ELDEN ARCHIVE 〜褪せ人inキヴォトス青春記録〜   作:通りすがりの料理人

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明けましておめでとうございます。今年もこの作品をよろしくお願いします…!

 それでは番外編の続きです!


開校!エルデン学園!2

 

 エルデン学園に転入した翌日、俺は早めに家を出て通学路の途中で立ち止まっていた。もちろん理由はある。この場所は昨日トレントに轢き殺された場所なのだ。

 

 恐らく今日もこの場所を通るだろうと思い張り込んでいる。

 

 ……が、中々現れない。

 

 暇なのでスマホを弄ったり周りを見たりしていたら近くの公園のベンチに失地騎士の兜(軽装)とスーツにビジネスバッグを持っている男が嘆いているのが見えた。

 

「あぁ…!仕事をクビになってしまった…!俺はこれからどうすれば……」

 

 

 …うーん。失地騎士ならぬ失職騎士か。哀れなり。

 

 

 

 などと考えていると蹄の音が聞こえて来た。間違い無い、トレントだ。

 

 

「いっけなーい!遅刻遅刻〜☆」

 

 ……うん、昨日チラッと見えてはいたがやはりメリナだったか。しかも連日の遅刻ギリギリの登校…さては常習犯だな?トレントが居るからってお前さぁ……。

 

 

「そこの霊馬に乗りし女子よ!止まれッ!」

 

 俺はそう呼びかける。流石にいきなり名前呼びは怪しまれるからな。コッチは一方的に知っているがメリナは初対面だ。

 

 ………うん?全然減速しないぞ!

 

「止まれッ!」

 

「おい!止まれッッ!!」

 

「お前だ、お前ッッ!そこの霊馬に乗ってるお前に言ってるんだッッ!?」

 

「ちょ、ま…!?止まって!!」

 

「危っ!?【霧の猛禽】ッ!」

 

 

 あの野郎!そのまま突っ込んで来やがったッッ!!?

 

「ちょっと待てェェェェェェェッッッ!?」

 全力ジャンプダッシュで後を追う。因みにだが普通に走るよりジャンプダッシュの方が速いのだ。周りの視線はこの際気にしない事にする。

 

「待て!止まってくれ!」

 

 ぱっからぱっから!

 

「少女よ!止まってくれッ!」

 

 ぱっからぱっから!

 

「クッ………そこの美女よ!止まってくれッッッ!」

 

 ぱっからぱっから!

 

「ッッ〜〜〜〜!!!そこの絶世の美女!」

 

「私を呼んだ?」

 

 この野郎ッッッ!!!

 

「ただの美女というならともかく、絶世の美女といえばそうは居ないわよね」

 

 と、ドヤ顔で言ってくるメリナ。やべぇ…自分からメリナを燃やしたいと思ったのは今が初めてだ…。

 

「それで、何か?私学校に行かないといけないから。ナンパならお断りよ?まぁ、絶世の美女たる私を思わずナンパしたくなるのは仕方が無いけれどね」

 

 あ"あ"あ"ッッッ!!コイツうぜぇーーーッッ!!

 

【悪神の………ッ待て待て俺…。ステイクールだ俺……」

 

「ナンパ意外に用がないならもう行くわよ」

 

 

 もう本当に何なのコイツ?自分を絶世の美女とかさ?態度もスゲェームカつくし…。本当に同一人物か?もはやメリナの姿をした別人なんだが…?

 

 

 ……いや、よく考えたら平行世界の褪せ男の世界のメリナも俺の世界のと全然違ったっけ。

 

 そもそも褪せ男世界のキャラ全員変な奴しか居なかったな。

 

「それじゃ」

 

「待て待て待て」

 

「………何?」

 

 鬱陶しい奴を見るような目で見られてピキッときたが我慢だ。

 

「俺は昨日エルデン学園に転入した2年のシードル・クラウン」

 

(ッ!…昨日のゴドリックを倒した…!?)

