ラブコメ展開に恵まれるけど告白されたら死に戻る呪いをかけられた 作:管章 眞曽
「ふぅ…つーかれたっ!」
風呂上がりで濡れた髪を拭くのもそこそこにベットに飛び込む。
朝練、クソダルい授業詰め合わせ、そして部活。
自分で選んだ道とはいえ、なかなかにヘヴィーだぜ。
半年経ったのに未だ筋肉痛が体の各部位で発生するわ、1日の終わりには疲れ切って動けなくなるわで本当に三年間この生活を続けられるのかしら。
しかしその頑張りの分、呪いの方は至って順調である。
夏休み、体育祭、文化祭とイベントを何事もなく乗り越え、ヒロインたちとの仲は程よく停滞気味。
…自分でもちょっとないわってレベルで終わってるムーブである。
あのハッサクですら部活もいいけど他の青春も楽しむといいと思うぞ、うん。というくらいだ。
正直心が痛まない訳ではないが仕方がないというやつだ。
申し訳ねぇ…
「俺まだ高校一年しか体験してないし、もしかしたら高校二年の頃には愛想をつかして思ったより楽に三年をやりとげられるかもしれない!
よっしっ!やる気がでてきた!」
ピロン♪
「ん?」
どうやら誰かがSNSでメッセージを送ってきたらしい。
「げ、会長からだ」
『明後日、日曜お茶をしようじゃないか。もちろん奢るので気兼ねなく来てくれ』
現生徒会長岩崎咲良、入学以来定期テストでは首位をキープし続け、所属する剣道部ではなんと高校まで未経験であったにもかかわらず、個人戦、県大会優勝という華々しい成績をおさめ、文武両道を体現しつつも高校二年で複数名候補がいるなか生徒会長選出選挙で支持率70%と圧勝して生徒会長に就任した傑物。
友好関係がせまく、噂等の情報網が貧弱な俺でさえ彼女にまつわる数多くの逸話を聞く。
そんな人と俺がお茶?
数えるのをやめたから正確にはわからないが何十周としてこれは初めての出来事だ。
会話が続けられるかが心配。
別世界過ぎて何話せばいいのかまったくわからんぞ。
わからないでいえば岩崎先輩自体もよくわからない。
死に戻りによって繰り返さられる日常ではほぼすべての人がほぼ同じような行動が繰り返される。
特に俺とかかわりがない人はその傾向が顕著でたとえば校長先生は毎周おなじ内容のことを話す。
逆に俺とかかわりがある人は俺の行動の影響なのか多少動きが変わる。
でも岩崎先輩は比較的俺との接触が少ないのに毎周とる動きに結構差がある。
唯一、ホライゾンのギタリストであることがバレるのはどの周でも共通してる。
さらに言えば岩崎先輩も頻度こそ少ないが
だけれども彼女に好かれる理由が思いつかない。
毎回いきなり告白されて理由を聞く前に戻ってきてしまうのだ。
俺はただ彼女が好きなバンドのギタリスト。
しかもネット上でRenとして我をだしたことはない。
本が好きだからって作者を恋愛的に好きになるやつはいないとは言えないのかもしれないけどほぼ皆無だろう。
もしかしたら彼女は俺の呪いの黒幕…?
