ラブコメ展開に恵まれるけど告白されたら死に戻る呪いをかけられた   作:管章 眞曽

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一年生①

「おはようございます。蓮斗君、いますか?」

 

「あら、おはよう里奈ちゃん。ここんとこ毎日来てくれてありがとね。」

 

「いえいえ、私が好きでやってることなので。それで蓮斗君は…」

 

「それがごめんね。蓮斗はなんでも部活の朝練があるからって朝早くに出ちゃったわ。

付き合わせるのも悪いから今後は里奈ちゃん一人で行ってくれですって。わざわざ来てくれたのにすまないわね。」

 

「そうですか。ありがとうございます。にしても蓮斗君がサッカー部に入って、朝練をするほど熱心に取り組むだなんて。

ふふっ、何かに影響されたのかしら。」

 

「ほんと、驚きよ。高校デビューってやつかしら。最初からこんなに飛ばして三日坊主にならなければいいけど。」

 

「ははっ、でも蓮斗君はなんだかんだ真面目ですし、しっかりやるかもしれませんよ。それじゃあ私も学校に。失礼しました。」

 

「だといいわ。いってらっしゃい里奈ちゃん。」

 

「いってきます!」

 

 

 

 

 

 

 

対策として運動系の部活に入ってみた。万年インドア系の俺が、である。

 

二年生へと進級するために俺は様々な策を打ち出してきた。

例えば逆転の発想としてこちらから告白してみた。

告白されて死に戻るなら先手をうてば大丈夫ということである。

が、普通に死んだ。

こちらから告白すること自体はセーフなのだが「うん、実は私も…」だったり、「嬉しい、私も大好き」と返されると告白判定で死んだ。

 

ではと、もう少し踏み込んで脈がない時期にヒロイン相手に告白して振らせることで告白しづらくさせて封じよう作戦を立ててみたこともある。

 

我ながら妙案だと思い早速、秋葉や岩崎生徒会長に試してみたが結論から言えば失敗した。

作戦通り振られたのだが、後に「あの時はああ言ってしまったけれど実は…」や「ね、もう一回あの時の告白やり直さない?」と返されてしまった。

一度振った手前、告白はできまいと考えていたが女の子の勇気なめてたわ…。

しかも生徒会長相手にはお試し的感じで即オーケー(即死)されることもあった。

 

他の策として彼女がいると偽ってみた。

これはまあまあ効果があった。特にカノンや秋葉、生徒会長相手には適面でこの策を実行した周は夏休みまでの生存率が安定して高かった。

が嘘であることが義妹か里奈にどれほど足掻いても看破され、「嘘をつくほど欲しいなら私がなってあげるよ…?」と哀れみ半分、本心半分のはにかみ笑いの告白を前に死んだ。

 

これら以外に同性愛者であると偽ってみたり、告白されたら死に戻る呪いにかかってるんだと打ち明ける策を考案するも実行に際し激しい頭痛が起こり断念を余儀なくされた。

無理矢理実行したら死にそうなほどの痛みだった。

 

多くの策が破れる中でも運動部に入ることは一定の成果をあげた。

 

まずは里奈と一緒の登下校や他のヒロインとのデート等の約束を全て「ごめん、部活の練習があって…」だったり「レギュラーに選ばれるために今のうちからやっておきたくて…」と言ってキャンセルできるのが素晴らしい。

このおかげで好感度上昇を抑えつつ、告白イベントの排除が可能となり未だ試行回数は三回だけだが悪夢の高校一年突破が見えてきたのである。

というかここまでぞんざいに扱ってるのにまだ告白してくれるんだよね…。

ちょっと彼女たち健気すぎない?