 

「昨日君に轢き殺された者だ」

 

「…………メリッ!?」

 

 

 

 


 

 

 

 

 

〜昼休み〜

 

 

 はい、時間は飛んで昼休み。今は屋上にいる。

 

 腕を組んで仁王立ちする俺。俺の前に正座して冷や汗ダラダラのメリナ。野次馬のディアロスとならず者と先生。

 

 あれ?先生今日もいるのか?

 

「さて……何が言いたいかわかるな?」

 

「絶世の美女だから許して?」

 

「血盟祈祷がお望みか?」

 

「すいませんでした」

 

 マジでコイツよぉ…!

 

「御詫びと言ってはなんですが、絶世の美女である私とのツーショットとかで手打ちにしません?」

 

「お前マジで何なの!?」

 

「なら他にどうしろと!?」

 

「はぁ…。とりあえず、お前の霊馬に用があるから出してくれ。そしたらこの件はチャラだ」

 

「いけトレント!君に決めたッ!」

 

「そんなポケモンみたいに出すなよ…」

 

 そして俺の目の前に現れた霊馬トレント。俺の事を見つめるトレント。

 

「ボフッ!」

 

「…ッ!やっぱり、お前だったんだな…!」

 

 間違い無い。コイツは俺と共に千年以上の時を過ごしてきた相棒のトレントだ。

 

「嗚呼、会いたかったぞ我が半身よ…!」

 

「ボフッ!ボフッ!」

 

「それはそれとして昨日はよくも轢き殺したな貴様…ッ!」

 

「ボフッ!?」

 

 うん?アレは全てメリナが悪い?毎朝寝坊をしてはトレントに頼ってズルをして登校。角のある道でも減速せずに走り抜ける?

 

 ……うん、それはメリナが悪いな。しゃーない、俺達の仲だし許してやるよ!

 

「ボフッ!」

 

 トレントが一鳴きするとメリナの手にあった【霊馬の指笛】が浮かび上がり俺の手に収まった。

 

「メリッ!?ちょっとトレント!!?」

 

「ボフッ!!」

 

「え!?『毎朝寝坊ばっかりするな!早起きして自分の足で学校に行け!ズルをするな!』ですって!?」

 

「ボフッ」

 

「そんなの無理よ!絶対に寝坊して遅刻する!学校での私は超優等生の清楚系クールビューティー絶世の美女なのよ!?絶対に寝坊なんかできないんだからね!?」

 

(……実際はどうなんだディアロス?)

 

(そんな事はまったく無い。全て彼女の思い込みだ)

 

(なるほどただのヤベー奴か)

 

「おい、早くしねーと昼休み終わるぞ。食堂行くべ」

 

「ん?おぉ、悪いなそれじゃ行こう」

 

「あぁ、そうだな」

 

“う、うん”

 

 ならず者が空腹に耐えかねたのか早く早くと急かしながら4人で屋上から出た。

 

「トレントッ!カムバーーーック!!!」

 

 メリナの悲鳴にも似た叫びは無視しながら…。

 

 

 

 

 

〜食堂〜

 

 

 食堂に着くなり俺を見た生徒達が黙って道を開け始めて混雑していた食堂に道ができた。さっきまでの賑わいが嘘のように静寂が広がる。

 

「おぉ~、こいつは良いなァ!爽快な眺めだ!」

 

「別に君に対してでは無いだろうに…」

 

 周りのヒソヒソと話す声を無視しながらカウンターまで足を運ぶ。さて、今日は何にするか。久しぶりの日本での食事をした昨日は感動したっけなぁ。まだまだ食べたい物が多い。頑張って制覇しよう。

 

 本日のメニューは、俺がカツ丼。ディアロスが白身魚のソテー。ならず者は海老天マシマシうどん。先生がサンドイッチだ。

 

「それにしても、先生は今日もこの学園にいるのか?色々忙しいのだろう?」

 

 昨日シャーレについて調べたら様々な学園に行ったり、山の様な書類の処理をしなければならない多忙な職らしい。こんな連日同じ学校にいて良いのか?