「はっ、ありえないだろ。馬鹿が。突拍子なこと考えやがって」
確かに俺に起こってることは摩訶不思議ファンタジーなのかもしれないが周りはいたって普通の現実だ。
光る赤子もダンジョンも異世界からの侵略者もいない。
もしかしたら秘匿されてるのかもしれないがそんな状況で岩崎先輩に呪いの黒幕か?とつめよってもキチガイ扱いされて終わりだ。
そもそも頭痛で話せないかもしれないし。
まあなんにせよ、せっかくのご厚意だが下手に好感度稼ぎたくないし、楽しい時間を提供できる自信もないしお断りをいれよう。
『お誘いありがとうございます。ですが残念なことにその日は部活が入ってまs
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『君がその日部活がないことは確認済みだ。おそらく都合があうと思うのだがどうだろう。』
「おぉう…」
なぜばれたし
待ち合わせに指定された場所は最近改修された駅前の公園だ。
正直帰りたくなってきた。
そう思ったのは待ち合わせ場所で岩崎先輩見つけた瞬間からだ。
もう存在感が違った。
バシッと決まった服装に身を包んだ先輩は文庫本を片手にベンチに座って本を読んでいた。
今、まさにやってみせた髪をかき上げるしぐさとかたいそう画になるのだ。写真撮ったら絵画になっちゃいそうである。
緑あふれる公園と調和しすぎている。
そしてそんな空間に突っ込もうとするとんだ愚か者は母親セレクトの服装。
泣きたい。恥ずかしい!!この日ほどファッションに無頓着な自分を悔いた日はないだろう。
…はぁ、泣き言を言っても仕方がない。
全部俺が悪い、覚悟を決めろ。
「すみません、先輩おまたせしました。」
意を決して聖域に踏み入り、声をかける。
「やあ、よく来てくれたね。君に会うのを楽しみにしていたよ。」
文庫本を閉じ、しまう姿ですら画にみえる。
先輩のオーラに気圧されるなぁ…。
なんでも全肯定してしまいそうである。
「本日はお招きいただー」
「おっと、そういうかしこまった言葉はナシだ。今日はなにも気負わず…といってもちょっと難しいかもしれないね。
じゃあ今日はボクに君と出会えたことのお礼をさせてくれよ。そのなかでボクに親しみを抱いてくれればうれしい。」
「は、はぁ…」
ちょっとかっこつけたような言葉でも似合うんだからすごい人である。
「それじゃあ、いこうか。最近見つけたカフェでね。なかなか風情があるところなんだ。いつか誰かと行きたいと思っててたところに君をこうして連れていく機会に恵まれて心が弾むね。」
やばい!俺が言えた義理じゃないのかもしれないけどこの人、極度の人たらしだ!
こんな明らかに〝上〟って感じの人だったり権威ある人に肯定されるようなこと言われたらその人を好きになっちゃう現象だ!
コロッと堕ちちゃう!
恐るべし。支持率70%の女。
「いらっしゃいませ。何名様ですか?」
「二名です。」
駅からここまでまあまあ歩いたはずだが先輩が話し上手、聞き上手なおかげで気まずい移動時間にならなかった。
当初、懸念していた場を繋げられるかという悩みは杞憂に終わりそうである。
先輩と共にやってきたカフェはオシャレとしか言えない。
死に戻りのせいで周りより生きた時間は長いはずなのに自分に縁がなかった場所に対しオシャレとしか形容できない自分が恨めしい。
ファミレスの画一的なテーブルやソファ、イスと異なる木材や、知らない植物?(化学繊維なのかもしれないが)が用いられらた一つ、一つ個性あるテーブルやイスが店の中にゆとりをもって並べられていた。
あえて言うならスタバの上位互換的空間だろうか。
オシャレ語彙力、カスか?
「もしかしてあんまりカフェとかに足は運ばないのかな?」
物珍しさからキョロキョロあたりを見回したのをばれてしまった。お恥ずかしい。
「はい、あんまりこういう所には。行ってもスタバくらいで…ははは」
「君は部活に精を出す育ち盛りの男の子だからね。やっぱりラーメン屋とかによく行くのかい?」
「ええ、まあ。割と行きますね。」
「へぇー!やっぱり注文の時に野菜マシマシだが油がなんだかとかいうのかい?
あっでもこれはじろー系?というものだったか。ラーメンには色々なものがあると聞く。
君は何系に行くの?」
「まぁ家系ってやつですかね。けっこうコッテリめで満腹になりやすく比較的安いことが多いんで家系の店は重宝してます。」
「家系ね。聞いたことがあるよ。よくボクの級友の男子達が放課後どこそこの店に行こうと話していてね、前からボクは興味を抱いてたのだがよかったら君がよく行くという店に連れててってくれよ。
放課後とかどうだい?ボクも部活やら、生徒会やらで君と放課後の時間はあうと思うんだが。」
「了解です。俺でよければ。」
「ふふっ了承してくれてありがとう。放課後ラーメン、ボクのひそかな憧れだったんだ。」
とまあこんな感じで先輩は会話の中から共通の話題を見つけては時に質問をして話を広げる。
相手の返答に対し興味ありげに応じてくれるのでそりゃあ話してる側からしたら楽しくてしかたがないだろう。
一周目の俺だったら今頃ガチで惚れてるに違いない。
なんだったら何十周としたら俺でも惚れそうだ。
まっ、告白したら死ぬかもしれないんですけどね!
