ラブコメ展開に恵まれるけど告白されたら死に戻る呪いをかけられた   作:管章 眞曽

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二年生①後編

「先輩、最近は自主練してないんですか。」

 

私、怒ってますと言わんばかりにムスッとした表情で最近できた念願の後輩、園田詩穂は聞いてきた。

帰り道が同じということで部活がある日は一緒に帰っている。

校門集合なのは許してください、俺君メンタルそんなに強くないです。

 

一緒に帰って友達とかに噂されたら恥ずかしいし…

サッカー部に同学年の友達いないんですけど!HAHAHAHA

閑話休題。

 

「いや、別にしてないわけじゃないけど。筋トレとか走り込みとか。」

 

ほらっ!と腕をL字にして自主練をサボっていないことをアピール。

あの衝撃の告白からなんとなくあの公園で自主練することは恥ずかしくなってきた。

ここ数日は河川敷や遠くの運動公園にでむいて練習している。

 

「はぁ…走り込みならまだしも、腕を鍛えてどうするんです。あまり詳しくないですけど。

それに先輩に今、一番足りていないのはパスや周りを見る技術じゃないんですか。特にシュート練習。」

 

「うっ、ごもっともです…」

 

でも最近の風潮の中、公園で大手をふるってボールを蹴とばすことはできないし、部活ではパス練習はできてもゴールを使えることは滅多にない。

運動公園は遠いし。

 

「先輩は努力の方向音痴すぎます。もっと正しい努力をすればきっと…

しょ、しょうがないですね!今から私が付き合ってあげます!弱すぎてライバルがいない先輩への哀れみです!」

 

今日は午前授業でそれに応じ部活もいつもより早めに終わったので時間はあった。

 

「おいおい、本当か?そりゃ、ありがたいけどなにもマネージャーだからって俺にここまでしなくても。」

 

「っっっ!うるさいですね!ありがたく受け取っておけばいいんです!この私の、ご温情を!」

 

「ははー、ありがたき幸せでございます。詩穂様ー。」

 

「うむ、よきにはからえー。じゃ、私も準備してくるんで先輩もその間に準備しておいてください。

では、またいつもの公園で♪」

 

彼女は堂にいったウインクをして去っていった。

どうでもいいけどたぶんよきにはからえって違うと思うんですけど。クソどうでもいいな、おい。

 

 

 

 

 

 

家に帰り、着替えて、最近購入した制汗剤をかけてみる。

どれほど吹き付ければいいのかしら?

やり過ぎてなに下手にきづかってるんすかww鬼うけるんですけど~とか言われたら俺はたぶんひとたまりもない(被害妄想)

とりあえず程々にしておいて駆け足で公園にむかう。またせたら悪いし。

 

俺が公園についても彼女はまだ居なかった。

やはり女の子は色々と準備があるのだろう。

とりあえずリフティングをしながら待ってみる。

 

これでも連続で20回できるくらいに成長はしたのだ。大躍進である。

ちなみにこれが実践で発揮されたことはないしなんならリフティングがサッカーの上手さに直結するのか疑問である。

体育の授業のテストでやらされた記憶があるからやってみたんですけどね。

詩穂の言う通り努力が方向音痴なのかも。

 

「お待たせしました!」

 

無様にもリフティングに失敗して転がっていったボールを子供のように中腰で追いかけていた時に声がかかる。

いやん、恥ずかしい。

 

着替えたのであろう汚れひとつないジャージに身をつつみ、髪をさらりと整え、スポーツドリンクを二本脇に抱えながら登場した。

 

「はい、これどうぞ♪」

 

抱えていた二本のスポーツドリンクのうち、一本を手渡してきた。

 

「おおう、悪いな。えっと…」

 

「お金はいりませんよ。お父さんが大量に買ってあったのからパクったんで。」

 

「おいおい…」

 

親父さん、申し訳ないです!うちの後輩がほんと!…ん?

