勘のいいガキはデカパイハーレムの夢をあきらめない! 作:そとみち
その後、俺たちは無事にダンジョンを脱出した。
「道中めんどくせー魔獣に出会わなくてよかったな……」
「俺の勘を褒めてもろて。しっかし……疲れたぁー!!」
「回復魔法はかけてあげたでしょー! ……とはいえ私もダガー一本だけになったから戦闘であんまり働けなくて申し訳なかったけど」
「いやティオのダガー壊したのは俺だしな。マジでごめんなその点は」
「いいよ、ロックに怒ってるわけじゃないから! バアルとの戦いじゃほんと頑張ってたし! 怒ってるのは私の不甲斐なさにだよ……回復することしかできなくて……」
「ティオもマスターもあまり己を卑下しないでください。魔族との戦いで生き延びて情報を持ち帰る……冒険者として十分以上の働きです。無事にダンジョンを脱出できたことを喜びましょう」
『イレヴンの言う通りです。冒険者はいつだって命あっての物種ですよ、カトルも』
『みゃあ』
バアルと戦った12階層からまず10階層まで一気に撤退。セーフハウスに戻り、そこで腹いっぱい飯食べてぐっすり寝て、そこから一息でダンジョンを脱出したのが今の俺たちです。
まぁ魔獣の強さは変わってなかったから脱出が大変だったわけじゃないんだけどね。気疲れもあったしバアル戦のダメージは抜けきってなかったし。とにかく疲れた。
カトルはイルゼに魔力を注ぎ込みすぎてガス欠。魔力回復のアイテムは超貴重なんでおいそれとは使えないし、そもそもイルゼ本体に籠めてる魔力を消費したからしばらくまたチャージしないと……なんて言ってた。
イレヴンは体内になんか……魔力炉心? を備えているらしく、それがダンジョンの魔素を吸収して少しずつ回復はしてるんだけど、それでもやっぱりガス欠。腕を回転させずに戦ってた。
ティオはバアル戦であれだけ回復魔法を使ったこともあって戦闘直後は魔力切れに近い状態だったんだけど……既に全快に近い回復を見せている。コイツ何故か昔っから魔力の回復がめっちゃ早いのだ。
しかし俺の捌き斬りが失敗したことで彼女のツインダガーの一本を砕いてしまったので戦力半減。ダガーの件は後で何かワビを入れないとな俺も。
俺はそもそも捌き斬り以外の攻撃力を持たないし、あれだって格上相手にワンチャン狙うっていう使い勝手の悪い技だ。しかし勘だけは常に働いてるので、とにかく敵がいなさそうなルートを探して走り抜いた。
道中で何人か王都から来た冒険者にもすれ違ったが、俺達の装備がボロボロになってるのを見て驚いたうえ、ティオとカトルが今は下層がヤバいという説得を受けて無理はしないことにしたらしい。
ところで俺が説得しても全く話聞いてくれなかったのなんで? 特に女性冒険者の皆さま。どうして?
そんなに俺キモかった??
「……うー、眩しい……!!」
「朝日……いや、もう昼すぎか? 結局一日中潜っちまったな」
「行きのセーフハウスと帰りのセーフハウスでそれぞれ仮眠取ったもんね。それでもめちゃくちゃなスピードで攻略したんだけどね私達」
ダンジョンの入り口までたどり着きそのまま外に出ると、目を細めてしまうほどの眩しい太陽が俺たちを迎えてくれた。
ようやく地上に戻ってきたのだ。周囲を見ればだいぶ行商人や冒険者が集まり始めており、新ダンジョンの攻略で活気が出ているのが分かる。
新しいダンジョンが三つも出ているのだ。恐らくはそれぞれのダンジョン周辺で盛り上がっている所だろうが……しかし同時に危険も多い。
特に俺たちが遭遇した魔族が問題だ。あんな奴らがもし他のところにもいるとなると不用意に潜った冒険者が殺される可能性もある。早急にギルドに報告する必要があった。
「だから急いで帰らなきゃいけなかったんだけどな……」
「なんでまた馬車が全部出払ってんだよクソー!! 引き悪っ!! 俺らついてねーわ今日マジで!!」
「浅い階層でそれなりに探索した冒険者たちが日帰りで使っちゃったのかもねー。これから夕方になるからこの時間でダンジョンに馬車で来る冒険者いるかなぁ……団長がいたら背中に乗せて送ってもらえそうなのにー!」
「メルセデスさんセントールだもんな。あの背中の大きさなら確かに俺らくらいなら乗れそう」
「ロックは乗せてもらえそうにないけどな」
「ふむ……乗り物ですか……」
でも帰りの馬車がねぇんだよなぁ!!
