ラブコメ展開に恵まれるけど告白されたら死に戻る呪いをかけられた 作:管章 眞曽
これはどうか明日の分で…へへへ…
ある日の朝、軽い走り込みで朝練をすませた俺は眠気をこらえながら登校していた。
「ふわぁ~眠い…」
今日も今日とで若干の睡眠不足。
部活に自主練に、近々迫る収録のためのギター練習。(といってもバンド活動のほうは自分の実力以外の何かーたぶん『呪い』による補正だろうーでわけがわからないまま上手くいっちゃってるのだけれど。)
遂に本格的に実現が見えてきた図書委員会のプロジェクト。
「蓮斗君のタスクの多さに一同驚愕!その訳とは!ってねー」
まあ、自ら背負ったんで文句は言えないんですけど。
エナドリをちびちびと飲みながらそんなことを思う。
この味にも慣れてしまった。
エナドリ君は最初はウマがあわずいがみ合っていたけど共に死線をくぐりぬけて気に入らないが信頼をおける相棒といった感じだ。
俺以外にも相棒が多い相棒だけどね。
ネガティヴに考えすぎるのも良くない。ポジティブに考えてみよう。
若いうちの苦労は買ってでもせよという。
今はまだ先が見えない話だが大学、社会人となった時、この圧倒的人生経験を蓄えている俺は周りより数段抜きんでてる…かもしれない。
伊達に長く学生やってないから嫌でも学力はつくし、あの時は言い訳でいったものの総合型?かなんかでループなしの俺よりもいい大学(入試の難度でいい大学と決めるのは些か浅慮な気もするが)に入学できるかもしれない。
二宮蓮斗君の未来は明るい!今日も今日とで頑張るぞい!
『今日は部活ありませんけど自主練しますか?良ければ付き合いますよ?』
授業合間のちょっとした休み時間にスマホを開くと詩穂からメッセージが届いていた。
今周の俺は「ベンチ入ったらいいことしてくれる」という約束は結んでいないが適度に運動をしたい詩穂と努力音痴を解消したい俺のウィンーウィンな関係という詩穂の提案で自主練に詩穂が付き合ってくれる形は変わらなかった。
秋葉との偽装カレカノ関係同様、この関係は回避不可能なのかもしれない。
「せっかくの、申し出、ありがたいけど、今日は、信吾たちと、遊びに、いってくるから、また、今度な、と。」
あの飯ついて行っていい?事件から本当にお好み焼き屋だが広島焼屋だかに連れて行ってもらい、以来彼らとは友好を結ぶことができている。
俺が一方的に苦手意識をいだいていただけで案外彼らは気さくだし、音楽の話で盛り上がることもできている。
知らないうちに加入していたけどバンドやっててよかったわ…
それに最近のオタク文化の普及の風潮も大きい。
オタクにとっては過ごしやすい世の中になったものである。
などと机に突っ伏しながらスマホをポチポチしてると
「ねぇ、蓮。相談があるんだけど…いいかな?」
「瀬那がお悩みとは珍しいな。いいぞ。」
いつもより少ししおらしい様子で隣の瀬那が聞いてきた。
普段は人生に不安なんてありません!明日には明日の風が吹く!!ってやつなのに今日は違った様子。
「ちょっとデリケートな話だから、教室の外でお願い。」
「おう。わかった。」
俺と瀬那は階段の踊り場に場所をうつした。
「それでね、相談ってのは私の友達のことなんだけど…」
「おい、そんなテンプレみたいなやつを現実にするやつがいるか。おまえのことだろ。」
「うぐっ、よくわかったね。」
どうやら天然らしい。
こいつ変なところでポンコツだからな…
将来、だまされないか僕心配です。
「話を戻すけど私、告白されちゃって…」
なんだ、そういうことか。
たいして珍しいことでもない。
前周も今周も彼女はモテモテで告白を多く受けたと聞いている。
「ほーん。そんなの受けるか、断れば…そうはいかないから悩んでるのか、軽率だった悪い。」
「ううん、大丈夫。それでね今回はちょっといつもと状況が違っててね…
相手が親しい友達で…私のエゴなんだけど、あまり傷つけたくないというか、できれば解決した後も何事もなくすませたいんだ。酷いわがままだよね。」
酷く落ち込む瀬那。
目は伏せられ、手はスカートの裾を握っていた。
「つまりは上手い断り方を知りたいっていうわけだな。
俺もできうる限りの協力はするけど…あんまりいい助言ができるとは思えないぞ?」
ありがたいことに告白された経験は数多くあれど含蓄はない、悲しすぎる。
「そこでなんだけど秋葉さんって蓮の彼女なんでしょ?