 

こうして一筋の光明を見出した俺だがモテるためにサッカー部に入るやつは全国どこかしらにいるだろうが、モテないためにサッカー部に入るやつは俺くらいだろう。

しかし長年日陰者だった俺にとってキングオブ花形と思ってたサッカー部はかなり辛い。

 

うちの高校は結構部活に熱を入れており、サッカー部に入った運動未経験者は俺くらいだった。

最初はもちろん全然ついていけないし、周りから白い目で見られることもある。ちょっと恥ずかしかったりする。

さらに言えば部活を始めた当初こそダメダメから段々成長していく様に運動の喜びを感じてはいたがせっかく部活を頑張って体を鍛えても死に戻れば元通り。

また一からやり直しで毎回筋肉痛と動きのぎこちなさに辛くなる。

 

技術は消えない?あれは自分のコンディションに結びついて獲得するもので体がリセットされたらギャップを前に技術もクソもないよ。

少なくとも俺はそうだった。

 

「よし、こんなもんか」

 

活動に熱心な部活なので朝練はあるが毎日ではない。

今日はない日だが自主練だ。

人に好かれるのが大きなイベントによるものでなく日々の積み重ねであるように人に好かれないようにするのもその人との関係を少しでも薄くする毎日の不断の努力なのだ。

何言ってんだ?俺。

 

にしても朝練は登校して、着替えてっていう手間を考えると満足な時間を取るのは大変難しい。

世の部活動生はこのために朝早く起きて運動していたのかと思うと尊敬の念も絶えない。

 

「今は春だからいいけど夏と冬がなぁ。おへー、先を考えると嫌になっちゃうや」

 

朝練自体はいいけどやり過ぎれば汗をかいて日中、気持ち悪いし、疲れて眠ってしまうこともある。

まぁ学業に関しては何度もループしてるおかげで両立は簡単だーまあここにバンド活動も加わって地獄になるんだけどー。

かと言って調子に乗って学業で頭角を見せることはしない。

変に好感度を稼いでしまえばまずいからね。

 

「はぁ…。今日も変わり映えしない1日の始まりかぁ」

 

「またため息なんかついて。あなたの悪癖ね。直しなさい。」

 

「宮崎さん…。おはよう」

 

通常の登校時間になったらしい。

多くの人が玄関からやってきている。

 

「さん、をつけない。しかも名字だし。なに露骨に他人行儀をとってるのよ。

偽装だからこそしっかりしてもらわないと困るわ。疑われて付け込まれたらどうするの?」

 

「はいはい、おはよう。秋葉。」

 

「よろしい。いくわよ。」

 

そう俺はこの同級生、宮崎秋葉と偽の彼氏、彼女関係だ。

この関係に関しては俺がいかなる抵抗をしようと5、6月ごろに形成される、運命(既定路線)ってわけだ。

こうなってしまう経緯はこうだ。

 

まずは秋葉がひょんなことから俺がホライゾンのギタリストであることを知る。

そして俺を屋上ー普通、屋上って解放されてないと思うけどラブコメ補正なのか何故か入れるーに呼び出し、問い詰めてくるのだ。

 

このひょんなことってのは様々だ。

彼女が俺のスマホに映るSNS上のホライゾンの内的連絡グループを見てしまったり、まだ世に出ていないホライゾンの新曲情報を俺が持っていることに気づいたり、彼女の前でボーカルのeyeさんと電話して偶然スピーカーにしてたから漏れ出た声から特定されてしまったりなどなどだ。

 

スマホを家に置いてきたり持ち物をチェックしたりしてもどこかから言い逃れできない証拠を彼女は掴んでしまう。

持ってきてないはずのものがいつの間にかバックにあって彼女の目の前で落とすってパターンもあった。

そして生徒会長に知られるのもこんな感じだ。

生徒会長に関しては接点がほとんどないのにその数少ない接点でそれらのイベントが起こり確実に突き止められる。

流石に強制力高すぎだろ、運命さん。

 

そして彼女はそれを脅しのタネに偽装の恋人関係を結ぶことを迫ってくる。

当初彼女は偽装関係を結ぶことを自分があまりにモテすぎて告白されるのがウザくなってきた。と語った、要は男よけに利用するらしい。

(他になんかあるだろってのは禁句だ、一回言ってみたらマジ睨みされた。)

一見、尊大に聞こえるセリフだが実際マジでモテる。

女子にしては身長が高く、すらっとしていてどこか大人びた雰囲気が彼女にはある。

 