 

”大丈夫大丈夫。数日くらいはこの学園を中心に活動する予定だし、書類も重要性の低い物は紙で無くてデータにしてあるからね“

 

 などと会話をしながら食事を終えて午後の授業に向かった。

 

 

 

 

 

 

 放課後、昨日みたいな襲撃があるかと思うと憂鬱になる。今日は誰が来るのやら…。

 

 校舎を出るとなんとそこには昨日ボコボコにしたゴドリックとその部下達*1がいた。

 

 まさか連日ゴドリックとは…。命をドブに捨てるなんて愚かな真似をするとは思わなかったぞ。

 

 するとコチラに気づいたゴドリックが近付いて来た。

 

「………」

 

「………」

 

「ニコッ」

 

「…ッ!?」

 

 突然のゴドリックの笑みに驚愕。なんだコイツ、頭イカれたか…?

 

「お待ちしておりました我が王よ!」

 

「……は?」

 

 ニコニコとしながら腰を低くしたゴドリックのまさかの【我が王よ】に思わず背中に宇宙を背負ってしまった。*2

 

「いやー!昨日は申し訳ありませんでした!王の実力、然とこの身をもって体感いたしました!流石の実力です!」

 

「え、あ、おう」

 

「そこで不詳ゴドリック、是非とも貴方様の下に着きたいと思いましてこの様にお待ちしておりました!」

 

「え、えー……?」

 

 まさかの俺の配下に降りたいと言ってきた。マジに何なの?昨日の態度との温度差に風邪を引きそうだ…。

 

「貴方様ならばこの学園にいる全てのデミゴッドを降し、エルデン学園の王になれる筈です!その伝説の第一歩をこの身で感じる事が出来て感激いたしました!私にも是非そのお手伝いをさせて頂きたいのです!」

 

「おうおう!黙って聞いてればウチの一派に入りてぇだと!?随分と厚かましい奴だなおい!?」

 

 困惑していたらならず者が割り込んできた。しかもいつの間にか俺の一派って事になってるし!?お前もだいぶ厚かましいぞ!?

 

「なんだ貴様は…ッ!私の話の邪魔をするなッ!」

 

「アァン!?テメェ、俺様に手ェだしたらウチのボスが黙ってねぇぞオラァ!」

 

“ま、まぁまぁ!落ち着いて!”

 

 見兼ねた先生が2人の間に入り仲裁する。するとゴドリックは目を輝かせる。

 

「おぉ!我が女神よ!」

 

”え、女神!?“

 

「嗚呼…、なんと美しい。そして慈悲深く聡明で…!クッ……!私の語彙力では貴女の素晴らしさをこれ以上言い表せない!悔しい…、語彙力の無い私は悔しいッッッ!!」

 

“い、いや〜!女神だなんて、困っちゃうなァも〜!”

 

「なんだコレ……?」

 

 どうしよ、完全に状況についていけないんだが…?

 

「ちょっと待つメリッ!この絶世の美女である私を差し置いて女神とは聞き捨てならないわ!」

 

 【メリナ参戦!】*3

 

「お前はマジで引っ込んでろ!?」

 

「ならトレントを返しなさい!」

 

「ボフッ!」*4

 

「なんでメリッ!!?」

 

「なんだ貴様は…!不敬であろう!この方こそいずれエルデン学園を支配する御方であるぞッ!それと貴様ごときが絶世の美女を名乗るな!絶世の美女とは我が女神の事を言うのだ!」

 

「なんですって!?」

 

 

 スタスタスタスタ

 

 

”ちょ、シードル君!?何帰ろうとしてるの!?“

 

「いや、もう面倒臭くて…」

 

“気持ちは解らなくもないけど、なんとかしてよ〜!”