私もさっきの授業合間に聞いてきたんだけど時間が十分になかったからあんまり聞けなくて、またお昼に聞こうかなって思ったけど秋葉さんとすごくは親しくない私より蓮のほうがいい答えが聞けるかなって。
もちろん断ってくれてもいいよ?」
なるほど秋葉か。
秋葉は彼氏がいるのに未だぼちぼちと告白を受ける規格外美少女だ。(秋葉から「貴方が彼氏として不甲斐ないからこんなことになるのではなくて?もっとしっかりしなさい。」とお叱りを受けた。)
俺の知ってる範囲だと秋葉と瀬那は今まで絡みがなかったはずだが、それで恋愛のアドバイスをもらいに行くとはなかなかのコミュ強だ。
一年を共にした部活仲間相手にすら二の足を踏むクソチキンの俺とは大違い。
前周の詩穂をみるに他学年にまでは俺が秋葉の彼氏であることは伝わってないみたいだが、転校して半年が経ったくらいの瀬那に伝わるくらいは広まっているようである。
というか瀬那の耳に入るんだ。
岩崎先輩や雫相手にクソカースの制限で無理だったからどうせダメだろと諦めず詩穂相手にも俺と秋葉の表面上の関係を伝えるべきか。それは後で考慮するとしてまずは瀬那の相談だな。
「わかった。引き受けよう。秋葉に聞いてあとで教える。それでいいか?」
「ほんと!!ありがとう!助かるよ!放課後に返事くださいって頼まれたから聞けたらそれまでに教えてちょうだい。」
「あいよ。でも、もしかしたら満足いく回答は得られないかもしれないからな。」
「それでも大丈夫。本当にわざわざ引き受けてくれてありがとう!恩に着る。」
「友達からのこれくらいの頼み事、訳ないさ。恩に着る必要はない。」
「友達!私と蓮で信頼が築けててうれしいよ!あっ、予鈴だ。席にもどらなくちゃね。」
本当に助かっているのは俺のほう。
おかげで瀬那は安パイだということがわかったし万々歳だ。
友達として頼ってくれて僕、うれしい!
昼休み俺はさっそく秋葉のいる教室に向かった。
「ごめんだけど秋葉呼んでくれない?」
教室の扉を開けてすぐそこにいた女の子に呼び出しを頼む。
正直、これですら少しばかり緊張してしまうのが実情だ。
コミュカス過ぎる。
「ん?いいよ。秋ちゃんー、この人がお呼びよー」
秋ちゃんとはかわいらしい。
俺も秋ちゃんって呼ぶ?いや、やめとこ。絶対後悔する。
秋葉は教室の奥のほうで友達らしき女の子数人と談笑していた。
よかった。かなり前の周であまり周りとうまくいってなくてどうすればいいかしら?という相談をうけたが相談を受けなくてもうまくいくようである。
「あら、誰かと思えば貴方ですか。また告白のお呼び出しかと思ったわ。」
ツカ、ツカと歩いてきては人差し指をたてて、秋葉の偽装彼氏として満足に役目をはたせていないこちらを皮肉るようなセリフをいってきた。
「ははは…面目ない。本題だけど一緒にご飯食べない?」
俺のお誘いに対し彼女はきょとんとした顔をして
「貴方からのお誘い?めずらしいわね。貴方、近々死ぬの?」
「おいおい、冗談ならせめて明日は雨かしら?ぐらいにしてくれよ。」
「確かに貴方の人生の最期を飾るには身に余る思い出ね。」
彼女のジョークは時が経つにつれ鋭さが増し、遠慮がなくなりつつあった。
将来の彼氏には優しくしなさいよね?見た目でごまかせるのも限度が…彼女に限っては今後二十年くらいはなさそうなものだ。
「む!もしかしてこの人が噂の彼君?実在したの?」
秋葉を呼んでくれた女子が聞いてきた。
気のせいかクラス中から聞き耳されてる気がする。
俺は学校の七不思議枠か?
「ええ、そうよ。私が彼女でいることを当たり前とでも思っているのか、控えめで頼りないこの男が私の彼氏よ。」
そう言って俺の耳を捻ってきた。
いでで!!今時毒舌暴力系ヒロインは流行らないぞ!ざまあされて終わりだぞ!
