ラブコメ展開に恵まれるけど告白されたら死に戻る呪いをかけられた 作:管章 眞曽
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!俺のばかぁぁぁぁぁぁ!!!」
意識が暗転した次の瞬間には朝日射す自室に俺はいた。
雫が来ないように枕に顔をうずめて叫ぶ。
「バカ、ばか、馬鹿!!お前がまっとうな青春を!おくれるとでも!思ってたか!!アホが!!
な、に、が、友情、努力、勝利だ!ちょっと考えれば予見できただろ!脳死で部活を楽しんでるんじゃねぇぇぇぇ!!!」
油断していたっ!なによりも、部活にかまけ過ぎた!
本来の目的を見失い、順調に普通の高校生活をおくれていたという安寧にひたっていた!
お前が、部活に、入ったのは!想いを踏みにじってでもループを脱出しようとしたからじゃ!ないのか!!
「ちくしょう!ちくしょう!ちくしょう!ちくしょう!!!!!!
…あ゛あ゛~!!やる気でねぇ!もう、無理!学校いきたくない!!入学式はやすみまーす!!
っっ!!いでででで!!!??うぐっ、頭痛が!!わかりましたわかりました!!行きます!いきますぅぅぅ!!」
二年生11月までいって一年生まで逆戻りと思うとリカバリーの果てしなさに鬱になり、やる気が失せるが入学式は必須イベント。
血も涙もないくそったれカースは入学式ぶっちを認めはしない。
さっさと着替えて部屋をでる。
「おはよ~う。おにいちゃ、うわっ!?どうしたの!?泣いちゃったの!?」
先に起きててコーヒーを飲んでいた雫に指摘され洗面台に行って鏡の自分を見ると目が真っ赤にはれていた。
はっ、なにいっちょまえに泣いてやがる。何様だてめぇ。
戒めの意味を込め、水道水を勢いよく顔にたたきつける。
「ほらっ、お兄ちゃんこれ、保冷剤。当てて冷やしておいて。今日、始業式なのに目が腫れててちゃかっこ悪いでしょ?それととりあえずハグしとく?」
がばっと手を広げさあ来い!としている雫。ん、待て?
「雫、いまのもう一回いってくれ。」
「え?なあに?そんなテンプレみたいなこと言っちゃってさあ~、面白いことなんも言ってないよ。
わかった、昨日感動系アニメみて影響されたんでしょ~?」
「そういうことじゃないんだ!きょ、今日が何の日って、言った!?」
自分でも驚くほど声が震えていた。
「なんだよ~ノリが悪いなぁ。何の日って言っても特になんかの記念日じゃないよ?しいて言うなら始業式の日だけど、別になんてこともないでしょ?」
「始…業式?こ、今年は20ーー年じゃないのか…?」
「ちょっとぉ、なんのどっきりなんだよぉ。それは去年でしょ?タイムスリップ系主人公みたいなムーブしちゃってさぁ。」
今日は入学式じゃない…?
そういえばいつもの周はじめの雫より眼の前の雫は体が成長していて背が高い気がする。
もう一度、本当にそうなのか確かめるためにリビングに駆け込み、デジタル時計を見に行く。
「うわわ!!まだこのものまね続くの?真に迫りすぎだよぉ。」
西暦20ーー年。四月十一日。
ズレることはない電波時計が確かにその日付を示していた。
ゆ、夢じゃない!俺は、入学式に!高校一年生に戻ってない!!
自然と涙がこぼれてしまう。
「えぇ~、どうしてなくんだよぉ。もうわけがわからないよ!」
情けないことにその日は登校ギリギリの時間まで雫に抱きしめられながら泣きあかした。
一個下の妹に困惑されつつ頭を撫でられながら慰められる限界高校生、蓮斗君です。よろしく。
さんきゅー、話が分かるじゃねぇかクソカース。
いや、そもそもの元凶はあれだし、感謝する理由はないな。
ここ数日は二年生からやり直しできる喜びをかみしめ感謝の念が絶えなかったが、ようやく冷静な思考を取り戻してきた。
二年生から始まるということは一年生に戻れないということだ。(セクシー構文)
それ即ち図書委員会であることは確定し、詩穂に一年時の俺を見られてしまったことは覆らない。
まさかの詩穂エンドが実在していることが判明してしまったため、部活に専念するという奥義は乱用がむずかしくなった。
レギュラーとるために俺、がんばってからっ☆恋愛とか考えられねぇ☆ってアピールしてだいぶうまくいってたんだけどねぇ。
他にはサッカー部を退部して他の運動部に入るという手もあるけど…
流石に世間体がマズ過ぎて俺が死んじゃう。どうしようもなくなった時の最後の手段にしよう。
とりあえず、2,3周は捨てる覚悟でトライアンドエラーを繰り返しある程度の戦略を決めよう。
諦めなければ明日はある!初回で11月までいけたんだ!やれる!やれるぞ!俺は!