 

「えぇ…」

 

 何故こんな事を俺がしなければならないのか……。面倒だ、こいつ等全員吹き飛ばすか…。

 

「【悪神の…」

 

「…!?お、お待ち下さい我が王よ!どうか落ち着いて下さい!」

 

「その呼び方をやめろ!貴様なんぞを配下にする訳ないだろう!あとエルデン学園を支配なぞどうでもいい!スローライフを送りたいんだよ俺はよォ!!」

 

「そ、そんな……」

 

 俺の言葉に項垂れるゴドリック。メリナも割とガチでキレてる俺を見てビビっている。

 

 そのまま俺は帰路につく。ゴドリック兵達もどうすれば良いのか解らず道を開けるだけで引き止めようとはしない。

 

 校門を出て大きなため息を吐いた。面倒くせぇな。配下だとか支配とかどうでも良い。俺は殺伐とした世界からようやく抜け出したのだ。だからゆっくりとゆったりと過ごしたい。

 

 昨晩、材料も無くて晩飯をどうするか迷った。そもそも金が無い。ヤバいどうしよう…。そして気づいたのだ。ルーンがこの世界の通貨になっている事に。そして夜の街に飛び出しチェーン店の牛丼屋に突入。昼間も食べたが、久しぶりの米、久しぶりの牛、久しぶりの醤油の味……。

 

 俺は気づいたら泣いていた。店員に心配されながらも完食し、店を出た。心からのご馳走様を店員に送り…。

 

 そしてほわほわとしながら家に戻ろうとして足を止めた。

 

 ……あれ?まだ全然腹いっぱいじゃ無いぞ?

 

 大食漢である俺が牛丼1杯で足りる筈が無い。何なら昼も控えめだったから全然足りない。

 

 よし、せっかくだし色んな店に行こう!

 

 そしてラーメン、そば、カツ丼、うどん、パスタ、ハンバーガー、フライドチキン等など、食いまくって帰りにコンビニでスイーツを買って帰った。

 

 

 ーーーこの世界最高だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんな訳でこの世界に骨を埋める決意をした昨晩。学校の支配とか全くするつもりは無い。昨日のゴドリックのように降り掛かる火の粉は払うが…。火の粉と言うより火球みたいな奴等が来そうな予感がする……。

 

 

 ………うん、最悪転校も視野に入れよう。此処は数千もの学校がある学園都市。スローライフに適した小さな学校もあるだろう。

 

“おーい!”

 

「ん?先生?」

 

”歩くの早いね…“

 

「何か用事でもあったか?」

 

“そういう訳では無いけど、せっかくだからD.U.シラトリ区の案内でもしようかなって思って。まだ来て日は浅いけど、シャーレ付近なら結構詳しいからね”

 

「ほう、なら頼む。どうせ暇だったからな。…せっかくだ、トレントに乗って行こう」

 

“わぁ!乗馬なんて初めてだから楽しみだなぁ!”

 

 

 

 

 

〜2時間後〜

 

 

”お尻が痛い……ッ!“

 

「そういえば乗り始めた頃は尻の皮が剥けて痛かったな。忘れていた」

 

“しかも結構時間掛かったね…。普通に電車に乗ればよかった…”

 

「……でんしゃ…?……デンシャ…電車…電車ッ!!?」

 

”え、何?電車がどうかしたの?“

 

 狭間の地生活の長さに移動はファストトラベルが基本でまだ行ったことのない場所には徒歩かトレントで行くのがあたりまえだったことで、現代文明の車や電車などの移動法が全く思い浮かばなかった…。

 

 いや、そもそも電車じたい忘れていた。

 

(帰りは電車に乗ろう)

 

 久しぶり(なんてレベルじゃない)に乗る電車に少しワクワクするが、今は新たに開放されたエリアの探索が最重要だ。

 

 まずは、目の前の建物が気になるな。

 

 すると先生はその建物の前に移動して身だしなみを整えてコチラに向き直る。

 

“ゴホン、それでは……ようこそ、シードル・クラウン君!連邦捜査部シャーレへ!”