…いや俺のせいです。これ事実です。甘んじて受け入れます。
「ほえーこの人がそうなのかー確かにちょっと地味かも!」
地味…サバサバ言うわね。
「否定できないわね。」
「お前が言うのかよ!事実だけども!」
マジでこいつ遠慮がなくなってるぞ!
親しき仲にも礼儀があるんじゃないのか!教えはどうなってるんだ!教えは!
「でも仲いいね!お似合いじゃん!秋ちゃん言ってたもんね!付き合うなら
「梢。」
「!!?ちょっと、いきなり名前で呼ばないでよ!いつもみたいにこずちゃんって呼んでってば!」
こずちゃんとな。秋葉、この子のこといつもは、こずちゃんって呼んでるの?かわいい~
が、彼女のそんな必死の懇願も虚しく腕を組んでにらむとまではいかないものの重々しい雰囲気をまとい彼女を見つめ続ける秋葉。怖いよねーわかるよ。
「うー!!わかった!もう言いませんから!まったく秋ちゃんってば恥ずかしがり屋なんだから。
じゃあね!彼君。秋葉とランチ楽しんできて。それと今度お話しようよ!彼女の時の秋ちゃんってどんな感じなのか興味ある!」
とサムズアップしてきたのでこちらもグッと親指をたててサムズアップ。
彼女もモテそう。明るいし。男女隔てなく接してくれそうである。
「はぁ…屋上、いくわよ。」
そう言って弁当を取ってからそうそうに去って行ってしまった秋葉を俺は追いかけてこの教室を離れた。
なぜか解放されている屋上にはなぜか人はあまりいなかった。
俺は適当な空いてるところにドカッと腰を降ろして秋葉はハンカチをひいてそこに座った。
「余計なお世話かもしれませんがこういうのは貴方のハンカチでやるものですよ。後学のために覚えておくように。」
「へーい」
これを言われたのは何回目だろうか。
こうしたところでちょくちょくと嫌われる行動を積み上げるのが長生きのコツだ。最低か?
でもなお、嫌われない。こういうところが『呪い』の一番嫌いな…いやよそう、キリがない。
そして弁当を食べ始めたが時折、世間話程度の軽い会話があっただけで俺たち二人とも静かに箸を運ぶだけだった。
秋葉はぺちゃぺちゃわーわーと話すタイプではないし俺も会話を始める才能は皆無だから二人っきりになるとこうなりがちだ。
でもそんなに居心地は悪くない。気持ちのいい沈黙である。
「なあ秋葉。相談があるんだけどいいか?」
秋葉が食べ終わったころを見計らって俺の本題に入る。
「相談?私が的確な答えを出すとは限らないわよ。それでもいいならどうぞ。」
「助かる。んで相談ってのは俺の友達のことなんだが」
「はぁ…なに回りくどいことを言ってるの。もし彼女がいるのに告白された友達の話っていうならぶっ飛ばすわよ。」
言われてみて気づいた。先刻、瀬那相手に指摘した通りの言い方である。
「待て待て。これは本当に言葉通りなんだ。ほら、午前中にお前に相談しに来たやついるだろ?瀬那って子。」
「せな…?あぁ、あの子ね。どうすれば相手を傷つけず告白を断れますか?って話ね。」
「そうそう、それそれ!わかるなら話が早い。早速教えてくれ。」
「貴方、もしかしてその為に?はぁ…呆れたわ。ええそうね。貴方はクソボケ野郎だものね。
なら瀬那さんにこう伝えておいて、午前中に話した方法しか知らない。って。」
とぶっきらぼうに言い放った。
「ちなみにその話した方法ってのは?」
「ごたごた言わず断る。以上よ。」
「おぉう…」
秋葉はそうやって歴戦の武士の如く相手をズバッと切り捨ててきたのだろうか。
レスポンス、むちゃくちゃ早そう。付き合ってくださいと言い切る前に斬ってそうである。
神速のお断りは断られた側ですら自分がNOを突き付けられた事実に気づかない。最強か?