いやマジ……こんだけ活気にあふれてりゃ馬車組合の人が王都に帰る用の馬車準備してくれてるかと期待してたけど駄目でした。クソがよ。
聞いたらティオの予想通り全部出払ってるんだって。交通網もっと整備しろよンモー! とは新ダンジョン出てきて二日目の時点では言えないのはわかってるけど。
「となるとここで馬車を待つか……いっそ歩いて帰るかだな」
「来た時みたいな無茶はもうできないよねぇ。私はまだ水魔法で
「行きの時ですら死にそうな思いをしたんやぞー! やだ!! 小生もう地獄マラソンやだ!!」
「駄々こね始めた。つっても俺も厳しいしな……でも歩くと半日はかかるぞ。真夜中に歩くわけにもいかねぇしな……野営しながら帰るか?」
「それもありだよねー……急いでギルドに報告しないといけないし。でもここで重ねて無茶もしたくないし……うーん!」
俺とカトルがもう疲れ切ってるので来た時みたいな無茶ダッシュはできない。
ティオの水魔法もあれ自分がサーフィンするだけだしな。3人運んだりってのは難しいだろう。ティオも疲れてるし。
イレヴンはまだ走れそうだが……と頭を抱えていると、しかしそこでイレヴンが唐突に提案した。
「……今の私なら、3人とも一気に運べる手段があります」
「……え? マジ? イレヴンさんが……俺らみんな抱えて走るのか? いやキツくない? イレヴンさんも運ばれる俺たちも」
「俺らみんな細身っつっても3人はイレヴンでもなぁ。揺れまくりそうだし色々と。あ、その揺れを追いかけるためになら俺……走ってもいいよ!!」
「ロックの目は潰されてしかるべき。でもカトルの言う通りだよイレヴンさん、貴女に無茶させちゃうのは本意じゃないよ!」
「ああ、いえ。違うのです。実は私、先ほどのバアルとの戦闘に勝利したことでレベルが上がりまして」
「あ、そーなんだ? おめでとイレヴン」
俺たちを運べる手段があり、それは抱えてのそれという話ではないらしい。
バアルとの戦いでレベルが上がったらしいのだが……そんな簡単にレベルって上がんのか。
俺なんて冒険者始めてから上がった感じが欠片もねぇぞ? 才能ないマン。
カトルとティオは時々上がってるらしいけどそれにしたってイレヴン早くない?
「通常ですと、レベルが上がれば体力や魔力、力や素早さが上がったりするのですが……私の場合は機能が解放されるのです。それも、マスターの希望により
「へーぇ……! 強くなる方向とかをロックが決められるんだ? 面白ーい!」
「ホントに人間じゃないんだなイレヴンさん……いや腕が回ってたからそりゃ人形みたいなもんだとは分かってたけど。見た目人間だから時々人外っての忘れるわ」
「ほーん? つまり……さらにおっぱいと尻と太ももをムッチムチに成長させられる……ってコト!?」
「死ねカス」
「ごめん」
イレヴンの説明で意を得たり! と提案した俺の案は殺意の籠った眼差しでキャンセルされた。
だってさぁ……俺好みに成長させられるなんて言われたらさぁ……おっぱい特盛にしたくなるよねぇ!! 120cmまでは許容するよ俺は!!
でもそれを口に出したらイレヴンとティオに殺されそうだったので口をつぐんだ俺は賢い。
「マスターが私に機動力を求めてくれれば、私はそれに応えて『
「……変形!?」
「えっ変形!? かっこよ!! それにしよ!! 俺それがいい!!」
「私も変形見たーい!! イレヴンさんがどう変形するのか興味あるー!!」
『男の子出てますね』
『にゃあ……』
変形と聞いて俺たちのテンションはうなぎ上りである。
すげぇ!! 物語の中でしか見たことがないようなロボットの変形が見られるチャンスなんだぜ!? ここで見ない選択肢はねぇよなぁ!! 我男子ぞ!?