はっはっはっ…はぁ…。
呪いさえなければなぁ。
「さて何か頼もうか。ここはけっこう料理もおいしくてね。
しかもけっこう量があるんだ。君には少し足りないかもしれないけどね。遠慮なくなの好きなのを選んでくれ。」
先輩から手渡されたメニュー表を見ると思ったよりわかるメニューが並んでた。
こういうところは見知らぬ単語とカタカナ語の羅列の解読から始まるのかと思いきやここは俺みたいなイモにも優しいらしい。
しかし値段は…うーんどうなのだろう?
確かに俺がよく行く飲食店に比べたら少し高めだが無茶苦茶に高いってわけではない。
「頼むものに迷うならこのパスタなんかおすすめだよ。
ボクは前に食べたのだがおいしいし、何より思ったより腹にたまる。」
先輩は身を乗り出して君にあったものはこれだ!といわんばかりに少し得意げに教えてくれた。
ちょっとご尊顔が近すぎます…。惚れちゃうからやめてくれ~^
「あ、ありがとうございます。ではこれで。」
飲み物はっ…と。
まぁお冷で…いや待て。
こういうところでお冷を頼むのは引かれる行動だと聞いたぞ。
周りを見ればお冷頼んでる人なんか一人もいない。
なんか頼むか。でもたっかいなぁ。
一杯で300円かぁ。
こう思っちゃうあたりやはり俺はここに合わないのだろう。
「飲み物はこのダージリンティーで」
とりあえず名前を聞いたことがあるものを選んでみた。
俺が普段行く店と違ってメニューにはウーロン茶や麦茶はなく、おそらく紅茶らしき多種多様なお茶があった。
そこにはやれ香り高いとか、特殊な製法うんぬんかんぬんが書かれてたが多分違いは分からないし、なに飲んでもうん、なんか上品!しかでないだろう。
食の語彙力もカスです。
ここに来てすみません。
「わかったよ。すみません、注文をしたいのですがー」
言っておいてなんだけど引かれるならそれに越したことはないのでは?
先輩のカリスマにのまれて思わず嫌われないような行動をとってしまった。
やっちまったな。今から注文を取り消してー
…うん、まあ今日くらいはいいや。
先輩に告白されるパターンなんかごく少数だし。
今日で再認識したけどこんな素敵な人なのに俺に告白するとかちょっとおかしいわ。
気にせず今日は楽しもー!
おはよう、世界。
くたばれ、クソカース。
「4月8日…また戻っちまった、ちくしょー」
起きてすぐ脇にあるスマホを起動して見れば何十、何百ーはまだかもしれないがーと過ごした日付を映し出していた。
あの後俺は
今回も唐突のことだった。
『自慢になるけどボクはそれなりにお金を持ってる。
さらに友人と遊びに行くとありがたいことに奢ってくれることが多くてね。それで母が減らないボクの貯金額に呆れてるんだ。だからここはボクを助けると思って払わせてくれ。』
というご厚意に甘えさせていただき奢ってもらって店を退店し、食休みに駅への帰り道にあった公園のベンチで休んでたら、告白された。
今回もまた理由を聞けず仕舞いだ。
いったいどういうことなんだ。なぜ俺に告白する?いったいいつから俺を好きになったんだ?
また隠された幼馴染かと思ったが岩崎咲良という名前は聞いたことない。
となれば彼女とかかわることになるきっかけ、ホライゾンあたりか…?