 

「気にしないでください。お父さん、ランニングを始めるからって買ったのに結局一か月も経たずやめちゃったんで。その名残です。」

 

手のひらを額にあてて、ほんと、うちのやつらは…!とつぶやく詩穂。

君もその家の子でしょうが。

 

「それじゃあ、はじめましょうか!」

 

公園で遊ぶ他の子たちの邪魔にならないように公園の端により、練習をはじめる。

 

「さあ、どんとこい、です!」

 

と意気込んでいる詩穂。

一抹の不安を感じながらボールを優しく蹴りだす。

 

「おっ、ほっ!よしっ!いきますよー!それ!」

 

すこしぎこちない動きでボールをとめた詩穂は止めたボールを狙いをさだめ蹴りだす。

蹴りだしたボールはボテッボテッボテと転がっていく。

まるでゴールを目前とした普段運動しないマラソンランナーのように勢いが弱まっていき俺のもとにたどり着いた時には勢いが消えかけていた。

 

「いくぞー」

 

そのボールをとめて3,4歩前に進んでからボールをけりだす。

さっきと同じ威力で彼女のもとにボールがいくようにしたのだが彼女は捕らえられず、すり抜けていってしまう。

 

「ありゃ!?すみません、とってきまーす!」

 

彼女はボールを追いかけて走っていった。

うん、まあそりゃそうか。未経験だもんな。

詩穂はボールを手に持ち戻ってきて、地面にボールを置き再び蹴りだした。

 

と最初はこのように失敗もありぐだぐだであったが15分も経てば彼女は要領がいいのかスムーズにポンポンできるようになっていった。

 

「よっ、ほっ、えいっ!どうです!先輩、私うまくありません?」

 

「そうだな、うまいうまい。この短時間でよくできるな。」

 

「へへーん♪そうでしょー♪」

 

自慢気に笑う詩穂。あら、あざとい。

それから俺たちは10分程度そんなパスのうち合いをしていたのだが、

 

「なあ」

 

「なんですかー?」

 

「つき合わせておいてこんなことをいうのはあれなんだけどさ」

 

「はい?」

 

「ちょっと…練習にならなくね?」

 

「…気づいてしまいしたか。私も薄々感じていました。これ、私が楽しいだけだわって。」

 

このまま続けるのも偽善をさせてるようでお互いに悪いのでつい、言ってしまったが失言だったかもしれん。

肩どころか上半身を落として、私、ショックです!を全身で表現する詩穂。

 

「じゃ、じゃあ、こういうのはどうだ?詩穂が全力でボールを蹴り飛ばして俺がそれをトラップするの。

そうしたら練習になるとおもう。うん、きっと。絶対!」

 

「…!それいいですね!先輩、天才!」

 

名案だ!と言わんばかりに指を鳴らす動作をする、よかった。立ち直ってくれたようである。

 

「よぉし!くらえ!」

 

詩穂は助走をつけ走り、ボールの前でピタッと止まり(!?)蹴りとばした!

くらえって…

 

「うおっと、ありゃ」

 

しかし蹴りだしたボールはあさっての方向に飛んでいってしまった。

 

「わわわっ!先輩ごめんなさい!」

 

「大丈夫!大丈夫!気にするな。これもいい練習になる。」

 

自分にできる精一杯のフォローをして飛んで行ったボールになるべく早く走っていく。

公園で遊んでいた小学校低学年の子たちに謝りつつ、ボールをとって走って戻った。

 

「まあ、おおそれたところに飛ばさなければ問題ない。気負わずやってくれ。

それと助走は無理につけなくていいからな。」

 

「はーい、気をつけます。」

 

詩穂へボールを転がしてトラップ練習を再開した。

一時間ほど続け、オレンジ色の夕焼けが公園を照らし始めたころに詩穂が休憩を申し出たので俺たちはベンチに座ってさっきもらったスポーツドリンクで一服をとった。

 

「すみません…あまり力になれなくて…」

 

うなだれる詩穂。責任感が強い子だなあ。

 

「はは、そんなことないさ。少なくとも俺一人じゃできない、新鮮でいい練習ができた。」

 

「そうですか、ならよかったです♪」

 

と思えばさっきのは噓だったように成功だ!と笑顔を咲かせて見せてくれた。

里奈ほどではないが表情がコロコロ変わっておもしろい子である。

などと歓談を楽しんでいると足元にサッカーボールが転がってきた。

 

「すみませーん」

 

とりあえずボールを拾ってみると男の子がやってきた。

どうやらあの子たちのボールのようだ。

 

「はい、どうぞ」

 

「ありがとう!お兄ちゃんたちもサッカーやってたの?」

 

「うん。そうだよ。」

 

そう答えるとサッカー楽しいよね!と無邪気に笑った。

あらかわいい。

 

「かわいらしいですねー」

 

どうやら詩穂もそう思ってるようだ。

俺にもこんな時期があったはずだけどいったい。いつこの可愛さを失ったんだろうね。

 