きゃっきゃと3人で盛り上がっている様子を見てイレヴンがふっと微笑みと共にため息を零して頷いた。
「かしこまりました。では仮マスターであるロックの希望を受け、私の今回のレベルアップのスキル解放を『変形』といたします。マスター、手を」
「ん? こう?」
「はい。───マスター認証。入力承認。エクスアームズ02『トランスフォーム』
そしてイレヴンに言われるままに手を差し出して、その手にイレヴンがそっと己の手を重ねる。
イレヴンが言葉を紡いだ後に、俺の手とイレヴンの手になんか……こう、魔力の回路が無理矢理励起するような線みたいなのが走って、そしてイレヴンの全身が光り出した。
唐突に機械音が響き出す。
光り輝くイレヴンがしゃがみ込む様に屈め、そしてガシャコガシャコシャキーン!!! となんかめっちゃ金属が体から飛び出て……それが不思議な形を作り出していく。
車輪みたいな部品も出てきて、それを包むようにイレヴンの髪色と同じ銀の装甲が展開し、そしてそれは例えるならば鋼鉄の馬のような……否、鋼鉄の狼のような流線型の乗り物に変形した。
全長は3m~4mといったところか。でっけぇ。
「ウワーッ!! 超かっけぇ!!!」
「おお!? すっげぇ!? イルゼお前もああいう機能ねぇの!? 俺もあれやってみたい!!」
『無茶を言わないでカトル』
「いや待って物理法則無視してない!? おかしくないかなぁ!? カッコいいけど!!!」
『みゃあみゃあ!』
『───変形、完了いたしました。この形態は「バイク」と呼称します。座席には大人二人まで乗れますが、少し詰めればここにいる3人を乗せることができるでしょう』
イレヴン曰く、バイクと呼ばれるその形態。確かに見れば車輪と車輪の間になんか柔らかそうな座席がある。
あの柔らかさ……もしやイレヴンのおっぱい成分があそこに詰まっている可能性が!? と早速飛び乗ってみるが違ったわ。普通になんかおっぱいの弾力じゃないわこれ。
あとイレヴンの顔も腕も脚も無くなって完全になんか乗り物になってる感じで顔も見えないからちょっと寂しさある。どこに顔とか髪とかおっぱいとかおしりとか詰まってるんやろ。
まぁいいかぁ!! カッコいいしな!!
「お、結構乗り心地いいな! いま俺はイレヴンの上に乗っている……!! 騎乗位ッ!!!」
『お願いですから変形した私にまで欲情しないでくださいクソマスター。他の二人もどうぞ、マスターの後ろに』
「わーい!! じゃあ私ロックの後ろー!! ミャウが落ちないように見張ってないとね!!」
「俺は最後尾か……ちっと狭いからイルゼは一旦アイテムボックスに仕舞っておいた方がいいなコレ。鎧も脱ぐか」
『落ちないようにティオはマスターの腰を掴んで、カトルは座席の最後尾ですから背を預けて取っ手を離さないように。そしてマスター、バイクの運転にはそれなりに技術が必要ですので気を付けて』
「あ、そーなん? 何となく勘で運転できそうな感じはあるけど」
『最初はゆっくりと動き出してくださいね。倒れないように私もアシストいたしますが、無茶な運転をすると転んで3人とももみじおろしになりますよ』
「怖い事言わないでくれる!?」
俺の背中に
このバイクってのでっかいなぁ……デカバイ感謝。イレヴンのどこにこんな部品があったんやろ。アンドロイドの神秘……!!
早速俺はイレヴンの説明の通りに運転方法を覚えて、ハンドルを握りゆっくりとアクセルを回す。
「おっ、おっ、わっ、動いてる動いてる……走ってるー!! かっけー!!」
「わー! きゃー!! これ面白ーい!! ワイバーン便よりはやーい!!」
「なんだこれめっちゃいいな!! 全然尻も痛くならないし……うわー俺もイレヴンさん欲しいー!!」
「俺の女に色目使ってんじゃねぇブッ殺すぞカトル!!」
『いえマスターの女ではありませんが。ですが中々運転は上手ですよマスター、そのまま少しずつアクセルを深めて加速してみてくださいね。速くなり過ぎたら私が止めますから』
「オッケー!! よっしゃーそれじゃ王都に向けて出発!!」
しばらく走って操作のコツも掴めた俺は、その後快適なドライブを3人で楽しんで王都に帰還した。
『ちなみに動力は搭乗者の魔力なのでマスターだけだと運転できないかもしれませんね。やーい』
「ふざけんなよお前」
それ先に説明しろよクソッ!!
王都に戻ったらいの一番に魔力の操作覚えないといけなくなったジャンッ!!
~機能紹介~
■イレヴン(バイク形態)
でっかいバイクに変形する。人型だった頃の名残とかサイズ差とか細かいことは投げ捨てたライダーバイク形態。
カッコいいだろう!!(ギャキィ!!)