その証拠に大学生に間違えられて街中で読者モデルとしての出演を打診されたことが何度かあるらしい。

ほとんどはあんまり知らない怪しげなとことからの勧誘だったが、中には大手からもあったと彼女は自慢げに語ってくれた。

 

「ふふっ」

 

多分彼女は自覚していないのだろうが満足げに鼻を鳴らして連れ立って教室に向かう。

曰く望むらくは登下校も一緒だという。

が、行く方向が違うのでせめて玄関から教室までは同行しよう、そう、アピールのためにね!だとか。

確かに俺は秋葉の相手役としては釣り合わないのかもしれないがなにもここまでしなくていいだろって感じだ。

 

実は秋葉には別の思惑があったのだ。

冬ごろに秋葉が俺に告白する(トドメをさす)前に語ってくれたことには

実は秋葉と俺は前にあってるらしい。

まさかの彼女も幼馴染

呪いさんは幼馴染が勝つラブコメをお望みのご様子。くたばれ、クソカース。

閑話休題。

 

『実は私、小学校5年生の頃かな?それくらいから貴方のことが好きだったの。貴方が1年後に転校してしまった後も想ってたわ。』

『残念ながら貴方は覚えてなかったみたいだけど。入学式の時のクラス表でずっと私の心に居座ってた名前を見つけた時には胸が高鳴って、頬が紅潮したのを覚えてるわ。しかも今朝にぶつかった子だなんて。まるで運命みたいじゃない?』

 

舞台はバレンタインデーの夕暮れ、人が出払った教室。

呼び出しをくらい、あぁ、今周もダメだったか…と悲嘆に暮れていたが、語られた真実、一途さ、夕日に照らさられた彼女の顔は恥ずかしさからか真っ赤に染まっていて、それを見た俺は思わず呪いのことなんか忘れて見惚れてしまった。

ギャップが凄すぎる。

普段、高慢とまでは言わないが勝ち気な彼女が見ていて胸が締まる乙女の表情で告白する姿は破壊力が高すぎたのである。

 

『本当は貴方に気づいてもらってからと思ってたけど、埒があかないから私から言うわ…その、えっと…す、す…っっ!好きです!本当の恋人になってk』

 

それで彼女の告白にいざ、応えん!としたら一瞬意識が落ちて、入学式の朝。

呪いのことが頭から抜け落ちていただけに流石に萎えたよね。

だって再び出会った秋葉は俺の知ってる秋葉に完全一致じゃないもんね。

あったはずの絆の消失ってのもなかなかに堪えるものだ。

ちなみに秋葉の慕情が判明した次周に転校する前に在籍していた小学校でもらった寄せ書きを見ると宮崎秋葉の名前があった。

それにしても本当に

 

「(健気だなぁ…」

 

「なんか言った?」

 

「いや、なんでもないさ。」

 

つい漏れ出てしまった。

普通、小学生の頃の恋なんて高校まで引っ張るかしら。

いや、俺は恋バナする相手が多くなかったから人の恋愛事情は知らないんだけど。

まぁじで俺なんかには勿体無い。

む…!それぞれに似合った人をくっつけてみるって作戦はどうだろうか。

妙案かもしれない。俺にそれを実行できるほどの人脈とコミュ力がないことを除けば。

 

「なぁ、秋葉。君、他に気になる人とかいないの?」

 

「何よ。急に」

 

「いや、わざわざ偽装をしなくても本当の恋人になれば解決だろ?それに俺、部活とかアレで忙しいからさ。

あんまり役目を果たせないと思うんだよ。だからさ」

 

「はぁ…あんまり私達の関係について話題に出さないでよ。聞かれるかもしれないでしょ。

マヌケ。私もため息ついちゃった。別に大丈夫よ。それに…私は、その、素敵だと思うわ、貴方のそういう頑張るところ。」

 

「ちょ、秋葉さんや、それじゃあ…」

 

俺が偽装彼氏である意味の回答になってないぜ…

そう言おうとして口をつぐんだ。

自分で言っておきながら顔を背けるも耳が赤みを帯びている秋葉を見るとちょっとこっちまで照れてきちゃう。

マジで?俺、こんな良い子を三年間袖にしないといけないの?