再び新入生が入って初めての部活を迎えた俺はできる限りの詩穂との接触回避方法の模索を始めた。
ちなみに休むことはできませんでした。
そりゃ、クソカースがそんなこと許してくれるわけねぇよな!!
一年生と二年生の交流試合が終わった瞬間、即トイレへ…ちっ!だめか。
詩穂とのファーストコンタクトは絶対らしい。
「せんぱーい♪お疲れさまでーす♪」
とはいえだ、俺は詩穂から全力で離れようとしてるのだが、人生で初めてできた後輩で、苦楽をわかちあった仲間で、『呪い』補正があるとはいえ俺なんかを慕ってくれた娘を改めてみて思わないことがないわけでない。
でもしっかり切り替えないと俺視点では無限ループになってしまう。
だから、すまないけど
「お疲れ様でーす。んじゃ俺、トイレいってくるので。」
ぞんざいに扱わせてもらう…!
はやく他のいい子を見つけなさい…君が想像する俺は幻想だから…
「ちょ!?ちょっとまってくださいよー♪はい、これ♪よかったらどうぞ!」
だめか。正解は走り去ることか?どうせ、同じ部活である以上回避できないなら無駄かもしれないがファーストコンタクトは薄めの思い出のほうが後々効いてくるというのが俺の脳内学会での定説だ。
「ありがとう。それじゃ急いでるんで。」
「へぇっ!?行っちゃうんですかぁ!?名前も聞いてないのになー。そんなにピンチだったのかな?」
さあてどうしたものか。一番の問題はサッカー部に友達がいないということであろう。
部活以外の学校生活ではハッサクや潤彰先輩に逃げ込めるがここではその手段を使えない。
実力がかけ離れているから、とか陽キャだからと怖気づいている場合じゃない。
俺は告白する勇気を踏みにじっている男。ならば勇気を出すのは道理…!
声をかけてちょっとひかれても大丈夫。どうせ死に戻る!やるぞー!やるぞー!
…明日から!!
甘えるな!!思い立ったが吉日!
ほら!いまこの後飯食べに行く話してる!
俺もこれに同行させてもらおう!
部活が終わり更衣室でみんなが和気あいあいと着替える中、俺は手汗にまみれた手をズボンでふき取って歯を食いしばってタイミングを見計らっていた。
ぱっと見、挙動不審の不審者。
ただ部活仲間に声をかけるだけでこれ?陰キャ、こじらせすぎじゃありません?
「な、なあ!」
やべっ、声出し力んじゃった。
「!?二宮か。ど、どうした?」
サッカー部二年の中心的存在、山本信吾が反応してくれた。
頭の中で勝負のゴングが鳴ったのが聞こえたような気がする。
さっきまで騒がしかったのに一瞬で静かになってしまった。
え?なにこれ?逃げたい。逃げていい?
「よかったら、飯、ついていっていい?」
むちゃくちゃ早口になってしまったけど言った!言い切ったぞ!
審判団の判定が待たれます!
「え、おう。別にいいけど俺たち以外にバスケ部のやつらいるけど…大丈夫?」
カン!カン!カン!
試合しゅうりょぉぉぉう!!
気をつかわせてしまいましたぁぁぁ!!
どうですか、お気持ちは?
めっちゃ、消えたいです!!
俺的気まずい状況ランキング上位、友達と遊ぼうとしたら知らない友達の友達がいるやつだ!!
気まずい状況にさせるわけにはいかねえよな。
「そうか、だったら邪魔しちゃ悪いから俺から言っといてなんだけどやめとくわ。わるい、振り回しちゃって!
…また今度!き、機会あったらついて行っていいか?」
「そうか。じゃあ、また今度俺らだけでどっか行こうぜ!今日はお疲れ様!」
上手く笑えているか心配の俺とは違い、格別に仲良くない俺の突然の行動による気まずい状況下でも屈託のないすがすがしい笑顔で信吾は締めてくれた。
「そういや二宮とは飯行ったことなかったな。二宮!次の部活の後、いっしょに行こうぜ!」
「そりゃ、いいな!そん時はあそこいこうぜ、坂降りたところにあるお好み焼き屋!あっこ、うまいから楽しみにしとけ!」
「おい、あそこは広島焼屋やろ!」 「はぁ!?なにが違うねん!どっちもおなじようなもんだろうが!」
一時は俺の発言をきっかけに静寂が更衣室を包んだものの再び喧騒が戻ってきた。
めっちゃいい人達だぁぁ!!
彼らにそのつもりはないのかもしれないが不自然感がなくなり俺の心も軽くなった。
「みんな、ありがとうな!楽しみにしとくよ!じゃあお疲れ様!」
俺は満足感に満たされたまま、ルンルン気分に帰路につき、詩穂につかまって前周とほぼ同じ内容をたどってしまった。
なぜ、裏門を使わなかったんだ…!なぜ忘れた!このへっぽこが!
感想、誤字報告誠にありがとうございます。