 

 

 

◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 入口を抜けた先には広いエントランスがあり、そこには祝福が設置してあったので開放する。これで何時でもファストトラベルできるようになった。

 

 先生は祝福が見えないようで、いきなり立ち止まり何かに手をかざすような仕草をしたのを不思議そうに眺めている。

 

 (キヴォトス来てから初の)エレベーターに乗り上に上がる。ドアが開き少しした先にある部屋の扉を開いた先生は『ただいま〜』と言いながら入室。それに続き部屋に入る。

 

 部屋には複数のデスクにパソコン。資料やらを入れる棚や接客用か休息用のソファとテーブル。奥の部屋は給湯室だろうか?そして驚くほどに大きな窓からはキヴォトスを一望でき、思わず『ほぅ…』と感嘆の声が漏れてしまった程には素晴らしい眺めであった。

 

 そんな部屋…いや、部室には数人の生徒がいた。服装からして違う学校の生徒だろう。調べた限りどの学園の生徒だろうとシャーレに入部できるらしい。

 

「あ、先生。お帰りなさい」

 

「お疲れ様です先生」

 

「今日は遅い帰りでしたが何かありましたか?」

 

”ただいま皆。ちょっと遅れたけど何かに巻き込まれた訳じゃ無いから大丈夫だよ“

 

「…あれ?先生、後ろの、方…は……ッッッ!!?」

 

「あ、あの制服……!?」

 

「それにあの兜はまさか……!?」

 

「「「エルデン学園ッ!?」」」

 

 青髪の女と茶髪の耳の尖った眼鏡の女と黒髪の翼の生えたデカい女がコチラを見て驚愕し、先生を掴んで少し離れた場所に連行されて行った。

 

「先生!何故よりによってエルデン学園の生徒を連れてきたんですかッ!?」

 

「彼等は私達ゲヘナ生すら恐れおののく程に野蛮で危険な生徒達ですよ!?」

 

「あの自治区だけ別の世界から切り抜いてきたかのように生死の価値観すら違うどころか生態系じたいが違う魔境とトリニティでも危険視する場所ですよ!?」

 

「なんでそんな危険な場所の危険な生徒と一緒にいるんですか!?まさか、エルデン学園に行ったんですか!?」

 

「なんて危険な…!あそこは銃弾の代わりに剣撃と矢の雨、魔法の雨が振り注ぐんですよ!?」

 

「複数の派閥があり、そのトップはデミゴッドと言う半分神の血を引く人物と言う噂がある輩達が日夜殺し合いレベルの派閥争いを起こしているんですよ!?」

 

“ま、まって…!一回落ち着いて…!”

 

 

 離れた場所に行ったが声のボリュームが大き過ぎる故に普通に会話が聞こえる。エルデン学園が他校からどう思われているかが分かったがボロクソに言われる程とはな…。

 

”ま、まず私の話を聞いてね!彼はねシードル・クラウン君!エルデン学園の2年生で、昨日転校してきたばかりなんだ!“

 

「昨日…転校…?」

 

「ならエルデン学園に染まりきっていない…?」

 

「つまりは…」

 

 

 3人は顔を見合わせてからコチラに近付いてきた。

 

「始めまして。私は早瀬ユウカ。ミレニアムサイエンススクールの2年生でセミナーの…あ、セミナーは生徒会の事ね。そのセミナーの会計をしているわ。よろしくね。あとこれウチのパンフレット。科学に興味があるなら是非転校してきてちょうだい

 

「私はゲヘナ学園の1年生、風紀委員会所属の火宮チナツです。よろしくお願いします。コチラがゲヘナ学園のパンフレットです。キヴォトスでも危険な学園ですがエルデン学園より遥かにマシなので腕っぷしに自信があるなら是非転校してきてください

 

「私はトリニティ総合学園の3年生、正義実現委員会の副委員長を務めます羽川ハスミです。どうぞよろしくお願いします。そしてコチラがトリニティのパンフレットになります。トリニティはスイーツが豊富ですので甘い物がお好きなら是非転校してきてください。その時は私オススメのお店を案内しますよ

 

 

めっちゃ転校勧めてくるんだが?

 

 

 いや、まぁ…分かるぞ?あの学園がいかにヤバい場所なのか…分かるぞ?

 

 だがそんなに優しい目で『私達が救わねば…』みたいな雰囲気出しながら転校勧めてくる?