「ねえねえ、サッカーもでーと?になるの?」

 

などとくだらないことを考えてたら突然の質問が飛び出て思わずむせてしまった。

 

「えっと、どうしてそう思ったの?」

 

詩穂が気のせいかいつもより固い表情でそう聞いた。

 

「あのねー、このまえねーママが見てたドラマでね、こいびとの二人がね、でーとがつまらなかったってわかれちゃったの。それでね、ママがしょうらいでーとするときは女の子をあきさせちゃだめよっていってたの。

ぼくはサッカーがすきだけど、でーとにはだめなのかなーって」

 

男の子はまだ見ぬ世界を案じるような悲し気な表情で答えた。

なるほど、子供なりの純粋な疑問である。

恋愛ってむずかしいわねー蛙化現象だとかなんとかとか怖いわよねー

 

詩穂はベンチを立ち、男の子の前でしゃがみ目線をあわせて答えた。

 

「うーん、私もはっきりとは言えないけどね、私たちはやってて楽しかったよ、サッカー。だから気持ち次第じゃないかな?

悲しいけどデートにサッカーってなったら嫌がっちゃう子もいるかもしれない。

君のそうやって相手を思いやろうとする優しさがあればきっと大丈夫。女の子をデートで飽きさせることはないよ。」

 

慈しみにあふれた目で目線をあわせ優しい声色で返された答えに男の子は納得したらしい。

 

「うん!ありがとう!おねえちゃん!」

 

「おーい、なにしてんだよ。はやくサッカーやろうぜ!」

 

一緒に遊んでいる子供たちからの催促が飛んできた。

 

「はーい!いまいくー!じゃあねー!お兄ちゃん!お姉ちゃん!なかよくねー!」

 

「じゃあねー♪」

 

と元気よく去っていた男の子に俺も手を振って見送った。

 

「むっちゃいい答えだったな。あの子の聞きたいことにも悩みの本質も解決して。」

 

「まあ、私ちょうどあの子くらいの弟がいるので。」

 

いまだ慈しみをたたえる目であの子たちをみつめながら答えた。

なるほど弟がいるのか。

あの慣れ切ったムーブ、たぶん俺があの子くらいの年に詩穂に会ったら初恋うばわれてるね。

 

「…先輩、今日はお力になれずすみません。」

 

いきなりこちらを向いて頭を下げてきた。

 

「いやいや!そんなことないって!むちゃくちゃありがたかったよ!むしろ今度お礼させてくれ!」

 

「いえ、そういう話ではなく。でもお礼はありがたく受け取っときます。楽しみにしてますね♪」

 

「お、おう?期待しててくれ。じゃあいったいどういうことなんだ。」

 

「練習する前に想像していたより力になれなかったってことです。これでは園田詩穂の名折れです。」

 

「????名折れ…?なのか?」

 

「はい、そうです。

そ、こ、で!違うアプローチで先輩を応援します!」

 

「ほほーん。で?そのアプローチは?」

 

ふふん!と胸を張りもったいぶるようにして彼女は答えた。

 

「先輩が試合に出る…いえ、ベンチ入りできたらこの私てづから、いいことをしてあげます。」

 

「は、はぁ…いいこと」

 

もったいぶったわりにはずいぶんあいまいな話に困惑を隠せない。

 

「ええ!いいことです!詳しくは話せませんが、先輩なら泣いて喜ぶでしょう!」

 

「そんなに?」

 

「はい!私が保証します!あっ、言っておきますが健全なやつですから!ま、さ、か、勘違いしてませんよね?」

 

ずいっと近寄り顔を寄せて、いたずらを企む小悪魔的笑顔でこちらの顔をうかがってきた。

 

「健全…?わざわざいう必要があるか…?あぁ!そういうことね。

おい、自分で言って自爆するな。いってっ、蹴るなよ!」

 

「うっさいです。クソボケ男。」

 

期待していた反応を得られなかったからか顔を赤くして照れ隠しに蹴ってきた。解せぬ。

 

「と、に、か、く!先輩はニンジンをつらされた馬のごとくがむしゃらに頑張ればいいのです!」

 

「まあ、そこまで期待してくれるなら応えない訳にはいかないな。不肖、蓮斗!がんばらせていただきます!」

 

「ふふっ頑張ってくださいね。私も期待しています♪」

 

