氏持ちじゃなかった!?
やばw略奪愛ー?はははwww」
「でもおもしろいことにねー皆、スカウト引きうけるかもだってー
なんでやろねー?顔?性格?」
「やっぱり、前からやり手で将来有望っぽかったんじゃね?未来志向的なー?
にしてもあの人案外、大胆な行動をとるんだね。私、裏切られた感じかもーww」
「勝手に裏切られてろしwwあれ?詩穂、どこ行くの?」
居ても立っても居られなくなり、席を立った。
どうせ先輩は今日の部活で会える。
ならば今は聞き込みだ。
「ちょっと聞きに行ってくる!となりに!」
「おー、いってらー。やっぱさ、詩穂悔しいのかな?」
「かもねー結構、部活に入れ込んでたし、もしかして…うふふ」
彼女たちはこの話題を誰かと話してとにかく面白がりたい様子。
まだ、私が教室を出ていないというのに私のことを話のタネにしてきた。
「そこっ!!聞こえてるぞ!!げすいた勘繰りはやめるんだ!」
ちょっと恥ずかしかったのでとりあえずのけん制。
まあ、けん制と言ってもやめないんだろうけど。
別にいいのだ。言って私がひとまずスッキリしたいだけだし。
「はーい、詩穂、がんばってなー」
ニヤニヤ笑う彼女たちは手をひらひらと振って私を送り出した。
余計なお世話だ!まったく。
隣のクラスの中を覗き見ると先輩の妹、雫ちゃんはすぐに見つかった。
すぐに彼女を判別できたのは噂や無自覚ドシスコンな先輩から聞いた人物像と一致しているように感じたからだ。
さっそく教室に踏み入り彼女に近づく。
「やっぱ、今期はあのアニメが覇権だって~ww」
眼鏡をかけている彼女は、片手には好物だというパックのリンゴジュースを持ちながら机に座っておとなしい印象を受けるオタクっぽい男の子数名とアニメについて語っていた。
先輩曰く、彼女は無類のサブカル好きでアニメに限らずなんでも手を出していて自分もオタクであると自負しているが彼女には遠く及ばないだとか、内弁慶気味だけど結構ちょろくて一度氷解すれば明るくていっしょに居て楽しい子だとか。(前に先輩に私とタメの妹がいると知って興味本位に聞いたらマシンガントーク始まりなかなか止まらなかったので私は心底、先輩に辟易した。)
「君、雫ちゃん?」「うきゃ!?」
つい、勢いのままに背後からズバッと名を尋ねた。
そのせいか、彼女は素っ頓狂な声を上げてリンゴジュースを握りつぶした。中身は入っていなかったようで液体が飛び散る事態は避けられたが。
周りの男の子たちは「うわっ、キラキラ女子だ…」「俺たちに…しいては二宮さんになんの用だ?」「ひ、光のオーラが眩しいw」と小声で話してる。なんかアウェーって感じ。
「ご、ごめんなさい。わた、私が二宮雫ですけど…なにか用ですか?」
先輩の言った通り彼女は人見知りのようだ。謎に敬語だし。目線は合わないし。
というか私も謎に力みがちだ。ここはいったん肩の力を抜いて…
しかしまあこうして近くでみると先輩の妹と思えないほどの端正な美少女だ。可愛い系の。
ほんの僅かしっかりと対面しただけなのになんか庇護欲が沸き上がるのを感じる。なるほど先輩もシスコンになるわけだ。
ふむふむ。勘違い男子大量生産機の通り名は伊達じゃないってわけね。
「え、あの、その、そんなに見られても…」
おっと、つい見入ってしまった。
「いきなり声をかけちゃったのに急に黙っちゃってごめんね♪私、園田詩穂。よろしくね♪」
彼女はなにか合点のいくことでもあったのか手を打つモーションを取ろうとして…やめた。
うーん、アイスブレイクには時間が掛かりそうだなー。
「よ、よろしくお願いします。園田さん。兄からはお噂はかねがね…」
おや?どうやら彼女は私のことを先輩経由で知ってるらしい。
なんだよーだったら話しかけてくれてもよかったのにー
「いえいえ、こちらこそ♪せんぱ、お兄さんは私のことをなんて言ってた?」
軽い雑談のつもりで聞いてみると彼女はもごもごと言いよどんだ。
これは選択を間違えたかな?
「そのー、兄が言ったことはちょっと失礼かもしれないんですけど…いいです…かね?」
「うん!全然いいよー♪」
失礼。雫ちゃんに変なこと吹き込んでたら生徒会の件を含めてけちょんけちょんにしてやる!
「めっちゃあざとくて隙見せたら骨抜きにしてきそうなやつだけど根はいいやつで可愛いもの好きだから困ったときに頼れば良くしてくれると思うぞ。と兄が!!兄が!言ってましった!」
まるで告白でもするかの如く耳を真っ赤にさせながら早口でまくし立てた。
「あはは♪やだなー。骨抜きになんてしませんよー♪」
「ははは…」
案の定、しょうもないこと吹き込みやがりましたね。
そこ!「確かにそれっぽいかも」「大事なことだから二回言いましたw」とか実況して楽しんでるんじゃない!!
「おほんっ!本題に入るけどちょーっと雫ちゃんに生徒会のことで聞きたいことがあってね♪少しいいかな?」
「私に答えられることなら…どうぞお聞きください。」
「じゃあ、雫ちゃんが生徒会に誘われたってほんと?」
彼女はこくりと小さくうなずいて返答した。
「まじか…」「あの、噂本当だったんだ…」という周りの男の子たちから声がちらほら上がった。
それにいつのまにか他の人たちも聞き耳を立てているようで周りに人が集まってきた。
ええーい、ままよ!
「他の誘われたメンバーってわかる?具体的には秋葉先輩、里奈先輩、カノン先輩、瀬那先輩も誘われてた?」
「ええーっと、私あんまり詳しくないけどこの前、兄が色んな知り合いらしき人を生徒会室に集めて勧誘してて、その時にちらっと聞いた名前がそうだったような、そうでもないような…?」
ざわっと今度は一気に教室が騒がしくなる。
「まじか、やべえな新生徒会長。」「勇者じゃん」
「その、誘われた子は生徒会に入るのかな?」
「たぶん…一人はわからないけどほとんどその場で…私も最初は拒否してたけどむっちゃ、推されて…」
この証言付きの特大スクープ報道の先駆者になろうと教室を飛び出す者。
まさかの事実を興奮気味に話し合う者。
新生徒会長の勇気ある蛮行を笑いながら褒めたたえる者。
様々な声が入り混じって、喧騒は騒がしさを増していく。
…本当に噂通りだったとは。
思わず目に手を当ててしまう。
いくらなんでも尾ひれがついたものだと思っていたが想像以上だった。
なにやってんだあのクソチキン!!!!!