 

 ………狭間の地経験者だから俺は大丈夫だが、一般人なら普通にヤバいから転校勧めてくるか……。

 

 

“あ、ちなみに彼昨日だけどハスミの言ってたデミゴッドの派閥の1つをトップ含めて1人で壊滅させたよ”

 

「「「ヤバい奴じゃないですかッッッ!!?」」」シュバッ!

 

一瞬でパンフレットを奪われたんだが?

 

 酷くない?

 

 俺スローライフが送りたいから真面目に転校を検討してたのに酷くない??

 

「………俺はエルデン学園の2年生、シードル・クラウン。昨日転校してきたばかりだ。キヴォトスでは右も左も分からない状態でな、是非仲良くしてくれるとありがたい。夢はのんびりとしたスローライフを送る事だ。甘い物も好きだし、腕っぷしはかなり自信があるから治安維持にも貢献できる…。だから、な?パンフレットを渡してくれないだろうか?」ジリジリ

 

「あ、あはは…。ミレニアムは科学者ばかりで、この中でもかなり学力の必要な学園なの…。だからゲヘナかトリニティが良いんじゃ無いかしら?」ジリジリ

 

「…スローライフと言ってましたがゲヘナはスローライフとは無縁の学園です。歩くだけで何処かしら爆発するような学園なのでトリニティかミレニアムをオススメします」ジリジリ

 

「トリニティはお嬢様学校でして、品位だのと堅苦しい雰囲気の学園です。派閥も複数あり水面下での争いもありますし、やはりミレニアムかゲヘナ辺りがよろしいかと…」ジリジリ

 

「「「「………」」」」

 

 

 

 

 

 

 

「四の五の言わずにパンフレットを渡せッッ!!」ダッ!

 

「「「お断りしますッッッ!!」」」ダッ!

 

”うーん、余計な事言っちゃったかなぁ…“

 

 

 

 

〜10数分後〜

 

 

「「「「ぜぇっ…はぁっ…」」」」

 

“疲れ果ててるなぁ”(他人事)

 

「そ、そんなに……そんなに俺に転入してほしく無いか…!クソッ!もういい!こんな所に要られるかッ!俺は帰らせて貰うッ!*5

 

”え、待ってよシードル君!?“

 

「フンッ」

 

“あ……行っちゃった”

 

「……少し、やり過ぎたかしら」

 

「そう、ですね。悪い事をしてしまいました…」

 

「はい…。もう少し穏便に出来たかもしれません…」

 

”……皆、確かにエルデン学園は怖い所だし皆と価値観が違う所も沢山有るよ。だけど彼はとっても優しいんだ。だから怖がらないであげてほしいな“

 

 

 先生は昨日と今日のシードルとの出会いや学校での様子を話した。3人は静かに話を聞く。

 

“詳しくは分からないけど、彼は精神的に参ってるんだと思う。あの力を手に入れ無くちゃ生きていけないような場所にずっと居たんだと思う”

 

「彼から何か聞いたんですか?」

 

”何も聞いてないよ。でもね、目を見れば分かるよ“

 

「目、ですか?」

 

“初めてあった時ね、兜のスリットから見えた彼の目にはまるで地獄でも見てきたかのような絶望や悲しみ、苦しみに満ちた光の差さない目をしていたんだ”

 

 彼に抱き上げられたその時の事を思い出す用に目を閉じた先生。その色褪せた瞳を見続けたら闇に呑まれそうな気がしてしまい目を逸らし、それを誤魔化すように凄い筋肉だねと話題を振っていた。しかし、学園に来てクラスメイトの2人と共に居る時シードルの目に変化があった事に気付く。悲しみと喜びの混ざった、少し泣きそうな瞳には僅かにだが光が差していた。食事をすれば感動と歓喜の混ざった瞳に更に光が差す。

 

”今日改めて彼の瞳を見て、感じ取った事はね…恐怖だった“

 

「恐怖…?何故ですか…?」

 

“なんだろうね…。例えるなら…今いる場所が楽しい夢の世界のような気がして、またいつもの現実に戻るのが怖い…みたいな?”