いつもの様にあざとく、きゃぴっ☆としていた彼女だったがこの時だけはどこか妖艶さを感じさせて不覚にもドキッとした。

 

今日はこれで解散となり後日、このまえのお礼として詩穂にバスボムの詰め合わせを渡したら「先輩、ないです。」とガチトーンで引かれた。

解せぬ、おしゃれで実用的で消えもので贈り物として最強だと思ったのに。

 

 

 

 

 

 

 

時は流れ段々、寒くなってきた11月のある日、

 

「以上が、これで明日の交流試合のスタメンだ。

次にベンチだが二宮、でてみるか?」

 

「へ?いいんですか?」

 

「遠慮するなら他の者をだす。」

 

「いえ、出させていただきます!出させてください!」

 

「そうか。では他のメンバーだがー」

 

俺はついにベンチだが試合に出れるようになった。

あの日から時折詩穂に手伝ってもらったり、動画サイトでの動画を参考にしたりして、意識をかえて本気でサッカーに取り組んできた。

 

そして遂にその努力が報われたのだ!自然と俺は喜びをあらわにガッツポーズをして感動をかみしめていた。

さらに周りのサッカー部員からも、よかったなと称賛され中には拍手をしてくれる者までいた。

正直、涙がこぼれそうだ…!これが友情と努力と勝利…!これが青春…!

 

詩穂がいるほうをみやれば、ウインクをしつつ親指をグッとたてて祝福してくれた。ありがとう…!

 

 

 

 

「やったじゃないですか!!!先輩!!!おめでとうございます!!ベンチですけど!」

 

「ベンチでも俺にとっては偉業なの!!とにかくやったーーー!!」

 

いつもの帰り道、俺は詩穂と喜びをわかちあっていた。

いえーい!いえーい!とバカの一つ覚えのようにハイタッチ。

はははは!っと狂ったように笑い続けている。

 

「あらためて言うけど今までありがとうな、詩穂。お前のおかげで目標を達成できた。ほんとうにありがとう!」

 

そう素直な感謝の気持ちを伝えると照れ隠しにバシッと肩をたたいてきた。

 

「なに水臭いこと言ってるんですか!先輩の実力ですよ!はははっ!」

 

「えぇ~?そうかなぁ?そうかも!はははっ!」

 

二人して有頂天、バカになっていた。

 

「ふぅー笑いつくしましたね。さてと先輩覚えてますか?ベンチになれたら!」

 

「いいことしてくれる、だっけか?いいよ、いいよ。十分すぎるほどお前からはもらったからさ。」

 

「まあまあ、そう言わずに!もらえるものはもらっとくものです!」

 

「そうか、じゃあ、ありがたく頂戴するよ。」

 

「じゃあ、ちょっと待ってください。準備が必要なので。」

 

準備?そんなおおそれた物を用意してるのか。

得難い後輩を得たなあ、俺は。

 

「んーシチュエーションとしてはいまいちだけど。

まっ、いっか!私たちにはむしろ格好の場所かもです。」

 

気が付けばいつもの公園に来ていた。

なぜだが公園をみつめて独り言をもらす詩穂の表情に既視感を感じた。

 

憂いに揺れる瞳、不安そうな表情、服をにぎりしめる手。

さっきまで有頂天だったのに、明るい未来を妄想していたのにそれらが崩れていく感覚。

一気に思考が冷めていく、忘れていたものが、長い間影も形もみせていなかったあの感覚が、脳裏によみがえる。

 

「テンプレになりますが、一度しかいいません。よく聞いてくださいね。」

 

あることを決心したかのような詩穂の表情。

俺はその表情を何度もみてる。知っている。

 

本来なら、普通の俺なら見れない、見れても一度がせいぜいな表情、決意。

はじめはうれしかったのに、ドキドキしていたのにいつのまにやら畜生な性格に堕ち、ああまたかと諦観の念以外抱くことがなくなった、一大イベント。

 

ちょっとまってくれ

とは言えなかった。できなかった。

いまわしき『呪い』は既に俺の首根っこをつかんでいた。

もう抗えない。

 

「私、先輩のことが好きです!たぶん会う前から!

だからっ、つ、付き合ってください!」

 

しまった、やっちまっー

女の子の誠実な想いをまえにクソみたいなことを思いながら俺の意識は闇に沈んでいった。




一話で主人公は自身を「鈍感ではないが」と自称していますがお気づきのとおり実際はクソボケ、鈍感野郎です。
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