気を取り直して4話どうぞ!
そうこうしているうちに、私が部屋を出て1週間が過ぎた。ご飯の時はいつもルークが来てくれて、いろいろな話をしながら一緒に食べる。それ以外はほとんどメイズと一緒で、パズルや読書・テレビ(ここに来て始めて見たが、すごい物だと思う)を見たりといった生活をしていた。
あの日以来、誰からもあの人の話はされなくなった。私自身のこともあまり聞かれない。きっと特に知ってることが無いと見なされたのだろうと思っているが、真相は知らない。
お昼ご飯を食べ終えて、メイズとパズルをしているとルークとビショップ(黒い人、と呼んでいたが漸く慣れたのでこっちにした)が来た。ビショップは私に目線を合わせて、紙袋を差し出してきた。
「スキュア様、貴女が以前いらっしゃったお部屋には特に私物などはございませんでしたよね?」
「うん。」
「実は…私とメイズが選んだ物なのですが、貴女に服をプレゼント致します。」
服…プレゼント…?どうしたらいいか戸惑っていると、メイズが
「ぜひ受け取って下さい!きっと気に入られますわ〜」
と笑顔で言ってくれる。恐る恐る紙袋を受け取り、中の包みを結ぶリボンをしゅるしゅるとほどく。
中から出てきたのは、真っ白なリボンブラウス。よく見るとエメラルドカラーのボタンが肩と手首の辺りについている。
「きれい…」
思わず声が漏れる。これをもらえるというのだろうか。気に入りましたかと問うビショップに、必死に頷いてみせる。すると今度はルークがこちらに来た。
「本当に綺麗だね。さすが2人のセンスだ。」
優しそうにふわりと笑うルーク。最初はこの笑顔が何故か怖かったが、今は、たぶん少し違う思いで見ることができている。
「「ありがとうございます、ルーク様。」」
2人とも同じように礼をとる。それを見ながら、彼はもう一度私の方を向くと
「ところでスキュア…明日なんだけど、みんなで街に出かけてみない?」
「…え?」
吃驚した。この建物から出るということなのか。
「せっかく可愛い服をもらったんだから、少し外に出てみるのもいいと思うんだ。大丈夫、ビショップもメイズも一緒に行くから。」
「……それ、なら…」
こくりと頷く。ここより外の世界…メイズの話やテレビ、窓からしか見ることのなかったあの世界の一部に、私もなるのか。一抹の不安はあったものの、ルーク達がいてくれるならと思えた。
「最近では随分歩けるようにもなってきましたし、不安があればいつでも手をお貸ししますからね」
メイズがにこりと微笑む。頷きながら私は、たぶん大丈夫、と心の中で呟いた。
翌日―――。
途中までは車に乗せてもらって移動し、街に出た。人が多い。ルークはネイビーブルーのフード付きパーカーを、私は昨日もらったブラウスを来ている。メイズとビショップは遠くないところにいます、と言って離れていった。
「じゃあ行こうか、スキュア。」
「うん。」
ルークが歩き出す。慌てて追いかけようとするが、やはりまだ足がおぼつかないためかよろけてしまった。
「うわっ、ごめん!大丈夫?足、挫いたりとかはしてない?」
倒れる寸前、ルークが私を抱きかかえてくれた。何だろう、何故かすごく恥ずかしい。
「だ、大丈夫…。ルーク、いこう」
そう言う私を地面に立たせると、ルークは私の左手をとった。
「じゃあこうして手を繋ごうか。これならはぐれないし、また助けられる。」
ルークのそんな気持ちが、あったかくて、何だかくすぐったかった。
どのお店を見るともなく2人でぶらぶらと歩いていると、噴水のある広場についた。ベンチに私を座らせると、ルークはちょっと待っててと言ってどこかに行ってしまった。
くるりと周りを見渡すと、小さい子供と母親・仲の良さそうな男女・寄り添い歩く老夫婦…たくさんの人がいる。あの人もこの世界の一部だったのかな…私も、元はこの一部だったのかな。両親のことはビショップから聞いた。あの人が私を助けた訳ではないことも―――。
「スキュア!おまたせ!」
ルークが袋を持って走ってくる。ベンチに座ると何かを取り出し、私に渡してきた。
「…これは?」
「これはね、たこ焼きっていうんだ!僕が大好きな食べ物でね…。あ、熱いから気をつけてね!」
パックを開けると湯気と香ばしい香りがほわりと立つ。いただきます、と言いおそるおそる1つを口にいれてみる。
「はふっっ!」
思っていたより熱くて慌てたが、外のカリカリと中のとろとろがとても美味しい。だが、中から何か弾力のある物が出てきた。
「ルーク、これ何?」
「ん?あぁ蛸だよ。スキュアは蛸って食べたことない?」
「うん。食べられる…よね?」
「もちろん!美味しいよ」
ルークに言われるままに食べてみたが、確かに美味しい。世の中にはこんなにすごい食べ物があったのか…と感動しながら完食すると、缶のお茶を差し出された。
「実は僕も昔、部屋に閉じ込められるようにして生かされていたことがあるんだ。」
「え?」
お茶を飲みながら、ルークが呟くようにして言った。
「うそ…。だってルーク、普通の人…」
私とは違う、周りにたくさんの人がいるルーク。そんな生活を送っていたとは思えない。
「いや、本当だよ。でもね、僕にはパズルがあった。パズルがあったから出会えた人がいて、今の僕がある。たこ焼きも、パズルで繋がった友達に教えてもらったんだ。」
そう言ってルークは私を見る。
「スキュア、僕達は似ていると思わない?パズルが僕らを出会わせてくれた。最初に君を見た時、そんな感じがしたんだ。」
そうだとしたら、そうだというのなら、私はどう生きるべきなの?
私には何ができるの?何を求められてるの?
そう問うことは、私にはできなかった。