 

 彼女の推測は正しい。人は辛い生活を続けていた時に一時だけでも贅沢な暮らしをしてまた辛い生活に戻ると前のように耐えられない生き物である。一度覚えた喜びや楽しみを取り上げられ再び地獄に突き落とされた彼は果たして正気で要られるだろうか?今までですら精神的苦痛を感じた彼がかの地に戻り狂わずに要られるだろうか?

 

 答えは否だ。

 

 シードル本人もそれを理解しているからこそこの夢のような世界の終わりに恐怖している。もし、死んだらまたこのキヴォトスで復活できる保証は無い。最初の死は問題無かった。まだ何も知らなかったから。だが今は違う。彼は久しく忘れていた死への恐怖をおもいだしたのだ。

 

 故に求めた、平和を。死の可能性が低い学園を…。結果は散々で彼は怒り帰ってしまったが。

 

 

”……私は彼の事を放って置けない。力になってあげたい“

 

“例え他の人達が恐れても、私だけは恐れないで彼の隣に立ち続けるよ”

 

”だって彼も私の大事な大事な生徒だから!“

 

「先生…。私、彼に謝りたいです」

 

「私、彼を理解しようともせずに遠ざけるような真似をしてしまいました…。謝罪したいです」

 

「私も、彼に謝罪したいです。…そして彼の話を聞いてみたいです」

 

“皆……。よし!ならまだ近くにいるかもしれないから探しに行こう!善は急げだよ!”

 

「あ、待って下さい先生!」

 

 駆け足で扉に向かう先生とそれを追い掛ける3人。扉を開けようとしたその時…。シャーレの外から爆発音が響いた。

 

”キャッ!?“

 

「な、何!?何事!?」

 

「近いです…!」

 

「アレは……ッ!まさか狐坂ワカモッ!?何故またシャーレに!?」

 

 窓の外を眺めたハスミがそう叫ぶ。狐坂ワカモ…先生がキヴォトスに来た日に暴動を起こした七囚人と呼ばれる指名手配犯の1人だ。あの日先生の指揮により何とか撃退する事ができ(・・・・・・・・・・・)その後のシャーレ内部にも姿を現さなかった(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)狐坂ワカモが今再び現れた。

 

 

 あの時はもう1人の生徒のスズミがいた。しかし今は3人。あの時よりかは少ないがワカモが引き連れた不良達の数は中々のものだ。

 

 冷や汗を垂らす先生。そして更に続くハスミの言葉が追い打ちをかける。

 

「ッ!?た、大変です!あの数相手にシードル・クラウンさんが1人で戦っています!」

 

「「“ッ!!?”」」

 

 先生達は再び走りだした。

 

 彼には、彼等エルデン学園の生徒にはヘイローが無い。銃弾なんか撃たれたらひとたまりもないだろう。

 

 エレベーターを降りて入口を出て暫く走り爆発により発生した煙を抜けると彼の姿が見えた。

 

 

 

 

 狐坂ワカモにより銃に取り付けられた短刀を腹に深く突き刺された彼の姿が。

 

「さようなら」

 

”待っ“

 

 先生の言葉はワカモの銃から繰り出された凶弾の音に掻き消された。制服しか着ていないその胴体を容易く貫通した凶弾を受け兜の隙間から吐血し膝を付く。そしてワカモが短刀を引き抜く為にシードルを蹴り飛ばし彼は地面に倒れ伏し血溜まりを作って動かなくなった。

 

“あ……え……”

 

「う…そ……」

 

「あ、あぁ……ッ」

 

「なんて…事を……」

 

 呆然とする4人。その場にはクスクスとワカモの笑い声だけが響いていた。

 

 

 

 

*1
※全員包帯グルグル巻き

*2
宇宙褪せ人

*3
帰って下さい

*4
断固拒否

*5
死亡フラグが立ちました!





先生「この時空のシードル君は学生だね。どうしてだい?」

作者「そうだったら面白いかなって」

先生「ふーん」

作者「因みに2話目のラストは血溜まりに沈むシードルで〆る予定」

先生「君は人の心が無い!」(泣)


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