「そもそも告白だなんて相手の身勝手な気持ちの押し付けよ。その気持ちをどう捌くも私たちの自由だわ。」
「そりゃそうかもしれんが」
「だからこそ御託を並べずきっぱり断るんでしょ。傷つけないだなんて告白を受け入れない限り土台無理よ。
彼女の素性を詳しくは知りませんがあの娘が傷つけたくないって言うほど大事な相手なら断ってもわかってくれるはずよ。貴方はどう思う?」
うーん。前周、今周と瀬那に付き合ってきてやはり根は変わっていないというのを印象に抱く。
困ってる人を見過ごさず、悪行をせず、時として自分よりも友達を大事に思える素敵なやつだ。
類は友を呼ぶという。そんな彼女の友達なら彼女が友人を苦しめたくないという思いを察すことはできるかもしれない。
「俺もそう思う。ありがとな、秋葉。」
「お役に立てたならなにより。」
カップと一体化した保温の水筒から注いだ紅茶に口をつけつつ彼女はそう返した。
「ねえ、貴方は告白をされたらどうする?」
「!!?」
まるで彼女は世間話をするかのような平然とした口ぶりで問いてきた。
いや実際世間話かもしれない。なら希望はある。
大丈夫だ。落ち着けまだ決まっちゃいない。落ち着け。
「想像したことないな。俺に縁があるイベントとは思えない。」
荒れ狂う心を必死に抑えつつ冷静であるよう努めながら言葉を紡ぐ。
「ふぅーん。じゃあ告白することは?貴方には告白するほど好きな人とかいないの?」
いる…チっ!答えられないか。
呪いにそもそも禁止されているのかウソをつけないか。
最近、なんでもかんでも行動を禁止するのではなく、特定場面で嘘をつくことが『呪い』により禁止されているのではないかという説が脳内学会で有力だ。
故にここは
「いないな。部活だとか委員会で忙しくて考えられる余裕がない。」
持ちうる手札を使って全力回避を試みる。
「さっき貴方は告白を縁がないイベントといったけれど思わぬ縁があるかもしれないわよ。
例えば貴方の幼馴染だというあの娘とか…私とか?」
どうかしら?とうっすら笑みを浮かべからかうような目を向けてきた。
…終わった?死んだか?
なんだか立ち眩みがしてきたぜ…。
「ふっ。冗談よ。貴方、本当にこの手の話は苦手なのね。」
彼女は立ち上がってハンカチを手に歩み寄ってしゃがんで顔をあわせ
「こんなに脂汗かいて。こりゃ筋金入りね。」
無造作にハンカチで俺の額の汗を拭きとった。
彼女の端正な顔を前に否が応でも心臓が高鳴る。
「おい、それお前が尻にひいていたハンカチじゃねえか。」
とりあえずそのことがバレないように悪態をついておく。
男子はー俺だけかもしれないけどー高校生になっても気になる子につい意地悪したくなっちゃうのである。
「よかったわね。美少女の柔肌に触れた誉あるハンカチに触れられて。冥土の自慢話にはなるでしょ。」
「俺は地獄行きかよ…」
一通り拭き終わった彼女は立ち上がって足を崩して座り込む俺を見下ろしていた。
「なんで、」
「?」
「なんで俺が、恋愛苦手だってわかった?」
そう問うと秋葉はふむ、と人差し指を顎に添え視線を左上に向けて考え出した。
「なんとなくそうなのかも、と考えるようになったのは最近ね。明確にわかったのはついさっき。
…それに貴方は過去に、いえやめときましょう。
まあ簡単に言えば彼女だから?」
上品でいながらおどけた感じで彼女は答えた。
そういえば彼女は俺が転校した理由を知っている。
それで当たらずも遠からずな推理になったわけか。
「そりゃ、すごい。世の男たちは浮気はできないな。」
立って秋葉と視線をあわせた。
「ちがうわ。貴方の彼女だから、よ。」
「偽装の、だろ。」
つい口をついて余計なことを言った。
「私、何事にも手は抜かない徹底主義なの。
貴方がいつか押し付けられる愛を素直に受け入れられるよう、私が手ほどきしてあげる。
偽彼女としてのよしみよ。ありがたく受け取っときなさい。」
一歩踏み込んでそんなことを言いながら、俺の胸部を人差し指でトンと押した。
そして彼女は踵を返し髪を風になびかせながら屋上から去っていった。
一瞬、心臓が縮こまって今なお鼓動を打っているのは
告白ともとれるような物言いを一切表情を変えずやってみせた。
一年の頃の彼女を想定していた俺はその強かさに驚愕するのみだった。
そりゃそうか。多感な時期の一年だもんな。
精神的に成長してておかしくない。
「あぁーマジで惚れちゃいそう…」
颯爽と去っていった彼女と違い俺はしばらく手を目に当ててしばらく立ち尽くしていた。
これから私生活が忙しくなるので毎日投稿とはいかないかもしれません。ご了承ください。
今後とも拙作をお楽しみいただければ幸いです。