でも彼女との会話で一度もホライゾンに関することは話題にあがらなかった。
それどころかどの周でもだ。
「だぁー!!わからん!!もうっ!そんなのはどうでもいい!」
どうせ惚れられた理由を考えたって意味がない。
大事なのは告白を回避すること、その一点。
だけど原因がわからなくちゃ対処ができねぇ…。
「はぁ…。さすがに嫌になってきたな。」
また1からかぁ…。
わりと頑張ったつもりなんだけどね。
ガン萎えのあまり、泣き言をいいながらベットの上を何往復も転がりまわる。
「ちょっと、お兄ちゃんなにしてるの?今日、入学式でしょ?」
「雫か…。いつも言うがノックくらいしろ。」
ノックもせずに男の部屋に入ってきた不届き者は二宮雫、6年前にできた一つ下の義妹だ。
「とうっ!別にいいじゃーん♪私とお兄ちゃんの仲なんだからさ。
それとも何?急に入ってこられたら困るナニでもあるの?ふふっ、ぐフフフ♪」
部屋に入ってきてからこちらに駆け寄ってきてベットに飛び込み抱き着いてくる。
兄妹関係になって最初の頃はずいぶんと距離感があったが段々雫の俺への警戒心が薄れてきたのか会話も増え、一緒にお出かけに行くようになり、5年も経てば懐かれるようになった。
というか距離感がすごい近くなりスキンシップも増えた。よその兄弟と比べても異常なほどに。
雫の父は多忙で昔から雫に構えなかったという。
そんな折に最愛の母を失い雫は心を閉ざしていた。
最初は声をかけても無視されたり部屋に閉じこもっていたりとなかなか上手くいかなかった。
でも根気よく会話を試みたり自分で言うのもなんだが細やかな気遣いをしてきたおかげか雫は心を開き家族として認めてくれた。
俺はそのことを大変うれしく思って血のつながりこそないとは言え、兄なりに妹を溺愛した。
それはもう、なんでも全肯定!頼まれたことは即、全力に!って感じだ。
しかし雫からは「お兄ちゃん、流石に暑苦しいよ、端的に言えばウザい」と不評だったほどだ。
反省します…
両親は再婚して5年は家にいるようにしていたが俺と雫の仲が深まったのを見て、安心したかのようにラブコメ主人公のお約束のように家を空けることが多くなった。
ループして最初の頃の俺は、雫はきっと実の母を亡くすという悲しい経験をした上に親がいないこの環境で人が恋しいのだろうと思いそんな両親の分まで家族としてスキンシップを受け止め雫にかまってたのだが…。
結果的に言えばおそらく里奈、カノンにつぐ三番目の死因だ。
兄妹なのに!相手は中学生なのに!
「なに言ってんだ、てめぇは。」
「いでっ!デコピンするな!DV反対!」
「いいから、離れろ。朝の準備するから。」
「えぇ~。高校生活が不安でおびえてるであろうお兄ちゃんをハグのリラックス作用で慰めてあげてたのにぃ?」
「はいはい、もう効果バツグン。オレシッカリガンバレル。もう十分だ。」
「それはなにより♪」
抱き着く妹を振り払い、準備してある制服を手に取る。
「おい、部屋から出てくれ。着替えられん。」
「なに妹相手に恥ずかしがってんだよっ♪さっさとやっちゃえよっ♪」
「あほか、からかうんじゃない」
「はーい♪」
ようやく撃退完了だ。
父さんから雫はドがつく甘えん坊だとは聞いたが(ド甘えん坊ってなんだよ)どの周でも一苦労だ。
かわいくてついかまってあげたくなることには違いないけど。
むちゃくちゃにからかってくるし。
これも彼女なりのスキンシップなのだろうが。
「だけど部活やってあいつを寂しくさせてしまうのもなぁ…。」
部活で逃げる策の一番の弊害はこれだ。
俺の都合のために辛い思いをさせてしまっている。
前々周にあまりの酷さに泣きつかれたこともあった。
「だからリスクがあるとはいえ承知でうけとめてやるべきなのかもしれん。」
いくら俺にそうするだけの理由があっても見過ごせないものはある。
既に相当な悪行をつんでるが。
「ふぅー今周こそだ。前を向かなきゃ正しく進めない。ファイト!オレ」
制服を着終えた俺は決意を新たに自室の扉を開いた。
「やべっ、バック忘れた」
二宮蓮斗、16+α歳。
入学式何度も経験したから飽きたぜ!っていう割には持ち物を忘れる。
詰めが甘すぎるんだよ、俺!