キツすぎだぜ。

そうこう照れあってるうちに教室についた。

うちの教室、無駄に遠いんだよな…。

 

「おはよう、逆玉の輿ボーイ。全く羨ましい限りだよな、おい」

 

「おはよう、ハッサク。君も彼女を作るといい」

 

「かぁ〜!上から目線で言いやがって!はよ、フラレちまえ!俺に残念会を催させろ!」

 

彼は友井八朔。

高校からの友達だが彼とは気が合うのかどの周でも彼とは親交が深い。

ありがたい存在だ。

友人がいるとイベントをスルーしやすくて大変助かる。

俺の生存率の三割は彼によるものだ。

まじオアシス。

 

「おはよう、蓮斗君。朝練とか色々お疲れ様」

 

「おはよう、里奈。朝はごめんな。聞いてるかもしれないけど今後はそういうことでよろしく」

 

「うん、ちょっと寂しくなるけどね」

 

そういって彼女は本当に寂しそうな表情を浮かべる。

里奈は昔から表情にでやすいタイプでしかも感情豊かなのでコロコロと変わっていく表情に癒されると女子からも男子からも大人気だ。

 

ちなみに彼女は俺と秋葉の関係が偽装であることを知ってる。

俺と秋葉が付き合ってるという噂が広まり始めた時に家にまできて焦燥や悲しみ、絶望感を顔いっぱいに浮かべ、目尻に涙をたたえながら聞いてきたので思わず話してしまった。(後から秋葉に事情を話したら無茶苦茶ドヤされた)

 

偽装であることをを話すとリアルにパヤァという擬音が聞こえるほど表情を変えて「そうだったんだぁ!」と言って笑顔になった。

だから『色々』ってのは秋葉とのことを濁して指しているのだろうと思われる。

なんでお疲れ様?まぁいいか。

 

「おっ?なんだお前、女の子をとっかえひっかえってか。お前がか!?お前でそのムーブができるのか!?俺とお前の差はなんなんだ!」

 

「とっかえひっかえいうな。失礼だろ、俺以外に。ツゥかナチュラルにバカにしやがって、まぁ完全に否定できないんだけど」

 

「ははは…」

 

里奈も乾いた笑いを浮かべてしまっている。

非難を込めた目線をハッサクに送る。

 

「へへっ、親愛を込めたイジリだと理解してくれたまえ」

 

キンコーンカーンコーン

と予鈴のベルがなる。

 

「おっ、もう予鈴か。お前らも座ったほうがいいぜ。最近のうちの担任、ガチで時間にうるさいからな。めんどくさいことこの上ないぜ」

 

「りょーかい」

 

俺の席がある窓際の下部(いわゆるラブコメ主人公席ってやつだ、別にアニメじゃないのにな)に向かおうとすると里奈に声をかけられた。

 

「ねぇ、蓮斗君。今度、お夕飯一緒に食べよう。いいよね」

 

不思議と、うまく言語化ができないけどいつものふわふわしたのと違う何か圧がある、有無を言わせないような気迫?ーちょっとオーバーな表現かもしれないーそんな感じで聞かれたので、つい俺は

 

「お、おう。そん時はよろしく」

 

と答えてしまった。

告白回避のために交流は可能な限り控えめにするのがいいのだけどなんか断りづらかった!ド失礼だけどちょっと怖い!

 

「うん!私、最近また料理上手くなったから楽しみにしといてね!」

 

さっきまでの雰囲気が嘘だったように霧散していつもの感じに戻った。

う〜ん俺の勘違い、考えすぎか。

 

一限はガシッとした先生だからちょっと寝づらい。

寝るとしたら二限か五限だな。

今日もまた何度も聞いた授業を受けると思うと一層嫌になる。

未だ5月。俺の戦いはこれからだ!ってな

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